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NEIGHBOR EATER

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EATING 6

side KONAMI

既に十二時を回っている。

「あ~もう!なんでこんなに遅くまで殺んなきゃ行けないのよっ!」

夜更かしはお肌の敵なのに!…まぁトリオン体に換装しているから体は昼のまんまなんだけどね。

「ああ、でも『天使』には感謝ね。あの攻撃がなかったら明日の夕方までは掛かってたわね…」

『天使』…私達よりも先にこの三門市で戦闘していた謎の存在…

この街に現れたネイバーの約四割を倒した『天使』。

遠目からでも美しいと思えた。

『天使』の活躍で、殲滅戦…残党狩は明日の昼前には終わるだろう。

「さっさと寝ましょ…」

換装を解き指定されたテントに入る。

中にはベッドが二つ、片方は誰かが眠っていた。

その誰かはもう六月だと言うのに、毛布被っていた。

暑く無いのかしら?

そう思い隣のベッドの前で靴を脱いで居るとあることに気づいた。

その誰かの髪が僅かな光を受け、虹色に輝いていると。

その髪飾りが複雑な紋様を描き淡く光っていると。

その毛布がまるで羽のようだと。

それが腰から生えていると。

そして理解した。

「『天使』?」

そう、そこで眠っていたのは、『天使』だった。

「綺麗…」

こちらに背を向け、胎児のように身を縮め、自らの翼に包まれ眠る『天使』は、とても美しかった。

ふと、『天使』の顔を見たくなった。

彼女を起こさないように、そっと彼女の正面へ回り込む。

「はうぅ!」

か、可愛い!

彼女は同性の自分でもドキッとする程に可愛いかった。

わー、ほっぺた柔らかそうだなー…

気付くと、彼女のほっぺたに指を伸ばしていた。

ぷに…ぷにぷに…

あぁん!可愛い!

ぷにぷに…

「う、うぅん…」

「!」

マズイ!?起こしちゃった!?

そう思ったが彼女は再び静かな寝息を発てて眠りはじめた。

「私も寝よう」

二時間仮眠を取ったらシフトが回ってくる、今の内に寝て、トリオンを回復しなければ足を引っ張る可能性もある。

自分のベッドに入る。

隣から聞こえる寝息に誘われて、私は眠りに落ちた。

side out










ごそごそ…さて、行こう…

「うぅん?」

物音で眼が覚めた。

「だれぇ…?」

起き上がると誰も居なかった。

しかし隣のベッドには誰かがいた形跡があった。

誰かが寝ていたのだろうか?

ドォン……ズズゥン……

戦闘の音が聞こえる…

外はまだ暗いけど…妙に体に力が張っている…

ニィ…

「行こう」

俺はベッドから出る。

靴は履かない、地面に降りる気はない。

ツイーっと入り口まで翔ぶ。

ぱさっ…入り口の垂れ幕を空ける。

やはりまだ夜中のようだ。

焚き火も殆ど消されていた。

人も見張りみたいな人以外いない。

おそらく殆どの人が出払っているのだろう。

少し離れた場所にバギーがあり三人の人影が見えた。

迅と大柄な男と小さい女だ。

迅達の所まで翔ぶ。

「迅」

「お?どうしたの天使ちゃん?」

「これから大詰め?」

「ああ、大分減ってきたらしい。シフトなのに殆ど戻ってこないしな」

「そ、じゃぁ俺も出る」

「寝なくていいのか?」

「うん?もう、疲れは取れたよ。それに喰いたくなってきた」

「そうか…ならコレ持っていけ」

迅が何かを投げた。

「何これ?」

「俺の予備の通信機だ…気をつけろよ」

「もちろん」

俺は迅達を置いて翔び出す。

夜の空には未だに二輪のネイバーが飛んでいる。

ボーダーの武器は届いていないようだ。

俺は二輪のネイバーはトリオン器官が一つしか入ってないからあんまり墜としてない。

「まぁ、でも、迅達にはベッド借りたし」

その分は働こう。

両手を広げる。

力を集める。

俺の中の力を。

空間に漂う力を。

地上に溢れる力を。

俺の胸の前に力が珠を成す。

やがて集まった力は螺旋を描き集束する。

それは膨大な光を放っている。

宵闇の戦場がまるで昼間のように照らされた。

それに手を翳す。

「薙ぎ払え」

珠から一条の光が迸る。

光は空を飛ぶネイバーを薙ぎ払った。

殆どのネイバーは跡形も無く消滅したかその場で爆散した。

「これでベッドの分は働いたかな…」

俺は四分の一程の大きさになった珠を携え地上に向かう。

ふわり…

足を地面に着けずに降り立つ。

浮遊したまま音のする方へ向かう。

きゃぁぁ!

「!?」

近くから叫び声が聞こえた。

きっと何処かに身を潜めていて見つかったのだろう。

叫び声が聞こえた方向へ向かう。

ネイバーの姿は見えない、おそらく鎌のネイバーだろう。

鎌は時々二枚だけど大抵一枚だ。でもだからと言って見棄てる程イってはいない。

少し進むと半壊した民家があった。

ネイバーがその民家に半分程体を突っ込んでいる。

ネイバーの尻尾を掴む。

力の限り引き抜く。

ガスッ!

ネイバーが鎌を振り下ろす音が聞こえたが、直ぐに引き摺り出せた。

維持していた珠を棒状に変形させ

「死ね!」

ネイバーを貫く。

ドシン、とネイバーが崩れ落ちた。

半壊した民家の中には女が二人。

片方がもう片方を庇うようにうずくまっていた。

「そこの二人、生きてる?」

すると二人がこちらを向く。

その顔はよく似ていた、姉妹だろうか?

「大丈夫よ…妹もね…」

「それは良かった、直ぐに逃げろ、あっちの方角に行けばネイバーは居ない」

そう言って俺が来た方向を指差す。

翔び立とうとした瞬間、呼び止められた。

「貴女は誰!?貴女はさっきの怪物と関係あるの!?」

「俺は…」

名前を教えるか迷った。

理由は彼女の眼が、怒りに染まっていたからだ。

「俺はあんた達を襲った奴を狩る、少なくともあんたらの敵じゃないよ」

「そう、名前は?」

しつこいな…

「何故教えないといけないの?」

「貴女みたいな力が欲しい…じゃないと雪乃ちゃんを…妹を守れないから」

「そう……解った」

彼女の眼に怒りだけでなく意思も宿っている事に気付いたからだ。

「俺は翼。刹那翼」

「私は陽乃。雪ノ下陽乃…妹と私を助けてくれてありがとう」

そう言って彼女…雪ノ下陽乃は妹を連れて走り出した。

「一応、言っておくけど、ネイバーに襲われたらさっさと逃げなよ。
どうしても戦わないといけなくなったら眼をねらうといい。
そうすれば、怯むから」

「そ、ありがとう」

俺は彼女達が立ち去り、姿が見えなくなるまで見守った。

そこからは見つけたネイバーを片っ端から光の槍で貫いていった。

そして数時間後…

ゾドォォォゥゥゥゥゥ!

「!」

遠くで一際大きい音が聞こえた。

ピーピー…

通信機から音が鳴った

「『全隊員に告ぐ、戦闘は終了した。
繰り返す、戦闘は終了した』」

その報せは日の出と共にもたらされた。

長い永い夜が、明けた瞬間だった。


 
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