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提督はBarにいる・外伝

作者:ごません
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提督はBarにいる×山勘編・その1

 
前書き
 今回も読者さんが考案したオリジナルキャラクターの出演するお話です。そしてお酒に並ぶオトナの嗜好品・煙草のお話が沢山出てきます。興味の無い方はご注意を。

※煙草の味などの感想が付いていますが、作者の吸った感想や知人から聞いての情報に基づいて書いております。個人の趣味・嗜好がかなり出ているので、その点も注意してご覧くださいm(_ _)m
 

 

 さて、元帥のジジィの突拍子もない思いつきで始まった『鎮守府の繋がり強化月間』だったが、それとは別口でジジィの奴から幾つかの依頼を受けていて、その内の1つが今宵の客だ。なんでもジジィの知り合いらしく、歓待して欲しいとの事だった。その分のお代はジジィ持ちだし、俺としては全くもって異論はない。

「しかし、いいのか?曲がりなりにも元帥閣下の客人だろ?私達がいたら失礼なんじゃ……」

「いいんだよ。相手さんは普段通りの店にお邪魔したい、って話らしくてな。……それに、月に数度の『喫煙デー』を逃したくは無いだろ?お前も」

「そっ、それはそうだが……」

 そう言い澱んだのは那智。右手にはいつもの達磨のロック、左手には火の点いた煙草が挟まれている。そんなやり取りをグラス磨きをしながら早霜が楽しそうに聞き流している。……そう、今日はBar Admiralの『喫煙デー』なのだ。



 我が鎮守府の喫煙率は他の鎮守府に比べて高いらしい。提督である俺が吸ってるせいもとうぜんあるのだろうが、所属している艦娘の内の2割弱くらいは喫煙者では無かろうか。姉妹が吸っていたから、食後の一服に、酒のお供に、陰鬱な気分の気晴らしに、ただ何となく……理由は様々だろうが、艦娘の喫煙者はウチには確かにいる。勿論、ポイ捨て禁止や分煙・禁煙等のマナーは徹底しているがな。

 そんな中、ウチの店内はどうだろうか。勿論、店主である俺が吸っているのだから客を禁煙にする権利はない。ところが、彼女達の方が自主的に遠慮しているのだ。煙草を吸わない客も多い店で、中々堂々と煙草は吸いにくいモンだ。しかし酒を飲みながら紫煙を燻らせるのは、両者を嗜む人間だと鉄板とも言える組み合わせだ。ならばと、月に2~3回の頻度で喫煙を大いに解禁する日を作ったのだ。煙を吸いたくなければ店に来なければいいし、喫煙者は堂々と煙草を楽しめる。両者にメリットはあれどデメリットはほとんどない。その為か、今夜のBar Admiralは紫煙のせいで薄暗さに拍車がかかっている。一応空調は増設してあるが、間に合っていないようだ。




「しかしまぁ赤マルとは、なんとも那智らしい煙草だな」

「そうか?あまり意識した事は無かったが」

「他の妙高型の連中は吸わんのか?」

「妙高姉さんは吸っていたが……結婚を機に止めた、と言っていたな。止める前はメビウスを吸っていたが」

※煙草銘柄解説
【マールボロ】
タール12mg・ニコチン1mg

 ソフトボックスの上の方が赤いので通称赤マル。(メンソールのボックスは黒が基調)煙草の葉の味が強く、吸っていて飽きが来ない上に匂いは少な目。the洋モクといった感じ。軽いのに満足出来なくなると吸いたくなる。

【メビウス】
タール10mg・ニコチン0.8mg

 元の名前はマイルドセブン、通称マイセン。昔の名前の方が通りがいい奴も多い(ハズ)。マイルドというネーミングが煙害を云々で改名させられた可哀想な奴。さて、味は可もなく不可もなくといった感じ。甘過ぎず苦過ぎず、かといって辛くもない。味の円グラフがあったら真ん丸になりそうな位の平均的な味。煙草ってどんなんだ?と思ったら試してみるといいかもしれない。





「しかし……あのじぃさんの友人というならとんだ食わせものだろうな」

 意地の悪そうな笑みを浮かべながら、武蔵が『ジャック・ダニエル』のグラスを一息に煽る。その傍らにはエコーの箱が置かれている。

「そうですね……私もお会いした事がありますけど、お歳を感じさせないエネルギーのような物を感じましたから」

 そう言いながら煙管をくわえているのは扶桑だ。しかし煙草の葉っぱを詰めるのではなく、アメスピを短く切って煙管に詰めてゆっくりとふかしている。なんともまぁ、和服美人だからこその色気のような雰囲気がある。

「しっかしまぁ、よくエコーなんてキツい奴を……」

「そうか?私は煙草なんぞ吸えれば何でもいいからな。安いに越した事はない」

【エコー】
タール15mg・ニコチン1mg

 いわゆる旧三級品と呼ばれる煙草。解らない人の為に解説すると、JT(日本たばこ産業)というのは日本中の葉たばこ農家からたばこを全て買い上げねばならず、その中には当然低品質の物や煙草にすると不味い部位がある(葉脈など)。それらも煙草にして売らないと儲けは減るので、その救済措置的な意味合いで品質にバラつきの大きい三級品煙草は存在している(昔は一級品、二級品も存在した)。

 かつては500円あれば2箱買ってもお釣りが来る、という時代もあったが、近年の値上がりで500円では1箱しか買えなくなった。少しでも美味しくしようとする努力は重ねられており、スカスカなのですぐに吸い終わってしまうが近年は大分マシな味になった(らしい)。惜しむらくは湿気に弱すぎる。安価にするのに包装も安上がりなせいか、水に濡れたり汗が染みたりすると大惨事になる。

【アメリカンスピリット】
タール8mg・ニコチン1mg

100%無添加というナチュラル煙草。日本で売られている煙草では珍しいタイプ。なんと言っても特徴はその煙草の葉の詰まり具合。ミッチミチに詰まっていると言っても過言ではないレベル。お陰で1本の燃焼時間が長く、長時間じっくりと吸いたい人向け。他のボックスに比べると少し値段は高いが、葉たばこの量を考えると無難なのか?知り合いのマタギのじい様も、扶桑のように煙管に詰めてふかしていた。




 『ジャック・ダニエル』のお代わりを早霜に作って貰っている間に、1本吸おうと思ったのか武蔵が煙草をくわえる。しかし、ポケットをゴソゴソやっているが、ライターやマッチが無いらしい。

「提督よ、火を貸してくれ」

「あん?持ってきてねぇよ」

「現に今煙草をくわえているじゃないか。その火はどうした?」

「めんどくせぇからコンロからの着火だよ。そっちの方が手早いしな」

 前髪が焦げたりする、なんて野郎もいるのかも知れんが、俺は基本的に短髪なんでな、気にした事もない。

「仕方ねぇなぁ……ホレ、顔寄せな」

 俺がそう言うと、煙草をくわえたまま武蔵の顔が近付く。その煙草の先端に、俺のくわえた煙草の先端を押し付けてやり、しばらくすると武蔵のくわえたエコーに火が移った。ま、いわゆるシガーキスって奴だな。

「あ、提督ずるい!私も!」

 そう言って過敏に反応したのはビス子。ケッコンカッコカリしてからか、少し甘え気味な所が出てきた。

「ビス子はダビドフか。たしかドイツの煙草だったか?」

「えぇそうよ、ドイツの産んだ傑作紙巻き煙草なんだから!……そういう提督はオランダの煙草なのね?」

「おう、昔っからブラックデビルばっかりだな」

 そんな事を言うと那智の吸っているマールボロもオランダ産なのだが……まぁ細かい事は言うまい。

【ダビドフ クラシック】
タール10mg・ニコチン0.8mg

 ビス子の言う通り、ドイツ産の紙巻き煙草。吸った感じはしっとりとしていて上品な洋モクといった感じ。癖もなく吸いやすい。置いている店は限りなく少ない。置いている店を発見して、興味があるなら購入をオススメする。

【ブラックデビル】
タール8mg・ニコチン0.5mg

 何と言っても甘い香りが強烈なオランダ産の煙草。俺のお気に入り。チョコやバニラ、ローズやココナッツなど、甘い香りが強いし、吸い込む煙も副流煙も甘い香りがする。俺は気分で吸い分けているが、一番のお気に入りだったチェリーがラインナップから消えてガッカリしている。煙草らしい味は殆んどしないので、煙草の味を楽しみたい人には敬遠される。



 そんな会話をしていると、ドアが数回ノックされた。どうやら、今宵の特別ゲストのおでましらしい。 
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