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風魔の小次郎 風魔血風録

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65部分:第七話 力と力その一


第七話 力と力その一

                  第七話 力と力
「あの・・・・・・」
 姫子が俯きつつ思い詰めた顔で言葉を出している。
「ずっと迷っていてどうしようかと思っていたんですけれど」
「ええ」
 それに小次郎が応える。二人は今向かい合っていた。
「こんなこと御願いするのはどうかと思うんですけれどどうしても」
「いえ、いいんですよ」
 思い詰めた感じの姫子に対して小次郎はあっけらかんとしたものだった。
「全然ノープロブレムですよ。この小次郎姫様の為なら例え火の中水の中」
「そうですか。それじゃあ」
「はい、是非共姫様の為に!」
「わかったから黙ってろ馬鹿」
「勝手に出番を決めるな」
 ここで兜丸と劉鵬から左右同時に後頭部をはたかれる。それで頭を卓にぶつける。見れば風魔の面々が卓に座っている。霧風は部屋の後ろの襖のところに立っている。姫子の隣には蘭子が控えている。
「だってよ、姫様の御願いだぜ。動かないと駄目だろ」
「だから御前に言ってないだろ」
「小次郎君、でしゃばるのはよくないよ」
「ちぇっ」
 小龍と麗羅にも言われて口を尖らせる。一応彼が上座の位置にいて左右に兜丸と劉鵬、その隣にそれぞれ麗羅と小龍がいるのだった。
「それで柔道大会ですけれど」
「はい」
 劉鵬が姫子の言葉に応える。
「それの助っ人ですね」
「また事故で主将を含む主力選手が負傷した」
 蘭子が述べる。
「ランニング中にトラックが突っ込んでだ」
「またですか」
「そうだ。おそらくは」
「誠士館だな」
 小龍が呟く。
「相変わらずえげつないやり方を好むな」
「それで部員が足りなくなったんです」
 姫子が困った顔であらためて述べる。何気に悩ましげな顔も整っている。
「四人しかいなくて」
「四人ってことは試合が五人だから」
 小次郎はそれを聞いて頭の中で計算する。
「あれか。一人足りないな」
「それでだ。よかったら誰か助っ人に」
「じゃあ俺!」
「御前は駄目だって言ってるだろ」
 右手を挙げて名乗り出た小次郎に兜丸がまた言う。
「いい加減日本語理解しろよ」
「ちぇっ、駄目なのかよ」
「体術ならやっぱり林彪さんですけれど」
「あいつはまだ無理だな」
 麗羅に霧風が答える。
「もう少し安静にさせておこう」
「そうですね。やっぱり」
「俺と御前は前に出た」
 兜丸はその霧風に告げる。
「だから駄目だな」
「僕も出ましたし」
 麗羅も言う。
「小龍さんも」
「そうだ。それに俺は柔道とかそういったものは得意じゃない」
「僕もそうですしね」
「じゃあ俺が余計に」
「小次郎、御前本当に日本語わかってねえのか!?」
 兜丸も今回は流石に呆れた。
「だから御前は静かにしていろ。ただでさえ目立つんだからな」
「ちぇっ、駄目かよ」
「というとだ」
 小龍はここで残る一人に顔を向けた。
「残るは」
「そうですね」
「一人しかいないな」
「んっ!?」
 劉鵬は皆の視線に気付く。そのうえでまず目をしばたかせて言う。
「ひょっとして俺か?」
「そうだよな、やっぱり風魔でそうした話で一番出て来るのは」
「劉鵬さんしかいませんね」
「そうだな、やっぱりな」
「俺って。けれど忍だしよ」
 兜丸、麗羅、小龍に応える形で述べる。
「目立つのはあまり。それにこういうのは」
「いや」
 だがここで最後の一人の言葉が出た。何時の間にか竜魔が姫子と蘭子の後ろに正座していた。そこではじめて気配を出してみせたのだ。
 
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