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ソードアート・オンライン‐黒の幻影‐

作者:sonas
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第2章 憎愛のオペレッタ  2024/08 
  エピローグⅡ:再会への序章

 
前書き
まじょはひとりで、女の子の前からきえてしまいました。

どんなにがんばっても、まじょはまじょのままで、わるいことをしたことはきえてくれないからです。

だから、わたしはまじょと会える日を待つことにしました。

まじょがじぶんを許せて、ふつうのおねえちゃんになれるまで。それがいつになろうとも、いつまでも。




こんどは、もっといろんな場所へ一緒に行こうね。         おねえちゃん。
 

 
 暗く、仮想の陽光さえ届かない、地表の奥底で石に閉ざされた空間。
 幾つもの檻で仕切られたその場所は監獄エリアと呼ばれる。プレイヤーがSAOにおけるハラスメントに抵触した行為を働いた場合に現行即時のシステムアナウンスからの処理によるか、乃至は主街区の衛兵NPCに捕縛されることでほぼ強制的に連行される。服役中の労働や特殊な拷問等はなく、ただ湿った牢屋に四六時中押し込められるのみ。しかし、刑期が明示されないまま牢に繋がれるこのシステムは終わりの知れない束縛を意味しており、ともすればサービス終了――――考え得るものがあるならば、100層フロアボス撃破時までか、或いは牢獄の外にいるプレイヤーが全滅するまでか――――まで拘束されることも考慮しなければならないだろう。なにしろ、監獄エリアについては情報も乏しい。攻略する上では不必要であり前線にいるプレイヤーはまず興味を示さない。カラーカーソルの色を変えて身を以て情報収集をするという伊達者の酔狂も、この場合においては鳴りを潜めるというもの。圏内の最奥で、更には自由意志で圏外に足を踏み出せないという特性を注視すれば《安全性の保障されたシェルター》という側面を見出せるかも知れないが、それでも精神衛生上は好ましくないだろう。
 事実、グリムロックはそれらの邪推を挟むことなく監獄へ向かった。システム上咎められることのない罪を償い、己を見直すために、グリーンカーソルでありながら衛兵NPCを介して牢へ入る為に《出頭》なるシステムによって、外部から隔絶された独房へと籠ったのである。

 しかし、どれほど自問自答しようとも、彼の思うような帰結には辿り着けなかった。
 思うような帰結とは即ち《納得のいく答え》だ。妻を殺めた罪を正に受け止め、妻の思いを見定める。例え遅かろうとも、それはグリムロックが自ずから導いた償う意思であった。しかし、その答えが見つかることはなかったのである。加えて彼の本質は決して辛抱強くはなかった。妻殺しの過去は代えられない。それが外的要因が重なったとはいえ彼の弱さがなくしては成立し得ない事件であったのだから。
 そこからは簡単だった。彼の投獄当初の決意は徐々に歪み、形を変えていった。
 自らの納得する答えを得ようとした。自らの心の傷に目を背け、事実を歪曲させながら、誰かに責任を求めながら。
 妻の最期の思いを見定めようとした。しかし、忘れたい記憶を想起するのは苦痛だったのでいつしか忌避するようになっていた。
 そうするうちに、いつしか罪を償おうという思いはグリムロックの中から霧散していた。監獄とはただ彼にとって誰とも接せずに済む居心地の良い場所であって、刺激のない退屈な空間だからこそ彼の苦痛に彩られた心を緩やかに麻痺させてくれた。目的と手段を取り違え、志を失った彼はさながら骸のように生気を欠けた日々を漫然と過ごすだけになっていた。強いて言えば、まだ彼には監獄へと突き動かした罪悪感だけが残っていた。罪を償うどころか、罪を認めさえしない自分に彼はどれだけのやるせなさを覚えただろうか。その浅ましさに、弱さに、どれだけ焦燥を募らせただろうか。そうして負の感情を奥底に澱として堆積させた結果として、グリムロックは感情の機微を破綻させてしまった。

 それが、どうして、どこで、どのように歯車が狂ってしまったのか。
 どんなに自問しても彼には答えなど見出せない。いや、思考の堂々巡りに嵌っていた方がまだ楽だったのだろうか。《答えを求めるため》ではなく《眼前の事象から現実逃避するため》へと、思考という行動の目的を変容させていたのだ。一時の麻酔としての機能ならばいざ知らず、根本からの治療には程遠い。故にこそ、目の前の独房に姿を現した因縁の相手、《柩の魔女(ピニオラ)》に対してグリムロックは情けない怯えた表情しか向けられなかった。
 対するピニオラは、意外にも動じる素振りは見せない。ただ柔らかい笑みを浮かべながらグリムロックを観察するように、どこか不気味なくらい穏やかに、備え付けの固い感触のベッドに腰をおろして佇んでいる。
 双方の間には格子を隔てた通路という空間以上に重苦しい沈黙が壁のように横たわる。
 ピニオラが衛兵に牢へと通されてから既に四十余分は経過した。その間、グリムロックは叫び出しそうな形相にありながら絶叫を喉の奥で押し殺したかのように押し黙り、ピニオラは持ち前の舌先三寸を披露することなく今に至る。


「もーぅ、そんな熱心に見つめられちゃうと照れちゃいますよぉ」


 しかし、端から見れば退屈でどちらかの気まぐれで霧散してしまうような、それでいて重圧を帯びた沈黙は、やはりというべきか、或いは意外にもと評するべきか。呆気なく泡沫のように弾けた。どこか間の抜けたような言葉であるが、水鏡を波立たせる一石としての効力は十分に備えていた。


「………どうして」
「ん~? 質問ですかぁ? 今なら好きな食べ物からスリーサイズまで何でもお答えしちゃいますよぉ?」


 ペースを乱す不協和音じみた軽口を織り交ぜつつのピニオラの言葉を受け、グリムロックは僅かに怯むものの、破られた均衡に任せて喉に淀んだ問いを吐き出す。


「…………在り、得ない………どうしてお前が……お前なんかが此処にいる!?」
「居たら不都合でもありますぅ?」


 ピニオラは不思議そうに首を傾げながら、狼狽するグリムロックを見る。
 そう。事実としてピニオラがこの場に、更には牢の中にいるという時点で異常な光景ではあるのだ。彼女を知るものであれば、その違和感は際立つし、何よりもグリムロックからすればピニオラは自身を破滅に追い込んだ最たる元凶と認識している。それまで誰とも会わずに済んだ安住の地が、溺死も圧死も凍死も叶わない海底にあるような心地へと変貌するように感じられた。


「悪いことをしたら牢屋に入れられるってぇ、小さな子供でも知ってますよぉ………あ、でもわたしは自分の意思でここに来たわけなんですけどね~」
「自分からだと? そんなこと……」
「在り得ない、と言いたいんですよね?」


 歯切れの悪いグリムロックの言葉を遮り、ピニオラは端的に要点を提示する。
 その後に否定の意味合いを持った言葉を向けられていないことから、ピニオラの発言は的を射たものだったのだろう。ともあれ、ピニオラの得た確証はグリムロックの抱いたそれとほぼ同じ論拠に因るものだ。自身に対する否定的な見解は皮肉ではあるが、事実として過去のピニオラを知る者からすれば、彼女が牢獄に囚われることそれ自体が異常と言えるのだから。
 というのも、それはみことと出会う前のピニオラに起因する。まだ《柩の魔女》と揶揄され、その異名の指す通りの禍々しい異常者として正しく機能していた頃を振り返れば誰しもが思い至るだろう。ただ己が享楽の為に面白可笑しく、SAOのシステムや人心を操って他者を死に追い遣った魔女の精神性において、その道徳性において、自らの罪を衛兵NPCに懺悔するなど考えにすら及ぶまい。自らの意思で監獄に至ったピニオラでさえ、こうなるとは露程も思っていなかったのだからそれを何よりの証左とするべきか。
 ならば、そんな動機の知れない彼女の不審窮まる行動に、どのような言が待ち受けるか。それは自明の理とも言える。


「ふざけるな! 罪悪感の欠片も持ち合わせていないようなお前がここにいるなんて、あっていい筈がないッ!!」


 そう、糾弾だ。
 やや語気を荒げたのは平静を失ったが故であるものの、その本質は正鵠を射ていた。
 彼でさえそんな《柩の魔女》を頼った経緯はあれ、その点について揚げ足を取るような真似をする意思はないとばかりにピニオラは静聴する。途中に反論も弁明も挟まない。ただ述べ猛る全てを受け止めて、訥々と頷くだけ。というのも、自身の内に《謝意を示す》という感覚がない上に、確たる手段さえ持ち合わせてはいない。

 ピニオラの他者との交流はあくまでも計算と予測に基づく。感情を揺さぶり、人心を操作していたことによって為していたこれまでの行い(創作活動)は全てその経験則に則ったものである。故に精神性を問われる場合、具体的に相手の感情に向き合っての応対は極めて脆弱であることを意味する。単純に要点だけを述べるならば《ピニオラはまだ誰かと心から向き合った事がない》のである。いや、彼女の人生において厳密には()()()()存在するのだが。
 更に、グリムロックと向かいの牢に入るという事態はピニオラでさえ想定外であった。グリムロックがピニオラとの再会を望まなかったそれとは意味合いが異なるだろうが、ピニオラは自身が《柩の魔女》として関わったグリムロックを始めとする被害者達との縁は既に途切れ潰えたものだと判断していたのだ。つまりはそれら全てを過去のものとして清算したつもりになり、贖罪の手段さえ知らない彼女が知る最も模式的で象徴的だった最たるものとして自ら禁固刑を課したものこそが現状の彼女の有り様であり、それによって自分が《贖罪を行っている》と納得しようとしていたというのがピニオラの出頭の全容。都合の良い解釈で辻褄の取れない絵空事のような話なのだろうが、善悪の思考が曖昧な彼女が辿った事実である。
 まさか被害者を前に、自分だけ納得づくの形式だけの罪滅ぼしを晒そうとは夢にも思うまい。小説よりも奇異なシチュエーションを幾度となく仕立て上げた彼女でさえ、これほど自らが運命に翻弄されるとは夢にも思わなかったことだろう。先のグリムロックへ向けたふざけた言葉は、ある意味では咄嗟の防衛本能に近いものだったのかも知れない。誰かの激昂を変化として予見しながら、それを正しく受け止めるという未知に対する防衛本能。未だ感情を認知したばかりの彼女には、ただ漠然とそれが鋭い凶器じみた何かとしか実感できなかったのだから。


「………確かに、おかしいですよねぇ」


 しかし、ピニオラは頷く。


「これまでのわたしなら、きっとこんな面倒なことはしなかったでしょうから、そう言われると自分でも強く否定できないんですよねぇ」


 苦笑を浮かべながら、呆れたというような風情に言う。
 だが、グリムロックを見据えるピニオラの目には後ろ向きな曇りは一切ない。その一点、迷うことなく彼女を監獄エリアへと誘ったその覚悟こそがグリムロックとの大きな差異であった。


「でも、わたしにはどうしてもこれまでの清算を行う理由がありましたので、ここにいるんですよぉ?」


 言葉に虚飾は無かった。それら全ては事実であった。
 罪の意識が欠落していた彼女にとって、最善の行動が監獄への出頭であっただけ。それは決して妥協などではなく、純粋にその手段に縋るしかなかっただけ。
 死した誰かに頭を下げても、既に終えた事象を顧みるようで意義を見出せなかった。
 残された誰かに赦しを乞おうとも考えたが、最悪の結果を想像すると決断が下せなかった。
 だからこそ、ピニオラは自身に裁定を委ねた。それでもその選択肢を否定的には捉えてなどいない。

 そばに居ていいと言ってくれた友人が出来た。
 その贖罪を無意味と断じなかった人と会えた。

 ピニオラの生きた人生の中で、彼女にどれだけの希望を与えたことか。
 果ての見えない、終わらせることの叶わない長い苦悩の一歩目を踏み出させるに際してどれほどの勇気を添えたことか。そして同時に、どれだけ自らに落胆し絶望したことか。

 故にこそ、彼女は監獄に在って縛につく。
 これだけで清らかになれるなどとは思わない。
 けれど、せめて、犯した罪に誠実に向き合うことが出来るのならば、それは無駄ではないと彼女は結論付けたのだから。

 しかし、それらの思いは決して口に出さなかった。彼が自分の経緯に興味がないことくらいは理解している。自分にどれだけの糾弾や罵声を向けられても構わないが、自身が見出した希望を貶されることだけは堪えられないと思い至っての決定だった。


「………それで、貴方はどうしてここに居るんですかぁ?」


 そしてピニオラは微笑を隠し、グリムロックを見据える。
 端的にとはいえ、グリムロックの問いに答えた。ならば、次に行うべきはそれこそ今ここに機会を与えられた贖罪を為すに必要なプロセス、《被害者に向き合う》為に彼を知らなければならない。


「………ッ、それは………」


 当然、グリムロックは答えられない。
 監獄エリアでの自身が如何に落ちぶれたかを語るなど、彼に唯一残された呵責にも似た矜持が許さなかった。言い淀む苦しげな表情は、同時にピニオラへと何よりも如実に物語った。
 この人もまた、自分と同じく出口が見えていないのだ、と。
 大切な人を失って、その意味に気付いてどうしようもなくなっているのだ、と。
 そこまでの感情は読めても、そこから先、どのように接することが適切であるかがピニオラには分からない。むしろ、かつて自分はこのように悲嘆に暮れる誰かの姿を面白おかしく鑑賞して、飽きたら放って何食わぬ顔で日常に戻っていった。慰める方法など知り得ないし、自身にその権利があるとも思えない。
 でも、グリムロックから感じた痛ましさ、それまで笑いものにしかならなかった被害者の姿を直視して、ピニオラは――――自分にこんな選択肢を選ばせた友人の存在に感謝しつつ、自らに出来る贖罪を模索し、行動を開始した。


「かくいう貴方だって、罪を償う為にここへ来たんでしょう?」


 確証はない。あくまで核心の外側を撫でる程度の精度で構わない。
 ピニオラは敢えて遠回しな問いでグリムロックに向き合う。それはかつて、《柩の魔女》であった頃に用いていた、相手に取り入って煽動するための話術。今のように障壁を築かれた相手に対しての効果はほぼ未知数であるが、話を途切れさせないことが重要であった。


「それとも、ただ何も考えたくないだけでここに来たんですかぁ?」
「違う……違う、私は………」
「えぇ、逃げる為にではなく、向き合うために来たんですよねぇ」


 だがピニオラは、その手練手管を扇動ではなく修正に用いた。
 グリムロックを知っているからこそ、彼がどんな思いでこの場所に辿り着いたのか。今は変わってしまったかも知れないけれど、その切っ掛けは決して後ろ向きなものではなかったはずだ。どんなに歪んでしまっていても、彼が妻を想っていたのはクライアントを観察する過程で理解していた。妻の死に罪悪感を抱かない限り、こんな場所に足を踏み入れるはずがない。
 だからこそ、ピニオラには確信があった。
 グリムロックの一途さと愛の深さには一定の評価を下していた。罪を償うという意思を以て彼は監獄へ踏み入れた。それだけ材料が揃えば、安心して実行できる。それを裏付けるようにグリムロックは力なく首肯して、ようやく声を漏らした。


「………私には、分からなかった。…………妻の思いが、願いが、見えなかった。それらの本当の意味を知ろうともしなかった………自分の理想を押し付けて………私は………私は…………ッ!」


 軋むような声で、グリムロックは吐露する。
 自身の受け入れねばならない罪、今もなお理解できない妻の本当の姿。
 孤独の中でどれだけ彼は堂々巡りの中を彷徨ったのか、摩耗した思考の中でどれだけ踠いたのか。
 許される筈のない罪を背負って、どれだけ苦しみ足掻いたのか。その思いをピニオラは理解し得ない。それでも、被害者に向き合うこと――――その悔いる気持ちを折れないように見守ることは出来る。


「でしたら、これからは余所見も振り返ることも出来ないですねぇ。わたしなんかが言うのもおかしな話なんでしょうけれど、理解しようとしているのでしたら、まだきっと終わりではないです。だからせめて、奥さんにこれ以上愛想を尽かされないように頑張るしかないですよねぇ」
「………なんだか、君にそう言われるのは心外なのだが」
「ヤですねぇ。共犯者同士なんですから一蓮托生ですよぉ。これからお向かいさんなんですから仲良くしましょ?」
「……………………まあ、良くも悪くも縁があったというわけか」


 格子の先、向かいの牢にいるグリムロックの顔を見て、ピニオラは少しだけ安心する。
 惑いや怯えの色を湛えた瞳からは、それらが完全に払拭された様子こそないものの、ほんの少しだけ活力が戻り息を吹き返したという印象を受けた。同時に何か観念したように諦める表情も。ともあれそんな彼を羨ましいと思いつつも、自身もまたこの上層に居るであろう友人を眺めるように天井を仰ぐ。

 そう、グリムロックはまだ罪を犯していない。
 彼にはやり直す権利がある。間接的に彼にその機会を与えた人物(スレイド)や、楽しむためだけに他者を害した柩の魔女(ピニオラ)のように、もう後戻り出来ない罪人ではないのだから。

 ならば、せめてと、彼を見守ることにした。
 彼がこのゲームから解放されるその時まで、最後の物語を編纂しようと決めたのである。

 それは一人の夫が、罪を悔い、贖罪を重ねながら牢獄の中で葛藤する物語。
 終わりなき暗闇を抜けて、どこかの病室の一室で亡くした筈の妻と再会する物語。
 その結末にて、彼は事実と向き合わなければならない。
 妻が真実を知っていたら、その向けられる感情を受け止める覚悟をしなければならないだろう。
 妻が真実を知らなかったら、彼は誠実に告白するか、その一切を胸中に秘めて生きねばならぬだろう。
 だが、ピニオラには二つの確信があった。
 SAOから解放されたグリムロックは、必ずや不誠実な嘘で誤魔化さないだろう、と。
 その物語の幕引きは、決して絶望的なかたちにはならないだろう、と。

 あまりにも確実性に欠ける確信だ。まだ見たことのない誰かを楽観視する危険な見通しだ。
 それでも、ピニオラはこれから始まる物語に悲観的なエピソードを持ち込まない。
 その最後の終止符は幸福であらねばならないと、半ば決めつける強い意志に浮かされているようで、その全てを必然として他者を殺めた《柩の魔女》とは対極的な在り方へと、ピニオラは自分で気づかないままに至っていた。

 どうか、この主要人物たちに良きエンディングが訪れるように。
 我ながら奇妙なものだと苦笑を零しながら、なんとも言えないくすぐったさを愛おしそうに(いだ)きながら、そっとベッドの上に寝転がった。 
 

 
後書き
2部2章エピローグ、ピニオラさん視点回。

時系列はピニオラさんがみことと別れた後、そこから数十分後となります。
かつての共犯者にして見方によっては被害者もであるグリムロックさんとの再会もあり、《グリセルダさんの生存を知るキャラ》としてピニオラさんにしか出来ないグリムロックさん救済エンドに仕上がったかと思います。
そして、直接生きていることを伝えなかったり、敢えて安心させないことでグリムロックさんを反省させるように仕向ける。そんな彼女が人の心を知らないというのは文章的に矛盾が生じているようにも思えるでしょうが、これはニュアンスの問題です。人の感情を化学変化のように捉えるか、それともそのまま心の変化として捉えるかの差異であって、ピニオラさんは前者の認識の仕方をしていたことになります。そもそも他者を同格の人間と認めていなかった彼女にとっては《Aという感情に対してどのように心理が揺らぎ、どのように行動するか》に重きを置いていたのであって、嬉しいやら悲しいやらといったそのままの意味で捉えていなかったことになります。場面によって飄々とした軽口を叩いていたのは、それらの要因による《空気の読めなさ》が理由となります。有り体に言えば《感情の認識と知識が結びついていない》というところでしょうか。


ともあれ、これにてラフコフ討伐編もといピニオラ編は終了となります。
死別という幕引きばかりのピニオラ創作シリーズの最終作は、少しだけ明るい題材っぽいですね。作風変わり過ぎてちょっと不安になります、先生。それとピニオラさんお疲れ様でした。





ではまたノシ 
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