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風魔の小次郎 風魔血風録

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34部分:第四話 白い羽根の男その三


第四話 白い羽根の男その三

「ほらほら」
「止めろつってんだろ!」
 その矢の羽根の部分で小次郎をくすぐりだす。兜丸はそれを門の上のところに手をかけながら笑って見ていた。
「はじまったな、項羽の悪ふざけが」
「もう完全に風魔名物だな」
 横に林彪が来て言う。彼も笑顔だ。
「おお、不知火のあれはよくやったな」
「相手は生きているがな」
「それでもあの勝利は大きいさ」
 こう林彪に告げる。
「大金星だぞ」
「だったらいいがな」
「それでだ。項羽は」
「何か小次郎さんにはいつもああですよね」
 麗羅も来て兜丸に声をかけてきた。
「あれは項羽の愛情表現なんだよ」
「愛情表現ですか」
「そうだ。あいつなりのな」
 竜魔も門のところに来て言う。
「そうなんですか。そういえば」
「どうした、麗羅」
「いえ、項羽さんと小龍さんですけれど」
 麗羅はふとした感じで小龍の名前を出してきた。
「仲悪いですよね」
「ああ、まあな」
 麗羅のその言葉を聞いた劉鵬が難しい顔になる。
「それはな」
「実の兄弟なのに」
「項羽は普通に兄としてあいつに接してるんだがな」
 林彪はこう麗羅に説明する。
「あいつはいいんだ。だが小龍がな」
「小龍さんがですか」
「そうだ。あいつが問題だ」
 竜魔もそこを指摘する。
「あいつが意識しているだけだ」
「そうですか。それで」
「それはそうと麗羅」
「はい」
 今度は劉鵬の言葉に顔を向けた。
「御前今度は出陣だったな」
「項羽さんのサポートですけれど」
「だったら掃除の後でぼちぼち行けよ。項羽は先に出陣ですか」
「そうですか。項羽さんが先に」
「夜叉は白虎と紫炎だ」
 劉鵬の顔が少し険しくなる。
「手強いぞ」
「項羽さんに紫炎」
 麗羅は紫炎と聞いて顔を曇らせる。
「何か危なそうですね」
「羽根だからな」
 林彪も顔を曇らせる。
「あいつは他の相手ならともかく火が相手だとあまりにも分が悪い」
「しかもだ」
 劉鵬の言葉が麗羅を決意させた。
「自分では気付いていない。だから」
「僕も、ということですね」
「そうだ。わかったら」
 竜魔がここで麗羅に告げる。
「今回御前も出陣させる理由が」
「はい、それは」
「何かあればフォローを頼む」
 真剣な顔で麗羅に告げる。麗羅もまた真剣な面持ちだった。
「項羽をな」
「わかりました」
「項羽を失うわけにはいかん」
 竜魔は相変わらずその右目で項羽を見ながら言う。
「何があっても」
「風魔一族は皆兄弟なんだ」
 劉鵬の言葉は何時になく大きな響きを感じさせるものだった。
「誰も兄弟が死んで喜ぶ奴はいない。そうだろ、麗羅」
「はい」
 劉鵬のその言葉にも頷く。
「だからだ。頼むぞ」
「わかりました」
「あいつにしろそうなんだがな」
 兜丸は小次郎を見ていた。
「あの馬鹿、無鉄砲な真似ばかりしやがって」
「全くだ」
 林彪は腕を組み自分の木刀をそこに抱え込みながら小次郎を見ていた。
「あいつの馬鹿はなおらないな」
「馬鹿は死んでもなおらないっていうがな」
「あいつは暫くは出撃させない方がいいな」
「そのつもりだ」
 竜魔が劉鵬に答える。
「今出したらその時は」
「その時は」
「あいつが死ぬ」 
 こうまで言い切る竜魔だった。
「だからだ。今は」
「そういうことだな。おっ」
 兜丸はここで後ろの気配に気付いた。霧風が来たのだ。
「何処へ行くんだ?」
「偵察だ」
 霧風はこう兜丸に答えた。
「偵察か」
「今夜叉八将軍は誠士館に集結している」
「ああ」
 これはもう誰もがわかっていることだった。しかし霧風はそれをあえて言ってみせたのだ。
「ならば。それを利用させてもらう」
「八将軍が制圧していた八つの地域への偵察か」
「そうだ」
 仲間達の方を見ずに答える。
「どうやら近頃怪しい男達も出ているようだしな」
「怪しい男達?」
「あれか」
 一同が顔を顰めさせた時に竜魔だけが答えることができた。
「白い超長ランに銀色の髪と目を持つ」
「銀色の髪と目ですか」
 麗羅がそれを聞いてその流麗な眉を顰めさせる。
「また随分と変わった格好ですね」
「だからこそ目立つ。それに噂では」
「うむ」
「近頃あちこちの忍の里が襲撃を受けている」
 霧風は言う。
「どういった理由はわからないが。それで大きなダメージを受けた忍もある」
「何っ、それは本当か霧風」
 林彪はそれを聞いて顔を曇らせた。
「それは尋常じゃないぞ」
「だからだ。風魔の里には夢魔が残っているが」
「ああ」
 一同は夢魔の名を聞いてまずは安心した。
「あの男と総帥がおられればまず大丈夫だがしかしな」
「銀色の髪と目か」
「そんな奴等は聞いたこともないな」
 兜丸は腕を組んだうえで首を捻る。
「何者なんだ、一体」
「そこまでは俺もわからん。だが気になる」
「そうだな」
 劉鵬が霧風のその言葉に頷く。
 
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