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インフィニット・ゲスエロス

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9話→山田太郎の日常③

 
前書き
最近の悩みは更識家に自分の部屋が存在していることと、たまに姉妹の目のハイライトが消えること。(山田太郎の日記より) 

 
俺達三人、教室で各々の席について授業を受けるのだが、そのスタイルは三人とも異なる。

一番真面目なのは千冬。授業中他の事をせず、真面目にノートをとっている。

次に俺。授業の要点だけまとめながら、仕事、主に束の特許とか意匠の登録申請書とか書いたりしている。

最後に束、自分の発明品に関して、自分と読み慣れた俺しか読めない字で書いているか、寝ているか、である。

ちなみに、別に自宅で試験勉強等は全員していない。

この条件だけみると、恐らく殆どの人間は、成績の順番を千冬→俺→束の順だと思うだろう。

実際、教師陣も入学したての頃はそう思っていたらしい。

しかし実際は違う。

最初のテストから今まで、学内外問わず、三人の成績は全員高成績で順位は束→俺→千冬の順である。

授業態度だけみると、この順位は異常であるだろう。

しかし、内情を知っている俺からすればこの結果は分かっていたことであった。

束は大学レベルどころか、世界で並ぶもののいない、正真正銘の天才。

太郎は二週目の人生というチートを使っての成績という、下駄を履いている。

そういった条件を加味すると、どう考えても、千冬が俺たちを抜かすのは難しいのだ。

むしろ、授業だけ受けてこの成績の千冬の優秀さを、個人的には称えたい。

まあ、下らない思考問答はこのくらいにしよう。

朝のホームルームが終わり、授業までの短い間の休憩を謳歌している俺に、近づく陰ひとつ。

「お~は~よ~う~」

「お早うジン、相変わらず可愛いな」

からかいと共に返答すると、後ろから吹き出す声がする。

あのパソコン部の女、確か篝火 ヒカルノ、だったか。アイツまた腐った妄想でも展開してるのか。

篝火ヒカルノ、切れ目の瞳、ツーテール、巨乳美人(重要)という中々レベルの高い
女である。

しかもお遊びの部員たちと違いなかなか頑張っており、この学校のプログラミングを学んでいる生徒の中では一番らしい。

簡潔に言うと、俺と同じ秀才タイプ。

だからか、割りとウマがあい、千冬と束の次くらいには仲良くしている。

まあ、『色んな』意味でな。

だからといって、人をBLの材料にするのは許さないが。

「ヒカルノ、また腐った妄想で俺たちをネタにするのはやめろ」

近づいてきたジンの頭を撫でながらそう言うと、ヒカルノはサムズアップと笑顔で応える。

あの野郎……

性的な復讐を心に誓い(?)ながら、ジンの方に向き合う。

先ほど一夏との話でも出したダチ、神玄徒(ジンクロト)。通称ジン。

彼を一言で表すなら、『合法ショタ』である。

140㎝のスリムな身体に太郎の筋肉質な身体と対照的なプニプニした手足。顔は絶世の美少年という天然のスーパースペック。最初は俺の獲物を取られるかと心配していたのだが……

「……チッ。タロー、あんな汚物の事は気にせず、話そうよ」

そう、ジンはガチで『女嫌い』なのである。しかもかなりのレベルで。

家に遊びにいった時本人から聞いたところ、彼は生まれた直後、病気が見つかったらしい。

で、詳しく調べた所、血液に転移したウイルスだったらしく、血液型を調べた上で、治療を行った。

で、治療をしてジンの体が安定したときに、親父さんに医者が言ったらしい。

貴方と生んだ母親の掛け合わせでは、絶対に出来ない血液型で生まれているのですが、と。

親父さんは理解してしまった。

この事実から導かれる事実は一つ。

……まあ、ストレートに言えばジンは『不義の子』ってやつさ。

まあ、親父さんがかなりの人格者で、遊びに行ったとき、学校での息子の様子を聞いたり、血の繋がらないジンを実の息子として認知したり(これは本人から聞いた)と、救いがない訳じゃない。

実際、ジンはファザコンレベルで親父さんのこと大切にしてるし。

だがまあ、下世話な奴にとっては、ジンの生まれは格好のネタだったらしく、俺と出会った高校入学の段階で既にヤバイレベルの女嫌いになっており、俺のしる限り、乳母の千雨(チサメ)さんとかいう、姉代わりの人以外、まともに女としゃべった事がない。

実の母親?親父からその事実を伝えられ、浮気がばれた時点で逃げたらしいよ。

で、その性格上、なかなか同年代に馴染めずにいたジンを、その性格上、絶対に獲物がかち合わない俺が喜んで拾い、今は無二の友って訳さ。

「ジン、気にするな。アイツの思考が腐っているのは今に始まったことじゃない。で、用事は?」

そう尋ねると、少しだけ間を置いて、ジンが返す。

「パパからの伝言。頼まれたISのパーツ製造の進捗は六割くらい。で、アリーナで模擬戦をした後、『アリス』の様子を見てくれ。だって」

「わかった。束と千冬に声をかけとく」

その後、他愛もない話で1限までの時間を潰した後、太郎は、授業が始まると同時に鞄からバインダーを取り出し、目を通す。

ついに本格始動か。

ISを初期から見てきた身としては感慨深い。

そう、ジンと仲良くなるまで預りしらぬことではあったが、ジンのお父さんは、偶然にも鉄工業やシステム関連事業を包括する大企業の社長で。

流石に量産体制を整えるには製造ラインが必要だが、自分達でやろうとすると、間違いなく学校を辞めて専念しなきゃいけないなと悩んでいたら、親父さんから提案されたのだ。

こちらから一つ、お願いを聞いてくれれば、全面的に協力する、と。

疑わしいというレベルじゃない怪しさだったが、実際に合い、その条件を聞いて納得した。

『息子の女嫌いは私たち親の責任だ。だから少しでも和らげるために、まずは話し相手になる女性型AIを作ってくれないか?』

そう、俺たちのような若造に目をつけたのは、オールラウンダー型天才である束に、息子のためになる商品を作ってもらうためであった。

その女性人格AIこそ、『アリス』である。

作者である束曰く、時間短縮のためにISコアの技術を転用したらしいが、中々優秀で、ジン曰く『世界で最も純粋で、美しく、可憐な乙女』とのこと。

修飾詞つけすぎじゃね、とか突っ込んではいけない。

で、アリーナだが、流石に模擬戦をやるのに毎回宇宙まで行くのは非効率なため、広大な工業地帯の地下にあるがらんどうの土地を戦闘用に借りているのである。

勿論、我がマッドサイエンティスト、束の力を借りて強化した上で、だ。

え、なんで宇宙飛行用のISに戦闘実験が必要か?だって?

それはサイヤ人並の戦闘種族である千冬だけが知っている。

ま、後は国からの援助を得るために、『国防用の兵器に転用可能である』という看板が欲しいのもあるが。

さてと、じゃあ今日中にレポート纏めなきゃな。

彼は何時ものように、レポートにペンを走らせた。
 
 

 
後書き
世界が変わるターニングポイントまで、後、半年。 
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