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和-Ai-の碁 チート人工知能がネット碁で無双する

作者:笠福京世
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第二部 北斗杯編(奈瀬明日美ENDルート)
  第28話 新芽

H14年1月初旬 葉瀬中 side-Kumiko

「久美子、何か良いことでもあったの?」

「うんっ 私ちょっと強いかも♡」

「どっ、ど、どうしたの? いきなり」

「あ、ごめん。先日ね――」

 私は囲碁まつりのイベントでチラシを配っていた囲碁クラブに通っている。

 そこで出会った同い年の香川いろはちゃんと仲良くなって教わったりしてる。
 いろはちゃんは昨年にプロ試験を受けて8位の成績。女流枠採用で新初段となった。
 好きなタイプはメガネ男子らしい。将棋の棋士はメガネ男子が多くて羨ましいとか言ってた。
 たしかに囲碁界の有名なプロでメガネ棋士って……緒方十段くらいかな?
 って言ったら他にも畑中名人や乃木先生がいるよって怒られた。ちょっと変な子だけど教えるのは上手。

 あとは囲碁クラブで行われてる倉田七段の有段者向けの講座にも参加して勉強してる。

 そうそう。つい二やけてたのは女性客同士のリーグ戦が行われていて――。

「えっ? 元海王中で女子囲碁部の部長?」

「そう。日高由梨さん! でも私が勝ったの!」「えっ、えー!」

 今までの対局の中で一番の大金星だ。強くなってることが実感できて嬉しい。

「次は高校選手権で戦いましょうって言われちゃった」「すごいなァ」

 志望校を聞かれたので第一志望は桜が丘高校と答えた。
 日高さんも桜が丘の女子囲碁部なら間違いないと言ってた。
 他校にも知られた「囲碁部の人」と呼ばれてる女子部長がいるけど名前は思い出せなかったらしい。
 囲碁部の人で通じるって何か凄いなぁ。

「あかりは進藤君を探しに来たの?」

「ちっ、ちがっ、ヒカルをさがしになんて」

「進藤君は今日は休みだよ」(素直じゃないなー)

「や、休み!? 今日も? この間も休んだよね?」

「うん。今日は対局日じゃないみたいだけど……碁の勉強かな? けど休むことが多くなってるね進藤君」

「まァ、進藤君も来ても楽しくないよね。周りは受験に向けて勉強一色だし」

「ヒカルは高校いかないもんね。……みんなバラバラになっちゃうのかァ……」

「第一志望の高校は違うけど、あかりも何処に進学しても囲碁は続けるんだよね?」「……うん」

「だったら大丈夫だよ! 五月には北斗杯もあるし一緒に応援に行こう!」「北斗杯?」

「新しく始まった18歳以下の国際棋戦だよ。日本・中国・韓国対抗で3対3での団体戦!」

「団体戦なんだ」

「予選は4月だけど奈瀬女流は間違いなく突破するし、進藤君も予選突破すれば出場できるよ。行こう!」

「ヒカル、出場できるかな?」

「進藤君は復帰してからは殆ど負けなしだから調子は良いと思うよ」

「そっかァ……がんばってるんだヒカル」

「あかりと進藤君の家は近いんでしょ?
 だったら北斗杯観に行くから予選勝ち抜いてねってお願いしたら?」

「べ、別に私……」「ふふ。ごめん。でも囲碁を続けてたら何時でも会えるよ」「そうかな?」

「ほら。進藤君の好きな囲碁を勉強して、結婚して、老後も一緒に打てたらーきっと素敵だなって思わない?」

「もうっ!久美子っ―!!」「きゃー!ゴメン。ゴメン。ごめんってば!!」

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H14年新春 桑原本因坊宅

 床の間には南天が描かれた一幅の掛け軸、一輪の花が活けられている。
 静謐な空気の中で桑原が本榧の足付碁盤に本蛤の碁石を並べる。

「コレが碁の神様だというなら四子は置かせてもらいたいもんじゃな」

「複雑怪奇、まさに現代に蘇った道策の呼び名に違わぬ力量の持ち主かと」

 答えを返すのは着物に身を包んだ東堂シオン。

「ふむ。しかしワシとの実力差は恐らく二子といったところよ。碁の神様には遠いわ」

「にしても、おぬしが挑んでも勝てるかどうか――」

「なら、お聞きしますが桑原先生の栄光時代はいつですか? ……棋聖位6連覇のときですか?
 史上最年長で本因坊になったときですか? ――私にとっては“いま”です」

 真っ直ぐに桑原の目を見つめて東堂シオンが断言する。

「ふむ。それならば、おぬしにひとつ言っておこう。ここから先は……“空気など読むな”」

「周りの意見になど耳を傾ける必要などないわ。一番大切な事の判断は、おぬしの感性と心だけで行うのじゃ」

「金言感謝、それでは失礼いたします」

 新春の挨拶に来た弟子入りを断った弟子のようなものが去った後、襖障子を開き寒空を眺めながら桑原が呟く。

「どのみち今の時代を作れるのは、“いま”を生きてる人間だけということか――」 
 

 
後書き
※この話で名前が登場する「香川いろは」はアニメ『プリパラ』の第28話で「東堂シオン」の囲碁のライバルとして登場した女流棋士です。この作品でも新入段の女流棋士として書かれていますが、東堂シオンと違って口調や性格、設定などはかなり改変しています。 
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