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和-Ai-の碁 チート人工知能がネット碁で無双する

作者:笠福京世
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第一部 桐嶋和ENDルート
  第28話 和-Ai-の棋譜

H12年9月某日

 和-Ai-のホームページに公開する棋譜を今までネット碁で打ったAiの棋譜のデータから厳選しようと考えて奈瀬に相談しようとしたときのこと――。

「そらくんは、和さんの……Aiじゃなくて桐嶋和さんの方ね。師匠の棋譜は覚えてないの?」

 不意に尋ねられた。

「いやいや。オレの棋力は奈瀬も知ってるよね? 棋譜の暗記って普通の人ができるの?」

「うーん。棋力とは別に記憶力の良し悪しもあると思うけど、好きな一局を何度も並べて覚えてる人は初段ぐらいでもいるよ?」

「そうなの? 前の世界では彼女の碁はいつでも好きなときに見れたから、棋譜を並べて覚えようなんて思ったことがなくて……」

 僕は彼女の碁を並べることができない……。
 自分の中に彼女の記憶はあるけど……そこに彼女の碁がないことに……強いショックを受ける。

「あのね。そらくんが元の世界に戻るんだったら……」

 彼女が恐るおそる口を開く。

「和-Ai-と私の碁の棋譜。ううん。私たちとの碁の棋譜を……」

「元の世界に覚えて持って帰って欲しいの。私はまだ魅せるような碁は打てないけど……。
 師匠に桐嶋和さんに私の碁を見てもらいたい。……そらくんに棋譜を覚えてもらいたいの」

 この世界に彼女がいる可能性が低いことに気づきながらも、僕は和-Ai-のノートパソコンが見える奈瀬に出会ってから元の世界には帰れるだろうと安心していた。

 僕は和-Ai-と奈瀬を繋ぐために碁の神様が用意した触媒。藤原佐為が進藤ヒカルに神の一手に続く碁を残したように、僕と和-Ai-が彼女に代わって奈瀬明日美に“神の一手”に続く碁を残そう。

 そうしたら佐為が消えたように僕もこの世界から消える。

 この世界には和-Ai-の棋譜と彼女のことを知り憧れた奈瀬明日美が残る。

 でも僕は元の世界に何も持って帰ることができない…そのことに気づく。

 ヒカルの碁の世界に転生したなんていう、できるの悪い二次創作のような話を信じてもらえるなんて思えない。
 ヒカ碁ファンの彼女なら面白い作り話だと笑ってくれるかもしれないけど――。

 もしも和-Ai-と藤原佐為の一局の棋譜を僕が暗記して帰れるなら?
 原作にはない新たな名局の数々を彼女に伝えることができるのなら?

 この碁の神様のいる世界で、アマチュア初段に過ぎない僕には囲碁に関する役割なんか無いと諦めてた。でも奈瀬の話を聞いて元の世界に持って帰れる棋譜というお土産はとても魅力的に思えた。

 それから奈瀬に和-Ai-の対局を解説してもらうようになった。
 囲碁は手談とも言われ一局には物語がある。
 闇雲に棋譜を並べて丸暗記するよりも、しっかりとした解説を聞きながら物語を覚えるように棋譜を記憶する。

 僕の棋力では和-Ai-の棋譜の良し悪しが評価ができないので、奈瀬と相談しながら厳選した好局を少しずつホームページに公開していった。 
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