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和-Ai-の碁 チート人工知能がネット碁で無双する

作者:笠福京世
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第一部 桐嶋和ENDルート
  第32話 決戦の前に

H12年10月某日 和谷の自室 side-zelda

和谷義高は自室で独りごとを呟きながら気分転換にネット碁を楽しんでいた。

「よし! 勝利!」「もう少し誰かと打ってから寝るかな?」

 いよいよプロ試験も大詰め……2敗のオレは3敗の進藤に勝てば合格が決まる。

「sai!」「対局中だ! sai!? あのsaiか!? 去年の夏以来じゃねーか」

「か、観戦だ! 観戦!」

「…………ばっきゃろーっ! どこがsaiだよ! このヘボ野郎!!」

「インターネットの伝説の棋士saiの名前を騙るんじゃねーよ」

「くそぉ。こんなやつがいるからAiなんてのに好き勝手されるんだよ」

「去年はsaiで、今年はAiか……」

 今年の国際アマチュア囲碁カップでは去年のsaiに続きAiという正体不明のネット棋士のせいで騒動が起こったことを審判長を任された同門の白川七段より聞いた。

 一時期とはいえ頻繁にネット碁に現れて選ぶことなく様々な相手と打ったsaiに対して、稀に現れては強い相手を選ぶように戦うAiを和谷は好んではいなかった。

 しかも今やネットの世界に生きる“電子の妖精”和-Ai-としてイメージキャラクターまで絵描かれて囲碁を知らない素人にさえ名が知られている。

 最初はファンが制作した悪質なジョークサイトと思われていた和-Ai-のホームページだが、対局予定通りにネット碁に現れるAiの存在と、いち早く公開される厳選されたAiがネット碁で打った対局の棋譜によって少しずつネットの世界に広まっていったらしい。

 多くの人間が問い合わせのメールを送るが一切の返事はなく、ネット碁のアカウントを伝え対局を申し込んだプロが対戦を申し込まれたという噂も流れ、ウソかホントか日中韓の幾人ものプロがアカウントを伝えたとか話題には事欠かない。

「ふざけてるよな……いったい何様のつもりだってんだ」

 ネットではsaiとAiのどちらが強いかという不毛な議論が交わされている。
 活躍した時期が違えど互いに無敗の正体不明のネット棋士だ比較されて当然ともいえる。

 和谷はzeldaのアカウントでAiと対局したこともあるし、当時は夏休みということもあって頻繁にsaiの対局を観戦し注目していた。

「マジで師匠より強くねーかって思ったもんな……」

 最初に見たsaiは本因坊秀策を思わせる棋風だったが、和谷は秀策が現代の定石を学んで強くなっているように感じた。
 saiを支持するネット碁の棋士たちにも、どこかにsaiはわしらが育てたという気持ちがあるのかもしれない。

 「ネット碁の中でsaiは明らかに成長してた。
  もしsaiがネット碁から姿を消して今も成長を続けてるとしたら?」

 和谷はネットに公開されていたAiの棋譜を一度だけ見たことがあった。
 手本にしたくなるようなsaiの筋が良い強く美しい囲碁に比べて、Aiの囲碁は今まで和谷が学んできた棋理に反する筋が悪い碁に思えた。

 奈瀬がAiの碁に憧れて棋風を変えてると聞いたときは正気を疑った。

「あのAiの筋が悪い碁がsaiの強くて美しい碁に勝るなんてオレには思えないんだけどなァ」

 そんなとき対局申し込みの音が響く。

「相手は……Ai?」 
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