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楽園の御業を使う者

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CAST18

 
前書き
ようやく私がハーメルンで書いていたメインSSの訂正が終わりました。
多分明日からISのSSを投稿します。 

 
「えーっと…桜井さん?」

え?なんでこの子がここに?

彼女って深雪さんのガーディアン候補でしょ?

「"水波"でかまいません」

「えーと…じゃぁ、水波さん。どういう事?」

「先程述べた通りです。白夜様をスカウトしたプロダクションが四葉の傘下でしたので」

へ、へー…四葉って芸能関係にも手を出していたのか…

「四葉はほぼ全ての業界に根を張っています。
四葉の情報を秘匿する為には、マスコミや芸能界等の放送関連業界と政界に手を回すのが確実ですから」

「俺って今口に出してた?」

「いえ、不思議そうなお顔をしていらしたので」

ポーカーフェイス大事。

門の前で水波さんに対応していると、背後からエリカの気配がした。

「あれ?誰その子?アンタの彼女?」

「いや…彼女は…」

「はじめまして、千葉エリカ様。
私は桜井水波と申します。
四葉より白夜様のマネージャー兼ガーディアンを仰せ使いました」

おい、今なんて言った?

マネージャー兼ガーディアンだと?

「ガーディアンんんんんん!?」













千葉家 応接室

「つまり貴女は四葉家から遣わされた白夜の護衛…という認識でいいのかしら?」

「はい。相違ございません」







応接室で、母さんと水波さんが話しているのが聞こえる。

俺とエリカはその隣の部屋に居た。

「で、どういう事?」

「どうもこうも…軍令の話はしただろう?」

「ええ、正気を疑ったけどね」

「で、そのプロダクションが四葉の末端企業だったんだと」

「ふーん…で、ガーディアンって何?」

「ボディガードの事だよ」

まぁ、実際は違うけど…

「本当の所は?」

「はぁ…しょうがないな…。
ガーディアンっていうのは、四葉が身内につける究極のボディガードだよ。
普通のボディガードと違う所は、ボディガードは食うために守るけど、ガーディアンは違う。
守る為に食うのさ」

たしか、これで良い筈だ。

「あまり大声では言えない事だが、三十数年前、現四葉家当主が大漢(ダーハン)に拉致られる事件があった。
その反撃の際にダーハンが壊滅し、四葉はアンタッチャブルの名を世界に知らしめた。
その後、再発防止の為に四葉で内々に導入されたのがガーディアンだ」

「聞いた事無いわね…」

「だろうよ。そうそう、言っておくと達也は深雪さんのガーディアンだ。
アイツが居る限り、四葉は滅びんだろうよ」

否、四葉と世界が全滅戦争を始めれば、四葉の前に世界が滅びる。

「よく知ってるわね」

「まぁ…いろいろあるのさ」

今語ったのは全て原作知識だ。

もしかしたら間違いがあるかもしれないけど、概ね合っているだろう。

「で?」

「でっていう?」

「なんでそのガーディアンがアンタに付くのよ?」

ネタをシカトされた挙げ句真面目な話である。

「なんでって…いろいろあるんだよ」

「そのいろいろっていうのは…言えない事?」

今の魔法業界では、歓迎されない話どころか非難の的だろう。

四葉の戦力を増強したも同然だからだ。

片方、つまり四葉深夜を治療した事は言える。

忘却の川の女帝が病弱というのはイツワ・ミオが病弱であるのと同列に語られている。

曰く、強力な魔法にはサイオン以外の代償が必要である照査であると…

だから、そちら関しては問題ないだろう。

「まぁ…レテ・ミストレスの病を治療した…それだけだ」

「レテ・ミストレスを治療したですって!?」

「声がデカいよバカ!隣で話してんだぞ!」

「アンタバカじゃないの!?これ以上四葉が強くなったら師補二十八家や百家が束になっても敵わなくなるのよ!」

とまぁ、エリカが言った事が現在の魔法業界で危惧されている事だ。

こりゃぁ、真夜さんを回復させたなんて言えねぇな…

まぁ、どのみち言わんが。

「大丈夫、こっちから手を出さない限り四葉家は基本的には無害だ」

「そんなの!…………いや…見てきたアンタが言うんだから、そうなのね…」

「少なくとも真夜さんも四葉深夜も、自分から手を出すような人じゃないだろう」

次の瞬間、バタンとドアが開いた。

「ええ、その通りです」

「「!?」」

「あら?そんなに驚いてどうしたの?」

ドアから母さんと水波さんが顔を覗かせる。

「あ、それと~水波ちゃん今日から家に住む事になったわよ」

「「え!?」」

「ガーディアンの義務をアンナ様にご説明した所…」

「こんな可愛い子なら私は大歓迎よ?」

「ちょっ…母さん、それってマズイんじゃ…」

「住み込みの門下生も居るんだから大丈夫と思うのだけれど…」

それはそうだが…

「丈一郎さん達には私が話しておくわ」

そうして、トントン拍子で事は進み、水波さんは家の離れ…つまりは俺達と一つ屋根の下で暮らす事になった。







その晩。

「白夜様」

「どうしたの?水波さん?」

部屋に戻る途中で、呼び止められた。

「白夜様。私の事は名前で、呼び捨てにしてください。
上下関係ははっきりさせたいですので」

あ、あぁ…なる程ね…

「水波。でいいかな?」

「はい、それと、敬語も止めてください。
私はガーディアンで、貴方はマスターなのですから」

マスターねぇ…そもそもミストレスがマスターの女性形だからおかしくはないが…

「わかったよ、水波」

「はい、マスター」

………………………

「この状況を一番面白がってるのはお前じゃないかと思うよ」

「はて?何のことやら」

「あぁ…あと、俺やエリカに対してももう少し砕けても良いと思うぞ」

「善処します」

こうして、我が家に新たな住人が増えた。


浴場

「白夜様、御背中…」

「テメェどっから入ってきた!?」

体を洗っていると、背後に水波がいた。

「エリカ様に案内されました」

「あのバカ!?つーかお前も入ってくんな!
恥ずかしくねーのか!?」

「いえ、見た目が女の子ですので」

ぷちん…

「帰れバカ!」

‘あらゆる物の背中に扉を作る程度の能力'

水波の背中に扉が開き…

"密と疎を操る程度の能力"

術式解体を放つ。

「きゃっ!?」

低圧縮率の術式解体に弾かれた水波が、背後の扉に飲み込まれた。

「ふぅ…これで良し…」

「あれー?水波ちゃんは?」

あぁ…もう…!

"境界を操る程度の能力"

「ちったぁ恥らいやがれ糞姉!」

腕を一振りし、エリカの足元にスキマを開く。

「あ!ちょ!待ちなさ…!」

即座にスキマを閉じた。

「あー…ごくらくぅ~…」

それにしてもガーディアンか…

『また会いましょうね、私の王子様』

「まさか…ね…」


 
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