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タガメ

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第四章

「君は実にいいね」
「今回の発表のことで」
「いやいや、全体がね」 
 そのことだけでなく、というのだ。
「成績も人格もね」
「人格もですか」
「真面目でかつ清潔でね」
 そうしたところがいいというのだ。
「しかも視野が広いから」
「だからですか」
「君は確か政治家を目指していたね」
「はい、生まれ育った街で」
 夏樹は教授に確かな声で答えた。
「何時かは市長選に立候補して」
「市長になりだね」
「市政をリードしたいと考えています」
「その市政は環境重視だね」
「はい、環境をかつての様にです」
 目を輝かせてだ、夏樹は教授に話した。
「奇麗なものにしたいので」
「それ故にだね」
「市長選に出られて政策を実現出来る様に」
「はい」
 子供の頃の純真な目はそのままだった、その目で語った言葉だ。
「そうです」
「目標がある、それならだ」
「その目標をですね」
「適える様にすることだ、しかし」
「しかし?」
「環境は大事だが」
「それだけではないですね」
 夏樹も成長してこのことがわかってきていた、政治は一つだけではないのだ。多面的なものであるのだ。
「環境だけでは」
「そう、環境も大事だがね」
「それだけではないですね」
「産業や観光もあるしね」
「そうしたことも考えないとですね」
「政治は出来ない」
「市政も」
 夏樹は教授に確かな顔で答えた。
「そうですね」
「そう、だからね」
「そうしたことも考えて」
「市政に携わる様になったらね」
 夢を適えてというのだ。
「その時はね」
「はい、広い視野でですね」
「君の夢を果たすんだ」
「わかりました」
「政治家と運動家は違う」
 教授はこのことも言った。
「政治家は現実に行う立ち場なんだ」
「運動家は言いますね」
「悪く言うと言うだけだよ」
「そうした運動家は多いですね」
「自分達の主張以外のことはどうでもよくてね」
「そうした運動家ではなく」
「政治家になるのなら」
 つまり広い視野を持ち現実に携わるのならというのだ。
「そこまでやるんだ、まずは」
「まずは?」
「市役所に入るのもいいね」
「市役所で、ですか」
「そう、一から市政を学ぶんだ」
 最初から市長を目指すのではなく、というのだ。 
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