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魔法科高校の劣等生の魔法でISキャラ+etcをおちょくる話

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第九十四話

「さぁ…話をしようよ。
俺達三人の生まれの話を…」

隣で、姉さんがコクンと頷いた。

「まず、謝らないといけないことが二つあるんだ。
父さんと母さんが死んだこと、二人が死んだその日からずっと、八年前から知っていたんだ」

「………そうか」

あっさりとした返しの奥の感情が、隠せていない。

「ごめんね、姉さん」

唐突に、姉さんの膝の上に乗せられた。

俺を包み込むように抱いて、手を組んでいた。

「お前は、それをずっと抱えていたのか?」

「束さんには、話した。
隠せなかったから。
のけ者にしちゃって、ごめん」

「いいんだ。それを聞いて、全てに合点がいった。
あの頃のお前の必死さは、それを忘れるためだったとな…」

「はは…覚えてたの?」

「私はお前の姉だぞ?」

「うん。姉さんは、俺の、姉さんだもんね」

「お前は私の弟だし、円香は私の妹だ」

「父さんと母さんの事がひとつめ。
もう一つ…この話をしたら姉さんは傷つくと思う。
けど」

「円香の話をするのに必要なのだろう?」

「うん。円香の話の前に、俺達の話だ。
ALICE」

暮桜の…ISコア0010に話しかける。

『イチカ…?』

「今から暮桜にデータを送る」

『ん…わかった』

「姉さん」

「ああ」

姉さんがホロウィンドウを展開したのを確認し、量子暗号通信でジャパンゲノミクスやメシアに関する報告書を送る。

「姉さん。僕らは人造人間…デザインベイビーだ」

「そうか…」

「遺伝子強化素体メシア。
それを創るプロジェクト・メシア。
プロジェクトを遂行していたジャパンゲノミクス…」

暮桜とリンクしたホロウィンドウに、人のシルエットを浮かべる。

「メシアっていうのが要するに俺達だ。
父さんと母さんはジャパンゲノミクスで、プロジェクト・メシアの主任研究員だった。
だけど、14年前…俺が生まれる前に計画は破棄された」

振り向いて、姉さんの瞳を覗く。

「そして、計画破棄前に成功したのが姉さんだ」

「…………」

「その後、研究途中だった受精卵を、体外受精の要領で母さんの子宮に入れ、そうやって生まれたのが俺」

「…っ」

「父さんと母さんは、できる限り、データを消した。
だけど、プロジェクト・メシアのメンバーの中に、ファントムタスクと繋がっている奴が居た」

ウィンドウに、データを写し出す。

日本人の女だ。

「今は、ファントムタスクでヴィーティングってコードネームを与えられてる女さ」

姉さんの手が硬く握られる。

「こいつが…父さんと母さんを…!」

「二人は、きっと何らかの方法でこいつの襲撃を知った。
それで……俺達を巻き込まないよう、失踪した」

「そう…か…そう…だった…のか…」

「円香は、その時の父さんと母さんのDNAで造られたデザインベイビーで…
こういう言い方はしたくないけど、俺達の劣化コピーだ。
だから、諸々の身体機能が正常に働いて居なかった」

「ん…?今は、大丈夫なのか?」

「裏技を使ったから大丈夫」

裏技とは無論奏の血の事だ。

「これで、俺達三人の産まれの話はおしまいだよ。
何か気になる事はある?」

「いや…ない」

「そっ…ならいいんだ」

姉さんの膝から降りて、円香の眠るベッドに腰かけ、姉さんと向き合う。

「父さんと母さんが死んだから、今の円香が…
そんな事は考えたって仕方がない。
それは俺達の預かり知らぬ所での出来事だ。
だから…」

だから。

「円香を、俺達の妹を恨まないでくれ」

姉さんが、はっとした表情を見せた。

「その恨みを向ける相手は、別に居るんだから」

「っ…気付いていたのか?」

「俺は姉さんの弟だよ?」

さっき、言われたセリフを返す。

「ふふ…そうだな…」

「私とて、円香を恨んでなどいない。
しかし…」

「割り切れない?」

姉さんは静かに頷いた。

「父さんと母さんの忘れ形見…か…」

その後でポツリと呟いた。

「そう。二人の忘れ形見。
俺達が護るべき…妹」

円香の髪を手櫛ですく。

「見れば見るほど、姉さんにそっくりだ」

「お前にもな」

まぁ…ねぇ…

「ところで、何故円香の方がお前より大きいのだ?」

「おい人が折角言わなかった事を言うな」

「しかしだな…」

実際、円香の方が俺よりも大きい。

年…というか製造されたのは俺の方が先だが、円香の肉体は薬物で成長が促進されている。

「簡単に言えばコンセプトだよ」

暮桜に三つのデータを送る。

二つは刀奈から貰ったデータ、一つは昨晩盗んだデータ。

姉さんと俺と円香の理想スペックだ。

「姉さんのデータがフィードバックされた俺の肉体は、二つのプランがあった」

要するに。

「体格を大きくして格闘で優位に立つか、小さくして銃撃戦での被弾面積を減らすかだ。
どうも俺は後者で、円香は前者らしい」

小さかろうと大きかろうと、筋肉の密度が同じならほぼおなじ膂力を出せる。

「【メシア】が軍事にも関わるデザインベイビーというコンセプトだったときの名残さ」

「ふむ…」

「姉さんの体格は多少大きめらしいよ。
詳しくはその資料読めばわかるよ」

姉さんが諸々の資料に目を通している間、ずっと円香を見ていた。

俺達の末の…いや、末かどうかは、まだわからない。

だけど、こいつが、俺達の妹である事に変わりはない。

『ニンゲンってぇのはわからねぇなぁ…
血が繋がってるって訳じゃぁねぇんだろう?』

奏か…

『ああ、でも、円香は…それに、まだあった事のない二人も、妹だよ』

『それはますたーと同じデザインベイビーだから?』

『ああ、橙の言うとおりさ』

『ほぅ?そういう物なのか?』

『そういう物らしいよ。私は奏と違ってますたーの記憶を覗いたことあるから』

『そうか…まぁ、暇な時にでも聞かせてくれや』

『ん、わかったよ奏』

まぁ…二人が仲良くなるのはいいのだが、途中から俺そっちのけで話してやがる…

『ますたー』

『なんだ?』

『ますたーは、自分の肉体についてどう思ってるの?』

どう?

『お前なら、知っているだろう。
態々聞くな』

お前なら、俺が一昨日見た夢も知っているんだろ?

『知ってるさ。でも、千冬もショックだと思うんだけど?』

『わかってる。でも、円香の話をするなら、メシアの事は言わなきゃいけないだろう』

『そうか?お前なら、上手く誤魔化す事もできたんじゃねぇの?』

『うるさい…
おれは、お前達が思っているほど有能じゃないんだ』

「んぅ…」

ん?

「何か言ったか姉さん?」

「私ではない」

っつーことは…

円香の顔を除き込む。

「やぁ、おはよう。俺達の妹」

「………」

そっと目を開けた円香は、何も言わない。

「言葉は、わかる?」

「………?」

そこからか…

「ー…ぁ…」

お?話せるのか?

「ぁー…」

んー…ダメか。

円香は、ムクリと体を起こし、辺りを見回した。

「ぁー…あ…?」

しょうがない…

「姉さん」

「な、なんだ一夏?」

なんでキョドってるんだよ…

「束さん…あー…あと柳韻さん達に連絡御願い」

「あ、あぁ構わんが…」

「じゃぁ、俺今から寝るから」

「は?」

「ちょっと円香と話してくる」

パレード、ディキャスト。

フォールド・リング、オープン。

瞳を金色に、指には人工フォールド・クォーツをあしらったサイコ・Eカーボン製のリングを。

「は、話すってどうやって…」

「大丈夫。概念伝達は出来るだろうから」

「がい…精神ダイブか?」

「そう言うこと」

円香をゆっくりと、寝かせる。

俺の方を向いて、不思議そうにしている。

「大丈夫大丈夫、今から少し話すだけだから」

円香の隣に寝転ぶ。

その細い手を、リングを付けた右手で握り…

「橙、頼む」

『りょーかい、ますたー』
 
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