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DOREAM BASEBALL ~ラブライブ~

作者:山神
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決戦開始

翌日

「今日は軽く体を動かして終わらせるぞ。短時間で行くから集中しろよ」
「剛さん」

決勝戦の前日、最後の練習を始めようとしたところで突然花陽が前に出る。

「今日投げ込みをさせてください」

普段の大人しい彼女からそんな積極的な言葉が出たことに驚いてしまう。

「・・・30球までだ」
「ありがとうございます!!」

明日試合のことを考慮してギリギリの球数を提示する。すると他の選手たちも同じように提案してくる。

「私もバッティングがしたいです」
「凛も!!」
「私は守備がしたいです!!」

いつになく積極的な少女たちに困惑しつつもそれを考慮して練習を組むことにした。その間にアップにいった彼女たちを見つめる。

(昨日何かあったのか?試合の後は普通だったが・・・)
















同時刻、UTX学園では・・・

バシィッ

ブルペンで響き渡る捕球音。それを受けている英玲奈は投じた少女に声をかけながら返球すると、彼女はいつになく鋭い目付きで次の投球に入る。

「ツバサ!!明日試合だからそのぐらいにしておけ!!」

監督からの注意が飛んでいてもお構い無しに投げている女子高校野球界の至宝。それを見た西村は何を言っても聞かないと理解したのか、止めるのをやめる。

(元々練習熱心な奴ではなかったが、最終戦を目前にして何か鬼気迫るものを感じるな。今更遅い気もするが・・・)

何が彼女を熱くさせているのかわからないが、気合いが入っているのはいいことだ。彼はそう判断し、ダウンを入念にやらせて対応しようと考え他の選手たちの状態を見て回ることにした。


















決勝戦当日

「「「「「オオ~」」」」」

アキバドームのとやって来たμ's。彼女たちは球場に入る前から圧倒されていた。

「まだ開場まで1時間以上あるのに・・・」
「もう人がこんなに・・・」

この試合を観るために集まった観客たちが、今か今かと開場を待ち望み、長い列を成している。

「ここにいるみんな、にこの華麗なプレーを見に来てくれたのね」
「それはないわ」
「突っ込み早ッ!!」

にこのボケに即座に突っ込む真姫。かなり緊張している彼女たちはガチガチになりながら先頭を歩く剛に付いていっている。

(緊張しているのがヒシヒシと伝わってくるな。試合前までに解れればいいが・・・)

チラッと視線を向けるとやはり表情が固い。準決勝も観客が多かったが、決勝の重苦しい雰囲気も相まってしまい心に余裕がなくなっているようだ。

試合前のアップ。まだ観客がいないから選手たちは比較的元気にアップに取りかかっていた。しかし、運営側が予想以上の観客に対応するべく開場を早め、雪崩れ込むようにスタンドを埋め尽くすと、彼女たちの顔が一転し固くなっていた。

「ニャニャ!!」
「あ!!ごめん凛!!」

キャッチボールも腕が振れずに球がバラけている。一方のUTXはさすが春の王者。普段通りのアップを行っており選手たちの表情にも余裕が見える。

(一辺声をかけて落ち着かせるか。このままじゃ試合にならなくなる)

このままではまともな試合ができないと判断した剛は一度声をかけようと全員を集めようとした。

パシッ

「ごめん、穂乃果ちゃん」
「大丈夫大丈夫!!いい球来てるよ花陽ちゃん!!海未ちゃんもいい動きできてるね!!」
「あ・・・ありがとうございます」

そんな選手たちの中で1人だけいつも通りの明るさを保っている少女がいた。彼女は多くの観客がいることに全く気にした様子がない。

「穂乃果ちゃん、緊張しないの?」
「え?なんで?」
「なんでってアンタ・・・」
「こんなに人がいるのに・・・」

なぜ彼女が平気なのかわからず問いかける一同。すると穂乃果はいつも通りの笑顔で答えた。

「確かにそうだけど、でも穂乃果たちはみんなに音ノ木坂を知ってもらうために野球を始めたんだよ!!だったらもっともっとアピールできるようにいっぱいの人に見てもらいたいじゃん!!」

元々色んな人に自分たちのことを知ってもらうために始めた野球。だからこそ、これだけの観客に見られることはありがたいことだと言う穂乃果。それを聞いて、海未と絵里が吹き出す。

「あ!!なんで2人とも笑うの!?」
「だって・・・ねぇ?」
「はい。まさかそこまで単純だとは・・・」

2人に釣られて他の面々も笑い出す。それを見た剛は、またしても穂乃果のキャプテンとしての資質に驚かされつつベンチへと戻る。

(これでまともに戦えるだろう。問題は今日の打順だが・・・)

ベンチに座りオーダー表とにらめっこ。しばらく考えた彼はゆっくりとペンを動かし始めた。















『ただいまより、全国女子高校野球選手権大会決勝、UTX学園対音ノ木坂学院の試合に先立ちまして、両校の――――』

決勝戦がまもなく始まるその頃、スタンド目指して大急ぎで駆けていく2人の少女がいた。

「雪穂!!早く早く!!」
「待ってよ亜里沙!!」

その2人とは絵里の妹である亜里沙と穂乃果の妹である雪穂。2人はスタンドに着くと、辺り一面人だらけのその場に感嘆の声を上げる。

「うわぁ・・・もうほとんど席埋まっちゃってるよ」
「席空いてるかな?」

辺りをキョロキョロしながら空いている席を探していると、運良く並んで空いている席を発見する。

「隣空いてますか?」
「あぁ、空いてるよ」

空いてる席の隣に座っている青年に確認してからそこに腰かける。2人が座ると、UTX学園のシートノックに合わせてスターティングメンバーが発表されていた。

「あ!!剛さんだ!!」

シートノックを見るでもなく亜里沙は自身の憧れの人物である剛の姿を見つけるとそちらに手を振る。だが彼はそれに気付かず穂乃果や絵里に指示を出しているようだった。

「あれ?君も剛の知り合いかい?」
「はい!!以前病院で・・・」

そこまで言って、亜里沙は固まった。その青年の顔に見覚えがあった彼女は、思わず声を出してビックリしていた。
















「打順を多少組み替えることはあるが、まさか決勝でそれをやるとは・・・」

両校のスターティングメンバーが発表され試合までもうしばらくとなった頃、スコアボードに映し出される相手のオーダーを見てそう呟く。

先攻 UTX学園

1番 キャッチャー 統堂
2番 セカンド 越智
3番 ピッチャー 綺羅
4番 ファースト 優木
5番 センター 鈴木
6番 ショート 加藤
7番 レフト 木村
8番 ライト 長沼
9番 サード 高橋

後攻 音ノ木坂学院

1番 キャッチャー 穂乃果
2番 セカンド 凛
3番 レフト 真姫
4番 ショート 絵里
5番 サード にこ
6番 センター 希
7番 ライト 海未
8番 ファースト ことり
9番 ピッチャー 花陽

「統堂を1番・・・うちに対抗したのか、はたまた何か意図があるのか」

相手の4番を担っていた英玲奈が1番、3番のあんじゅが4番に入りツバサが3番に入るオーダー。このオーダーに音ノ木坂は困惑しているが、UTXはどこ吹く風である。

「監督、私のワガママを聞いてもらってありがとうございます」

UTXベンチで西村に頭を下げるツバサ。それに仲間たちは驚いてざわついていた。

「別にいい。それに、お前ならいつかそう言うとは思ってた」

ツバサが孔明を尊敬していることは西村も知っている。彼は最高学年になると3番でエースを担い二刀流として甲子園を沸かせた。彼女が彼と同じように3番でエースを希望するのは目に見えてわかっていた。

「だが安心していい。俺は3番打者最強説なんか信じていない。先頭には英玲奈、4番にはあんじゅがいる。お前はいつも通り楽に打っていいぞ」
「・・・わかりました」

監督の物言いにイラッとしつつもそれを堪えベンチに座る。彼女と仲の良い英玲奈とあんじゅは声をかけようか迷ったが、彼女の並々ならぬ威圧感に負け、声をかけるのをやめる。

「整列!!」

そしてほどなくして試合開始のための整列に入る。向き合った両校のキャプテンは、再戦を誓い合った関東大会の決勝戦を思い出し笑みを浮かべていた。

「始めます」
「「「「「お願いします!!」」」」」

礼をしてフィールドに散っていく選手たち。それに観客から拍手が送られると、マウンドに登った気弱そうな少女は投球練習を開始する。

「球種はストレート、スライダー、ナックル、スプリット。分かりやすくいえばツバサの劣化版とでも言おうか?どうだ?打つイメージはできたか?」

相手投手の投げている姿を確認しつつ西村の話にうなずく。円陣が解けると今大会初めて先頭として打席に立つ少女が現れる。

『1回の表、UTX学園の攻撃は、1番、キャッチャー統堂さん』

チームのキャプテンであり軸と言えるスラッガー統堂英玲奈。いきなりの強打者登場にバッテリーは目の色を変えた。



 
 

 
後書き
いかがだったでしょうか。
いよいよ決勝開始です。
構想はもうできてるけど、どの程度の長さで進むかはわからない感じです。年内に終わるかな? 
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