| 携帯サイト  | 感想  | レビュー  | 縦書きで読む [PDF/明朝]版 / [PDF/ゴシック]版 | 全話表示 | 挿絵表示しない | 誤字脱字報告する | 誤字脱字報告一覧 | 

新訳紅桜篇

作者:Gabriella
しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。 ページ下へ移動
 

19 胃袋を掴んだもん勝ち。

万斉とのおしゃべりが楽しすぎて、操縦士の隊士から到着を伝えるまで、時間がすぎたことに気がつかなかった。

_「万斉様、アンナ様、只今春雨に到着致しました。
いかがなされます?」

_「どうします?万斉殿。
もう向かいますか?」

_「そうだな、参り申そう。」

_「そうですね、では案内をお願いしても宜しいですか?」

_「もちろんでございます。
さ、こちらへ。」


と言って、なんだかんだ複雑な道を行くと、春雨に入るゲートの前まで来た。


_「ゲートオープン」

と言って、開かれた先には、春雨のものたちが、私たちを出迎えてくれていたようだ。

菓子折りを持って、万斉の後ろをつけ、
通っていくルートを記憶する。


ここでもまた、複雑な道を通って、
大広間のような場所に着いた。

_「到着でございます。」

と、恭しく案内された先には、中華風の服を身にまとった50代くらいと、10代後半くらいの男性を先頭に、同じような格好をしたものたちが、列をなして座っていた。



お互いに、自己紹介をすませ、ほぼ同時に席につく。

ささやかですがこれをどうぞ、と言って、
私が菓子折りを差し出す。

_「これは何なに?」

と、神威が私に尋ねる。

_「これは、我々の国に昔から伝わる、『和菓子』というものです。主に小豆と砂糖で作られているので、とえも甘いですが、とても長持ちしやすいお菓子となっています。」

_「へぇ~、侍の国にはそんな面白いものがあるんだネ。ボクもぜひ行ってみたいナ。」

_「ぜひ遊びに来られたらいかがでござるか?
晋助も、楽しみに待っているでござるよ。」

_「じゃあ今度、おじゃまさせてもらおうかナ。
ねぇ、阿伏兎。」

ほぅ、なるほど。
もう一人は、「阿伏兎」というらしい。
覚えておこう。




_「それで?一体なんの用事なの?」

と、神威がお菓子を頬張りながら問う。
桃色の髪を、後ろど三つ編みを垂らしていて、
前髪の上の方に飛び出た触角(のようなもの)がゆらゆら揺れている。

ゆらゆらが気になって、少し見つめていると、
不意に彼と目があった。


_「早速でござるが、我々鬼兵隊のスポンサーをそなたらにお願いしたい、と考えているでござる。」

_「そうなんだ、」

_「そうなんだ、じゃないよ団長~。
なんか言ってくれよ、このスットコドッコイ。」

_「分かったよ、阿伏兎。
で?具体的には何をすればいいのかな?」

_「近く、我々鬼兵隊は船を移動しようと考えている。前の船では引き続き、紅桜の製造を行うつもりである。また、幕府に嗅ぎ付けられたときのために、春雨殿のお力も欲しい、ということでござった。
という訳で、晋助からのお願いで、我々の為に力と船を貸してほしい、とのことでござる。
よい返事を頂けるでござろうか?」

_「私からもお願い申しまする。
どうぞ、宜しくお願い致します。」


ついでに加勢しておいた。



意外なことに、アッサリと承諾を得た。



また、この会合のあとは、宴会が待っていた。
各自何かしら、芸を披露する、とのことだったので、
私は、三味線と唄を披露した。

サブの伴奏は、楽譜を万斉に渡して、
やってもらった。

曲は、「修羅」。
私がもっとも好きな唄の1つである。

 
ページ上へ戻る
ツイートする
 

感想を書く

この話の感想を書きましょう!




 
 
全て感想を見る:感想一覧