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和-Ai-の碁 チート人工知能がネット碁で無双する

作者:笠福京世
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第一部 桐嶋和ENDルート
  第25話 秘めた思い

side-Asumi

 中国棋院について楊海八段に「隣はカノジョ?」って言われた。
 彼は咄嗟に北京語で返事をしてたけど内容が気になって仕方ない。

 今回は色んな理由をつけて強引に彼の中国行きに着いてきた。
 私
 は少しずつ彼に惹かれているという自覚がある。

 彼が嬉しそうに語る桐嶋和の話に興味を惹かれた。
 和-Ai-との対局で感じたドキドキを桐嶋和の生き方からも感じた。

 最初は一人暮らしの男の人のところに通う不安もあったけど、彼が私にヘンなことをしてくることはモチロンなかったし、碁は強くないけど、囲碁の世界ことを知っていて、プロ棋士を目指す私のことを理解し応援してくれる優しくて大人な彼と一緒にいることが心地よかった。

 彼が桐嶋和という女性をとても大切に思っていることは知っている。
 彼が未来からやってきて元の世界に戻りたがっていることも理解してる。

 彼が塔矢名人が経営する囲碁サロンに通っていて、あの塔矢アキラと顔見知りと聞いたときは驚いた。

 そしてネット碁でAiと対局した緒方先生に国際アマチュア囲碁カップの通訳の仕事で偶然出会って目をつけられてしまい、緒方先生を桐嶋和を探すために利用していると聞いて唖然とした。

 しかも桑原本因坊と銀座のお寿司屋さんで食事をご馳走してもらったこともあるらしい。

 ただ彼の交流はあくまで囲碁界が中心になっている。それも全て元の世界に帰るため、碁を愛する桐嶋和の手がかりを探すため。

 大学には休まず通っているし、IT企業でバイトもしているそうだけど、彼には必要最低限の交流以上の交友関係が存在しない。

 どうせ元の世界に帰るから下手に親密な人間関係を作りたくないというのも分かるけど。

 私は不安になるときがある。

 彼も薄々感づいているし、部外者の私が口に出すことはないけど、桐嶋和という女性は、この世界にはいない。

 そうなると彼は独りぼっちだ。

 彼が大切にする桐嶋和という女性がいない世界で、元の世界に帰る方法がないとしたら――。

 彼はどうなるのだろう?

 彼はどうするのだろう?

 不安が膨らんできて胸が締め付けられる思いがする。

 楊海八段が「Aiをヒトではない。人工知能だと思った」と言い出したときは驚いた。
 私は和-Ai-が未来の人工知能だと知っているけど、Aiの碁から、そんな突拍子の無いことを推理できる人がいるなんて凄い。

 でも楊海八段は彼の手元にあるノートパソコンに気づかない。きっと会話を書き留めるキャンパスノートにでも見えるのだろう。

 彼と私にしか見えない和-Ai-のノートパソコン。二人だけの秘密。

 彼と和-Ai-に出会って桐嶋和という憧れを知って私は強くなることができた。
 だからプロになって彼に出来る限りの恩返しがしたい。

 私が傍にいるから、この世界に絶望しないで欲しいと祈る。

 そんな気持ちを胸に秘めて楊海八段の案内で中国棋院の訓練室に向かった。 
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