| 携帯サイト  | 感想  | レビュー  | 縦書きで読む [PDF/明朝]版 / [PDF/ゴシック]版 | 全話表示 | 挿絵表示しない | 誤字脱字報告する | 誤字脱字報告一覧 | 

とある3年4組の卑怯者

しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。 ページ下へ移動
 

30 泣虫

 
前書き
 ごめんなさい、今回も藤木の出番無しです・・・。 

 
 夜、みどりは自宅の部屋にて今までの自分を振り返っていた。
(私は泣き虫・・・。そういえばそうだったわ・・・。まる子さんの家に遊びに行った時もいつも何かあると私は泣いていた・・・)
 思えば自分はゲームなどをやる時に負けてしまうとすぐに泣いていた。生まれつきそうだった。幼稚園児の頃、それですぐに泣く為、遊んでくれる友達がいなかった。その時はとある一人の気の強い女子のみが唯一自分に接してくれた。だが、小学校へ進学する時は別々の小学校へ通うことになり、その女子との交流も殆どなくなってしまった。それからは自分一人の力で友達を作る事もままならず、祖父の友人というさくら家の孫であるまる子やその姉に世話になる事がある程度だった。
(そうよね・・・。私は折角あの人と友達になれたのだから、泣いてばかりいてはダメだわ・・・。それでは学校が詰まらくなるし、堀さんも私から離れてしまう・・・!!)
 みどりは泣き虫を治したいという思いが強まった。そして窓から夜空を見る。
(この方に堀さんの家があるわ・・・。あの人ともっと友達になりたい・・・!!そして、私はまる子さんや藤木さんがいる学校のように学校が楽しいと思えるようになりたい・・・!!)

 みどりは学校へ走って向かっていた。登校時刻まで余裕はあったので遅刻しそうで急ぐためではない。早く堀と会いたい為であった。今までできなかった学校の友達が初めてできた彼女にとっては、これまでの孤独な学校生活を終わらせ、楽しい学校生活に変わる瞬間だった。

 みどりは学校に到着した。自分の教室がある階がいつもより賑やかだった。そこに堀がいた。他のクラスの生徒に囲まれており、もはや有名な女優が来たかのような人気ぶりだった。転校生の話はあっという間に他のクラスにまで及んでいたのだ。
(堀さん、すごい人気・・・、それに比べて私は・・・)
 みどりは除け者のような扱いだった自分とあれだけちやほやされる堀を比較して、月とすっぽんだと思った。みどりは黙って通り過ぎようとする。しかし、堀が呼ぶ。
「あ、吉川さん、おはよう」
「え、お、おはようございます、堀さん・・・」
 みどりは人がいる中でも自分に話しかけてくれた堀に心の中で感謝した。
(堀さんが私に挨拶してくれた・・・。ありがとうございます・・・)
 
 みどりが教室に入っていく。そして、堀と喋っていた1組の男子が彼女に言う。
「堀、あの吉川にも挨拶すんだね」
「え、ええ、友達だから」
「あいつはすぐ泣くとてもだりー奴だから関わんない方がいいぜ」
「え、でも、同じクラスだし、私は皆と仲良くなりたいの」
 その時、同じ1組の別の男子が言う。
「ウエッ、やめとけ、あんな問題児なんかかと仲良くすんのは!近寄んない方がいいぞ!」
「でも、隣の席だし・・・」
「ウエッ、何だって!?可哀想だね!席替わってもらった方がいいぞ!まあ、替わってくれる奴もいないか」
「そうだよな、あいつ友達もいないし、泣きまくって嫌われてるからな」
 堀はこのみどりの悪口を言う男子達が何かと気に食わなかった。

 休み時間、みどりは堀に話しかけられた。
「吉川さん、今度の日曜、私の家に遊びに来ない?」
「え、いいんですか?」
「ええ、もちろん!」
「あ、ありがとうございます!」
 みどりは堀に誘われたことが嬉しくてたまらなかった。
「あの、他の子も誘って大丈夫?」
 堀が聞いた。
「え、ええ、大丈夫です」
 みどりは堀と二人でいたいと思ったが、それでは我が儘だと思って承諾した。
「大丈夫よ、一緒に皆とも仲良くなろうね」
「は、はい・・・」
 みどりは何だか堀に救われているようで転校してきたばかりの彼女にありがたい気持ちもあったが、同時に自分のことで負担をかけさせて申し訳ないとも思っていた。堀は前の席にいる男子・泉野栄示(いずみのえいじ)とその隣に座る女子・矢部清子(やべきよこ)に声をかけた。
「あの、泉野君、矢部さん、今度の日曜予定ある?」
「特にないけど?」
 泉野が答えた。
「私もないわ」
「なら私の家に遊びに来ない?私もっとみんなと仲良くなりたいの」
「いいのかい?ならそうしようかな」
「私もそうするわ!」
「ありがとう!」
「そんな、礼を言うのは誘われた私たちの方よ」
 二人と談笑している堀を見てみどりは自分も皆と馴染めるようにしたいと思っていた。その後も堀はクラスメイトを誘おうと話しかけていた。

 みどりは堀と共に帰っていた。するとどこかしらから声が聞こえた。
「なんだよ、あの問題児と帰ってんのかよ」
「ウエッ、あんなのキモいから近づかない方がいいのによ」
 朝、堀にみどりの事を忠告していた1組の男子達だった。みどりは泣きそうになった。それを堀が慰めようとする。
「吉川さん、泣かないで。私は吉川さんの事そんな風に思っていないから、ね?」
「は、はい・・・」
 みどりは何とか堪えようとした。そして昨夜自分の目標を思い出す。
(そうよね。私は泣き虫を治すんだったわ・・・!!)
 みどりはこの機にクラスの皆に迷惑をかけないようにしようと決めたのであった。
「堀さん、今度の日曜、楽しみにしています!」
「ありがとう。私もよ」
「はい、さようなら」
 みどりは今度の日曜を楽しみにしながら堀と別れた。  
 

 
後書き
次回:「友達(ほりこずえ)
 堀から家へ遊びに来ないかと誘われたみどり。クラスメイトもいる中で、みどりもその輪の中に溶け込むことはできるのか・・・。

 一度消えた恋が蘇る時、物語は始まる・・・!! 
ページ上へ戻る
ツイートする
 

感想を書く

この話の感想を書きましょう!




 
 
全て感想を見る:感想一覧