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外道の末路

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第二章

「やっていくしかないね」
「そうね、それしかないわね」
「世の中そうした人もいるということで」
「納得するしかないし」
 例え納得出来なくともだ、鬘清美という女がそうした女であることは紛れもない現実であるからだ。
 だから納得するしかなかった、それでだった。
 岩美は自分の会社の仕事の傍ら団地の自治会長ろしても頑張った、だが鬘は相変わらずだった。
 団地の仕事は何もしない、しかしそれでいてだった。
 クレームばかりつけてだ、この日は明恵に強い声で言っていた。
「最近隣が五月蠅いんですよ」
「お隣っていいますと」
「右隣の岩倉さんです、新婚の」
 その彼等がというのだ。
「何か夜もう犬か猫みたいにさかって、奥さんの方が特に」
 こう右手を縦に振って言うのだった。
「どうにかなりません?」
「岩倉さんですか」
「全く若い人は」
 丸い目で歯がやけに出た痩せた顔で言う、黒のショートヘアの髪の毛は細く妙な癖がある。
「困ったもので」
「だからですか」
「もう何とかなりませんか」
 歯茎を出しての言葉だ。
「奥さんからも言って下さいよ」
「それじゃあ」
 内心そんなことでと思いながらだ、明恵は眉を曇らせてそのうえでその岩倉さんの家に行った、そしてまだ二十代前半の若い奇麗な奥さんに話すとだ。
 奥さんは困った顔でだ、明恵に言った。
「そう言われましても」
「こうしたことはですね」
「私達も声を出さない様にしてるんです」
 夜の生活はというのだ。
「それでもあの奥さんベランダに出て聞いてるらしくて」
「ベランダで」
「しかも録音までしていて」
 若い夫婦の夜の生活をというのだ。
「この前お隣さんのベランダで録音機見ました」
「そんなことまでしていて」
「はい、それで五月蠅いので止めて下さいって言って」
 そうしてとだ、奥さんはちゃぶ台を挟んで座っている明恵に自分が出したお茶と御茶菓子の自分の分も食べつつ話した。
「その録音を私に直接聴かせてきたり」
「証拠としてですか」
「そんなこともしてるんです、それでです」
 奥さんはさらに話してきた。
「自分のお家の娘さんは何も注意しなくて」
「小学生の」
「はい、もう団地の子はいじめるし悪戯はするし」
 つまりやりたい放題だというのだ。
「うちの郵便物捨てたりとかしてるんです」
「そんなことをするんですか」
「それでもちょっとあの奥さんに言ったら」
 その鬘にというのだ。
「もう全然です」
「聞かないんですね」
「そんなことないって笑って言って」
 それで終わりだというのだ。
「また朝の六時から夜の十二時までテレビも音楽も騒がしくて」
 鬘の部屋から出るそれがというのだ。 
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