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とある3年4組の卑怯者

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101 連絡網

 
前書き
 大会の日が訪れ、会場に到着した藤木。そこで本番に向けての事前練習に臨むのだった!!

 アニメ「ちびまる子ちゃん」2期30話「すてきな夏休みの始まり」2期530話「ハナと花輪くんの誕生日」などに登場し、本作では17~20話に登場したメアリーについて、実は最初はここで再登場させる構想はなく、86話の執筆直前に思いつきました。このインスピレーションに自分でもびっくり・・・。 

 
 城ヶ崎は自分の部屋で永沢と太郎の三人でいた。
「たー、たー!」
 太郎は城ヶ崎に懐いていた。
(太郎め・・・。城ヶ崎なんかと仲良くして・・・。コイツ生意気だっていうのを解ってもらいたいね・・・)
 永沢は太郎が城ヶ崎と仲良くしているのが何かと気に食わなかった。しかし、太郎が城ヶ崎のピアノを好いている事もあり、城ヶ崎とは切りたくても切れない縁だった。その時、城ヶ崎の父が部屋に入ってきた。
「姫子!」
「パパ!?どうしたの?」
「今永沢君を探していると思われる人から電話が来た。もしかしたら永沢君が言っていた各務田という男かもしれない。クラスの皆に注意を呼び掛けろ!そして、永沢君について聞かれたら何も答えるなと言うんだ!」
「分かったわ!」
 城ヶ崎は太郎を永沢に返し、部屋を出ていった。
「うわ~ん、うわ~ん!!」
「あ、太郎、泣かないでくれよ!!」
 城ヶ崎は連絡網を利用した。まず長山に電話を回した。そして、笹山に、次にたまえに、とクラスメイトに次々に電話を回した。

 クラスメイト達は連絡網で永沢の行方や存在を知らないふりをして誤魔化すように伝え合った。永沢の両親を別荘に避難させている花輪には使用人の手で間接に別荘にいる花輪に伝える事ができたが、藤木には誰も家にいないようで、誰がかけても繋がらなかった。

 その藤木は大会本番前の練習に精を出していた。ステップを上手く踏み、そしてスピンをし、さらに様々な種類のジャンプをしていた。ただ、相手にばらすと良くない事と、他の参加者にぶつかる恐れも考えて、アクセルからのスパイラルの姿勢という技を見せる事は控えた。
(折角ここまで練習してきた技を披露できないのは辛いけど、どうか成功してくれ・・・。あの技、本当に難しいんだ・・・)
 藤木は失敗を恐れていた。なお、この自分が考えた技は片山には知らせていない。片山の評価はいかなるものなのかも気になった。
(僕は片山さんからいい評価を受けているけど、果たしてあの技、本当に受け入れてもらえるだろうか・・・。それとも卑怯だって文句言われるかな・・・)
 練習終了を呼び掛けられ、藤木はリンクから引き揚げた。

 みどりと堀は堀の父の車によって御殿場へと向かっていた。
(藤木さん、頑張ってください・・・。私がついていますから・・・)
 みどりは藤木の事が心配と共に、健闘を祈っていた。
「吉川さん」
 堀が呼び掛けた。
「な、何でしょうか?」
「藤木君をそこまで応援しているならきっとその想い届くわよ」
「は、はい・・・」
 みどりは堀の言葉でもしかしたら藤木と堀の関係は友達というだけで、己が抱いた猜疑心は勘違いだったのかもしれないと思った。この際、ここで思い切って堀に質問する。
「堀さん、堀さんは、藤木さんの事、好きですか・・・?」
「え・・・!?」
 堀はみどりの質問に動揺してしまった。
「そ、そんな事ないわよ、藤木君は友達だと思っているし、私は吉川さんと藤木君の仲を応援しているわ」
 堀は慌てて誤魔化した。自分も藤木に好意を寄せている事、そして、藤木も彼のクラスメイトの笹山という女子が好きだった事を明かせばみどり悲しんでしまうかもしれないと思い、伏せておく事にした。

 花輪の別荘では、永沢の両親が落ち着かない表情で一夜を過ごしていた。その二人にメアリーが話しかける。
「永沢さん、キット息子さんタチはブジでいます。ソウ信じればきっと助かります!」
「メアリーさん・・・」
「ジツはワタシも、夫がチョウヘイされたことがありました。その時はモウ会えないかと悲しんだこともありましたが、キット帰ってくれると信じていました。そして、サイパンで戦い、無事に帰ってきました・・・」
「そうだったんですか・・・」
「デモその夫はそこで多くの日本人が犠牲になった事に悲しさを覚え、これからは日本と仲良くしていきたいと思い、花輪さんの元で働く事を決意したのです・・・。夫は8年前に亡くなりましたが、そのワタクシに同情してくださった花輪さんの旦那様によってこの別荘で働く事を勧めてくれたのです。夫もサイパンは元々は美しい海と自然のある場所だと言っていました。私はこの海と自然を見てまるでそのサイパンの本来の風景のように思えてくるのです・・・」
 メアリーの話に永沢の両親は涙を流した。

 各務田の所に電話が来た。
「各務田さん、電話で奴の行方を探り出しても知らないと相手にされません」
「誤魔化してんだろ、あの永沢んとこのガキの同級生だ。意味がねえ、押しかけろ!ただし、サツが歩き回り出しているから十分気を付けろよ!!」
「はっ!」
 部下たちは家を出た。

「よ~し、太郎~」
「うわ~ん、うわ、うわ・・・」
 永沢は太郎をあやしていた。
「永沢、太郎君のためにピアノ弾いてあげるわ」
「ああ、すまない、城ヶ崎・・・」
 城ヶ崎はピアノを弾き始めた。太郎は泣き止んだ。
「それにしても僕たちはいつまでこんな生活をしなきゃいけないんだろう・・・?」
 永沢は先の見えない不安に嘆いていた。
「大丈夫よ。パパが警察に連絡したからきっと捕まるわ」
「うん・・・」

 その頃、山根の家に見知らぬ人たちが押し寄せた。
「すみませんが、そちらのお宅に永沢君男って子は泊ってませんかい?」
「え?いいえ、来ていませんが・・・」
 山根の母が応答した。
「ちょっと、あんたら一体何なんだ!?」
 山根の父も現れた。
「いや、こちらに永沢ってとこのガキが隠れているんじゃないかと思いましてね」
「悪いがウチにいるのは息子だけだ!お前らとっとと帰れ!!」
 山根の父は鬼のような表情で客を追い返した。
「ったく、変な奴らだ!ウチには人を泊める余裕がないというのに!」
 山根は奥からその様子を聞いていた。
「強、あの連絡は本当だったみたいだな」
「うん、本当に永沢君の命が危ないんだね・・・!!」
 山根は危機感を感じていた。

 同じように他の家でも似たような事が起きていた。永沢の命が危ないという話は嘘ではなかったと皆分かった。

 笹山の家にも現れた。押しかけた男達に対して笹山の母が応答する。
「失礼しますが、そちらに永沢君男ってガキいますかい?」
「いえ、来ていませんが・・・」
「まあ、隠さないで下さいよ。奥さん」
「本当に来ていません!しつこいと警察呼びますよ!!」
 笹山の母は言い返した。
「そんなに否定するという事はいるんですね・・・」
 男たちは中に入ろうとする。
「やめてください!ちょっと!」
「お前、どうしたんだ!?」
 笹山の父が来た。
「この人たちが永沢君がいないかって聞いてきて、本当にいないか確かめるために家に入ろうとしているのよ!」
「何!?悪いけど、お引き取り下さい。不法侵入罪ですよ!それに永沢君はこの家には来ていません!」
「ほう、じゃあ、確かめさせてください!」
 男達は笹山家を隅々まで探した。部屋やクローゼット、物置、押し入れをくまなく探した。途中、笹山が見知らぬ男に勝手に部屋に入られて「キャア!」と悲鳴をあげた。男達は永沢がいない事が明白になった事で家を出た。
「何だったの!?」
 笹山は両親に聞いた。
「永沢君って子を探している人達だよ」
「永沢君を!?」
(じゃあ、城ヶ崎さんからの連絡は本当だったのね!永沢君、大丈夫かしら?)
 笹山は永沢の安否が気になった。

 城ヶ崎家の飼い犬・ベスの吠え声が聞こえた。チャイムが鳴る。
「どなたですか?」
 城ヶ崎の母が応答した。三人組の男だった。
「そちらに永沢ってガキ泊ってますかい?」
「いいえ、いませんが・・・」
「ほう、そうですか。本当ですかい?」
「いいからお帰り下さい!!」
「じゃあ、確かめさせてくださいよ!」
 男達は持っていた持っていた金属バットやつるはしで城ヶ崎家の門を壊し始めた。その時、赤ん坊の泣き声が聞こえた。
「お宅、赤ん坊はいないはずですが、もしかして永沢の子じゃないんですか?」
「まさか、そんな事ありません!」
「じゃあ、永沢とこのガキがいないか確かめさせてください!」
 門の鍵が壊された。男達は城ヶ崎家に侵入した。
「うわ~ん、うわ~ん!!」
「太郎、おい、そんなに泣いてどうしたんだい!?」
 その時、男が一人入ってきた。
「な、何なのよっ!?」
「いたぞ、永沢のガキが二人とも!」
 男は他の二人を呼んだ。
「ひい!!」
 太郎を抱えた永沢と城ヶ崎は慌てて戸窓を開けた。永沢は慌てて太郎を城ヶ崎に渡す。
「城ヶ崎、太郎を頼む!」
「えっ!?」
「僕はともかく、太郎だけは無事にさせてくれ!」
「永沢はっ!?」
「いいから逃げてくれ!」
「わ、わかったわっ!」
 城ヶ崎は太郎を連れて逃げた。靴を履く余裕がなかったので、素足で庭に出たた。永沢は戸窓を閉めて通さないようにしたが、簡単に開けられ、永沢裏はの方へ逃げた。
「お前はあの女のガキを追え!あいつは俺達で取り押さえる!」
 各務田の部下は一人は太郎と城ヶ崎を追い、あとの二人は永沢を追った。永沢は塀をよじ登ろうとしたが、間に合わず、捕まってしまった。
「放せ!」
「うるせえ!おとなしくしろ!!」
 永沢は取り押さえられ、バットで後頭部を殴られた。痛みでその場を動けなくなってしまった。 
 

 
後書き
次回:「重圧(プレッシャー)
 アマのフィギュアスケートの静岡県大会、本番の時間が遂に訪れた。藤木は出場者の演技を見てプレッシャーを感じてしまい・・・。

 一度消えた恋が蘇る時、物語は始まる・・・!! 
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