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SAO─戦士達の物語

作者:鳩麦
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MR編
  百五十二話 竜使いの悩み事

 
前書き
はい、どうもです。

さて、今回からは、以前募集いたしました、オリジナルダンジョンの攻略編に入りたいと思います。

ご存知な方はご存知かもしれませんが、実はMR編が始まる前、もう数年前になりますが、その頃にダンジョン募集と言うのを行いました。
随分と年月が開いてしまいましたが、ようやくその攻略に取り掛かることが出来そうです。

どなたのダンジョンになったかは、あとがきにて。

では、どうぞ!! 

 
「んむぅ~……はむっ」
「キュクゥ?」
一月も終盤に差し掛かった頃、中天に上った太陽がカフェにさんさんと暖かな日差しを送るユグドラシルシティのカフェで、水色のフェザーリドラの前に表示されたウィンドウを見て妙な唸り声を上げる少女の姿があった。可愛いらしく整った顔が、ちょっと台無しになってしまうほど沈んだ表情の主の顔を見て、フェザーリドラ……ピナが小首をかしげる。ウィンドウに表示された素材リストを見て、注文したチーズケーキを食みながら再びシリカは唸った。

ここ最近の狩りで、シリカはどうにも少しアインクラッド攻略に当たって自分が力不足である事を感じるようになってきた。先日の盾蟹、ウンスイ討伐の際にも、対処能力の低さや火力の低さの問題からあまり全体に貢献できなかったように思う。

とはいえ、今のシリカが即座にキリトやアスナのように数値的な差を埋め得るようなプレイヤースキルを身に付けることが出来るかと言われれば、勿論そんな訳はない、あれらは持って生まれた才能と、何より長く積み重ねた彼らのたゆまぬ努力が生み出したこのVR世界で「生きぬくための武器」ともいうべき力だ、そも、そうたやすく身に付けられるなどと驕るようでは彼らに失礼というものだろう。
しかしならば、どうすればあのメンバーに貢献できるのか、彼女は割と真剣に考えた。

ダガー使いとしての技術、戦い方の習熟には、彼女もSAOで中層域とはいえ曲がりなりにも命を掛けて戦った経験がある故に、多少の自負がある。一時期は調子に乗っていたこともあり、アイドルプレイのようになって自らを磨くことを疎かにした馬鹿な自分でいた時期もあったが、ピナと、リョウとの一件があってからは、自らの力でSAOを生き抜いていくためにリョウからのアドバイスやサチのお茶を原動力にそれなりに腕を磨いてきた。
今のALOアバターは、その時作り上げた「シリカ」を前身としたアバターなので、レベルやステータスもそれなりのものがある。それらを今の段階から上げていくことは、長期的には十分に可能でも「すぐに」とはいかない。ならば今鍛えるべきは……そこまで思案を巡らせて、シリカは二つの結論を出した。

一つは最もてっとり早い強化方法、即ち装備の強化だ。
数値的な火力や耐久性を上げるのには、これが一番手っ取り早い。実際に自分の装備を見直してみると、今のステータスならば、今よりもう数段上のグレードの装備にしていてもおかしくないような装備しかなく、自分が如何に今のステータスに甘えているかが分かった。

そしてもう一つは……自分のALOでの特製、ケットシーと言う種族を生かした強化、つまりピナの強化だった。装備同様、ピナにも一定の素材を与えるとその能力を強化することが出来る。先日シノンにヒールブレスを撃っているのをみて、ペットのように見えるピナも十分自分の力の一部になってくれることを思い直し、この世界での相棒のステータスを見直すに至ったのだ。
此方も、調べてみるとこれまで行き当たりばったりで強化していたことを反省するような情報がごまんとあった。そもそもALOにおいて、テイムモンスターはケットシーが居ることもありメジャーな自己強化システムの一つであり、多くのテイマー達は、おおむねの最終的なテイムモンスターのステータスを定めて、その上で計画的にモンスターを強化していくのである。その辺り、シリカは非常に衝動的で、大分大雑把な方針だけで強化方針を決めてきた上に、そのペースは真剣とは言えなかった。
勿論、これまでALOで過ごした時間が無駄であったとか、そういう話ではない。楽しむことを重視したこれまでのプレイに後悔はないし、ALOで過ごした時間はどれもこれも大事な思い出ばかりだ。ただ偶には、こういうゲームとして真剣にプレイできる部分にも本気になっても良いと思うのだ。と、言う訳で、シリカの装備&ピナ強化計画は幕を開けた……の、だが……

「うぅ~。多いよぉ……」
「キュクゥ~」
素材集め二日目、何とか防具の素材と資金集めは終わったのだが、此処からの武器の強化用素材とピナの強化素材の表を見て、休憩に立ち寄ったカフェで早くも心が折れそうになってしまっていたのである。
元々、素材集めというのは延々同じモンスターを狩り続ける作業なので、精神的にも少しばかり辛いところがある、加えて今回、特にピナの強化素材に、かなりの量の素材が必要なのが痛かった。実を言うとテイムモンスターの強化というのは、ある一定の領域を超えると、半ばやりこみ要素ともいうべきもので、いくらなんでも過剰ではないかと言いたくなるような量のリソースを要求されるようになる。ピナの強化も、丁度そんな領域に突入しつつあったのだ。
突っ伏す主人を、何も知らない無垢な瞳で覗き込んでくる相棒のフワフワドラゴンを、シリカは口を尖らせながらツンツンとつつく。

「もう、そんな顔して……ピナ、もっと食べる量を減らしてよ、そもそも、こんなに食べたらプクプクになって飛べなくなっちゃうんじゃないの?」
「キュルルゥ~~」
シリカの言葉の意味を理解しているのかしていないのか、ピナは甘えるような声を出してシリカの指に擦りついてくる。その様子に少しばかり元気を貰えたような気がして、微笑みながら彼女は相棒の身体を撫でた。と……

「ほわぁ……可愛いねぇ……」
「ひゃっ!?」
突然すぐ近くからした声に、奇妙な声を上げて顔を上げる。と、目の前に一人の風妖精(シルフ)が立っているのに気が付いた。

「あ、アイリさ、先輩!?」
「ヤッホー、シリカちゃんこんにちは。ごめんね、おどろかせちゃった?」
テーブルをはさんでウィンクするアイリに、シリカは慌てて手をパタパタと振る。

「い、いえいえ!私の方こそ気が付かなくてごめんなさい!」
「良いよ良いよ。なんか考え込んでたみたいだったし。あ、此処座っても良い?」
「は、はいどうぞ!」
ありがとー、と言いながらあっという間に対面に座った彼女は、店員のNPCを読んでモンブランと抹茶ラテを注文する。あれよあれよという間に一緒にお茶をする流れになっている目の前の女性に、シリカは若干身体を動かして姿勢を正した。
ほんわかとした雰囲気を醸し出してはいるが、この女性……アイリはこの間までキリトとリョウが調査に向かっていたゲーム、GGOにおいてシノンと同じくトップクラスの実力を誇るプレイヤーである。銃主体の戦闘が展開されるかの世界において彼女はキリトと同じように光剣を戦闘の主体の一つとして置いており、最近ではそれまでキリトにしか不可能だった銃弾切りを自力で可能にしたというから、その戦闘センスは折り紙付きだ。当然、そのセンスはALOでもいかんなく発揮されている。
今彼女が使っているアバターである「アイリ」は、GGOではなくSAO時代のデータを基に作成されたALOアバターだ。ただし、それはステータスだけで、アバターそのもののデザインはリョウと同じようにALOで自動生成されたものを使っている─アバター名も当時の物から変えたらしい─。このアバターから、彼女は自身が現実でも習っているという剣の技量も合わさって、地上戦、空中戦の双方でリーファ並みの超剣技を使いこなして見せる。ただ……

「(そう言えば、私あんまり……)」
何だかんだこの前のバーベキューでも共に食事していたりしたのだが、考えてみると彼女(アイリ)の事自体はよく知らないな、と思って彼女の顔を窺うと、当のアイリはジッとシリカを見ていた。

「え、えっと、先輩、どうしたんですか?こんなところで」
「先輩はいいよ~、リアルの関係ばれちゃうしね?」
「あ、わ、す、すみません!えっと、アイリさん!」
苦笑していう彼女に、シリカは慌てて頭を下げる、無意識に呼んでいたが、彼女の事をそう呼ぶのは実際、現実でのアイリとシリカの関係を周囲に知らせているようなものだ……とはいえ、常日頃から敬称として使っている言葉を使ってしまうのも、無理からぬことではある。何せ彼女はシリカより5歳も年上、しかもシリカが通うSAO帰還者学校で、生徒会副会長と言う立場に居るのだから。

そう、彼女もまた、シリカと同じくSAOにとらわれていたSAO帰還者(サバイバー)の一人である。SAO時代にかかわりが無かったシリカは彼女の事を全く知らなかったが、リョウとはあの世界に居た頃から知り合いだったらしい。ただシリカとしては其処が少し不思議なところで、今も付き合いの深いシリカのSAO時代の友人たちには、リョウ繋がりの人間が多い。なのに以前からリョウと知り合いで、今も仲よさげにしている彼女とどうして学校が始まってから……下手をするとSAO時代からこれまで全く親交が無かったのか、今になって見ると不思議でならない。

「で、なんだっけ……そうそう、消耗品の買い物してて、たまたま通りかかったんだ~、そしたら見知った子がカフェで突っ伏してウンウン唸ってたから、ちょっと様子を見に、ね?」
そんな彼女の思考は、アイリの一言で一度中断された。やや探るように、彼女は聞き返す。

「そ、そんなに唸ってましたか?」
「結構ね~、カフェテラスの外にいた私に聞こえるくらいには大きな声だったよ?」
「うぅ~」
それは、やや、いやかなり恥ずかしい。少女が一人カフェテラスで唸り声を上げているなど、周囲の人間からすれば不審以外の何物でもないだろう。もしかするとさっきから周囲の席に誰も座っていないのはそう言う事か……?

「で、どうしたの?何か困りごと?」
「え、あ、いえ……実はちょっと、素材集めに手間取ってまして……」
「ありゃ、そりゃ大変だ。いつもソロでやってるの?」
「その、普段は、リズさん達に手伝ってもらうんですけど……」
そう、普段であれば、リズとリーファと、あと一人、ふわふわとした性格の、男口調の友人に手伝ってもらうところなのだが、ここ数日は少々それぞれ予定があり、結局の所シリカ一人での狩りになってしまっているのが現状なのだ。

「成程ねぇ……ちなみに、何集めてるの?」
「これなんですけど……」
「どれどれ~?」
必要なアイテムと、入手先の一覧を書いたテキストウィンドウを見せると、ざっと目を通した後で、アイリは先ほどとは違う意味で苦笑を浮かべた。

「お、多いね……こんなに使うの?」
「はい、ピナが……食べちゃうんです」
「キュルゥ?」
「あぁ~、成程、この子がかぁ、これは確かに大変だぁ……」
頤に軽く手を当てて、ふむん、と一度アイリは嘆息しながらウィンドウをスクロールする。そして不意に、ポンッと手を叩いた。

「よっし、それじゃ手伝うよ!いつもの友達の代わりにはならないかもしれないけどね!」
「え、えぇっ!?で、でもアイリさんのご都合とか」
「このリストのいくつかは、私も欲しいと思ってた素材なの、だから、つーいーで!」
「え、えぇっと……」
言いながら既にアイテムを確認し始め、やる気満々なアイリにたいして、いきなりの提案で頭の整理が追いつかないシリカは戸惑う、が……。

「それに、さ?ALOにきて、リョウとかヤミ、シノンとはよく一緒に遊んでるけど、シリカちゃんとか、キリト君家メンバーと遊んだの、この前のボス戦で初めてレイド組んだくらいだったでしょ?でも凄く楽しかったから、シリカちゃんたちとももっと仲良くなりたいなって思ってたのもあるんだよ、だから、それも含めて……ダメ?」
「そ、そんなことありません!」
少し残念そうな顔をして小首をかしげるアイリに、思わず、半ば反射的にシリカは答えていた、なんだか乗せられているような気がしないでもないが、それでも、一緒に楽しくゲームを遊びたい、と言われてしまえば、断るなどと言う選択肢はそもそもシリカの中にはないし、そう言う友人はそれこそいくらでも欲しい。何より。

「わ、私も、アイリさん達と仲良くなりたいです!」
「そっか!よかった~!っじゃ、頑張っちゃおう、《竜使い》シリカちゃんっ!」
「ハイっ!!……えぇっ!?」
いきなり飛び出したワードに、シリカは耳を疑った。《竜使い》は、SAO時代にシリカが呼ばれていた二つ名だ。飛龍(ワイバーン)を普通にテイムできるこの世界では、そのように呼ばれたことは一度もない。それを知っているということは……

「あ、アイリさんS……前から私の事知ってるんですか!?」
「勿論!私、シリカちゃんと同じ中層のプレイヤーだったからね、結構噂になってたんだよ?フェザーリドラを連れた可愛い女の子の《竜使い》がいる、って、アイドルみたいな噂話だったよね~」
「うぅ、わ、忘れてください!」
「え、なんで?可愛いのに」
「あの頃の私は黒歴史なんですぅ!!」
《竜使い》の名前自体はピナの事も湛えられているようで悪い気はしないが、アイドル扱いは一番調子に乗っていた時期の話なので、完全に黒歴史だ。顔から火が出そうなほど朱くなった彼女に、アイリは朗らかに笑って抹茶ラテを飲み干す。

「はーい、じゃあ忘れ……られるかは自信ないけど、努力はするね~、それで、考えたんだけどさ、シリカちゃん」
「絶対忘れてくださいぃ!え、あ、はい」
「最初にこれ、手に入れたら楽なんじゃない?」
いいながら、アイリはシリカのリストの一番下にあったものを指さす。そこにはシリカがあくまでも「おまけ」として書いた一つのアイテムの名があった。

「え、で、でもこれは……アイリさんが居ても二人だけじゃ」
「うん、だから……はむっ!!」
言いながら、やってきた店員がおいていったモンブランを大きく切り取ってパクつくアイリを見て、つられてシリカもチーズケーキを食む。更にもう一口と切り取ったケーキを持ち上げたところで……

私達二人の知り合い、巻き込んじゃおう!」
「え……」
ポロリ、とケーキの欠片が地面に落ちるのと殆ど同時に、「えぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇっっ!!!?」という絶叫が傾き始めた日の下に木霊し、そのあと数分、またしてもシリカは顔を朱くする羽目になった。

────

「そーいうわけで、手伝ってくださいっ!」
「く、ください!」
「おいおい……」
二人の知り合い、テーブルの向こうで呆れた顔で二人を見るリョウに、シリカは緊張の面持ちで上目気味に顔色を窺い、アイリはなぜか楽し気に笑っている。

「つかお前らこのダンジョン、最近高難度でうわさになってるとこだろ……いきなりこれに行くって容赦ねぇなぁ……」
「ご、ごめんなさい……」
「そうなの!ホントは私達二人とリョウの三人で相談しようと思ってたんだけど、でも此処に今七人いるし、みんなで行こうよ!!」
「みんなで、ねぇ……」
「えへへぇ……」
ニへラと笑ってアイリが周りを見回す。

「高難易度だって!面白そう!ボクも行きたい!」
「いいんじゃない?リョウ、協力してあげようよ」
真っ先にユウキが高々と手を挙げ、それに同調するようにアスナも頷く。そこへ、奥からティーポットを乗せて戻ってきたサチが同意した。

「私も行きたいな」
「なんだ、珍しく積極的じゃねぇの」
意外そうにリョウがそう言うと、サチはどこか照れくさそうに微笑んで答える。

「シリカちゃんが頑張ってるし、私も偶には頑張ってみようかな、なんて」
「ふーん?さよけ……オイキリト、お前どうする」
「ん?勿論断る理由はないけど、そう言えば、具体的にはどんなダンジョンなんだ?シリカ」
「あ、はい!」
言われて、あわてたようにシリカはテキストウィンドウを呼び出して、全員に見えるようにギリギリまで巨大化させる。

「場所はこの、サラマンダー領の砂漠地帯にあるピラミッドです。前からとても目立つオブジェクトで侵入する方法が探られてたんですけど、それが最近、この、少し離れた場所に居るNPCに声を掛けて受けられるクエストで、進入用のアイテムが配られるらしくて、つまり……」
「そのクエスト専門のダンジョン、って訳か」
「はい!クエストは1パーティ専用で、そうで無い場合は受けられません、ソロもレイドも禁止……それに……今のところ、クリアしたって情報が無いので報酬はわかりません。ただ、NPCの発言からほぼ確実に短剣だろうっていう話で、それもダンジョンの難易度からして結構なレア装備じゃないかって……噂です」
ここまで言って、シリカは質問の有無を確認するように部屋を見渡す。アスナが手を挙げて問い掛けた。

「そこまで言われるほどの難易度、ってことはもう挑んでるパーティが複数いるの?」
「はい、NPCを最初に発見した人たちも含めて、挑んだって情報は結構出回ってるんですけど、まだクリアしたって情報はないみたいで」
「それだけ沢山パーティが挑んで未だにクリアできてないってことは……」
古代(エンシェント)級は勿論だけど、伝説(レジェンダリィ)級の装備が報酬になってる可能性も十分ある、って訳だよな」
サチのつぶやきを受け取る形で、キリトが結んだ。成程、そんな噂付きの短剣なら、シリカが興味を持つのも無理はない。自分自身でも、未踏破のダンジョンと言う響きに興味を引かれているのを自覚しながら、キリトはリョウを見る。

「どうする?兄貴だって、興味あるんじゃないのか?」
「ま、否定はしねぇけどよ」
肩をすくめて、自分を観るシリカとどこか楽しそうなアイリの顔を見る。一瞬考えて、リョウは頭をガリガリと掻いた。

「……ま、いきなりカロリー高そうなダンジョンってのも、偶には良いか……」
「あ、ありがとうございます!」
「やった!リョウならそう言ってくれると思ってた!!」
「ったく……」
どうにもアイリに乗せられてしまったような気がして釈然としなかったが、とはいえ、自分を強化したいと思い始めたシリカの姿勢は尊重したいところだし、キリトも乗り気になっている。なにより……

「まだ誰もクリアしてないクエストかー、楽しみだね!!」
「うん、でも、情報がほとんどないから慎重に行かないと……pot系は、多めに持っていきましょう」
「私もMPポーション買い足さないとかな……先に、イグシティに寄ってから行く?」
「あ、ダンジョンの近くに、中立域の街があるみたいだよ!ロケーターストーンもある!」
「…………」
「楽しそうだね、三人とも」
すぐ隣から、アイリがささやいた。
少し辟易としながらリョウは小さなため息をつくと、恐らくは勝ち誇ったような笑みを浮かべているであろう彼女の方を極力見ないまま問い返す。

「お前、このお節介の為にわざわざシリカ出汁にして連れてきたのか?」
「まさか!シリカちゃんと仲良くなりたいし、手伝ってあげたいのは私の都合だよ。その為に戦力が必要なのも、ホントの事だしね?リョウが何か思う所あって、それとタイミングよく私達のお願いが一致したとしたら、それは偶然」
「で?たまたまあの三人がお前が待ち合わせ場所に指定した此処に居たのも、キリトがお前が来る直前に此処に来たのも偶然か?」
都合よすぎんだろ、と言いながらキリトの方を見ると、彼は少しニヤッと笑ってシリカと話し始める。

「いやぁ、偶然って怖いねぇ」
「……相変わらず面倒見のよろしいことで」
「……お節介だったかな?」
少しだけ、アイリの声に不安そうな色が混じる。ここまでやって置いて、突然しおらしくなるその様子が計算なのか、それとも本心の不安が漏れた者なのか、少し考えて、しかしリョウは小さく笑った。

「いや、正直、ありがてぇ、とは思うぜ?なんとなくタイミングつかめなかったしな」
「あ、リョウが気を使うなんて珍しい!ホントにこの事については不器用になっちゃってるんだねぇ」
「うるせぇ。つーか。ホントにってなんだお前」
「ふふふっ、教えてあげない、私二人から怒られたくないもん」
その時点で半ばアウィン//杏奈が何か言ったと言っているようなものだ。そう思いながら、リョウはユウキたちに声を掛けに行くアイリを見送る。
彼女がどうしてそこまで自分を気にかけるのか、何故シリカの事までそこまで世話を焼きたがるのか。元々、現実でもVR(こちら)でも、アイリはひょっとすると少し異常なほどに人の世話を焼きたがる節がある。それが何故なのか、リョウが彼女に問い掛けることは無い。
彼女の過去に潜む、親友を守り切ることが出来なかった故の後悔がそうさせているのか、あるいは彼女が元々持って生まれた性質なのか、そこに踏み込む道理も資格も、リョウは持ち合わせていないからだ。ただ……

「ま、そんじゃ攻略と行きますかねぇ」
少なくとも彼女の気遣いが無駄にならない程度には、楽しいダンジョンアタックになることを、リョウはひそかに期待していた。
 
 

 
後書き
はい、いかがだったでしょうか?

と言う訳で、今回はシリカの装備強化の為に
リョウ キリト サチ アスナ ユウキ アイリ シリカ
この七人で、ダンジョンアタックに挑みたいと思います!
ちなみに、このメンバーを決めてくださったのは当選者の方なのですが、その当選者の方がどなたかと申しますと……

ソードアートオンライン 無邪気な暗殺者──Innocent Assassin──
(https://www.akatsuki-novels.com/stories/index/novel_id~480)

の作者でらっしゃいます、なべさん先生だったりします!!

わーわー!!

友人でもある彼の作品を採用するにあたり、出来レースを疑われてしまうことが怖いのですが、今回なべさん先生のダンジョンを採用したのは、彼の作成したダンジョンが「最も今の展開に合致していたから」というのが最大の理由になっています。
その意味は、次回以降に明らかになることでしょう。

また、この場をお借りしまして、当時募集に対して応じてくださり、アイデアを提供して下さったすべての読者、作者の皆様に、心より御礼申し上げます。
ありがとうございました!


ではっ! 
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