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ハルケギニアの電気工事

作者:東風
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第12話:材料探しはリゾート探し!?(その2)

 
前書き
出張中のため、11/2にアップできませんでした。
遅れて申し訳ありません。
まだ、出張中なのですが、頑張って第12部をアップします。
よろしくお願いします!! 

 
 お早うございます。アルバートです。

 領地改革の第1弾となる、『保健衛生局』立ち上げに必要なゴムや椰子の木などの資源を確保するために、遠路はるばる(2時間半位ですが……)南の海まで『ヴァルファーレ』に乗って飛んできたました。たどり着いたところはハワイも顔負けのリゾート地。思わずこんな風光明媚な所に別荘が欲しいと思ってしまいましたよ。だって、大人になって彼女が出来た時、ここが家の別荘だよなんて言って連れてきて、二人きりで過ごす事が出来るなんて夢のような話でしょう?
 地図を見ても、この辺は何処の領土か判りません。原作中の知識ではガリアの南の方にロマリアやサハラがあったような記憶があるので、もしかしたらサハラかもしれませんね。この海を西の方に行くとロマリアがあるはずです。勝手にゲルマニアの別荘を作るわけにはいきませんが、いつか何とかして作りたいと思います。表だっては異端にされますから、内緒でエルフと話し合って共同で開発できない物でしょうか。

 ………閑話休題………

 さて、此処までは、特に問題もなく順調な飛行でした。高空を飛んできた為か幻獣とかにも会うことはありませんでしたし、天候も良好で乱気流もなかったようです。
 この辺は地球で言えば地中海の東方の北岸といった所でしょうか。気温もかなり暑くなってきましたが、椰子の木やゴムの木は熱帯地方とかに生えているはずですからもう少し南に行かなければならないでしょう。この先は海ですからこのあたりで小休止しようと思って着陸したわけです。
 降りたついでに、少し身体を動かしてほぐしておきます。『ヴァルファーレ』の乗り心地は文句がない所ですが、ずっと座席に座ってベルトで固定されていると、エコノミー症候群になるかもしれません。動ける時に動いて血行をよくしておくことが健康の第一歩ですよ。
 もってきた水を飲んで、すこしビスケットを囓っておきます。お昼までにはまだ1時間位あるでしょうから、昼休みはもう少し飛んでから考えましょう。

「『ヴァルファーレ』、あと2時間位飛んでみて、陸地があったらそこで休みましょう。もう少し頑張って下さいね。」

[我なら、まだまだ大丈夫だぞえ。安心して我の背に乗っておるが良い。]

「お願いします。それでは行きましょう。」
 
 再度、『ヴァルファーレ』の背中に乗り込んで、座席に身体を固定します。合図すると『ヴァルファーレ』は一気に5000メールまで上昇して、また南に向かって飛び始めました。
 今度は下に見えるのは海ばかりです。時々小さな島が見えましたが、それもじきに見えなくなりました。周りは空の青と海の青で囲まれて、上と下の感覚がなくなりそうです。

 今度は1時間ちょっと飛んで、前の方に陸地が見えてきました。あれが地球で言うアフリカ大陸でしょうか?ハルケギニアではなんというのでしたっけ?

 小休止した時と同じ要領で『ヴァルファーレ』に安全を確認して貰い、ゆっくりと降下していきます。地上に近づくにつれて汗が噴き出してきました。えらく暑いですね。
 合計約4時間の移動ですから大体3000リーグ位でしょうか。此処はもう熱帯に入っているようです。着陸するとすぐに『ヴァルファーレ』から降りて、上着を脱ぎましたが、それでも暑いので側の木陰に飛び込みました。
 海岸に着陸したのですが、それほど湿度が高くないようで、木陰に入れば結構涼しく感じます。
 目の前は一面透き通るようなエメラルドグリーンの海です。先ほど休憩で着陸したところと、あまり変わらない景色に見えますが、陸地側を見ると海岸線に沿って延々と背の高い木が茂っています。どうやら椰子の木のようですね。

 この辺りならもう熱帯に入っているでしょう。暑さから考えて椰子の木が生えていても不思議ではないです。しっかりと実もなっているし。問題は誰のものかという事だけですが、木を伐採に来たのではないのですから、少し位実を貰っても大丈夫でしょう。目くじらを立てて怒るような事ではないと希望的観測で勝手に自己完結します。それでも、あまり目立たないようにはしておきますが。

 差し当たって、この調査の目的の一つである椰子の木を見つけられたのは良かったです。この分なら、少し探すだけでゴムの木も見つけられるのではないでしょうか。ただ、暑さが半端じゃないので熱中症に注意が必要ですね。水分と塩分の補給が大切です。

 幸い、『ヴァルファーレ』の凄い知覚でも、感じる事の出来る範囲に人は居ないそうですから、ここを調査活動のベースキャンプにしましょう。そうと決まれば、椰子の木陰に砂を使って練金で小さな物置を作ります。風通しを考えて作りましたから、この中に『ヴァルファーレ』から下ろした荷物を入れておきましょう。

「『ヴァルファーレ』、近くに人は居ないという事ですから、この場所をベースキャンプにします。ところで人は居ないという事だけど、他の動物なんかはどうですか?危険な動物とかが近くに居るようなら、ベースキャンプの守りも必要になるのだけど。それにゴムの木を探す為に林の中に入る時も準備が必要になると思いますから確認してもらえますか?」

[そうじゃな。今のところ、主にとって危険となるような獣の類は近くにはおらぬな。我に感じる事の出来る範囲では危険と思われる獣は、南東の方向に10リーグ以上離れた所に感じるだけじゃ。こちらに近づいてきて危なくなるようなら我が注意するから、調査とやらを始めても大丈夫じゃぞ。]

「有り難うございます。お昼ごはんを食べてから少し歩き回ってみます。」

 荷物の中からアニーに作って貰ったサンドイッチを出します。ボリュームがあってとても美味しいサンドイッチです。椰子の木陰に座り込んで、水筒の水を飲みながらサンドイッチを食べると言うのも良いものですね。
 お腹一杯になったので残りは包んで固定化の魔法を掛けておきます。さっき作った貯蔵庫にしまいます。この暑さですからほおって置いたらすぐに腐ってしまいますからね。
 その後、横になって腕枕で食休みします。良い風が吹いていて気持ちが良いですよ。

 1時間位たって、昼休みも終了です。

「『ヴァルファーレ』、調査に出かけますね。監視の方を宜しくお願いします。」

 そう言って、ベースキャンプからまっすぐ南に向かって椰子の林に入っていきます。それほど下生えの草がないのは海の側なので土地に塩が含まれているからでしょうか?

 しばらく周りの木の様子を確認しながら進んでいくと、下草なども増えてきました。そのまま進んで、200メール位来た所で円形に木の生えていない広場に出ました。直径30メール位でしょうか。中心に小さな池が出来ています。池からは南西の方に細い川が流れ出ていますが、流れ込む川がないのは池の中に湧き水があるのでしょう。水はとても綺麗で飲み水にも良さそうです。
 この辺まで来ると色々な木が生えてきていて、大きな葉っぱの木にツタが絡まったりしている様子はごく普通の熱帯の森ですね。地中の塩分も充分少なくなっているようです。時々鳥の声が聞こえたり、蟻などの昆虫も見ることが出来ます。

 剣を抜いて今出てきた所に生えている木に、目印の傷を付けておきます。大体こちら側が北になりますから「N」と刻みました。アルファベットならこの世界の人には読めないでしょうから、簡単な暗号の代わりになります。呼べば『ヴァルファーレ』が来てくれるでしょうが、主が迷子になって使い魔に助けられるのでは誉められた事ではないので用心に超した事はないでしょう。
 空き地の周りをぐるっと調べます。南西から南側の方に川があるせいでしょうか少し湿気があるようです。まず南側の木に印を付けて、更に進む事にしました。

 頭上に茂る木の葉の密度が増して薄暗くなってきた頃、ようやく生前に百科事典やテレビなどで見たことのあるゴムの木を見つけました。良い勘をしていますね。思わず自画自賛してしまいます。
 念のために持ってきておいた木の容器を、紐で幹に括り付け、その容器の少し上辺りに剣を使って木の幹に傷を付けます。しばらく見ていると傷から樹液がしみ出してきました。このまま置いておけばしみ出した樹液が木の容器にたまる事でしょう。
 此処までで、大体1時間位掛かりました。あと2時間位は調査を続けられそうです。

 調査初日に目的の木を両方見つけることが出来たのはかなりラッキーでしたが、ゴムの木の方はまだ1本しか見つかっていないので、もう少し探してみないといけませんね。さっき設置した樹液の採集容器はあのままにしておけば、ある程度の量の樹液を採集できるでしょうから、最悪の場合、捕れた樹液をサンプルに、練金で作ることも出来ます。しかし、もっと沢山のゴムの樹液があれば、より効率的にゴムを作ることが出来ますので、できるだけ沢山見つけておきたいものです。

 持ってきた羊皮紙にこの辺の地図を書いてみます。ベースキャンプを×印で書き込んで、ゴムの木を見つけた位置を此処まで歩いてきた経路と一緒に書き込みました。大体ベースキャンプから真南の方にゴムの木があった事になります。きっと近くを探せば、他にも見つける事が出来そうな気がするので、周囲の探索をしてみましょう。

 今度は、別の羊皮紙にゴムの木を中心とした地図を書いていきます。進んできた方向と太陽の位置を確認して南の方角を決めると、地図に方位の印を書き込み、それを基にまず東の方から探し始めました。

 出来るだけ同じ歩幅になるように気をつけながら、まっすぐ10歩歩いてそこに立つ木に印を付けます。東ですから「E1」にしました。その木を中心に探してみますが見つけられませんでした。歩いてきた方を確認して、また東に10歩移動します。この方法で東の方に100歩の距離を移動しながら探しました。大体700メール位でしょう。

 この結果、東の方にはゴムの木はありませんでしたので、一度元のゴムの木まで戻ります。地図には東の方向に10歩毎の位置に「E1」から「E10」までのポイントが記入されています。
 同じ事を南と西に向かってやってみました。地図上には「S1」から「S10」と「W1」から「W10」のポイントが記入されたわけですが、今のところ他のゴムの木は見つかっていません。
 この探索で2時間ちょっとの時間を使いました。流石に疲れてきたのでこの辺でベースキャンプに戻りましょう。

 ベースキャンプに戻ると、『ヴァルファーレ』が頭を翼の中に入れて丸くなって寝ていました。初めて見ましたが大きな鶏が寝ている感じでしょうか?色も羽毛の感じも違うのですが、なぜか鶏のイメージが出てきた事に驚いています。僕が林から出てきて服のほこりを払っていると『ヴァルファーレ』が動きだしました。起きたようですね。

[ようやく戻ってきたか。それで目的のものは見つかったのかえ?]

「やっとゴムの木を1本見つけましたが、他にはまだ見つかりません。でも、大分時間もたったので今日はこの辺で調査は止めます。そろそろ野宿の準備をしないといけませんからね。」

 そう言って、周りの砂を使い練金で海の方以外の3方向に高さ1.5メールの壁を作ります。それからフライで飛んで椰子の葉を何枚か取り壁の上に屋根になるように乗せました。壁は林の方からいきなり襲われないようにするためで、屋根は夜露を防ぐためです。気温は暑い位なので風邪を引くような心配はありませんが、これ位の備えは用心というものでしょう。

「『ヴァルファーレ』は、一度戻った方が良いですか?何か食べたり休んだりするのでしたら、僕も今日はここで休みますので戻っても良いですよ。」

[いや、我は3、4日位戻らなくても大丈夫じゃ。食べるものも別にいらないしの。第一、主を一人にするわけにもいかないので我も此処で休むとしよう。」

「そうですか。有り難うございます。面倒を掛けますがよろしくお願いします。」

 そのまま、小屋の前でしばらく海を見つめていました。こんなにゆっくり海を見るなんて何時以来でしょう。周りに人の話し声のしない、波の音だけの空間は身体が自然の中に溶けていくような感じがします。
 なぜか溜息が出て、ふと周りを見渡し『ヴァルファーレ』が僕を見つめている事に気付きました。

[どうしたのじゃ?ボーとしていたが疲れたのかえ?]

「こんなに静かな時間を過ごすのはどれ位ぶりかと考えていました。屋敷にいると何時も側に人が居て、一人になる事がないので少し人に疲れていたのかもしれませんね。」

 こんな時間を過ごすのも良いものですが、現実的に考えればそろそろ夕食の用意に掛かるべきでしょう。
 フライで飛んで側の椰子の木から実を2個取りました。
 その後、石を拾ってきて竈を作り、そこに枯れた木の枝なんか集めて火を点けます。火メイジの魔法は使えませんが、DQのメラを弱く掛ける事でライターの代わりになります。
 少しずつくべる木を大きくしてしっかりした火にすると、持ってきた干し肉やパンを出して木の枝にさして焼きます。チーズの塊を薄く切って焼いたパンの上に載せるとほどよくチーズが溶けて良い感じになります。それにあぶった干し肉を載せてできあがりです。これにお昼の残りのサンドイッチを出して、こんなものですね。

 砂を練金して鉈を作って椰子の実を割り、中のジュースを飲んでみると程よい甘さで喉の渇きがすっと引きます。
 パンもとてもおいしくて、満足の出来る夕食になりました。最後にジュースを飲み終わった椰子の実を二つに割って、中の果肉を食べました。デザートになってとっても美味しかったです。

 いつの間にか暗くなった空に、こぼれるような星が輝いて綺麗です。知っている星座がまったくないのは、地球ではないという証拠でしょうね。

 たき火に大きな流木をくべて、荷物から引っ張り出した毛布をかぶります。今日は満天の星の下で就寝です。

「『ヴァルファーレ』お休みなさい。」 
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