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提督はBarにいる・外伝

作者:ごません
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提督はBarにいる×山勘編・その2


「『Bar Admiral』ってのは、ここでいいのか?」

 ドアが僅かに開かれて、覗いた顔は凡そ俺の予想とは異なっていた。あのジジィの知り合いだというから、てっきり同じくらいのジジィかと思っていたが、見てくれはどう見ても俺より若そうだ。

「あ、あぁ。ここで間違いない」

「そうか、なら邪魔させてもらおう」

 入ってきた姿も……なんというか、『異質』な感じだ。背は俺より低く175cm程度、髪は金髪、目の色はサングラスをかけているので窺い知れないが、中々整った顔立ちのようだ。テンガロンハットに紺のダークスーツ、その上からレザーのトレンチコートを羽織っている。スーツの下に隠れてはいるが、かなり鍛え込んでいるのが解る。やはり軍関係者……いや、断定するのはまだ早い。腋の開き具合から見るに、ショルダーホルスターを身に付けている事から察するに、常日頃から銃を携帯している人種だ。

「元帥からの紹介でな、ここで美味い料理と酒を味わえると聞いて寄らせてもらった」

 男は空いていたカウンター席の1つに腰掛けると、名前を告げる事もなくそう言った。やはりこの男があのジジィの知り合いらしい。

「OK解った、上司の知人だしな。丁重にもてなしさせてもらう。……ところで、アンタを何と呼べばいい?」

「名前?名前か……。俺は元警官でな、今は私立探偵をやってるが敵も多い。本名は名乗らない事にしている」

 警官?雰囲気的には刑事の間違いじゃないのか。それも漂わせている雰囲気からして、ヤクザや暴力団のような連中に立ち向かうか、強盗やら殺人犯なんかの凶悪犯を相手していそうだ。または潜入捜査官の類いか。

「もしも呼び名が無いと困るというなら……そうだな、『山勘』とでも呼べ」

 山勘。山勘ねぇ。何となくドラマのベテラン刑事に居そうな『ヤマさん』という名前が浮かんできたが、今は無関係だ。

「ま、そういう事ならそう呼ばせて貰うよ。……んじゃ改めて山勘さんよ、ご注文は?」




「そうだな、奴の話だとここはメニューが無いそうだな?」

 奴、というのはあのジジィの事だろう。曲がりなりにも元帥を奴呼ばわり出来るとは一体どういう関係なのだろう?

「えぇまぁ。材料が有って作れる物なら何でも作りますよ」

「では、ビールを貰おう。この国は暑くてな、キンキンに冷えた奴を頼む。あぁそれと、ビールに合う肴もな」

 和食か中華で頼む、との追加注文も受けたので、お通しをつまみながら少しお待ち頂こう。ビールを出すのは早霜に任せ、俺は作り置きしておいたお通しの調理に取り掛かる。とは言ってもシンプルな一品だから、然程難しい物でもない。

《手軽に、手羽中の塩麹焼き》

・手羽中:食べたいだけ

・塩麹:肉にまぶせる位

・ごま油:適量

・酒:肉100gに対して大さじ1.5くらい

・黒胡椒:適量

※その他レモンや七味、ゆず胡椒等は自分のお好みで

 手順は簡単、手羽中に塩麹をまぶして揉み込み、暫く放置。一晩くらい置くと味がよく染み込むし、柔らかくなるぞ。ちなみにだが、大量に作ってジップロックで冷凍しておくのもオススメだ。焼くだけじゃなく煮物やスープなんかにも応用できるからな。

 寝かせて味が染み込んだら、フライパンでごま油を熱し、そこに漬け込んだ手羽中を投入。塩麹は焦げやすいので、中火より少し弱いくらいでじっくり焼く。肉に焦げ目が付いてきたら酒を入れて蓋をして蒸し焼きにする。酒の水分が粗方飛んだらOKだ。後は盛り付けて、仕上げに黒胡椒をガリガリと振ったら完成だ。

「お待たせしました、ビールです」

「こいつはお通しの『手羽中の塩麹焼き』だよ。好みで七味なりゆず胡椒を足して食ってくれ」

 冷凍庫で凍らせておいたジョッキに、キンキンに冷えたビール……銘柄はスーパードライをチョイスした辺りは流石だ早霜。泡に少し霜が混じったそれを、ズズズと啜る。そこからグビリ、グビリと喉を鳴らしながらジョッキの半分程を飲み干してプハーッと息を吐き出す。そして手羽中に手を伸ばし、片手で持って骨から肉を歯で剥がし取る。ゆっくりと味わうように噛んでいたが、

「……ビールに合わせるには少し甘いか」

 とぼそりと呟き、手近にあった七味をまぶしていく。この間左手のジョッキは掴んだままだ。七味をまぶした手羽中に改めてかぶりつく。二度、三度と噛み締めて、納得したように頷くと持ったままだったジョッキに口を付けた。こんがりと焼けた鶏肉に、ビール。これが合わない道理がない。

「お通しだけで実力が窺い知れるな。次の料理も期待している」

 フッと口角を上げて笑ってみせる山勘の飲みっぷりに見とれていて、手が止まっていた。急いで『餃子』の仕込みに入ろう。




《秘伝!我が家の餃子》
・豚挽き肉:400g

・醤油:大さじ2

・胡麻油:大さじ3

・酒(日本酒か調理酒):大さじ3

・創味シャンタンDX:大さじ3

・胡椒:小さじ1

・おろし生姜:大さじ5

・ニラ:2束

・白菜(キャベツでも可):1/8玉(100g位)

・長ネギ:1~2本

・玉ねぎ:2個

・餃子の皮(大判):大体80枚くらい

・片栗粉:大さじ4

・水:適量


 ウチのお袋の得意料理の餃子。ウチの特徴はにんにくをいれずにニラをはじめとした香味野菜でそれを補っている所だ。まずは豚挽き肉に醤油、胡椒、酒、胡麻油、酒、おろし生姜、創味シャンタンを加えて粘りが出るまで混ぜておく。ジューシーに仕上げたいならシャンタンをお湯に溶いてゼラチンで固め、煮凝りもどきにして混ぜてやると食べた時にジュースが溢れ出すぞ。……まぁ、そうなると焼き小籠包か焼き餃子か境界が曖昧になってくるが。

 次に、香味野菜を刻んでいく。ニラは小口切り、長ネギは白い所をみじん切り、玉ねぎもみじん切りにし、肉に加えてねっとりとまぜておく。

 餃子のタネの最後は、白菜。細切りにしてから小口に刻み、片栗粉大さじ3をまぶして白菜の水分を封じ込める。これもジューシーに仕上げる上に餃子が破れにくくする為の一手間だ。

 肉→香味野菜→白菜の順が良い、というのは彼の中華の達人・陳健民氏の語っていた点心作りのコツだ。餃子に限らず小籠包や焼売、肉まん等もこの手順で混ぜると味が染みやすくてタネが纏まりやすい。


 餃子の皮も作れなくは無いんだが、今回は市販の物で時間短縮。皮の端に水を付けて、要領よく包んでいく。数が多いので、早霜にも手助けを頼む。

「すまんが灰皿を貰えるか?」

 山勘が懐から煙草を取り出していた。

「すまんが手が汚れているからな。……武蔵、灰皿を共有してやってくれ」

「あぁ、構わんぞ」

 ウチの愛煙家達も結構な量を吸うので大きめの灰皿を準備している。申し訳無いが共有して貰おう。

「へぇ……ラキストか」

 餃子を包む手は休める事なく、山勘と会話を交わす。

「あぁ、幸運を呼び込む煙草でな。コイツを吸うようになってから犯人を逃した事は無い」

 そう言って顔を綻ばせながら、山勘はラッキーストライクを1本くわえて、オイルライターで火を点けた。

【ラッキーストライク】
タール11mg・ニコチン1mg

 アメリカ産の紙巻き煙草。香りはトーストを焼いた感じと言われる。よく言えば芳ばしい、悪く言えば若干焦げ臭い。個人的にはタール多めの割に重く感じない。煙草味してるので好きな人は好き。俺としては美味いと思う。煙が多いので嫌いな人には煙たがられやすい。煙草初心者にも割と勧めやすい、と思う。臭いには注意(染み着き易い)。


 話が逸れたな。餃子に戻るぞ。焼きに入る前にぬるま湯150ccに残しておいた片栗粉大さじ1を加えて溶いておく。大きめのフライパン(またはホットプレートなど)にサラダ油を引いて、湯気が出てきたら餃子を並べていく。全部並べ終わったら水溶き片栗粉を全体に回しかけて蓋をして蒸し焼きに。ある程度焼いてからの蒸し焼きにするスタイルもあるが、ウチは最初から蒸し焼きだ。この方が火の通りにムラが出ないし、皮がパリパリに仕上がりやすい。※あくまで個人の感想です

 焼き色を見つつ、良い具合に焼けたら切り離して盛り付け。

「へいお待ち、『特製焼き餃子』だ。ウチのは濃い目に味付けしてあるから、何も付けないで食べてからタレを作った方がいいぜ」

 続きは次回! 
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