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魔法科高校の劣等生の魔法でISキャラ+etcをおちょくる話

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第八十七話

「なんだ!?」

後方へ大きく飛び退く。

大通りから、路地裏の奥を見る。

先程まで倒れていた幼女が、腕を…その鋭く尖った爪を俺めがけて突き出したのだ。

「橙、認識結界」

『もうやってる』

幼女が、ユラリと立ち上がった。

エイドスを覗こうとすると、霞みがかかったように、あやふやにしか見えない。

「おい、テメェ何者だ?」

情報次元で、何度も霞みを突破しようと試みるが、その都度阻まれる。

術式ではない…筈だ。

だとすれば、必ず式が見える。

怪異にもエイドスはある。

おもしかに然り、レイニーデヴィル然り。

それらを分解しなかったのは、理由がある。

前者は、ひたぎさんが過去と向き合う為に必要だったから。

後者は、レイニーデヴィルを分解すれば、神原の腕諸とも消えるから。

それらのエイドスは見ることが出来た。

それが不可能って事は…

コイツは高位の怪異だって事だ。

「はは」ははは」はははは」はははははははは!」

その幼女は、年相応の高い声で、不相応な笑い声を上げた。

彼は、その笑い方に聞き覚えがあった。

「キスショット…?」

いや…現段階でのキスショットは見た目27くらいのはず…

よもやバタフライエフェクトか?

金色の髪に、金色の瞳。

「ほう?貴様アセロラ姫…キスショットを知ってるのか?」

アセロラ姫?

それは、キスショットがまだ人間だった頃の、語られない、語る者がいない童話…『残酷童話うつくし姫』の頃の名だ。

うつくし姫?

うつくし姫には、その後に続編が存在する。

その噺のタイトルは…『あせろらボナペティ』

そう、そうだ。

居た。

居たのだ。

一人だけ…居るのだ。

語られぬ童話を知りうる、語りうる者が。

語り部になりうる怪異が。

かつて暴虐の王が、死体で築いた城。

その死者達の怨念と恐怖と未練の集合体。

「勘違いしている所悪いがよ、俺様はキスショットじゃねぇ」

その怪異の名は…

「俺様は決死にして必死にして万死の吸血鬼」

そう、この、女の名は…

「「デストピア・ヴィルトゥオーゾ・スーサイドマスター」」

アセロラ姫を殺して、キスショット・アセロラオリオン・ハートアンダーブレードを産んだ者。

高貴故の罪から、アセロラ姫を解き放った者。

「なんだ…俺様の名前を知ってるのか」

「ああ、そうだな」

救いは二つある、まず彼女はグルメで自分が決めた相手しか食わない。

次に彼女は極度に力を失っている。

彼女は、アセロラ姫の血を飲んだ故に、もうそれしか飲まないというような怪異だ。

アセロラ姫はもう居ない。

彼女は無害だ。

「スーサイドマスター。提案だ。
ここは互いに引こう。俺達が戦う理由はない。
そうだろう?」

「ああ…そうだな…確かに、そうだ。
お前が普通の人間ならな」

なに?

「なんでだろうなぁ、俺様の中の何かが、お前を食らえと叫んでる」

クソッ…何が奴の琴線に触れた?

大千本槍部分展開。

両腕が、蒼く輝く装甲に包まれる。

IS大千本槍。

カンヘルの…ユニコーン系列のフレームに、蒼いガーベラテトラの装甲を被せたISだ。

なおモノアイではなくマスクタイプ複合センサーとなっている。

カンヘルの外部装甲には時間がかかるため、このような措置を取っている。

「ほう?ISとかってぇ鎧か?
それは、女しか纏えないってぇ話だが…」

ヨイヤミ展開。

大千本槍の腕ごしに、日本刀型ISブレード<ヨイヤミ>を握る。

「おもしろそうじゃねぇの!」

言い終わる直前、彼女が跳ねた。

「パンツァー!」

彼女の爪と、ヨイヤミが交差する。

「……ただの剣じゃねぇな…それに…貴様魔法使いか?」

「魔法師だ……エクスプロージョン!」

俺を中心に、同心円上にある物を…スーサイドマスターを吹き飛ばす。

路地裏の闇に紛れるスーサイドマスター。

すかさず腕のGNバルカンで追撃するが、全て避けられた。

「街中でなんて物使いやがる」

彼女との距離は10メートルほど。

「吸血鬼相手なんだ。コイツでも足りねぇよ」

腕だけだったのを、今度はフルスキンに変更する。

「闇の刃よ全てを退け、以て万物を断て」

ヨイヤミが、闇を…圧切をまとった。

「TRANS-AM ‼」

両肩、背中、腰のGNドライヴが唸りを上げる。

蒼い装甲にラインが走り、紅く染まる。

「アクセルワールド」

思考が加速する。

無音の世界で、一歩踏み出す。

体が重い。

まるで水中みたいだ。

それでも、魔法と想子操身法とISで、突進しつずける。

視線の先の彼女は、ほんの少しずつしか動いていなかった。

彼女に肉薄して、ヨイヤミを振り下ろす。

「バーチカル・アーク」

まずは右肩を。

返す刀で左肩を。

流れるように両足を。

「バーストアウト」

世界が、音を取り戻す。

「っぐ…!?」

全身に、弾けそうな痛みが走る。

「再生」

さっきの高速移動でかかったGで潰れた内臓が元に戻る。

「TRANS-AM Ended」

機体に走るラインと、紅い輝きが失われた。

「気分はどうだ。デストピア」

「ここまで派手にやられたのは、アセロラ姫以来だ。
もっともその時は自殺だったらしいがな」

目の前の幼女は、四肢を切り落とされ、血に沈んでいた。

ぱちん! と指を鳴らし、デストピアの四肢を燃やす。

傷口が焼ける音と共に塞がった。

「貴様…何のつもりだ?」

「何のつもりだと?」

全身を覆う蒼を、霧散させる。

「こういうつもりさ」

その右の拳を…

ガス!

「ぐっ…はぁ!?」

「怪異相手なら…何したっていいよなぁ!」

side out








路地裏に、肉を殴打する音が響く。

彼が、彼女を殴っていた。

彼女の首を掴み、路地裏の壁に押し付け、その腹を執拗に殴っていた。

下腹部…子宮の真上に、拳が叩き込まれた。

「い"っ!?」

「ほらほらどうしたもっといいこえあげろよデストピア!」

がっ!

「いぎぃ!?」

彼女の顔は苦悶に歪んでいた。

今度は、みぞおちに狙いを定めた。

ガス!

「っ…かはっ!?」

目が大きく見開かれ、ぱくぱくと口が動く。

「ひひ…ひひひ…」

彼の瞳には、狂気が宿り、その口元は裂けるように歪んでいた。

彼は自らの出自を知った。

その生まれが、人とは違うと。

彼は、もはや人間ではない。

近しい者達は、『人間ではない』という事を否定し、お前は人間だと言ってくれるだろう。

だが、彼にはそんな余裕は無かった。

ここ数日、彼は悪夢に魘されていた。

近しい者が、己の出自を知り、一人、また一人と離れて行く。

最後に残った、唯一無二の同族たる姉さえも、自らが転生者であると、離れていく。

彼は、限界だった。

彼は孤独だった。

それに加え、彼はその身に度々己以外を宿していた。

自然と、彼の意識の奥底にはもう一人の彼が生まれていった。

言うなれば、そう、変性意識…シナジュティック・コード。

その隠された意識の本質は…破壊。

彼には世界を滅ぼす力が、比喩ではなく、文字通り世界を破滅させられるだけの力がある。

彼の自重。

変性意識はその反動でもあるのかもしれない。

過度のストレスは、彼の表裏の境界を薄くしていた。

そんな折りにデストピア・ヴィルトゥオーゾ・スーサイドマスターが彼の前に現れた。

彼は、魔法とISを用いてコレを無力化。

四肢を断たれ、抵抗できない彼女を見て……


彼は、爆発した。

目の前に、自らの衝動を押し付ける相手を見つけてしまったのだ。

恋人達に、性欲をぶつける事はあったが、それとは別の…変性意識がもたらす破壊衝動を満たす機会は無かった。

弱者を責め立てるのは、彼の良心が許さなかった。

しかし、今。

目の前の無抵抗な『強者』を、いたぶる機会を、見つけたのだ。

「くひ…ひひ…ひひひ…」

「化物め…!」

「くひ…しょうしんしょうめいばけもののおまえがいうのか?」

ごす!

「っぐぁ…!」

彼女のみぞおちに、彼の拳が突きささる。

彼が、再び弓のように拳を…否、抜き手を引き絞った。

「しゅぺーあ」

彼がドイツ語で『槍』と唱えた。

水音がした。

「ひ…ひひ…ひひひ!」

彼の手が、彼女の肉を裂き、その体内に侵入した。

「ふしのいんしって…かんぞうにあつまるんだったよなぁ?」

「てめぇっ…」

彼の手が彼女の中でうごめく。

みぞおちを貫いた手が、何かをつかんだ。

「みぃつけたぁ…」

ズボッと音と共に拳が…彼女の肝臓を握り締めた手が、体内から出てきた。

ブチブチと血管が千切れ、血がしたたる。

「きゅうけつきのればー…」

彼は、それを、食らった。

ぐちゅり…ぐちゃ…くちゅ…ぐちゅ…

「おいおい…俺様を食っていいのは俺様だけだぜ?」

しかし、彼女の声も聞こえない様子で、彼は肉塊を貪る。

その口元は、血にまみれ、可愛らしい少女のような顔が、かえって恐ろしかった。

やがて、肉塊を全て飲み込んだ彼は、先の穴から手を突っ込み、今度は彼女の下腹部をまさぐった。

「おいおい…それは、流石の俺様もドン引きだぜ?」

次に、彼が引き摺り出したのは、彼女の子宮だった。

ぐちゃぐちゃと音をたて鶏卵より少し小さい塊を咀嚼する。

彼が、塊を飲み込んだ。

再び、彼女を食らおうとした刹那。

「いっ君。流石にこれ以上は見ていられないよ」

彼が、崩れ落ちた。

「やぁ、見ていたよ。デストピアだったかな?」

「ほう?お前さん、確かプロフェッサー・タバネだったか?」

「おお、怪異にも知ってもらえてて光栄だよ」

彼が崩れ落ちたと同時に、地面へ落ちた彼女と束の問答は、長くは続かなかった。

「取り敢えず、君には一時消滅してもらおう」

束の片腕が、物々しくも流麗な装甲に包まれる。

「っは…俺様も地に落ちた物だな…」

「そうだね、暫く灰になって漂え」

束は彼女の首を掴んで、空へ放り投げた。

そこへ…

「さよなら、絶望郷で己が死を奏でし吸血鬼」

装甲を纏った腕からの光が、彼女を消した。

「さぁ、帰ろう。いっ君」

束は、彼を横抱きにして、大通りを歩き始めた。
 
 

 
後書き
これって全年齢で大丈夫かな…? 
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