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蒼穹のカンヘル

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三枚目

「ようこそバラキエル御一行様!
篝、朱乃、此処がお前たちのパパの職場だぜ」

冥界、堕天使領グリゴリ本部に転移した。

エントランスのような所で芝居がかった仕草で俺達を迎えたのはアザゼルだった。

「それじゃぁ案内するぜ」

と言われ案内されたのだが…

「グリィィゴリィィィ!」

筋肉ムッキムキの男が大声で叫んでいる…

「シシシ、やっと此処までこぎ着けたのだ」

白い肌の研究員っぽい男が不穏な事を言っている…

「ほらほら、もっといい声で鳴きなさい!」

「ブヒィィ!」

ボンテージ姿の女性が全裸の男を鞭で叩いている…

「何このカオス…」

母さんと姉さんは後ろで引いている…

おいそこ!SMプレイ見て目を輝かせるな!

「……………帰るか」

父さんも少し思う所があるようだ。

「まぁまぁ、そう言うなよバラキエル。
お前から頼んだことだろう?」

「しかしだな…」

「とにかく、帰りたいなら用事を済ませてからだ」

用事?仕事か?

「篝、今日此所に来たのはお前を検査するためだ。
そうだろ?バラキエル」

「う、うむ、そうなのだが…」

「検査?何を言っているのですかアザゼルさん?
アナタも私に黙って篝に何をさせるつもりですか?」

母さんがすげー怒ってるな…

「い、いや、これは必要なことなんだわかってくれ朱璃」

「言い訳は要りません今夜はお仕置きです」

それってご褒美なんじゃ…

「そ、そうか、それは残念だ…」

口ではそう言いながら口元がニヤけてるよ父さん。

「まぁまぁ、奥さん、これはバラキエルが篝君を心配してのことです。
危険はないので御安心を…」

アザゼルがフォローしてるが…

敬語だあのアザゼルが敬語を使っている…母さんって何者だよ…

「奥さんは神器という物をご存知ですか?」

「ええ、主人から聞いています」

え?そんなの教えちゃっていいの?

「篝君には神器が宿っている可能性が有りそれを検査します」

マジで!?どんな神器かな~楽しみだな~

「…そうですか本当に危険は無いんですねアザゼルさん?」

「ええ、もちろんです」

「わかりました。ですがアナタ、黙っていたことはお仕置きです」

結局お仕置き(ご褒美)は有りなんですか…

「さて篝、行こうか」

「うん!」

よし!行こう!とおもったら姉さんがアザゼルの裾を引っ張っていた。

「あの、おじ様、私にも神器というのはあるのですか?」

あ、今『おじ様』って言われて葛藤したな?まさかロリコンじゃないよな…

「さぁな、なんなら朱乃も来るか?」

「はい!」

「よーし、じゃぁこっちだ。
あ、お二人さん、朱乃も連れていくんでどうぞごゆっくり~」

え?あの、状態で放置?今にもおっ始めようって雰囲気なのに?

ん?アザゼルが端末を出した、誰にかけるんだ?

「ベネムネか?……ああ……一つ空いてるか?……空いてる?……わかった、バラキエルと奥さん放り込むから……ああ……頼んだ」

「ねぇねぇアザゼル、どこに電話したの?」

「さっき鞭持ったねーちゃんが居ただろ?
アイツの部屋を朱璃さんに貸すんだよ」

なるほどプレイルーム(意味深)ね。

「おいバラキエル」

「なんだアザz…ごふぅ!」

おおぅ、見事なリバーブローだ…

「アザゼル……きさ……ま…」

「朱璃さん部屋を用意しましたので此方の魔方陣でどうぞ」

「あらあら、お手数かけてすみませんアザゼルさん」

「いえいえ、これくらいどうってこと無いですよ」

「ではお言葉に甘えて」













で、連れてこられたのは大きなホールだった。

といっても所々に機材が置いてある。

「よーし二人とも先ずは神器を持っているかを検査するぞ。
そこのベッドに横になってくれ。
大丈夫、危なくはないから。
さぁ、どっちからやる?」

アザゼルが示す方向にはMRIみたいな機材があった。

「では私から、姉ですもの」

「わかった篝もいいか?」

「うん」

姉さんがベッドに横になる。

うぃ~ん、と気の抜けるような音を出しながら機材が動き、姉さんをスキャンしていく。

「三十秒くらいで終わるぞ」

というアザゼルの言葉の通りすぐに終わった。

「あ~、残念と言うべきか良かったと言うべきか朱乃には神器は無いようだ」

「そうですか…」

姉さんは残念そうにしているけど神器ってたしか…

「まぁまぁ、そう落ち込むなよ。
それに神器持ちは狙われる可能性だってあるんだからな」

「じゃぁ篝は大丈夫なのですか?」

「ん?流石に教会も悪魔もバラキエルの息子に手は出さんだろう。
そんな事をすれば今度こそハルマゲドンだな」

冗談っぽく言ってるが内容が笑えんな。

「さて、次は篝だ、朱乃と同じように横になってくれ」

「はーい」

俺もMRI擬きに横になる。

さっきと同じようにスキャンされていく。

「ん?あ?どうなってんだ?」

なんだ?なんかあったのか?聞いてみるか…

「どうしたのアザゼル?」

「あ、ああ、少しおかしな結果が出てな。
悪いがもう一回いいか?」

おかしな結果ねぇ…聖と魔とかか?

「別にいいよ」

「じゃぁ二回目行くぞ」

再びMRI擬きに横になった。

「まぁこの機械も造ってかなり経つ。
そろそろオーバーホールだな」

と言いながら機材を操作するアザゼル。

俺はふと思ったことを聞いてみた。

「ねぇねぇアザゼル」

「なんだ篝?」

「アザゼルって一番偉いんでしょ?」

「ああ、もちろんだ」

「じゃぁ何でわざわざ自分で出迎えしたり俺達の検査してるの?
部下に任せたらいいのに」

「確かにそうですわね」

姉さんも思ってたようだ。

「堕天使は天使や悪魔ほど数が多くないのさ。
つまり人員不足なんだよ」

「さっきの眼鏡の人は?」

「サハリエルか?アイツは神器は専門外だ。
俺をはじめとして神器を研究する奴も結構いるが、あいつらは自分の研究以外に興味ないからなぁ…」

喋っていると終わったようだ、俺はベッドから降りた。

「ん~変わらずか…」

さっきと同じ結果なのか?

「どうしたのです?おじ様?」

「ん…篝に神器が有るのは確定だ…
で、この機材は神器があればその属性まで解るんだが…『聖』と『竜』の反応が出ているんだ。
前者は文字通り『聖』を武器にする物で後者は単純に『力』に干渉するのが一般的だ」

スターリングブルーとかトゥワイスクリティカルとかだな。

「何故にその二つが出るのはあり得ないのですか?」

「朱乃、篝、お前たち聖書は知っているか?」

「ええ、知っていますわ」

「うん」

たぶん次の質問は…

「なら失楽園のエピソードは解るか?」

「ええ、それに関係するのですか?」

姉さんは気づいてないみたいだ…

「姉さん、エヴァを騙して知恵の実を食べさせたのは誰?」

「篝、お前本当に5歳か?
でもまぁそういう事だ」

「?」

未だはてなを浮かべる姉さん。

「エヴァを騙したのは蛇に化けたサタン。
そしてサタンは竜でもあった。
だからキリスト教において竜は悪なんだよ。
わかった?姉さん?」

「そういうことですか…でも他の神話の竜という線は無いのですか?」

「神器を創ったのはヤハウェだ。
確かに異教の存在を封じた物も有るには有るが絶対数が少ない。
それに各神話の竜は殆どその存在が確認されている」

「それに竜は宝を溜め込むような強欲な存在だから、聖の力を持つことはないよ」

「よく知ってんなーこれはバラキエルの後継者も安泰だな」

おいおい…俺は何故か翼出せねぇってのに…

「篝、お前翼出せるか?」

にゃろう、人が気にしてる事を…

「無理、まぁでもいつか出せるようになるでしょ」

「無理だな。お前の堕天使の力は神器が押さえ込んでいる。
まぁ今のところ害は無いがな」

まじかよ…じゃぁどうすんのさ?

「取り敢えず神器を出してみろ。
そうだなぁ…自分が一番強いと思うキャラの真似してみろ。
子供の神器所有者なら大抵はこの方法で出るから」

原作主人公がやってたやつか…強いやつねぇ…ノゲノラのジブリールとか?

やってみるか…

「ふうぅ…」

目を瞑り、手を空高く掲げる。

イメージはノーゲームノーライフ四巻でジブリールが使った天撃…

自分の手の中に周りの力を集めるイメージ…

ふわりと、風が起こった気がした。

大地を流れる精霊回廊から力を引き出す。

周囲の全ての精霊を搾取しつくす…

それを収束、圧縮する…

「お、おい、篝、なんだ…それは…」

もっと、もっとあつめて…

「おい!篝!」

ん?アザゼルがなんか言ってるな…

「篝!」

「なに?アザゼル?」

「上を見てみろ」

上………………なぁにこれ…

掲げた手の上には剣や槍というには余りにも不定形な光の柱があった。

「ねぇアザゼル、これが俺の神器?」

俺の神器って天撃?

「違うだろうな…ソレはお前がイメージで周りのエネルギーを根こそぎ集めた結果だ…
何を想像したかは知らんしどうでもいいが…どうする気だソレ?」

「どうしたらいいと思う?」

「三十秒、そのままで保持できるか?」

「うん」

「待ってろ、朱乃は篝の後ろにつけ、絶対前に出るなよ!」

「わかりましたわ」

アザゼルはホールの入り口とは反対方向のゲートを開けた。

「篝!このゲートから外に向かって撃て!」

よ~し、じゃぁ、撃つか!

「天撃、参ります!」

俺はゲートから光の柱を投げた…

どんどん進んでいって…

ちゅっどぉ~ん! と爆音が響き、閃光が迸る。

あ、山が吹き飛んだ…どうしよ…

「どうしよ…アザゼル…」

「なに、あそこは誰も住んでねぇから大丈夫さ」

え?そんだけ?

「いいの?」

「戦闘抂が暴れたらもっと行くんだから気にすんな」

「わかった」

「良かったわね篝」

ところで…

「俺の神器は?」

ぴーぴー!

何の音だ?

ガチャ、あ、電話の音か。

「俺だ、………ああ………問題ない……ちょっとした事故だ……ああ……そうか……ああ……わかった……ああ…そうだ……すぐ行く……」

ガチャ…

「今のでちと呼び出しを喰らっちまった。
なに、安心しろお前の事は黙っとくから」

「呼び出し?総督なのに怒られるの?」

「総督って言っても飾りみたいな物さ。
一応色々な最終決定権は有るが合議制だからなぁ…」

「てことは俺の神器はお預け?」

「ああ、何が起こるか分からんからな。
そうだな、ちょっと待ってろ」

またもアザゼルは端末を出して誰かにかけている。

「よう、暇か?………ああ……そうだが……うっせ………あ~わかってるわかってる、で暇なんだろ?…………んなもん部下に任せたらいいだろ………大丈夫だって…………暇なんだな?なら仕事だ……拒否権?あると思うか?……なに、ガキのお守りさ……大丈夫、結構ちゃんとしてるから……そうだ……じゃぁ第三ホールに……あいよ」

ガチャン…

「よしお前ら俺は行くけど直ぐに案内役が来るから待ってろ」

「案内役?」

「グザファンって奴だ。
動力炉の管理人って肩書きだが結局は暇人だからな、まぁそういうこった、また後でな」

グザファン……動力炉の管理人……あ、天界に放火しようとしたやつか。

そんな事を考えている内にアザゼルは何処かに転移していった。

「案内役ってどんなひとかなぁ」

「変な人じゃないといいですわね」

目の前の床が淡く光る。

お?魔方陣だ、案内役かな?

その魔方陣はどんどん輝きを増していき、出て来たのは…

俺達とそう変わらない幼女だった………は?

「よう、お前らがアザゼルが言ってたガキか?
お前らの案内役をやらされるグザファンだ。
とりあえずよろしく」

見た目に反して男口調だ。

グザファンの容姿は金髪に緑の瞳で八重歯の目立つ口元に格好はよく鉄工所のおっちゃんが着てるようなツナギ。

「まぁ、シェムハザ…グリゴリでアザゼルの次に偉い奴の説教が終わるまでだから…だいたい五時間くらいこのグリゴリを案内するぜ」

五時間て…日頃から色々と言いたいんだろうな…

「よろしく」

「よろしくお願いいたしますわ」

「じゃぁ、行くか」

さぁて、どんな面白い物があるのかねぇ…
 
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