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楽園の御業を使う者

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CAST16

「ここが九重寺…で合ってるよな相棒?」

「その筈だ」

木製の門の前で、俺達四人は立ち止まっていた。

「入って良いのでしょうか?」

「さぁ?でも閂が外されてるから入っていいと思うわよ」

「エリカの言う通りだが…白夜」

「わかってるって」

中から溢れる殺気…いや闘気…

「取り敢えず深雪さんはここで待機ね」

「わかりました」

「あたしは?」

「相棒、どうする?恐らくこれは試験だが」

「エリカ、君はここは待っていてくれ。今日呼ばれたのは俺と白夜だ」

「OK達也君」

と言う訳で俺と達也が入り、エリカと深雪さんが待機となった。

「なぁ、相棒」

「どうした?」

「これって体術だけで応戦するのか?」

「どうだろうな」

「剛気功くらいは使っていいのか…?」

「恐らくOKだ。お前の気術は魔法とは違うからな」

「じゃ、それで」

"気を使う程度の能力"

門に手を置く。

「じゃ、行くぞ相棒」

ぎぃぃ…と門を開け、俺と達也は寺の敷地に入る。

すると四方八方から、修行僧が襲ってくる。

「やってやろうじゃねぇか!」












「弱くね?」

「油断するな。振りかもしれない」

修行僧達は、弱かった。

数倍の人数差がありながら、俺と達也で制圧出来る程に。

「いやぁ~強いねぇ」

と声が聞こえた。

声がしたのは、寺の中から。

そこには、顔に十字傷がある僧侶がいた。

「"今居る"彼等は仏道修行の一環で武術をやっているだけだよ。
そんな彼等からすれば君達は少々強すぎる」

僧侶は、草履…ではなくサンダルを履いて、寺から出て来た。

「御初にお目にかかります九重八雲殿。
私は千葉白夜と申します」

「四葉達也です」

「ああ、そんなに畏まらなくていいよ。
堅苦しいのはどうも苦手でね…
好きに呼んでくれていいよ。
じゃぁ…やろうか」

一声で、九重八雲の纏う雰囲気が一変する。

何処にでもいそうな中年が、百戦錬磨の戦士に変貌する。

「おい、相棒」

「ああ、いくぞ"相棒"」

俺達二人は、九重八雲に仕掛けた…












「「はぁ…はぁ…」」

「君達本当に中学生かい?」

俺と達也は寺の庭で、修行僧達と同じように大の字で倒れていた。

「おーい!門の所にいる女の子二人!もう来ても大丈夫だよ!」

九重八雲の呼び掛けで、エリカと深雪さんがこちらに歩いて来る。

「派手に負けたわね、白夜」

「無理。体術だけで相手しろとか何この無理ゲー」

九重八雲が、歩いて来た。

「白夜君だったかい?」

「はい」

「次にボクと組手をするときにMMA(マーシャル・マジック・アーツ)を使ってみてくれないかい?」

MMAを?

「君は普段MMAと気功を組み合わせて戦うようだからねぇ。
君は大きく動く時、必ず一度脱力するクセがある。
あれはセルフ・マリオネットの予備動作だ」

あー…そんな癖有ったのか、俺。

「君達を鍛えるよう頼まれたけど、まずは君達本来の"やり方"を確認しないとね」

クルリと振り返った九重八雲は、達也にもアドバイスをした。

的確なアドバイスができる辺り、武術に精通している事が窺える。

「ところで、君達はいいのかい?」

九重八雲はエリカと深雪さんに問い掛けた。

「深雪さんは戦闘できないし、アタシは白夜ほど強くない。
それに今回は白夜と達也君への試験。
そうでしょ?」

と物怖じせずエリカが答えた。

「私も護身術くらいならできるわよ…」

"護身"術程度じゃぁ、九重八雲は倒せないだろうなぁ…

「なるほどねぇ…よくわかってる。
出来れば君も鍛えておきたいんだけどねぇ…
僧として現世との関わりを断とうと思っても、才能有る者を放置しておくのは気が咎めるんだよ」

それは、僧と忍者と武人を併せ持つ九重八雲という人間を表すような言葉だった。

「だけど、もし、もしアタシにも稽古をつけていただけるなら」

「うん。いいよ」

エリカが言い終わる前に、あっさりと許諾した。

「あ、あの、私も見学に来ても宜しいでしょうか?」

と深雪さんが尋ねた。

「構わないよ」

その言葉に深雪さんは目を輝かせた。

シスコンだなぁ…

ところで、どのくらいの頻度で来るべきなのだろうか?

「九重八雲……さん?」

「んー…ま、いいか」

「じゃぁ師匠で」

「いやぁ…僕は君達に忍術は教えないんだけどねぇ…」

「師匠、週何回くらい来ればいいですか?」

「んー?出来れば毎日来て欲しいけど、そうも行かないだろう?」

「ですねぇ」

「当分は決めずに来れる日に来てくれ、そのペース次第で決めるから」

大雑把だなぁ…

とまぁ、そんな風に色々な事を決めて、今日は解散となった。






「エリカはどう思った?」

帰りのキャビネットの中で、エリカに問い掛けた。

「ん?何を?」

「あの御寺だよ」

「んー…何て言うか…不穏、不気味、胡散臭い」

「たしかにねぇ…」

原作でも九重八雲のポジションってはっきりしないし…

"八雲"は胡散臭いという法則でもあるのだろうか?

「まぁ、でも、風間さんが言うんだから大丈夫さ」

その筈だ…原作でも大丈夫だったし…

「くぁ…」

「あら?眠いの?」

「うん」

「寝る?」

「んじゃ、お休み」







起きたら家でエリカに膝枕されてた。

「え?どうやって運んだの?」

「乙女の秘密よ」

あ、そう。
 
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