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とある3年4組の卑怯者

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91 差別化(じぶんらしさ)

 
前書き
 堀と藤木が仲良く話しているのを見て距離が置かれたように感じたみどり。藤木が堀と滑っていてこれまでにない笑顔を見せている所を見てみどりは堀と藤木がお似合いだと思い、哀しさのあまりに泣いてスケート場を出てしまう。その途中で出会ったのは・・・!! 

 
 リリィは母親から買い物を頼まれていた。そして、出掛ける途中で誰かとぶつかった。幸い、買い物をする前だったので、これといった損害はなかった。

 藤木と堀はみどりを探していた。
「トイレにもいなかったわ」
「うん、こっちも休憩所とかギャラリーとか見てきたけど、どこにもいなかったよ」
「もしかしたら、帰っちゃったのかしら・・・?」
(みどりちゃん、僕が堀さんと仲良くしているのを見て嫌われたと思ったのかな?)
 藤木はみどりが心配だった。
(そういえば吉川さんも藤木君が好きなんだっけ・・・?)
 堀もみどりに嫉妬されたと思い不安になった。
(確かに私も藤木君が好きになっちゃったけど・・・)

 みどりはぶつかった相手に驚いた。何しろ西洋人のような少女だったのだから。
「大丈夫よ、買い物をする前だから対したことはないわ」
 その少女は日本語で返した。
「に、日本語喋れるんですか・・・?」
「ええ。今は日本に住んでいるし、ママは日本人だからね」
 少女はみどりの泣き顔を見て心配そうな表情をした。
「あなたも大丈夫なの?凄く悲しい顔してるわ」
「いえ、その・・・」
「向こうに公園があるからそこで落ち着かせた方がいいわ」
 少女はハンカチを差し出した。
「あ、ありがとうございます・・・」
 みどりはその少女の優しさに感謝した。そして少女に公園にあるベンチへと付き添われた。
「私はリリィ。リリィ・莉恵子・ミルウッドよ!パパがイギリス人なの」
 少女が自己紹介をした。
(だから、外国人っぽい顔をしているのね・・・)
「私は吉川みどりと申します」
 みどりも自己紹介をした。
「みどりちゃんって呼んでいい?」
 リリィが聞いた。
「はい、どうぞ」
「みどりちゃんはどうして泣いてたの?」
 みどりは質問を返そうか悩んだ。そしてリリィの目を見た。リリィも転校してきたばかりの頃の堀と同じように思いやりのありそうな目をしている。なら相談してみようとみどりは決めた。
「あの、実は私・・・。好きな人がいるんです。ですが、私の友達もその人が好きみたいで、私が好きな人もその私の友達の方が仲良さそうにしていて、私、その好きな人に嫌われたんじゃないかと思って泣いて、その場所から離れてしまったんです・・・」
「そう・・・」
 リリィにはみどりの立場が花輪と自分が仲良くしている所を見ている藤木に何となく似ているような気がしていた。
「私、どうしたらいいのでしょうか・・・?その人の事を諦めるべきなのでしょうか・・・?」
 みどりはまた泣いてしまう所だった。リリィは「あ、泣かないで」と止めた。
「その人は貴方を嫌いだって言ってたの?」
「いいえ」
「そう・・・、なら諦めるのはまだ早いわ」
「・・・え?」
 みどりは顔を上げた。リリィは自分を好きになってくれていた男子(ふじき)と自分が好きな男子(はなわ)の顔を思い起こしながら話を続ける。
「私もあなたに似た関係の人を見たことがあるわ。その人は私の事が好きなんだけど、私にも他に好きな人がいるの。でも私を好きになってくれているその人の気持ちは嬉しいし、ありがたいと思ってる。そしてその人は私が好きな人にはない自分らしさがあるの。それは私が好きな人はどんな女の子の心も受け入れるけど私を好きな人は好きと決めた人には優しくしてくれるの。私が好きな人はその自分らしさで私を好きになってくれている人もかっこいいって思えるの」
「はあ・・・」
 みどりはリリィの言っていることが少しわからなかった。
「つまりね、貴方にもあるんじゃない?貴方にはあってその友達にはないものが・・・。それで魅力化(アピール)すればその人も振り向くと思うわ」
「私にしかないもの・・・」
 みどりはリリィの言っている意味をようやく理解する事ができた。みどりは堀になくて自分にあるものは何があるのかを考えた。自分らしさ、すなわち自分にしかできない事だ。みどりは自分にできて堀にできない事は何か考えた。そして、ある事を思い出した。堀がココアを買いに行っている間、藤木は自分にまる子にも不幸の手紙を出してしまったと告白した。そして彼女にあったらすまないと言ってくれと要請されたのだ。そして藤木が学校で卑怯者と呼ばれているという事を自分と堀に明かした時、藤木は自分にこんな卑怯者が好きになれるのかと問いかけた。その時、自分はどんな時も藤木の味方でいると言った。いつでも藤木の傍にいると言った。なら、藤木を自分なりに助けてみよう。そしてまる子に会いに行って藤木が物凄く反省していると伝えよう。みどりはそう決心した。
「リリィさん・・・、ありがとうございます。私自分にしかできない事をやってみます!」
「ええ、頑張って、みどりちゃん。またどこかで会えるといいわね」
「はい、では私もこれで失礼します。さようなら」
「うん、バイバイ」
 二人は公園を出て別れた。みどりが好きな人とリリィを好きになっている人が同一人物であるという事をお互い知らぬまま・・・。リリィはみどりに話した事で藤木の事を思い出した。
(私、どうして藤木君の事を思い出したのかしら・・・。もう嫌ったのに・・・)

 笹山はスケート場の前に来ていた。
(藤木君、もしかしてここにいるのかしら・・・?)
 その時、ドアが開いた。藤木だった。笹山は慌てて塀に隠れた。そしてまた覗くと藤木は一人ではなかった。見知らぬ女子といる。しかも、非常に美人だ。
(藤木君・・・、私に嫌われたからってあんな可愛い子と仲良くしてるなんて・・・!!)
 藤木と堀はみどりを探そうと思い、スケート場を出た。
「でもどう探そうか?」
「そうね・・・。道に迷ってるかもしれないけど、もしかしたら家に帰っちゃったのかしら?私吉川さんの家に行ってみるわね」
「そうだな・・・、僕はさくらの家に行ってみるよ。みどりちゃんはそっちに行っていそうな気がするよ」
「それじゃあ、見つかったら連絡してね。また明日、ここで会いましょう」
「うん」
 藤木は堀と別れた。笹山は電柱に隠れてその様子を見ていた。
(藤木君・・・、あの子は誰なの・・・!?)
 笹山は藤木の姿が見えなくなるまでそこに立ち尽くしていた。そして自分から藤木を振ったにも関わらず藤木が遠ざかっていくように思えて涙が止まらなかった。 
 

 
後書き
次回:「使命」
 みどりは藤木の心を解ってもらおうとまる子の家に行っていた。藤木がみどりを迎えに行く為にまる子の家へと訪れる。みどりを見つけ彼女と帰る藤木だが途中、彼らが遭遇した人物は・・・。
 
 一度消えた恋が蘇る時、物語は始まる・・・!!
 
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