万華鏡の連鎖

　アリシア星系第三惑星訪問、女神アウラ・カー実態調査の野望は潰えた。
「自爆命令着信、緊急避難を勧告
　座標セット、ソラー星系第三惑星に転送準備完了」
　ランドック製AI、星船(スター・シップ)制御機構の警報が響く。
（許さぬ!!）
　甲高い《声》が轟き、精神防壁を貫通。
　狡猾な罠の犠牲者が遺した残留思念、《死んでも消えぬ憎悪》を贄に孵った《種子》。
　怨霊を操り悪夢を統べる魔女、ヒプノス渾身の精神攻撃が意識を蝕む。
　表層記憶を闇が覆い、虚無の海に運ぶ。
　次元断層の挟間、種族の遺伝記憶を匿す潜在意識と顕在意識の境に漂着。
（！）
　冷酷非情の精神攻撃、催眠暗示波《ヒュプノ・ウェーブ》を感知。
　咄嗟に弾き、等質の精神波動を練る。
　第二撃を受け止め、叩き返す。
　強靭な精神防壁が潰え、無防備となった《自我》に侵入。
　主導権を掌握の後、表層記憶を読む。

　此処(ここ)は《地球(テラ)》、ソラー星系第三惑星。
　私が乗っ取った男は物理学者、クリフォード・モンタニー博士。
　発明家として蓄財の後、才能が目覚めた。
　催眠暗示能力者《ヒュプノ》であり、精神感応能力《テレパシー》も操る。

　《いま》は地球史上最大の《奇蹟》を演じた男の誕生後、1976年。
　東ブロック最高権力者の野心、金星占領の準備が進行中。
　再び核戦争が勃発、地球潰滅の悪夢を憂う有識者の声に強制力は無い。
　時を無駄にせず、旅客機に乗った。
　主都に着き、警備関係者の思考を読む。
　最高評議会議長の精神を縛り、閣僚も掌握。
　西ブロック情報局長、アラン・Ｄ・マーカント直属の部下達を識別。
　マイクル・フレイト大佐、第三勢力留守部隊指揮官と提携を図る。

　1980年ペリー・ローダン乗艦、『帝国』(インペリウム)級『スターダストⅡ』が現れた。
　星の海を渡る超巨大真珠、宇宙戦艦(スペース・バトルシップ)は直径800m。
　一般大衆も異星人攘夷論は無謀、空理空論と悟り地球防衛の議論が漸く軌道に乗る。