俺はリーアたんの婚約者
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三話
「明後日泊まりで人間界に行きたいって?それはなぜだい?」
俺は兄上の自室に来ていた。
部屋全体は広く、必要最低限の物しかないためよく言えば綺麗で整頓されているが、悪く言えば質素で色がないという印象。
大きな本棚があり、置いてあるのは難しい本がずらっと並んでいる。
因みに、ユーベルーナは部屋の外で待機している。
「はい。人間界には娯楽や面白いもの、学べるものが沢山あると聞きます。なので、僕もなにか学べるものがあるのではないかと思ったんです!」
「と言ってもなぁ。おいそれと行けるものじゃ……」
最初は渋るような様子だった兄上だが、最後まで言い切ることなく、顎に手をのせ少し俯き途中で台詞は切れた。
少しの間、思考を巡らせていた様子の兄上は顔を上げるとにこやかに言った。
「……いいよ。個人的に用事もあったことを思い出したから一緒にいこうか」
「えっ。ほんとですか!?」
「ああ。父上と母上には僕から言っておくよ。どこの町に行きたいとかあるかい?」
「えっと、駒王町ってところに行ってみたいです!」
「わかった。ホテルも合わせて手配しておこう」
兄上マジ神!まさかこんなに簡単に承諾を得られるとは。優しい兄を持てたことに親に感謝します!
「有難うございます!あと、もうひとついいですか?」
「ああ。いいとも。なんだい?」
「前に話題になっていた猫又姉妹をいずれ僕の眷属にしたいんです。無理ですか?」
「……ほう。なぜそんな考えに至ったんだい?」
優しいにこやかスマイルから一転、真面目な表情になった。
「猫又姉妹の王は控えめにいって眷属に無理な能力向上をさせていたり、よくない研究をしていると父上と母上と兄上が話してましたよね。助けて、可能ならば眷属に迎えたいんです」
「……考えはわかった。でも、できることとできないこともある。それだけは理解してほしいな」
「はい」
俺が返事をすると兄上は柔らかい雰囲気に戻り、にっこりと笑う。
硬い感じの兄上もいいけど、こっちのほうがやはり感じがよくて好きだわ。
「にしても、ライザーがわがままを言ってくるなんて珍しいね。僕は嬉しいよ」
「僕は子供ですよ?わがままくらい言います」
「いやいや。確かに子供だけどわがまま言ったことなんて滅多にないじゃないか」
確かにあまり頼み事は言ったことあるけど、わがままはなかったような?
というよりも、さっきの頼みはわがままなのだろうか?そこら辺わかんないけど、通るならなんでもいいや。
「別に不自由してませんから。人間界に行ったらまたわがまま言いますから覚悟してくださいね」
「ははっ。叶えられるように頑張るよ」
それじゃ僕は仕事があるからと言って机の上にあった書類に目を落とす。
失礼しますと言って俺は、兄上の部屋から退室し、部屋の外にいたユーベルーナに部屋に戻ろうと話し、歩き出す。
「いかがでしたか?」
「うん。人間界には行けそうだ。でも、あそこに行けるかはわからないな」
「さようでございますか。上手くいくといいですね」
「ああ。ちょっと疲れたから昼寝する」
部屋につき、二人で部屋に入る。
俺はベットに入ると、じっと見てきた。
「……抱き枕がほしいから一緒に入らないか?」
「わかりました。失礼します」
ユーベルーナはベッドに入ると俺の頭を胸に苦しくない程度に抱き締めてくる。
いい匂い柔らかい最高です。
───
─────
───────
さて、やってまいりました人間界。駒王町!
ホテルのエレベーターから駒王町に到着した俺たちは荷物を部屋に置いてとりあえず、駅に向かう。
駅に到着するとさすが駅。人混みが凄い。人が多過ぎて人酔いしそう。さらに日光が強くて体がだるい。慣れるまで大変だ。
俺は姫島神社に早速行きたい。
でも、兄上たちがついてくるとなると面倒になる。どうやって怪しまれずに別れられるか。
「僕はこれから色々見に行きたいのですが、兄上はどうされるのですか?」
「本当は観光したいところなんだけど、仕事が入ってしまってね。今日、明日はすまないが、一人で見てくれないか?もちろん少なくとも一人は護衛をつけてもらうけどね」
「わかりました。ユーベルーナ、いこう」
「はい」
やった!まさかの仕事でスムーズに別れられた!
駅で兄上とわかれ、ユーベルーナと二人で姫島神社へのルートを確認しながら観光する。
ユーベルーナの服装は白に近いパステルカラーで露出が少なく清楚をイメージさせるワンピースに、高すぎないヒールを履いている。
なんか未亡人みたいだ。聞いたところ、男性経験はないみたいだが、ただでさえ綺麗で魅力的なのに、恋をしたらさらに魅力的になるのか。みてみたいな。
俺は汚れてもいいように短パンに英語でなんかかかれてる黒のTシャツだ。動きやすいだろ?
俺とユーベルーナは手を繋いで歩いている。これならば俺たちが親子に見えなくもないだろう。
できるならば恋人繋ぎで行きたいところだが、俺の身長が足りなくてできないのだ。悲しいなぁ。
とりあえず、お腹が空いていたので腹ごしらえにサイゼに行き、そのあとは姫島神社に向かう。
姫島神社にもうすぐ到着というところで、複数人で神社をみているやつらを発見した。
あいつらが朱璃を殺すやつらかもしれないがもしかしたら違う可能性もある。様子を見よう。
「少し様子を見よう」
「わかりました。でもここでなにもしないでいるのは私たちも怪しいのでは?」
「……俺を、だっ、抱っこしろ。それで怪しまれても誤魔化せるんじゃないか?」
「うふふ。ライザー様、顔を赤くして可愛いです。それでは、抱っこしますので、失礼します」
俺の身長は発育が遅いせいかユーベルーナの胸辺りまでしかない。普段なら早く伸びろと思っているのだが、今の状況では、発育の遅さに感謝だ。お腹に当たる胸の感触と来たら。やわらけぇ……。
そんなことを思いながら俺を軽々と抱っこして、赤ん坊をあやすようにしながら神社前にいるやつらを監視する。
すると、俺たちが来た方向から一人の男が走ってきた。
神社前のやつらと合流するとなにやら話し込んでいる。
「なにを話しているんだろうな?」
「わかりませんね。もう少し近ければわかりますが、そうすると危ないですし」
少し距離があるため、なにを話しているか聞き取りづらい。話終えたやつらは神社に向かうための階段を上がり始めた。
「あいつら神社に向かいだしたぞ」
「もしかしたら今現在、バラキエルが神社にはいないのでしょうか?」
「その可能性があるな。後をつけよう」
俺たちも階段を上り始める。
結構続く階段を上がっていき、ようやくゴールが見えるとなにやら騒がしい。
女性と男たちが言い争っているのが聞こえてくる。
「ユーベルーナ、俺を降ろせ!ユーベルーナは待機。もし、朱璃と朱乃が危なくなったら不意打ちをかましてやれ」
「はい」
俺の足が地面についた瞬間、階段を駆け上がる。全て駆け上ると、数人の男たちが少女に被さっている女性を殺そうとしていた。
「死ね!」
「俺のくせにタイミングよすぎだろ!ユーベルーナ俺をあいつに向かって投げろ!」
「わ、わかりました。失礼しますっ!」
躊躇することなく、ユーベルーナは俺の首根っこを掴んで指をさしたやつに投擲。
素晴らしいコントロールで俺はとあるゲイ・ボルグのように敵に向かって一直線。見事、外れることなく、俺の頭と女性を殺そうとしていたやつの頭とごっつんこした。
「いってぇぇぇええええっ!」
「いっっっっっ!???!」
「おい!大丈夫か!?なんだこの坊主は!!」
「急に飛んで来たぞ!」
────────
「すまん。呼ばれたから少し出てくる」
数分前。そういって、バラキエルが仕事にいってしまった。
私の夫であるバラキエルは堕天使で、重鎮に身を置いてあるためよく急遽呼び出されることも多々ある。
仕事だし、仕方ないとは思っていても感情の部分では納得できない。
私たちの愛の結晶である朱乃もお父さんと遊びたかったようだけど、仕事に行ってしまったとわかると、遊びたい!と駄々をコネ始めてしまう。
「お父さんはいないけど私と外で遊びましょう?」
「いいの?やったぁ!」
少し残念そうではあったが、それでも遊んでもらえるとわかると小さな体をぴょんぴょんと跳ねて嬉しそうにしてくれた。
朱乃の小さな手で私の手を握ると早く早く外に行こうと急かしてくるため、はいはいと朱乃についていく。
朱乃としばらく外で遊んでいると、なにやら変な人たちがこちらに歩いてきた。
「お前は姫島家の人間か?」
「ええ。そうですが。あなたたちはいったい……?」
「そうか。それはよかった。姫島家は不思議な力を持つと言われている。さらに、バラキエルとの子はそのハイブリッド。後々私たちの脅威になることは明確だ」
「っ!朱乃逃げなさい!」
「させねぇよ」
「きゃあっ!」
男の一人が私の隣で怯えていた朱乃を殺そうとしていたので、急いで逃げるように指示をした。
だが朱乃が動く前に男の一人が私に剣で攻撃してきた。なんとか避けてかすり傷ですんだが、体勢を崩してしまい倒れてしまった。
「お母さん!」
「大丈夫よ朱乃。大丈夫。大丈夫だから……っ!」
私が傷ついたせいだろうか。それとも恐怖のせいか、両方だろうが、泣きながら震えるその体を、安心させるように包み込む。
「私たちが一体なにをしたというんですか!」
「ふん。さっきも言っただろう。姫島家は不思議な力を持つと言われている。お前の夫のバラキエルは堕天使の重鎮。そして、その二人の子どもであるそこのガキは危険視されるほどの力を持つことは、想像に難しくはないだろう?」
「私たちはただ平和に暮らしたいだけなんです!なにもしません!」
「いまはそうかもしれない。だが未来はわからない。もしかしたら、俺たちの脅威になる可能性もある。だから脅威になる前に排除するのだ」
「私はどうなってもいいから……。せめて……せめて、朱乃だけは……っ!」
今まで喋っていた男、おそらくこのリーダーなんだろう。リーダーが周りの男たちに目配せすると武器を取りだし、私たちを始末しようと準備しだした。
「お願い……します……。どうか……」
「お、お母さん……」
これから来る死を覚悟しながら目を瞑り強く朱乃を抱きしめる。なるべく朱乃には男たちの無慈悲な攻撃が当たらないように。
あなた、ごめんなさい。私はもう……。
「いってぇぇぇええええっ!」
「いっっっっっ!???!」
「おい!大丈夫か!?なんだこの坊主は!!」
「急に飛んで来たぞ!」
なにやら男たちが騒がしい。それに痛みもなにも感じない。不思議に思いながら目を開けると、リーダーであろう男と、金髪よ男の子が頭を押さえて悶絶していた。
朱乃も呆気に取られて目の前の状況がわからずしばし呆然としていた。
「いちちち。目の前がちかちかする。頭に強い衝撃が走ると星が見えるってマジだったんだな」
「───っそガキが。そいつから殺せぇぇっ!!」
「っ。ダメ!早く逃げなさいっ!!」
私たちを助けてくれたあの子を守ろうと、一人の男に向かって体当たりをしてバランスを崩させた。
「がっ!このくそアマァッ!!」
「姫島の女ァ!死ね!」
「させねぇっての!これが余の【カイザーフェニックス】」
「「「「ぎゃああああああぁぁぁぁぁ……」」」」
「……え?」
男の子から凄い熱量のフェニックスが飛び出すと、私を殺そうとした男を中心に周りの男たちも燃えて灰になった。
その威力の高さに、みんな呆然としていた。
「さすがバーン様の技。だけど某ポップのように二本の指で引き裂かれないようにしないと……」
「な、なんなんだお前は……」
「……ん?俺の名前はライザー。よろしく。」
男の子はライザーと言うらしい。すごく悪い笑みを浮かべながら答えると、リーダーが震えながら後ずさった。
私から見ても邪悪な笑みだったから、恐怖補正で相当怖い印象は持つわよね。
私は、体当たりして倒した男を見るとどうやら気絶しているようだ。
起こさないように、朱乃の所までこっそり行く。
「さっきは力の調節がうまく行かなくて殺しちまったけど、本来俺は殺しは好きじゃない。だから、投降してくれないか?」
「……俺も命はほしいが、理由があるのでな。どっちにしろ失敗した俺たちは生きることはできないだろう。殺せ」
「……わかった」
ライザーくんはリーダー、気絶している男も、全て焼き付くしていった。
後書き
結構無理やりになっちゃいました。
許してください。
感想、誤字脱字等お待ちしてます。
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