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和-Ai-の碁 チート人工知能がネット碁で無双する

作者:笠福京世
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第一部 桐嶋和ENDルート
  第24話 中国棋院

H12年7月前半

「え? 7月後半に中国へ旅行に行くの?」

「ああうん。緒方先生の紹介でね。中国棋院に。
 中国のプロ棋士でAiのことを調べたり探している人がいるから実際に会って話をしてこようかと思って」

「緒方先生も行くの?」

「いや。先生は本因坊戦で忙しいから一人で行くつもりだけど?」

「私も一緒に行ったらダメ?」

「……学校は?」「夏休み」

「……プロ試験の予選は?」「院生順位8位以内だから予選免除」

「……お金は?」「貸して。プロになったら返す」

「出世払いかよ」

「ダメ? だって囲碁のことなら私が居た方が分かることもあるでしょ?
 それに中国に和-Ai-を持っていくんだったらプロ試験前の私が困るし!」

「……親の許可とかどうするん?」「何とかするから!」

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H12年7月後半 中国北京

 そして奈瀬と一緒に旅客機から北京の地に降り立つ。

「東京⇔北京って4時間で着いちゃうんだァ。思ったよりも近いのね」

「念のために釘を刺しとくけど遊びに来たわけじゃないから」

「分かってます! 私だってプロ試験が控えてるだから観光のつもりはないわよ」

「まあ緒方先生の紹介もあるしお願いすれば中国棋院で打たせて貰えると思うけど……」

 中国棋院に着くと前もって連絡を入れていたこともあって、緒方先生の知人である中国棋院の関係者に案内され、Aiのことを調べたり探しているというプロ棋士の紹介を受ける。

「君がネットのAiのことを探してる人?隣はカノジョ?」

「岸本空と言います。大学生です。隣はカノジョとかではなく日本の院生です」(北京語)

「へえ。インセイなんだ。じゃあ日本からベンキョしに来たの?」「あ、はい」

「にしても北京語イケてるね。オレの日本語はどう?悪くないだろ」

「かなり上手だと思います。日本がお好きなんですか?」

「というか語学が趣味だな。韓国語と英語も話すんだぜ。」

「いい趣味ですね! 僕も英語はイケますが韓国語はダメです。」

「赞! お、話が合うね。…と、すまない。自己紹介が遅れた楊海(ヤンハイ)だ。」

「いえいえ。とりあえず先に本題をよろしいですか?」

「そうだな。少し長くなるから場所を変えよう。カノジョはどうする?」

「院生の奈瀬明日美です。良かったら後ほどでも誰かと対局ができれば嬉しいです」

「明白了。君みたいな美人を一人で置いとくと、ウチの野郎どもがナンパとか始めそうだから終わったら案内するよ」

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 楊海の部屋でAiについての情報交換を行う。

 中国の女流棋士については質問したが、やはり日本と同様に中国も囲碁界では男性と女性の圧倒的実力の差があるとのこと。しかし中国女流1位の女性が韓国では最古のタイトル戦である国手戦に挑戦したという。彼女かと思ったが聞けば20年以上プロとして活躍する中国女流棋界の第一人者らしい。

「いくつかの棋譜を見れば分かるようにAiは中国ルールで打ってはいるし、ネットの一部でも中国の若手棋士なんて噂もある――」

 こちらの反応を確かめながら楊海が言葉を続ける。

「けど、残念ながらAiのような打ち回しの棋士は中国にはいない」

「――というかAiの特徴的な打ち筋は日中韓のどのプロ棋士にも見られない」
 
「そこでオレの仮説だが……」

 と言って話を進めていた楊海からいくつかの資料を受け取る。

「Aiはコンピュータ囲碁のソフトウェアじゃないかと疑っていた。
 自慢じゃないがITにも詳しくてコンピュータ囲碁のプロジェクトを手掛けたりしてる」

「ネット碁のアカウントのAiだってArtificial intelligence、人工知能の略だろ? 捻りも隠す気さえない」

「専門的な解説は割愛するけど……Aiの非人間的な着手は、モンテカルロ木探索を実装した囲碁プログラムの動きと似ているところがある」

「まあ今のところコンピュータ囲碁のレベルは強くてもアマチュア4段ほどだ。
 そしてプロ棋士に並ぶのは早くても後20年以上かかると言われているな」

「だから国家か大企業がスーパーコンピュータでも使って秘密裏に開発した人工知能を実験してるのかとさえ疑ったよ」

「けど棋譜を集めて調べるほど囲碁AIに存在するはずの共通の弱点がAiには見当たらなかった」

「まずは正確さが必要な長手順の読み。死活や攻め合い。左右両側から絡めるような複雑な手順。あとはコウだな。」

「SFの世界じゃないけど、まるで未来の囲碁アンドロイドが現れたのかと思ったよ」

「じゃあ楊海はAiはヒトではないと?」

「まあ突拍子もない話だろうけど、最初に中国の囲碁界については話をしただろう?
 今は国を挙げて人材を発掘してる。中国は各省にプロ棋士がいる。 
 その中で素質ありと認められ者がここ北京に集められる。競争は厳しい。成績が悪いと地方に戻される――」

「だからこそAiくらいの棋力を持つ若者がいるなら、地方出身者だろうが関係なく、北京まで連れられてくるよ。お金にならないネット碁だけで満足するなんてありえないからね」

「ま、せっかく来て頂いたのに何の参考にもならない推測だらけの話で悪かったね」

「いえ。とても役に立つ話が聞けました。ありがとうございます」

「神の一手を極めるのはコンピュータだと言ったら笑うかい?」

「いえ。今すぐはともかく16年後にコンピュータがトッププロを破っても驚きませんよ」

「感到吃惊! はっ! やっぱり君とは話が合う!語学だけじゃなくってソッチもいけるのかい?」 
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