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【RB1】
【RB第十話】
前書き
久々更新
日が過ぎるのも早く、RB養成学校来てから初めての休み。
土曜日は授業はなく、各々が自由に過ごせる――因みに土日と学園にバイト申請出しておけばスクラップ置き場の整理やらRBのモジュール搬入作業等が行える。
勿論アルバイト代としてクレジットが支給される――基本はライダーズがメインで行うバイトばかりだ。
メンテナーズは土日に契約したライダーズの生徒の機体の整備、デザイナーズは特に無いが各企業の社内見学を学校側にいえばその用立てをしてくれる。
話は変わり、場所は校庭――否、滑走路――朝から離着陸する貨物機から忙しなくコンテナを下ろしては逆に積み込んでいく無数の作業用RB――その中の一機にクルスは居た。
コンテナに詰められたスクラップを貨物機に搬送、そして中からRBの入ったコンテナ、或いはモジュールが詰まったコンテナを倉庫に下ろすという作業に従事していた。
RBも搬送用のセットアップされた機体だ、カウンターリフトやリーチリフトみたいな小回りは無いがペイロードは圧倒的だった。
貨物ギリギリまで載せた機体は直ぐに離陸――だが直に新たな貨物機が来て搬送作業、それだけ鉄屑を持っていってもらっても直ぐに鉄屑置き場が満杯になる。
だが一日やれば一万五千クレジット――毎週五千(訓練機レンタル分差し引いて)を合わせたら二万クレジット、日曜日も当てれば三万五千。
少し貯めれば新型を買える――とはいえ、終わりなきコンテナ地獄に嫌気が指し始めた。
昼休み――クルスは昼飯を食べ終えた後、まだ手付かずになっているスクラップ置き場を見ていた。
積み上げられた各モジュール――その大半はアームモジュールだがその殆どはただの鉄の塊となっていた。
「……何か使えそうなのがねぇかなって思ったが、やっぱスクラップはスクラップか」
仮に部品取りに集めたとしてもそれ以外は廃品となり、処理する手間が掛かれば無駄も増える。
都合よく火影壱式のボディモジュール等落ちておらず、溜め息がこぼれ落ちる。
クルスの今回の狙いは修繕可能なモジュールを見つけてあわよくばそれを自分のRBとして登録したいと思っていた。
新品でRBを揃えて手に入れても、破壊されれば修理にクレジットが消費される。
ならば少しは修理修繕して動くのであればそちらの方がいい。
二ヶ所、三ヶ所と回るもやはりアームモジュールの残骸、あってもレッグモジュールしかなかった。
昼休みも終わる――諦めて戻ろうとした時だった、積まれたアームモジュールの残骸が崩れ落ちてきたのは。
咄嗟に避けたものの下手すれば大事故に繋がるその事態にクルスは悪態をつく。
「けっ! てめぇらが破壊したんだからちゃんと直しとけよ馬鹿が」
勿論誰もいないクルスの独り言、埃を払い落としたクルスだったが屑鉄の山が崩れ落ちて現れたのは所々に錆が見え隠れするボディモジュールだった。
単眼式やバイザー型、複眼型とは違う【デュアルアイタイプ】のボディモジュール――デュアルアイのカメラガラスは割れ、中からアイカメラが露出していた。
「…………」
崩れたモジュールの上を歩き、ボディモジュールに近付く――無機質な灰色に所々赤錆が目立ち、デュアルアイから滴り落ちる雫はまるで涙を流している様だった。
「……こいつを修理すりゃ、良さそうだな」
唇の端を吊り上げるクルス――昼休み終了のサイレンが鳴り響き、クルスは目星を着けたそのボディモジュールをその場に残し、午後の作業へと戻っていった。
作業も終わり、コンテナ地獄から解放された一同。
端末機にクレジットを入金させ、学生寮に戻る生徒を他所にクルスはさっきのボディモジュールの回収に走る。
ガレージに搬入されたデュアルアイタイプのボディモジュール、申し訳程度に外装のないレッグモジュールが付いたその機体を見たクルス。
「……これはメンテナーズの力借りなきゃ無理そうだな。 アームモジュールは払い下げ品か何かで装着すればいいが……システム周りやOSは俺だけじゃ流石に……」
かといってメンテナーズの知り合いがいる訳じゃなかった。
クルスは整った顔立ちはしているがその目付きの鋭さ、醸し出す雰囲気からデザイナーズやメンテナーズの生徒から少し怖がられている。
だが義妹の由加にとっては義兄に余計な虫がくっつかない事に安心しているが――。
「チッ……面倒だが、誰かに助力求めるしかねぇな」
一人ごちるクルス――赤錆のついたデュアルアイからはもう涙は流れていなかった、新たな主が見つかったのだから――。
これがクルスと長い付き合いになるRB【煉獄】との出逢いだった。
クルスがコンテナ運びをしている時間まで戻る。
加川有栖は初の休日にクルスをデートに誘おうとしたのだが、肝心のクルスがまさかコンテナ運びのバイトをしているとは思わなかった。
久々に再開した幼なじみで初恋のクルス――背は高くなり、目付きの悪さは相変わらずだったがそれでも想ってきた想いは変わらなかった。
唯一……義妹出来てたことが誤算だった。
明らかに敵がい心のある有川由加、義妹という事もあり確実に恋のライバルになり得る存在だった。
「……今はクルスに会えた事だけでも感謝しないと、だね」
ウンウンと頷くアリスは、気を取り直して街に繰り出して気分転換しようと出かけるのだが――ちょうど寮を出た所で声を掛けられた。
「か、加川有栖さん!」
「……??」
声を掛けられ、首を傾げるアリス――同じライダーズの生徒の男の子っていうのはわかるのだが……。
「お、俺、畠山海っていいます! よ、良かったら今からデートに行きませんか!?」
「え? ……ごめんなさい、あたし好きな人いるのでデート出来ません!」
勢いそのまま断りをいれ、駅へと走り去るアリスと無情にも玉砕した畠山海――最新機である火影・五式を入手しても靡かないのはある意味当然だろう。
ガックリ項垂れる畠山海に、取り巻きの男子は――。
「し、仕方ないっすよ海くん」
「好きな人いるんじゃ……多分好きな人ってのも有川来栖だと思うし」
取り巻きの男子二人、あの目付きの悪いクルスを思い浮かべていると肩を震わせている海が――。
「っ……。あんな目付きの悪い奴の何処がいいんだよ……!」
「そ、それはわかんないっすけど……」
「か、海くん。とりあえずデートよりも友達として仲良くなってからの方が――」
「チックショー!! ええい、決闘だ決闘!! あの有川来栖って奴とRBで決闘だチクショー!!」
いきなりの決闘発言に目を丸くさせる二人、何故いきなり飛躍して決闘になるのかが理解不能だった。
「決闘して俺の方があの天使に相応しいって事を証明してやる! うぉぉおおおおっ!!」
「か、海くん!?」
「何処行くんすか!?」
取り巻き二人を残して何処かへ走り去る畠山海――残された取り巻き二人は顔を見合わせて二人して思う。
週明けの月曜日、荒れるなぁ……と。
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