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【完結】猫娘と化した緑谷出久

作者:炎の剣製
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猫娘とUSJ編
  NO.015 爆豪の過去の汚点とトラウマ

 
前書き
更新します。 

 


「校長先生……なにか嫌な予感がひしひしとするのですが……」
「慌てない慌てない。今は体の回復に努めなさい。まだまだ不調なんだからね……」
「はぁ……」

校長先生だって連絡が取れない事に不安は感じていた。
だが今の状態でオールマイトを行かせたらまずい事になるのは明白だ。
よってパワーが戻るまではどうやってもここにいさせる腹積もりだった。
この校長先生の判断がよりによって本来なら向かっているだろうオールマイトの妨げになってしまったのである。










爆豪と切島の二人は倒壊ゾーンでやはりヴィランと戦っていた。
だが、二人にとって相手をしている奴らは所詮は下級ヴィランのために簡単に打ち倒していた。

「……これで全部か。弱ぇな……」
「そういう事を言うのは大本を倒してからにしようぜ爆豪! きっと俺達以外にもみんなはUSJ内に飛ばされているはずだからな! きっとまだ戦ってるぜ? 攻撃手段に乏しい奴らが心配だ。それになんかさっき遠くの方から小せーけど緑谷の叫び声が聞こえてきたような気がしたし……」

それはきっと水難ゾーンでの出久の『ハウリング・インパクト』を使った瞬間だろう。
切島にも聞こえたのだから当然爆豪にも聞こえているはずだ。

「…………デク。また無茶をしてんじゃねーだろうな……? とにかくさっさと向かうぞ。俺はあのワープ野郎をぶっ殺す」
「こんな時に自分事を優先していないで助けに行こうぜ!」
「うっせぇ! どうせ全員広間に向かっていけば合流できるんだ。弱くても雄英に入れてんだ。こんな三下どもなんざどうにかしてるだろ!」
「爆豪、お前……」

切島は爆豪の事を勘違いしていたのだ。
どうしても頭に浮かぶのはいつも怒鳴っていて特に出久に対しては昔からの馴染みでもあり容赦なく暴言を吐く破壊者の様な物……と思っていたが、その実1-Aの全員の事をしっかりと冷静に見ていた事を先ほどの発言でわかったのだ。

「意外だぜ……お前ってすぐに怒鳴り散らすところがあるけど結構冷静じゃねーか?」
「んだとごらぁ!?」
「そうそう! やっぱお前はそうじゃないとな!」

そう言って二人で話し合う感じで背後に一人だけまだヴィランが潜んでいることに気づいているのかいないのか。
そのヴィランはすぐさま仕掛けに行ったのだけど、それは爆豪の油断を装った罠だったために炙り出されたと気づいた時には時すでに遅く目の前に手のひらがあり、その後にはもう意識は消えているといった感じであった。

「すっげぇな……やっぱお前って緑谷が絡まないとまともだな」
「今更気づくな! デクがいなけりゃ俺の天下は決まっていたんだよ」

そう吐き捨てて爆豪は広間へと向かおうと歩き出す。
そんな爆豪の後を追う切島はというと、

「でもよー爆豪。なんでお前はそんなに緑谷の事を邪険に扱うんだ……? そりゃ男の時代から知っていれば変化はないだろうけどよ」
「うるせぇな……俺は俺の信条に肩入れしているだけだ。それにデクの奴に言っちまったんだよ……」
「なんて……?」
「……他の奴らには……特にデクの奴にはオレが言ったって言うなよ?
『クソデクはクソデクだ! 男だろうが女だろうがてめぇはてめぇだろうが!!』ってな。だから俺はあいつがどんな事になっちまっても態度を変えるつもりはねぇよ」
「ほー……見直したぜ。爆豪って実は義理堅い性格だったんだな」
「うっせぇ! だから言いたくなかったんだ! ぜってー言うなよ!?」
「あいあい♪」

切島はそれで爆豪の意外なところを知れて、これなら気兼ねなく対等に話が出来るかなと思っていた。
爆豪はそこで心の中でとある事を思う。

「(それに……もう俺はデクのあんな光景を見たくねー)」

爆豪が思い起こすのは小学5年生の時の事だった。





出久が無個性だと分かってからというもの、出久は迫害を受け続けていた。
それでも出久は健気に毎日学校に通っていた。
普通なら不登校になってもいいだろうに毎日顔を合わせば弱気な声で『おはよう、かっちゃん』と言ってくるのだ。
それがどれだけ爆豪にとって目障りだったことか。
だから爆豪は「ああ……」と不機嫌そうに答えるだけで決して『おはよう』とは言わなかった。
出久はそれでも反応されているだけで嬉しかったのか席に座ってはまたヒーローノートを取りだしては眺めているのを爆豪はただただ見ているだけだった。
爆豪はこう思った。
なぜそこまでされているのにこうも元気でいられるんだ?と……。
気づけば爆豪は放課後に出久が何をしているのか手暇半分に追うようになっていた。
取り巻きも付いてこさせないでただただ出久がどこに向かっているのかを追った。
そして出久がやってきたのは古臭い神社だった。
その茂みに入っていくのを見て、爆豪は隠れながらも覗いていた。
そこには出久と一緒に一匹の猫の姿があった。

『さ、フォウ。今日の食事を持ってきたよ』

そう言ってよく残しては持ち帰っていた給食の残りをその猫に上げていた。

『(馬鹿かあいつは? 猫がそんなもん食うわけないだろ……?)』

そう思っていたが猫はそれをとても美味しそうに食べているのを見て『マジかよ……』と思った。
普通ならキャットフードとかしか食わない猫が人間の食べ物を普通に食べているのだ。
あいつはそれを承知であげているのか?
爆豪の疑問は尽きなかった。

話は変わるがこの頃、巷では主にペットなどの猟奇殺人をするヴィランがよく出現していた。
警察やヒーローも必死に探していたのだが手掛かりが見つからずに手を焼いていたのだ。
もし、そんな奴があの猫の存在を知ったら嬉々として殺しに来るだろう。
爆豪が出久を隠れて見ている中、そいつは現れてしまった。

『坊や……その動物を私にくれないかい? 悪いようにはしないよう……?』
『な、なんですかあなたは……?』

出久は怯えながらもフォウと呼ばれている猫の事を庇うように立っていた。

『ただ私はね、殺したいだけなんだよう……その猫を!』

男はすぐに本性を現して不気味に猟奇的な笑みを浮かべた。
それを陰で見ていた爆豪は『あいつはやべぇ!! ぶっ倒す!』と出て行こうとした。
だが、足が震えてしまい声も出せずに必死に隠れている自分がいて、

『馬鹿か!? アホか!? なんですぐにあいつを倒さないんだよ!?』

いつもならすぐに個性を発動して大人でも倒そうとする爆豪なのに、今は不思議な事に体が震えて仕方がない。
この時は知らなかった事だが、この男は周りにいる人たちの恐怖心を増幅させるという個性を持っていた。
そのために爆豪もそれにはまってしまい、知らずのうちに男に恐怖を抱いてしまったのだ。
だが、そんな環境下の中でそれでも出久は猫を守ろうと必死に立ち向かっていた。

『おやぁ……? 私の個性に耐えるのですか? それでは仕方がないですねぇ……あなたも地獄行きです!』

男は鋭利な包丁を出久に向けて刺そうとした。
だがそこでフォウという猫が出久の前に飛び出した。

『フォウ!?』
『ウウウウウッ!!』

フォウという猫は男に威嚇をしていたのだ。
それに男はニヤリと笑みを浮かべながらも、

『その反抗的な声、いいですねぇ! いいでしょう。思う存分に切りつけてあげましょう!』

男は包丁を出久とフォウに向けて何度も振るった。
出久はフォウを必死に腕の中に庇って男の包丁を受け続けた。そして……。

『……私はただ猫を殺したかっただけですのに、あなたが悪いんですよ? まぁ、今回はその猫は見逃してやりましょうか。もう聞こえていないでしょうがね……』

そして男はその場を立ち去っていった。
それからしばらくして爆豪は個性の縛りから解放されたのか、やっと動いた足で出久の事を起こしに行った。
体中が傷だらけで見るに堪えないとはこの事かと言わんばかりの惨状だった。
爆豪は涙を浮かべながらも必死に大人達を呼びに行った。
己の不甲斐なさを痛感しながらも……。

その後に男は爆豪の通報が早かったのかすぐに逮捕されていた。





その後、出久は病院に運ばれて最高のとある名医の治療を受けてなんとか一命は取り留めたかのように見えた。
だが、

『……お母さん。今夜が峠だよ』
『そ、そんな……!!』

それで泣き崩れる引子。
そんな光景を幼くして見た爆豪は心にこびりつくように汚点がついてしまった。
しかし、奇跡的に出久は回復した。せっかく必死に守ったフォウという猫が死んでしまったという事実があったとしても……。







「(あいつは無個性のままでよかったんだよ。俺は……デクのあんな光景をもう見たくねぇんだよ……)」

出久は爆豪の心にトラウマを植え付けてしまっていたのだ。
かなり特大の。
そして爆豪と切島は広間が見える場所までやってきた。
そこではなんと出久が脳が剥き出しのヴィランに打ちのめされている光景を目にして、爆豪の怒りが一気に頂点に達した。

「デクになにしとんじゃ、てめぇ!!!!」


爆豪は駆けた。
もう二度とあの時の様な過ちを繰り返さないために!


 
 

 
後書き
唐突な過去の捏造の話でした。


これでかっちゃんはトラウマを植え付けられているので出久の傷つく光景は見たくないという感じで一話の発言に繋がる回です。
どうでしたでしょう? 
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