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蛇の血をひく日向の子とやりたい放題の剣客たち

作者:笠福京世
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第01話 初めての神様転生

 どうやら僕は死んだらしい。未だに死んだという実感はわかないけど――。

 あたりいちめんが、ただただ真っ白いだけの空間。現実にはありえないであろう景色。

 独り佇んでいる隣で三人組のオッサンたちがやたらと騒がしく盛り上がっている。

「転生かー」「どうするん?」「う~ん」

「好きなキャラとかおらんの?」「魂魄妖夢!」

「東方の?」「そうそう!」

「というか、妖夢になって剣客として活躍したい!」

「でも幻想郷ってチートなキャラ多すぎへん?」「そうなんだよな!」

「剣客としてかァ……他はるろうに剣心とか?」「好きな作品だけど微妙」

「そういえば北海道編」「読めずに死んだな……」

「ま、気を取り直して」「そうそう。転生先決めようぜ」

 コミュ障の僕は見知らぬ人たちの会話に割り込むことができず、手渡された用紙を見つめる。
 そこには希望する転生世界や希望する特典といった項目が書かれている。

 どうしてこうなった……。

 アラートも鳴ってたし北国のミサイルマンの仕業かと思ってたんだけど、
 この大量虐殺は隣の三人組のオッサンたち曰くテンプレにある神様みたいな上位存在の手違いらしい。
 ネットの二次小説ではよくあることだと諭されたが、ネットの二次小説とか読まないから分からない。

 最初はこの空間にも割りと大勢の人たちがいたけど、お役所仕事のような流れ作業で次々と人影が消えている。

 これからどうなるんだ?

 僕は独りで悩んでいるというのに隣のオッサンたちはさっきからホントに五月蠅い。

「剣の戦いもええけどオレは格闘技の方が好きやな」

「それならグラップラー刃牙の世界に転生とか?」

「いや、アノ世界に転生するのはどうなん」

「俺は遠慮するわ」

「男なら圓明流とか名乗ってみたいやけど、アレは殆ど現実世界やんな」

「やっぱり折角だから少しハチャメチャな異世界の方が楽しめると思うよ」

 何度か似たようなシチュエーションを経験したことがあるのか?
 ヘンに場馴れしてるあんた達とは違ってボクは転生とか初めてなんだよ。

 年上のオッサンたちにツッコみたくって仕方ないけどコミュ障な僕は大人しく黙る。

 でも、言ってるように、どうせ生まれ変わるなら現実に近い世界より異世界の方が楽しそうだ。
 僕はコミュ障でひきこもってたから運動とか全然だったし、バトル漫画のキャラクターとかは憧れるな。

 剣に、格闘に、異能力バトル……そうだ!

 ふと閃いたのは忍者だ。忍者と言えば――で世代や嗜好が分かるらしいが、
 僕にとって忍者と言えばジャンプ漫画の『NARUTO-ナルト-』の一択だ。次点で忍たま乱太郎だ。
 まだ『BORUTO-ボルト-』は読んでないけど、『NARUTO-ナルト-』は、かなり好きな作品の一つだ。

 和風世界だけどテレビや電柱もあったし衣食住や生活レベルがそこそこ進んでるのもポイントが高い。
 同じジャンプ漫画の『HUNTER×HUNTER』と迷ったけど、ボクは賢くないから知能バトルとか無理と思って除外した。

 とりあえず希望する転生先を記入して特典というのを考える。

 できるだけ詳細に書いた方がいいのかな?

 ポジション的には好きなキャラクターたちの活躍を陰ながら見守っていきたい。

 そうなるとナルトたちより上の世代になる。
 けどカカシの世代になると忍界大戦があって小学校低学年くらいの年齢で中忍として戦争に巻き込まれる――。

 そういうのも嫌だ。できれば戦後の世代が望ましい。

 それにナルトといえば忍術だ。
 やっぱり特典が貰えるなら血継限界が欲しいけど皆殺しの危険があるうちは一族はパスしたい。
 個人的に日常生活は平穏に暮らしたいと思っている。そういう意味では砂隠れとか霧隠れもパスだ。

 口寄せの術が覚えたい。チャクラだって多い方がいい。
 師匠は優秀な人がいい。生存能力が高いキャラの方がいい。
 上忍になれるくらいの才能は欲しい。もう運動音痴は勘弁だ。

 欲を挙げればキリがない。

 つらつらとメモ書きのようなことを用紙に記入する。

「キミは何処に行くの?」

 考え込んでいると唐突に隣のオッサンが声をかけて来た。

「あ、え、僕はNARUTO-ナルト-で考えてます?」

 僕は人見知りが強い。会話になると軽いパニックに陥ってしまうことがある。

「アイエエエエ! ニンジャ!? ニンジャナンデ!?」

 オッサンがわけのわからないことを奇声を発し口走っている。元ネタが分からない。
 相手のアタマがおかしいので逆に少し落ち着いた。

「いや。バトルもあるけど生活は不便そうじゃないので」

「たしかにナルトって世界の文明ってガバガバすぎやもんな」

「ハンバーガーショップとかあったよな?」「あれはワロタ」

「いや、ナルトはアリかもしれへんで」

「でもオレはナルトがサスケが里を抜けたところで読むのやめたし」

「同じく最後がごちゃごちゃしてるから殆ど覚えてない」

「逆にそーいう知識が中途半端な世界の方が楽しめるんちゃうの?」

「なるほどー」「たしかに」

「例えばやけどデスノートのL側でキラの正体知ってて転生とかはないっしょ?」

「ないない」「見たことない」

「たしかに頭脳戦を売りにしてる作品で原作知識ありの転生はアレだよな」

「けど嘘喰いの世界とかで無双するのも面白そうだけどな」

 僕を無視して再び騒ぎ始めたオッサンたちを横目で見ている間に、
 転生希望の用紙は受付嬢っぽいお姉さんに回収されてしまった。

 あ、まだ容姿とか幼馴染の彼女とか書きたいことがあったのに――。

 どうしてこうなった……。

 そして、ボクは『NARUTO-ナルト-』の世界に、不幸にも流れ作業で神様転生することになった。 
 

 
後書き
オリ主はジャンプ漫画は読むけど青年漫画はあまり詳しくないという設定です。
東方Projectも名前だけ知ってるくらいな感じで、ニンジャスレイヤーは知りません。 
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