| 携帯サイト  | 感想  | レビュー  | 縦書きで読む [PDF/明朝]版 / [PDF/ゴシック]版 | 全話表示 | 挿絵表示しない | 誤字脱字報告する | 誤字脱字報告一覧 | 

グランバニアは概ね平和……(リュカ伝その3.5えくすとらバージョン)

作者:あちゃ
しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。 ページ下へ移動
 

第104話:男より女の方が強いと思う。特に精神面が……

 
前書き
今回のエピソード内には、ある有名作品のオマージュ台詞が存在します。
この台詞は作者が思いつきで書いただけでして、
言ってるキャラが元ネタを知ってるんじゃないかって事はありません。
そのキャラは偶然言ってしまったということを了承してください。 

 
(グランバニア城・宰相兼国務大臣執務室)
ウルフSIDE

「ウルフ君……ホント、マジで、個人的に助けて」
最近呼ばないと来なかったレクルトが、久しぶりに向こうから俺の執務室へ現れた。
大出世をし軍での階級が上から2番目になり、可愛い彼女も居て順風満帆に思えたのに、死にそうなくらい暗い顔して助けを求めてる。

「如何した? 減給4割が辛すぎて横領に手を染めちまったか?」
「僕がそんなに要領よく見えるの!?」
「いや全然」
「だったら無駄な事言ってないで、この頬の手形に話題を向けてよ!」

俺の部屋に入ってきて直ぐに気付いたのだが、レクルトの左頬には誰かにビンタされた赤い手の痕が残っている。
「それ……彼女に?」
まさかピエッサさんがと思ったのだが、尋ねてみたら大当たり。

「ぷぷぷっ……何が起こってるの?」
「サビーネちゃんにキスされてる所をピエッサさんに見られた(涙)」
俺の予想を遙かに超える返答に、堪らず大笑いをしてしまう。

「恋事に不器用なクセに、何であのキャバ嬢とキスしてんだよ(笑)」
「キスしたんじゃなくて、キスされたんだよ!」
違いが解らねー!

「何が違う?」
彼女(サビーネ)……陛下の脅しに全然動じてないんだよ」
「脅しって……俺が機密情報を店で喋った件か?」
「そうだよ。その時の強烈な脅しを物ともしてないんだよ」

(すげ)ーな……あの女マジで(すげ)ーな!」
(すげ)ーとしか言い様が無い。
リュカさんの脅しがユルかったとは思えないから、アイツが鋼のような神経の持ち主なんだろう。

「僕が出世したのを聞きつけて、『私の店でパーッとやろうよぉ♡』って腕に抱き付いてくるんだ(涙)」
「腕に抱き付かれたって、そんなに嬉しくねーだろ。あいつ胸ねーし。あんな貧乳じゃ性欲湧かねーだろう……やっぱ巨乳じゃないとさ!」

「胸なんてただの飾りだよ! 偉い人には解らないんだよ!」
「か、飾りじゃぁないと思うけどなぁ……」
それなりに使用頻度は上がるだろう……胸が大きい方がさ。

「ま、まぁ……それからどうした?」
「腕に抱き付かれてる瞬間に僕の執務室へ入ってきたのがピエッサさんだ。吃驚して固まってたね……僕も困って固まってたけど」
「お前の固まるってのは、股間の棒が堅くなったって意味じゃないよな?」

「違うよバーカ! バ~カ、バぁ~カ!!」
「分かった分かった……でもその時に素早く誤解を解いておけば良かったんじゃねーのかなぁ? 何時までも固まってたって何も進まないだろ」

「そうだよ! ハッと我に返り、直ぐに言い訳しようと彼女(エウカリスちゃん)を離したんだよ……でも何かに感付いた彼女(エウカリスちゃん)は、咄嗟に僕の腕を引きキスしてきたんだ。ディープなヤツ」
「……で、彼女(ピエッサさん)の目の前でキャバ嬢を押し倒したのか」

「そんな事する訳ないだろ! そんなことしてたら『助けて』なんて君のところに駆け込まないよ!」
「じゃぁ何が起きた、この後に?」
他のスタッフが居る執務室で会話してる為、ユニさんを始め全員が聞き耳を立てて物語の続きを待ち望んでいる。

「ピエッサさんは僕の方にツカツカと近付いて、思い切り彼女(エウカリスちゃん)を押し退けたら……」
「……バチ~ンとされたワケか」
俺はビンタのジェスチャーを見せて何をされたか代わりに言ってやった。

ベソをかきながら打っ叩かれた頬を擦ってコクンと頷くレクルト。
如何するかな……? 如何やって慰めてやろうかなぁ?
ここは一つ、俺の経験則からの適切かつ有効なアドバイスをしてやろうかな。

「乗り換えちゃえば?」
「お前はマジ馬鹿か!? 相手はキャバ嬢だぞ! 僕の事なんか男として見てなく、目的は財布の中身だけなんだよ! 乗り換えたってお金を搾り取られ捨てられるのが運命だろ!」

俺の執務机に乗り上げんばかりの勢いで迫り、俺の提案の結果予測を断言する。
財布だけが目的でディープキスまで彼女(ピエッサさん)の前でするかねぇ?
本当はレクルトに惚れてたんじゃないのかねぇ?

「う~ん……本当に金だけが目当てなのかねぇ? それだったら彼女(ピエッサさん)との仲を妨害するような事せず、秘密にして背徳感を楽しむ関係に発展させた方が得じゃないかな? サビーネはお前に店に来させたいだけなんだからさ」

「……そ、そう言われるとそう思っちゃうけど。で、でも君は口が巧いから、面倒臭がって僕を騙そうとしてるんだよ!」
「何で俺がお前を騙さなきゃならないんだよ?」

「ピエッサさんを狙ってるとかさぁ!」
「あんな貧乳興味ねーよ!」
「だって君はロリコンじゃないかぁ!!」
「年上だよ、彼女」

「で、でも……み、見た目はロリロリしてるじゃないか」
「俺の前では常に無表情で感じ悪ーよ」
如何あってもサビーネが財布のみに興味ある事にしたいらしい。

「よく聞け……俺がマリーという厄介な女と別れない理由は、(すげ)ー良い身体してるからなんだよ。リューノの方が扱いやすいのに、マリーと別れきれず二股を進めてるのは、別れるには惜しすぎる体付きだからだ。ロリコン疑惑を推し進めるのはいいが、先見の明があったからだと言う事を理解して欲しい」

「ウルフ君、君……凄く格好いい事言ってる雰囲気を醸し出してるけど、凄く最低男な発言だって気付いてる?」
「それはいいんだよ! 俺の最低っぷりは今に始まった事じゃないから、気にしなくていいんだよ! それよりも、俺が言いたいのはサビーネがお前に惚れてるかもしれない可能性があるかもしれないって事だ」

「……ほ、本当にエウカリスちゃんが僕に惚れてるのかなぁ?」
「さぁ? 俺なら惚れないから判らないけど、お前に惚れた女が少なくとも1人は居た事がある事実を考慮に入れれば、その可能性は0%じゃないよな」

「ど、ど、ど、どうしよう!? ぼ、僕……そんな……ムリだよぉ……二股なんて!」
「何で二人と付き合う事前提で動揺してるんだよ。少なくともピエッサさんにはフラれたんだから、あとはサビーネの気持ちを確認するだけだろ!」

「ちょっと待ってよ! 如何してピエッサさんにフラれた事を決めつけてんだよ!? 当初の目的は彼女(ピエッサさん)の誤解を解く手伝いをして貰う為に相談しに来たんだ。話を君が楽しめる方向にシフトしないでよ!」

「あぁそうなの(笑) まだ元カノに未練あるんだ?」
「『元』って過去形にするな!」
「もう過去だろ」
「誤解が解ければ違うよ!」

「じゃぁこうしましょうレクルト閣下。お二人をここに呼んで、直接聞いてみましょうよ」
「ちょっと待ってユニさん。何でここに呼ぶの? コイツの執務室でも良いじゃん」
この女……こんなに面白い修羅場を、最後まで特等席で堪能したいんだな。

「いいえ、この執務室の方が最適ですぅ! エウカリスさんはレクルト閣下を来店させたいが為に、『愛してる』と嘘を言う可能性がありますから。ですが嘘を吐く事に関して世界の追随を許さないエキスパートなウルフ宰相兼国務大臣閣下だったら、小娘が吐く嘘の一つや二つ、軽く見破ってしまうでしょう。彼女(ピエッサさん)の目の前で閣下が華麗に嘘を見破れば、レクルト閣下への気持ちも修復され、全て円満に解決する事間違いないですわ」

「なるほど! 凄いですねユニさん……貴女は天才ですよ」
天才かもしれないけど、それは“天才的ゴシップ好き”なだけ。
って言うか、お前は本物の馬鹿だ。

「色恋事だったら俺なんかより遙かに精通してて他人の嘘を見破る超天才が、この国の玉座に居座ってるだろう。俺にじゃなくそっちに頼めよ」
「馬鹿じゃねーの若造。こんな事を一国の王様に頼れる訳ないでしょう。ユニさんみたいに、もうちょっと論理的に物事を考えてよね」

何だろう……
馬鹿に馬鹿と言われて、こんなに傷付くとは思ってなかった。
もっと俺のハートは擦り切れちゃってると思ってた。

ションボリ項垂れてると、部下の数人が彼女等を呼びに出て行った。
こう言う時だけ行動が早い。
ってか頼んでないんだけど……

ユニさんがこれから来る予定の二人の為に椅子を用意して瞳を輝かせてると、程なくピエッサさんが俺の執務室へ入ってきた。
相変わらずの無表情だ……いやレクルトを見て一瞬だけ眉を顰めてたな。

「ピエッサさん、お待ちしておりました。こちらの席へどうぞおかけください」
瞳の輝きが衰えないユニさんが、先程用意した椅子に彼女を(いざな)うと、その直後にサビーネも入室してきた。

サビーネはピエッサさんと違い、俺の顔を見るなり大きく顔を歪ませ、不快感を露わにしてくる。
だけどレクルトとピエッサさんが既に居る事には何も感想は無さそうだ。
因みにピエッサさんは、先刻(さっき)眉を顰めて以来、ピクリとも表情を動かさない。

「……………」
「……………」
「……………あの、何の用?」

この状況を望んでいない俺は、進んで発言をしないで居た。
心内を読ませたくないピエッサさんは、レクルトを見る事なく黙って座っていた。
胆力の低いサビーネだけが、堪える事出来ずに口を開く。

「さぁ……俺に用は無い」
「……………」
「じゃぁ何で呼んだのよ!?」

俺は俺の感情に忠実な返答をした。
ピエッサさんはチラリとレクルトを見て、用件を理解したかのように目を瞑った。
相変わらず胆力の低いサビーネだけが、イラつきながら状況が進む事を要求する。

「……………」
「……………」
「……………」

巻き込まれたくない俺は、ひたすら沈黙を好む。
用件が理解出来ちゃってるピエッサさんは、俺かレクルトが本題に入る事を沈黙で促す。
流石に解ってきたサビーネは、本気で気まずそうに黙り込んでしまう。

暫く居たたまれない沈黙が続いた。
だから俺はワザと書類の決裁を再開する。
もう俺は無関係だとアピールする為に。

「ウ、ウルフ君……助けてよぉ」
仕事を再開した俺を伏せ目がちに見ながら、凄い小声で助けを求めるヘタレ大将閣下。
だが無視する。俺は黙々と仕事を続けるのみ!

部屋一杯に気まずさが充満し、面白半分で3人を集めた事を後悔し始めてる我が部下共。
怒ったビアンカさんが襲来した時以来の重圧に、胃の辺りを押さえる者も出てきた。
ザマーミロ! 俺が拒絶してるのに、勝手に推し進めるからだ。

「あ、あのねエウカリスさん。貴女はレクルト閣下の事が好きなのかしら?」
自ら招いた思い空気を払拭させるべく、ユニさんが果敢に質問を開始する。
よく頑張ったとは言いたいが、もっと凄いのは微塵も反応しないピエッサさんだ。

「あ~……そ、そうですねぇ……好き……うん。好きですね!」
効き方が緩いんだよねぇ……
この場合、『好き』か『嫌い』かじゃなく、『愛してる』か『愛してない』かだよね。

「え~っと……そういう事じゃなくて……何て言うのかしらねぇ……」
「サビーネちゃんは僕の財布が好きなんだよね!?」
中途半端な質問をしたことにユニさんが後悔してると、意を決したレクルトが核心に迫ると思った事を発言する。だが甘いな。

「財布は物ですから、好き嫌いは無いですよぉ」
間違ってない。サビーネは正確に言葉を汲み取っている。
発言者の感情をワザと無視してる辺りは、キャバ嬢として将来が楽しみだ。

「あ、あのね……そういう事じゃなくてさ」
質問し間違えた事に動揺してるレクルトは、ピエッサさんをチラチラ見ながらリカバリーの方法を模索している。その狼狽ぶりに笑いそうになるね。

「……………はぁ、もういいです!」
無表情・無言を貫いていたピエッサさんが、レクルトとサビーネの関係を完璧に理解し、大きな溜息と共に立ち上がると、疲れた声でこの茶番の終わりを宣言する。

そして出口へと歩いて向かいながら振り向きもせずに、
「レクルト閣下……もう一発殴りますので、今夜私の部屋へ集合するように」
と何時ものクールな声で言い放つ。

そして最後まで振り向くこと無く、
「では失礼させて戴きます」
と吐き捨てるように言い、部屋から出て行った。

「良かったなレクルト。彼女の誤解が解けたみたいだぞ」
「え、本当に!? だ、だって『もう一発殴る』って言ったけど……」
鈍い男だな。

「言ったけど『今夜私の部屋へ集合』とも言っただろ。あれは浮気を疑ったけど間違いだったと認めて、遂にヤらせて貰えるって事だよ」
「えぇ! それ本当!? でも何で殴るって言ったの?」

「そりゃ殴るからだろ」
「いや、だって誤解は解けたんじゃないの?」
ピエッサさんの言った事を理解してるユニさんやサビーネ……そして一部の部下等から呆れ顔で見詰められる大将閣下。

「お前はヘタレすぎて、自分の彼女と真っ向から向き合えなかったから、その事について殴る意思を示したんだ。自ら誤解を解く行動を起こせず、ワザワザこんな大勢の居る中で恥ずかしい三角関係を披露したんだから、殴られるくらいは我慢するべきだろう」

「そ、そんなぁ……この状況を作ろうとしたのは僕の意思じゃ無いのに!」
「俺の意思でも無い。従って俺に文句を言うな」
涙で湿った視線がユニさんに突き刺さる。

申し訳なさ過ぎて顔を上げられず、仕事に逃げる俺の有能なる秘書殿。
他人(ひと)の色恋事に面白半分で首を突っ込んだ、俺の有能なる部下共も顔を上げることが出来ずに仕事に没頭してるフリをしてる。

「あ~ぁ……良い上客(カモ)を逃しちゃったわぁ」
流石にもう店を贔屓にして貰えないことが解るサビーネは、本音を露わに嘆き出す。
「カモ? え、カモって僕の事!?」
他に誰が居る?

「さぁ? グランバニア軍の総参謀長であるレクルト大将閣下を、カモなんて表現する輩が居るとは思えないから、俺には解らないですよ」
大袈裟に肩を竦め、殊更役職を強調して恍けてやった。

そんな俺を半ベソで眺め、次いでサビーネにも視線を向ける。
だが彼女も俺と同じ様に大袈裟に肩を竦めて無邪気に笑って見せた。
あ、ヤバい……この女、可愛いかも。

ウルフSIDE END 



 
 

 
後書き
今回のエピソードは
田鰻さんが以前感想で
『サビーネがレクルトの財布を取り戻すべく画策しそうな予感が。
キスマークなんかつけられたらどうする、レクルト君?』
と書いていた事が発端で書き始めました。

何時もアイデアをありがとうございます。 
ページ上へ戻る
ツイートする
 

全て感想を見る:感想一覧