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ソードアート・オンライン ~白の剣士~

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柔と剛

影は言ふ–––––

"畏るるものなし"と–––––

男は言ふ–––––

"恐るるものは己である"と–––––

遠い遠い、過去の王。

誰にも知られることのない、"覇王"の話–––––

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「えっ!?シューもこのパーティーに加入してるの?」

スリーピングナイツが普段作戦会議をするために利用している酒場でアスナはユウキの話に驚いていた。

「うん、そうだよ!」

「シュー兄はたまにパーティーを組んで俺たちと一緒に狩りに出てくれんだ!」

「手合わせもしてくれるし、アドバイスもくれるからね」

それを聞いたアスナはシュタイナーの知らない一面を感じるも、普段の彼のことを思い返すと自然と納得がいった。

「シューは本当に世話焼きなんだね」

「うん!シュー兄はあたしらの兄貴分のようなもんだからね」

「シューさんは私たちに大変良くしてくださいますから」

それぞれの日頃から世話になっているシュタイナーに対して恩を感じており、尊敬している。彼らにとってシュタイナーは、いわば"もう一人のリーダー"という精神的支柱の存在となっているのだ。

「今回は来れないみたいだけど、ボクらだけでボスを倒して、シュー兄をあっと驚かせてやろう!」

「「「「「おおッ!!」」」」」

スリーピングナイツの面々は拳を突き上げ意気揚々とボス部屋のある階層へと向かうのだった。

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ユウキ達がボスへと挑みに行くのと同時刻、シューは先日来たはずの慰霊碑に来ていた。
なぜ彼がここに来ているのか、それはそこにいたもう一人の人物に理由があった。

「話って、なに?シオン」

お手製の車椅子に座った白髪の青年はその体で僅かに吹く風を感じながら答える。

「お前が何故それほどの特効薬を持っていて使わないのか、正直疑問に思っていた。お前の性格上、こういう状況で断ることなんて真似はしなかったからな」

「なにが言いたいんだい?」

雪羅は懐から取り出した錠剤が入った小袋をシューに見せた。
それを見たシューは僅かに苦悶の表情を浮かべた。

「これは先日お前が店で落としたモンだ。はじめは只の風邪薬とかアレルギー系の薬だと思っていた。だが調べてみればそれは全く違う代物だった・・・」

雪羅は振り返ることなく淡々とした口調で続けた。

「《二トロール》、《メインテート》。こいつはある共通部位(・・・・・)に作用する薬だ。その部位っていうのが・・・《心臓》だ」

雪羅は親指を胸の中心に突き立て、小突いた。少し間を置くと、車椅子をシューの方向に向けて僅かに揺らぐ瞳に問いかけた。

「お前、『狭心症』だったのか?」

「ッ!・・・」

「いつからだ?なんて事は聞かねぇよ。そんなことよりも言うことがある」

身震いするシューのことを尻目に雪羅は真剣な眼差しで言った。

「すぐに手術を受けろ。ついでにエイズの女の子も一緒にな」

「そんなの・・・」

「できないとは言わせねぇぞ。お前も知っているはずだ、時間がないことくらい。それとも・・・」

有無を言わせない言葉に更に追い討ちをかけるように続けた。

「まさか殺人鬼(・・・)の血が混じることを躊躇ってるんじゃねえだろうな?」

その瞬間、雪羅の身体は僅かに宙に浮いた。シューが彼の胸ぐらを掴み、持ち上げたからだ。髪で隠れた盲目の左眼には光が戻り、歯茎を剥き出しにした歯は、軋む音がたつほど食いしばっている。
その姿は普段の彼とは正反対のもので、さながら獣を彷彿とさせるものだった。

「テメェ、聞いていりゃあ好き勝手言いやがって!」

「・・・やっと出て来たか(・・・・・)。久しぶりだな、口の悪さは相変わらずか」

豹変したシューに雪羅は驚く素振りも見せずに淡々と話した。

「バーデン・・・」

雪羅がSAOで対峙したプレイヤー、《霧のバーデン》がそこにいた––––––

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これは遠い過去、SAO時代に遡る。
シュタイナーというプレイヤーは良くも悪くも平凡。攻略組に属する有名どころのプレイヤーとは違い、静かにひっそりとした生活を送っていた。

しかし彼には裏の顔があった。いや、正確にはもう一人の自分(・・・・・・・)と言った方が正しいかもしれない。

解離性同一性障害、俗に言う多重人格に似たものにより《バーデン》という身を下ろし、シュタイナーは数々のレッドプレイヤーをその手で葬ってきた。
《霧のバーデン》と呼ばれる所以となったのは彼が《バーデン》と《シュタイナー》の人格を入れ替える際、その姿すらも変化してしまうため、さも現場から霧の如く消えるように見えてしまうためでもあった。

(シュタイナー)"と"(バーデン)"––––––

二人は一人の身体に宿り、数多の罪人を葬り、共に歩んできた。お互いのことなど嫌という程分かっていたはずだった。しかし、限界がきた、シュタイナーの精神が弱り始め、それによって今まで保たれていた均衡が崩れ、二人の精神が引き裂かれそうになっていた。半分意識が無くなり、廃人になる寸前だった。ちょうどその頃スパイとして潜入していた《ラフィン・コフィン》と血盟騎士団率いる殲滅部隊との全面対決の際、彼と出会った。

《白の剣士》シオンという男に––––––

『お前、一体なに者なんだ?』

『・・・・・』

『答える気もなしかよ、まるで廃人にでもなったかの様だな』

『・・・お前は』

『あん?』

『何のために、戦っている?』

バーデンなのか、それともシュタイナーなのかその時は本人ですら分からなかった。だが不思議とシオンにその問いを投げかけたのかは疑問には思わなかった。

『・・・みんなを護るためだ』

『フン・・・甘いな』

『なに・・・?』

彼を知りたい––––––
そんな僅かな好奇心が意識が混ざり合ったシュタイナーの口を開かせた。

『お前じゃ誰も守れない。目の前で仲間が無惨に死んでいく様を見るだけだ』

瞬間、シオンの瞳は赤黒く染まった––––––

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「テメェ、どういうつもりだ?」

「お前に頼みたいことがある」

シオンは胸ぐらを掴まれながらもバーデンの顔を見て短くそう言った。

「クソガキの件か?」

「ああ」

「断る」

「シューが死ねばお前も消えるぞ」

「んなこたぁ分かってる。でもな、コイツ(シュタイナー)が受けねぇんだよ。自分の分(・・・・)をな」

雪羅はその意味深とも取れる言葉を理解することが出来なかった。

「どういう、ことだ・・・?」

「クソガキは、手術を受けずにそのままドナーになるってことだよ」

「おい、そんなことをすれば下手すりゃ・・・」

「狭心症とはいえ、ストレス度合いによっちゃあコイツは死ぬかもな」

「だったら・・・」

「それでもクソガキは受けねぇ。それがコイツなりの償い(・・)なんだろうよ。咎人(とがびと)とはいえ、数多の人間を殺してきたんだ。いくら俺が手を下したとはいえ身体はコイツのモンだ、何も思わねぇはずはねぇ・・・」

バーデンは拳を握り締め、悔恨の想いを馳せていた。
例え心は違おうとも、身体はひとつ。
その身体に染み付いた血の呪縛からはそう簡単に抜け出すことはできないのである。

「血塗られた魂は死をもって償うってことか・・・」

「そういうことだ。分かったら諦めて––––––」

「だったら、羽交い締めにしてでも受けさせるしかないよな。手術」

「・・・・・は?」

雪羅は先ほどの話が無かったかのように手術の話をしだした。
バーデンはコイツは馬鹿なのではないかと思わせるような呆れた顔で言った。

「聞いてなかったのか?クソガキは償いをだなぁ・・・」

「聞いていたさ。聞いていたからこそ、そんなくだらねぇ事で死なせねえって言ってるんだよ」

呆れてものも言えなかった。元からこういう性格であることはバーデンも重々承知していた。
事情なんて知った事ではないと、他人の領域にズカズカと入り込んでくる馬鹿野郎。そう理解していたが、まさか他人の死に場所に対して『くだらねぇ』の一言で介入しようとは思ってもいなかった。

「それに、話さなきゃならないこともあるしな・・・」

「なに?」

雪羅は一言言い残し、その場から去って行った。

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一人目は誇らしかった。
二人目は感謝もされた。

次々と増えていく人、人、人。

そして行き着いた先、そこには(おびただ)しい屍、むせ返るような憎悪の感情、そして–––––
















感情の欠片を喪った心だけだった。
 
 

 
後書き
久しぶりの投稿でいつもの文章が2倍増しで妙なことになっている作者です。
日常や就活が忙しく、頭の中で作品の構図を考え、もとい妄想をしながら過ごしていました。
最近ではFGOにハマり、つい先月人理を修復したばかり。
しかしこのままではマズイと思い、本腰を入れて書かせていただきました。

これからも《白の剣士》を応援よろしくお願い致します!

感想、評価を温かい目でいただけると有難いです!

ではでは〜三( ゜∀゜)ノシ


 
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