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風魔の小次郎 風魔血風録

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50部分:第五話 メッセージその八


第五話 メッセージその八

「御前も来たのか」
「いつも俺は兄者と間違われる。だが俺は」
「こらこら小龍」
 怒る彼を劉鵬が窘める。
「そう言うことはないだろ。この世でたった一つの兄弟だぞ」
「そんなことは関係ない、忍の世界では」
「それも違うぞ」
 劉鵬は今の小龍の言葉にも反論する。
「御前はそういう尖がっているところが駄目なんだよ」
「俺はだ。別に」
「わかったから静かにしていろ」
 竜魔がいいタイミングで彼を止める。
「そうした話は飯の時にはするな。いいな」
「・・・・・・くっ」
「小次郎、御前はもう少し落ち着いて食え」
「おろっ!?」
 見れば大きな丼に飯を山盛りにしてそれをかっ込んでいる。
「身体によくない」
「ああ、そうなのか」
「御前、怪我は大丈夫なんだな」
「まあ一応はな」
 兜丸に対して応える。
「今日から本格的に修行を再開するぜ」
「相変わらず怪我の回復は早いな」
「それが小次郎の利点だな」
 林彪もそれを聞いて微笑んで言う。彼は味噌汁を飲んでいる。
「回復力では風魔でもトップクラスだ」
「頭は最低だがな」
「ちぇっ、またその話かよ」
 こう言われてまた苦い顔になる。
「俺ってそんなに馬鹿かよ」
「自覚しろ、自覚」
 劉鵬もいつものように言う。
「今回だってどれだけ馬鹿やってるんだよ」
「ちぇっ」
「まあとにかく今日は林彪と項羽を残してコンクールに行くぞ」
 劉鵬は皆に告げた。
「それでいいな」
「ああ、じゃあ俺は姫様のお側に」
「一つ言っておく」
「おろっ!?」
 何時の間にか小次郎の後ろにはもうセーラー服に着替えた蘭子が立っている。腕を組み堂々と仁王立ちしている。
「姫様に変な真似をしようものなら私が断じて許さん」
「わかってるよ。何時の間にいたんだよ」 
 その蘭子に言葉を返しながらまた苦い顔になる。何はともあれ小次郎達もコンクールに向かう。姫子及び会場の警護がその目的だ。要所や姫子の周りに立っている。会場は白い壁に様々な絵が飾られ観客や審査員達が行き来している。その審査員達が見ているのは誠士館の絵であった。
「まずいですね」
 姫子は審査員達が誠士館の絵を見ているのを遠くから見て困った顔になっていた。
「あのままではあの絵が」
「そうですね」
 その言葉にいつものように姫子の傍らにいる蘭子が頷く。
「このままでは」
「いや、大丈夫でですよ姫様」
「小次郎さん、どうしてですか?」
「だってあの絵贋作だから」
「えっ、贋作!?」
「まさか。あの絵は」
 姫子も蘭子も小次郎の今の言葉には思わず声をあげた。顔も驚いたものになっている。
「蘭子、芸術図鑑のな」
「あ、ああ」
「七巻の百二十ページだ」
 こう蘭子に告げた。
「そこを見てみな。そっくりの絵があるからよ」
「七巻の百二十ページ」
「蘭子さん、ここです」
 姫子が図鑑を持って来た。もうそのページを開いている。
「ここにある絵ですね」
「すいません、姫子様」
「ほら、見てみなよ」
 そのページの絵をまず指し示す。
「この絵の服は青だけれどあの絵のは」
「赤、ですね」
「それだけだよな」
 今度は誠士館の絵を指差しての言葉だった。
「そういうことさ。偽物なんだよ」
「じゃあコンクールは」
「こっちのものになるな」
 にこりと笑って姫子に告げる。
「何はともあれよかったよかった」
「ええ、確かに」
「あれは白虎の絵か」
 竜魔がここで蘭子の横に来て言った。
「白虎か」
「そうだ。夜叉八将軍の一人」 
 また八将軍だった。
「夜叉の中で最も他者の技を盗むことに長けているものだ」
「厄介な男だな」
「今回の戦いにも参加していた」
 彼はまだ彼が項羽に化けていることに気付いてはいない。怪しいと思ってはいても。
「項羽により戦線離脱したが。それでも置き土産はあったということだな」
「そうだったのか」
「だが。それも小次郎により潰えた」
 竜魔はそのうえでこう述べる。
「小次郎、よくやったな」
「まあ俺は違いがわかる男だからな」
「違いか」
 小龍は出入り口のところの壁に背をもたれかけさせていた。そこで小次郎達の話を聞いていたのだ。
 
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