ドリトル先生と悩める画家
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第七幕その二
「普通はね」
「欝になるっていうんだね」
「そう思っていたけれど」
「それは人それぞれだよ」
「太田さんみたいにだね」
「そう、かえって動く人もね」
そうした人もというのです。
「いるんだ」
「そうなんだね」
「そう、だからね」
「太田さんはこうした時こそなんだ」
「動いてるんだ」
「成程ね」
「そしてそれはいいことだと思うよ」
先生はにこりと笑って言いました。
「それがスランプ脱出のきっかけになって」
「それにだよね」
「そう、そこからね」
「何かが得られるから」
「いいんだよ」
「今後のことにも」
「芸術は見て知ったものが蓄積されていくものでもあるんだ」
先生は王子にこうもお話しました。
「文学なんかでもそうだね」
「ああ、その人が知っていることや見てきたことがね」
「蓄積されて書かれるからね」
「だからだよ」
「スランプの時にこそ太田さんみたいに動くと」
「それが糧になるんだよ」
「そういうことだね」
「勿論太田君みたいにスランプで動ける人でなくてもね」
それでもというのです。
「いいんだよ」
「そうなんだ」
「動ける時に動いて」
「描いて観て回る」
「そうしてもいいんだ」
「スランプの時は動かないといけないとかは」
「ないんだ」
それは決してというのです。
「そうしなくてもいいんだ」
「じゃあ考え込んでいても」
「それはそれでね」
「スランプ脱出になるんだ」
「そうだよ」
「ううん、難しい話だね」
「いやいや、難しいんじゃなくてね」
先生は王子にさらに説明しました。
「その人のそれぞれの時でね」
「スランプの脱出の仕方が違うんだね」
「そうだよ」
先生は王子に穏やかな声でお話しました。
「怪我や病気と同じだよ」
「ああ、その都度違うね」
「腕をすりむいたり脚を骨折したりとかね」
「誰もがいつも同じ怪我をしないね」
「そう、病気もね」
「風邪にしても」
王子も風邪をひくことがあります、その風邪をひいた時のことを思い出してそのうえで先生にお話するのでした。
「いつも同じ風邪じゃないね」
「高い熱が出たり咳が激しかったり」
「その都度ね」
「違うね」
「その治療方法もその都度違うね」
「出すお薬とかがね」
「それと同じなんだね」
「スランプを病気と考えると」
その観点からしてみると、というのです。
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