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~仮面被りし幾重の使い魔~

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聞こえる声

何しようかなー。
何しようかなー。
キュルケは風呂に入っちゃったし、ふらついてくるとは言ったけど、特にあてがあるわけでもないしなぁ・・・。

この広さだと、食堂とか絶対ありそうだよな・・・・。

適当に大変そうな人がいたら手伝うとしますかねー。

『ヴェルメリオ、聞こえるか?』

ん?誰だ誰だ?俺の名前を呼ぶやつは。

俺に知り合いなんかいねーぞ?

今のところ、キュルケくらいしかしらねえし。

というか、まずこの世界に知ってる顔なんてねえし。

で、誰だよ、俺の頭に語りかけてくるやつは。

誰だ?

この世界のメイジとやらが俺に暗示でもかけようってのかい?

『馬鹿者。そんな筈がないだろう。実際に見たら分かるだろうから、ちょっと来い』

は?

アレ、視界がどんどん暗くなってく。

ナニコレ、デジャヴ?

―――――――――――――――

――――――――

――――

―――

「こ、ここは・・・・洞窟?」


目を覚ますと、そこは洞窟のようだった。

赤いルビーを思わせるような、洞窟。

電球のようなものがむき出しになって洞窟を照らしているが、よく見るとそれは炎だった。

燃え移ることもなく、ただ一点を轟々と燃やし続けている。

いや、電球と言うよりコレは蝋燭と言ったほうがいいのかもしれない。


「おう、来たか」

声がした方向を振り返ると、そこには黒く彼岸花のような浴衣を着て金の刺繍で『唯我独尊』と書かれた赤い高価そうで歴史を感じさせる羽織を肩にかけ、燃え上がるような赤色の髪で血のように夕陽のように赤い目を持ち、右目に傷を負った鋭い目付きの男が立っていた。

正直、こんな知り合いはいないと思う。

いたらいたらで俺の記憶に残ってそうだし・・・・。

「どうした、ヴェルメリオ。ワシの名を呼べぬのか?」

クソッ、どうしてそんなに嬉しそうに言うんだ。

その様子じゃ、俺が名前を知らないこと前提で言ってるだろ?

畜生畜生チキショウ。

やたらと嫌そうな顔をしていると、赤毛の男はニィと口角を釣り上げて笑う。

お気に召したらしい。

「まぁ、今は『ゴォォォォォォォォォォ!』と名乗ることが出来ないんだよな・・・。せいぜい、自分で俺の名前を思い出して呼んでくれ。」

えっと、今、炎が強く燃え上がるような音しなかったか?

まるでコイツが名乗るのを妨害するかのように。


「クソッ、ドサクサに紛れて名乗ってやろうかと思ったんだが・・・・。そう上手くいくモンでもないんだな・・・・」

自分で探せとか言っておきながら、教えてくれようとしてたのか・・・・。

いい奴なんだな、コイツ。

目付き悪いけど。


「おい、目付き悪いのは余計だろ」


「ばれてただと!?」


「当たり前だろ。お前、顔に出てんぞ?とまぁ、ひとまずヴェルメリオと顔合わせしたかっただけだし、早く戻らないとといけねえだろうしな」


なんだよ、その意味ありげな言葉は。

「つか、どうやって戻れと。・・・アレ、また視界が暗くなってく」

「次会うときは、お前がワシの名前を知った後になるだろうな。そんときゃ、覚悟しておれ。若造に教える事は山ほどあるのでな」

視界が暗くなっていく中、アイツの声だけが聞こえる。

上等じゃねえか。

どんなことだろうが、やってやろうじゃねえか。

―――――――――――――――――――――――

―――――――――――――――

―――――――――

―――――


「・・・あ、気がつきましたか!?」

目を覚ますと、そこは確か、キュルケというか俺が召喚された学校らしきところの廊下(?)で俺は寝ていたらしい。

そして、後頭部が柔らかいものが当たっているような気がするのは何故だ。

そして、何故、黒髪で東洋らしい顔立ちのメイドさんの顔が目の前にあるんだ。


「大丈夫ですか!?ここで倒れてたんですよ!?」

「大丈夫大丈夫。眩暈がしただけだから。えっと、起きていいかな?」

メイドさんははっとした表情に変わり、少しだけ頬が赤く染まっているのが見えた。

暑いんだろうか?

このまま膝枕(!)されてるままでいるわけにもいかないので、とりあえず身体を起こす。

立ち上がって肩をぐるぐる回してみるけど、特に調子が悪いわけでもなさそうだ。


「えっと、今日、使い魔として召喚された平民の方ですよね・・・?」

メイドさんは立ち上がって服の皺を伸ばしながら、刀をチラリと見てから俺に尋ねてくる。

それだけ早く、この学校中に広まったのだろうか?

それってつまり、俺有名人?

やーりい!


「そうだけど・・・」


「あ、間違ってなかったみたいですね!よかったです。それにしても、凄い格好ですよね・・・」

と、俺の格好をまじまじと見つめてくる。

やめてくれ、照れるじゃないか。

まぁ、アロハシャツに刀に首からアスタリスクの形をしたペンダント下げてたら、そりゃ凄い格好と思われるわな。


「おい、お前がキュルケの使い魔として召喚された平民か?」

不意に声を掛けられる。

嫌な、予感がする。


「返事をしたらどうだ!」


「ちょっと、ごめんね?」


「あ、はい。」

メイドさんに謝ってから、俺はメイドさんとの会話を邪魔した野郎のほうに向き直る。

こんな可愛い子との会話を邪魔するなんて、なんて奴だ。

顔を見てやろうと思い、振り返ると、

・・・・・・・・・250cmはありそうな蜥蜴人間(リザードマン)を連れたメイジがいた。

正直、こんなでかい奴に勝てる気がしない。


「やっと、こちらに気づいたか。ふん、やはり平民は低脳だな。一つの事に気を取られ、周りのことまで気が回らないらしい。キュルケも大変だろう?なぁ、キュルケ?」

リザメイ(名前知らないので仮定)は左のほうを向きながら、尋ねる。

誰がいるのかと思えば、キュルケがいた。

着替えを済ませていて、シャンプーの匂いが凄いする。

風呂上りなんですね、ご主人様。

それ以外にさっきと違う点は、少し怒っているようにも見えるところだった。


「バリー、ヴェルに構わないでくれる?この子はアタシの使い魔だから。」

と、俺の腕を抱きしめる。

柔らかい二つのものがモロにあたってる・・・・。

「平民に肩入れするってのか?君も変わったな。それとも、惑わされたのか?」

うぜえ、やつだな。

リザメイめ。

聞くだけで腹が立ってくる。

その言葉。

「いい加減にしやがれ、蜥蜴野郎(トカゲバカ)。さっきから平民平民ウルせーんだよ!平民だからどうした?逆にメイジだと偉いってのか?あ?なんか言ってみろよ!」

腹立つんだよなぁ、こーゆー権力を傘に着る奴。

ほんと、爆発してしまえばいいのに。

リザメイの蜥蜴が俺を殴ろうと前に出ると、リザメイは静かに手で制す。

余裕の表情を浮かべながら。

「良いだろう、平民。決闘と行こうじゃないか。時間は午後三時、場所は広場だ。逃げても構わないのだぞ?アーハッハッハッ!」

凄い嫌味に笑いながら、リザメイは蜥蜴を引き連れて立ち去った。

「ヴェル、何考えてるの!?メイジに喧嘩を売るなんて。しかも、あの男は『(ほむら)のバリー』って言って、火系メイジの中でもトップクラスなのよ!?・・・でも、少しカッコよかった」

大丈夫。なんとかなるさ。


キュルケよ、暑いのかい?

顔赤いけど。


「そ、それより。どうするんですか?相手はメイジですけど・・・」


メイドさんが不安そうに聞いてくる。

いいね、こんな可愛い子に心配されんなら、負ける気がしないぜ。


「土壇場で考えつくかもしれない、『火事場作戦』といきたいと思います」








・・・・・・・・・・・二人にグーパンチを食らったのは後からではいい思い出さ。
 
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