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歌集「冬寂月」

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十一




 思い出と

  思ふがゆゑに

   痛みける

 待つもなからむ

     恋し影かな



 もう思い出と…そう思えば思うほど、胸が締め付けられる…。

 もう待つことのない…待つ必要のない…会えない人…。

 それでも恋しく想うのは…また、人ゆえに…。



 閨に聞く

  久方の雨の

   さびしける

 想いそ纏い

    独りかもねむ



 眠ろうと灯りを消せば…久々に降る雨の音が耳につき…。

 その雨音は心に滲み…寂しさを際立たせた…。

 忘れることのないまま…どれ程の夜を過ごすのか…。


 想いを纏うかのように…ただ、今は眠ろう…。



 
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