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和-Ai-の碁 チート人工知能がネット碁で無双する

作者:笠福京世
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第一部 桐嶋和ENDルート
  第02話 出会い

 彼女、桐嶋和と出会ったのは中国史好きが高じて外国語大学に進学し、都内での一人暮らしを始めた頃に参加した中国語会話サークルの飲み会でのことだった。

「岸本 空? ……あっ!ヒカ碁に登場したキャラと同じ苗字!」

「ヒカルの碁? 漫画の?」

「そうそう。私、大好きなんだ」

「岸本って名前のキャラいた?」

「いたよ! アキラが通ってた海王中の囲碁部の主将で元院生のメガネ男子!」

(……ああ、言われてみたら、そんなキャラいたな)

 どれだけヒカ碁マニアなんだと思ったのが第一印象だったが、互いに会話の糸口を見つけた二人は飲み会特有の気安い雰囲気もあって初対面ながらに盛り上がった。

 彼女がプロの囲碁棋士であることを知って驚き、僕も同じくヒカルの碁を読んで囲碁に興味を持ちルールを覚えたこと、ただ彼女と違って周囲に囲碁が打てる友達がいなかったもあり、殆ど囲碁の腕は上達しなかったことを伝えた。

「そうなの? だったら私が岸本くんに囲碁を教えてあげようか?」

 これでも強いんだからと屈託のない笑顔で話す年下の彼女に僕はひと目で惹かれた。

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 僕は大学を卒業した後、中国資本のIT企業に就職。社費で中国の大学に留学しMBA(経営学修士)も取得した。

――強い囲碁ソフトと打ちたいの。それも毎日

 そう先月行われたコンピュータ囲碁大会で優勝した囲碁AIを開発したIT企業は僕の務めている会社の関連会社だ。

 あるトッププロが当時の囲碁AIの強さを評して――

 最強の囲碁AIは、わからない強さ
 中国の囲碁AIは、わかるが勝てない強さ
 日本の囲碁AIは、互角ぐらい

 ――と言ったらしい。

 最強の囲碁AIには及ばずとも日中の囲碁AIは既にプロを破っている。
 そして囲碁AIは進化のスピードで人智を越える。

――強くなりたいの。今のままだとタイトル挑戦にさえ届かない

 囲碁や将棋、チェスは頭脳を使うマインドスポーツとも呼ばれ、身体を使うスポーツとは違って大人も子供も男も女も関係無く老若男女が同じ舞台で対等に戦える競技だ。彼女は輝ける舞台を純粋に信じていた。そんな中で女性というだけで、どこか下に見られることに違和感を感じていた。

 ただ現実にプロの世界で男性と女性の間に優劣が出来てしまっているのも事実。将棋界においては奨励会で四段に昇段した女性の棋士はいないし、囲碁界でも七大タイトルを獲得した女性、挑戦者になった女性はこれまで存在しない。そもそも殆どの女流が男女一緒の採用試験を通れなくって女だけの女流試験でプロになっている。

 競技人口における男女比の違いがあるかもしれないが、負けず嫌いだった彼女は「女は弱い」という偏見とずっと戦っていた。
 
 彼女が憧れたのは史上最強の女性チェス選手。幻の英雄が持っていたグランドマスターの世界最年少記録を破り、少女時代の頃から大人の男性チェス選手達の中に紅一点、子供一人の状態で混じって戦い続けた女性。
 
 そして前世界チャンピオンを含むほとんどすべての世界トップ選手を破って世界ランク第8位に達し、世界上位8人の総当たり戦による世界チャンピオンシップの舞台に立った最初の女性。

 彼女が独占した女流三冠を返上し、女性しか参加できない女流棋戦への不参加を表明したのも女子しか出られない大会やトーナメントには全く出場しないというポリシーをもった憧れのチェス棋士に対する強い想いがあった。

 囲碁や将棋以上に男性の割合が多いと言われるチェスの世界で結果を残した人がいた。

 女流タイトルを返上し女流棋戦への不参加を表明した彼女に対して多くの反発があった。だから七大タイトルという最高峰の舞台で自らが結果を残すことで囲碁界を変えたいと願った。しかし世間を実力で見返すことの出来ない自分への不甲斐なさと悔しさが募っていた。

――強くなりたい。いちから自分の棋風を見直したいの

 彼女の真摯な想いを、夢を、願いを昔っから知ってたから……僕に彼女の『お願い』を断るという選択はなかった。 
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