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英雄伝説~灰の軌跡~

作者:sorano
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プロローグ

ゼムリア歴1204年10月30日



エレボニア帝国内戦勃発――――



「四大名門」と呼ばれる大貴族を中心とし、その莫大な財力によって地方軍を維持し、自分たちの既得権益を守らんとする伝統的な保守勢力である《貴族派》。



平民出身の「鉄血宰相」を中心とし、巨大な帝都や併合した属州からの税収によって軍拡を推し進め、大貴族の既得権益を奪わんとする新興勢力である《革新派》。



両者の立場はどこまでも相容れず、その対立は水面下で深刻化し、皇帝の仲裁も空しく、帝国各地で暗闘が繰り広げられるようになっていた。



そして10月30日。エレボニア帝国が東の大国、カルバード共和国と長年領有権問題で争い続けた自治州――――”クロスベル自治州”の市長であり、IBC総裁でもあるディーター・クロイス市長が宗主国である二大国からの独立を宣言、IBCが預かる各国の全資産の凍結を宣言、クロスベル独立を承認しない限り資産凍結は解除しないとした。その行動によって各国の経済に甚大な影響を与え始めていた。



IBCの資産凍結により、帝国経済も混乱を来し始め、更には真偽は確かではないがここ数日で帝国正規軍の機甲師団が幾度となくクロスベル方面へ侵攻し……その都度、呆気なく撃退されたという”噂”なども広まりつつあった。



混沌としたエレボニアの状況を変える為に『鉄血宰相』ギリアス・オズボーンは帝都ヘイムダルのドライケルス広場にてエレボニア全国民に向けた声明を発表した。



しかし――――発表の最中にてオズボーン宰相はエレボニア帝国を中心としたテロ活動を行っていたテロリスト―――”帝国解放戦線”のリーダー”C”の狙撃によって倒れ、その狙撃を合図に”貴族派”は新兵器である”機甲兵”を駆使して帝都ならびにバルヘイム宮殿を占領、そしてエレボニア皇帝を始めとした多くのエレボニア皇族達を拘束、並びにある場所に幽閉をし、幽閉した皇族達を”大義名分”とした。



一方完全に虚を突かれた”革新派”である帝国正規軍は”貴族派”の軍―――通称”貴族連合軍”に対して激しい抵抗をし続けた。



エレボニア帝国の内戦が本格的に激しくなっている中、内戦勃発時”貴族派”の動きを警戒していたオリヴァルト皇子の依頼を受けた遊撃士―――トヴァル・ランドナーによって帝都から連れ出され、貴族派の魔の手から難を逃れたエレボニア帝国の皇女――――アルフィン・ライゼ・アルノール皇女は12年前の”百日戦役”にて突如現れた異世界の大国―――メンフィル帝国によって占領、そしてメンフィル帝国領化した事でメンフィル帝国に帰属した元エレボニア貴族にして、エレボニア皇家とも縁があるユミルの領主――――”シュバルツァー男爵家”を頼った。



他国の貴族である現シュバルツァー男爵――――テオ・シュバルツァー男爵だったが、今でもエレボニア皇家であるアルノール家を大切に思っていた為、藁にも縋る思いで自分達を頼り、ユミルに避難してきたアルフィン皇女を温かく受け入れ、アルフィン皇女の今後の方針が固まるまで匿う事を決めた。



しかし――――アルフィン皇女がユミルに匿われている事を嗅ぎ付けた”四大名門”の一つ”アルバレア公爵家”の当主であるヘルムート・アルバレア公爵に雇われた”北の猟兵”達がユミルを襲撃した。アルフィン皇女や領民達を守る為に自ら剣を取って猟兵を撃退し続けたシュバルツァー男爵であったが、逃げ遅れた領民を人質に取られて戦えなくなり、そして猟兵達の発砲を受けて倒れた。



その後猟兵達によって誘拐されたアルフィン皇女だったが、奇妙な出来事が起こった。それは結社”身喰らう蛇”の最高幹部である”蛇の使徒”―――第二柱”蒼の深淵”ヴィータ・クロチルダの魔術効果が秘められた”唄”によって操られた猟兵達はクロチルダの暗示によってユミルから去り、漆黒の人形―――クラウ=ソラスを駆る少女―――アルティナ・オライオンによって拘束され、貴族連合の”主宰”である”四大名門”の一つ―――”カイエン公爵家”の当主であるカイエン公爵の元へと連れていかれた。



その翌日、ユミル襲撃の報を知らされたシュバルツァー男爵の子息にして帝位継承権第一位のメンフィル皇女、リフィア・イリーナ・マーシルンの親衛隊に所属しているリィン・シュバルツァーはリフィアの専属侍女長を務め、また恋人の一人でもある義妹のエリゼ・シュバルツァー、エリゼと同じく恋人の一人にして、メンフィル皇女の一人であるプリネ・カリン・マーシルンの親衛隊の隊長兼専属侍女長を務めるツーヤ・ルクセンベールの双子の妹にして”パートナードラゴン”であるセレーネ・アルフヘイム・ルクセンベール、そして事態を重く見た前メンフィル皇帝にして現メンフィル大使であるリウイ・マーシルンとリウイの側室の一人であり、異世界の宗教の一つ―――アーライナ教の”神格者”であるペテレーネ・セラと共にユミルに帰郷した。





11月25日―――――



ユミルに残された爪痕は、思いのほか小さい被害で済んでいた。猟兵の部隊が少人数だったこともあり、幸い犠牲者も出ておらず……郷の住民たちは、翌朝からさっそく片づけを始めていた。



だがリィンとエリゼの父、シュバルツァー男爵は”闇の聖女”と称えられているペテレーネの治癒術やリィンが契約している古神――――”慈悲の大女神”アイドスの”奇蹟の力”を持って危険な状況は脱したものの、意識不明の状態で未だ目を覚まさず……しばらくは経過を見守る必要があるとのことだった。





~シュバルツァー男爵邸~



「…………なるほどな。ユミルが襲撃されたのはそういう事だったのか。そしてその肝心な時にユミルを留守にしていた為、まんまと猟兵達の襲撃を許し、シュバルツァー男爵が匿っていたアルフィン皇女を奪われたという事か、トヴァル・ランドナー。」

ユミル襲撃の事情をシュバルツァー男爵の妻、ルシア夫人と遊撃士トヴァル・ランドナーから聞いたリウイは呆れた表情でトヴァルを見つめ

「………返す言葉もありません………肝心な時に男爵閣下を含めたユミルの方々を守る事ができず、誠に申し訳ございません……」

見つめられたトヴァルは疲れた表情で肩を落とした様子で答えた後頭を深く下げた。

「……その件に関してはエレボニアの内戦に他国である我が国まで巻き込まれる事はないと高をくくっていた我等メンフィルにも落ち度があるから謝罪する必要はない。それで?お前がユミルを留守にしていた理由――――ユミル渓谷からこのユミルまで届く程の咆哮をした謎の魔獣の捜索、並びに撃破について、何か進展したのか?」

「その事に関してですが……情けない事にユミルから火の手が上がるまで渓谷をしらみつぶしに探していたんですが、咆哮の持ち主と思われる魔獣は見つからなかったんです………」

「…………まあいい。ルシア夫人、一つ聞きたい事がある。」

疲れた表情で答える様子のトヴァルの話を聞いて目を伏せて考え込んでいたリウイだったがすぐに気を取り直し、ルシア夫人に視線を向けた。



「はい、なんでしょうか。」

「何故シュバルツァー男爵はアルフィン皇女をユミルで匿っていた事をゼムリア大陸に存在するメンフィル帝国領の総管理も兼任している俺に報告しなかった?アルフィン皇女を匿っていた事等先程の説明で初めて知ったぞ。」

「そ、それは…………」

「――――申し訳ございません!俺が男爵閣下に陛下への報告を待ってもらうように要請したんです!ですから男爵閣下を含めたシュバルツァー家の方々に非はありません!」

リウイの指摘にルシア夫人が答えを濁しているとトヴァルが頭を深く下げて謝罪した。

「………フン、大方俺達がアルフィン皇女をメンフィル帝国領で匿った件を理由にしてエレボニアに対して大きな”貸し”を作る事を恐れ、俺達への報告を止めていたのだろう。」

「陛下の御推察通りです………今回の件は俺の”独断”によるものですので責任は全て俺が取りますので、できれば遊撃士協会に今回の件に関する責任を負うようなことを迫らないよう、お願いします……!」

鼻を鳴らして厳しい表情で自分を睨むリウイに対してトヴァルは頭を深く下げたまま答えた。するとその時シュバルツァー男爵の見舞いや治療でシュバルツァー男爵が休んでいる部屋から出て来たリィンとエリゼ、そしてセレーネとペテレーネがリウイ達に近づいてきた。



「―――――お待たせしました、リウイ様。シュバルツァー男爵の治療、完了しました。」

「ああ。……男爵の容体の方はどうだ。」

「……幸い急所が外れていた事と、手当も早かった事から命に別状はありません。数日休めば目覚めるでしょう。」

「そうですか……!主人の治療をして頂き、誠にありがとうございます、ペテレーネ神官長……!」

「本当にありがとうございます、ペテレーネ神官長……!」

「この御恩は一生忘れません……!」

リウイへのペテレーネの報告を聞いたルシア夫人は明るい表情をしてペテレーネに感謝の言葉を述べて頭を深く下げ、リィンとエリゼもルシア夫人に続くように感謝の言葉を述べて頭を深く下げた。

「み、皆さん、頭を上げてください。私は大した事はしていませんし、それにアイドス様の御協力もありましたし……」

一方シュバルツァー家の人々に感謝の言葉を述べられたペテレーネは謙遜した様子で答えた。



「お兄様達のお父様も助かりましたし、郷の民達にも死者がいなかったのが不幸中の幸いでしたね………ところで、陛下。一体何故ユミルは襲撃されたのでしょう……?」

安堵の溜息を吐いたセレーネはある事を思い出してリウイを見つめて訊ね

「あ…………」

「…………」

セレーネの疑問を聞いたエリゼは呆けた声を出した後不安そうな表情でリウイ達を見つめ、リィンは真剣な表情でリウイ達を見つめた。そしてルシア夫人達はまだユミル襲撃の詳しい事情を知らないリィン達に襲撃の経緯を説明した。

「そんな事が………」

「エレボニアの内戦は話には聞いていましたけど、貴族が仕えるべき”主”である皇家の方にも自らの欲の為に他国をも巻き込んで危害を加えるなんて……!しかもそれを命じたのがよりにもよって帝国貴族の中でも最も権力がある”四大名門”だなんて……!」

事情を聞いたペテレーネは信じられない表情をし、エリゼは怒りの表情をし

「…………―――陛下。厚かましいかと思われますがお願いがあります。」

「お兄様………?」

目を伏せて黙り込んでいたリィンは決意の表情でリウイに声をかけ、リィンの行動をセレーネは不思議そうな表情で見つめた。



「―――言ってみろ。」

「ありがとうございます。郷が襲撃され、父が倒れてしまった今……代わりに郷を守るのが、領主の息子としてのあるべき姿だと思うのです。ですが今の俺は精強なメンフィル帝国軍の中でも最も栄誉ある部隊――――次代のメンフィル皇帝となられるリフィア皇女殿下の親衛隊に所属しています。せっかく陛下達のご厚意によってリフィア皇女殿下の親衛隊に配属となったばかりの身ですが、少なくても父が復帰するまで父の代わりに郷を守りたいのです。ですからその間の休暇を頂きたいのです。」

「確かにシュバルツァー男爵が倒れてしまった今、シュバルツァー男爵が復帰するまでの”領主代理”は必要だな。わかった、ゼルギウスには俺の方から――――」

リィンの説明を聞いたリウイが頷きかけたその時凄まじい咆哮が聞こえて来た!

「え…………」

「今のは……!?」

「魔獣の咆哮……でしょうか?」

咆哮を聞いたエリゼは呆け、リィンは驚き、セレーネは不安そうな表情をした。



「……まさか今の咆哮が話にあった謎の魔獣とやらか?」

「は、はい。」

「クソッ、まだユミルから去っていなかったのか……!」

「郷に届かせる程の咆哮なのですから、相当強力な魔獣なのでしょうね……」

リウイの言葉にルシア夫人は頷き、トヴァルは舌打ちをして厳しい表情をし、ペテレーネは不安そうな表情で呟いた。

「……………(ちょうどいい。今もこの屋敷を監視している何者かもついでに炙り出してやる。)――――リィン・シュバルツァー。リザイラを呼べ。」

一方リウイは真剣な表情で考え込みながら窓の外に意識を向けて今後の方針を決めた後リィンに視線を向けて指示をした。

「え……リ、リザイラをですか?何故でしょうか?」

「奴は”精霊王女”。精霊達を統べる”精霊王女”ならばユミルに存在する精霊たちに指示をし、先程の咆哮の持ち主である魔獣の居場所も突き止められるはずだ。」

「あ……はい!―――頼む、リザイラ!」

リウイの説明を聞いたリィンは呆けたがすぐに我に返り、自分が契約している使い魔の一人―――”精霊王女”リザイラを召喚した。



「なっ!?(う、嘘だろう!?エステルみたいに異種族を召喚しやがった……!……というか本当に異種族なのか?見た目は人間にしか見えねぇが……)」

「リザイラ、精霊達に頼んで先程の咆哮の持ち主の魔獣の居場所を探ってもらえるか?」

リザイラの登場に驚いた後興味ありげな様子でトヴァルがリザイラを見つめている中リィンはリザイラに話しかけた。

「ええ、お安い御用です。……………………」

リィンの頼みに頷いたリザイラは足元に魔方陣を展開させた後全身に膨大な魔力を纏って集中し

「……そう、教えてくれてありがとう。――――この郷から下界へと続く渓谷道の上流にある泉のあたりにいるとの事です。」

やがて数分すると集中を終えてリィンに報告した。



「お、おいおい……まだ数分しか経っていないのにもうわかったのかよ!?エステルの時にも感じたが、異種族って反則すぎだろ……」

「ア、アハハ……リザイラ様の場合色々な意味で”特別な存在”ですから他の異種族の人達と比べない方がいいと思いますわよ?」

「あのあたりか………!」

リザイラの報告に驚いているトヴァルにセレーネは苦笑しながら指摘している一方、居場所について心当たりがあるリィンは声を上げたが

「渓谷道の泉……確かそこには”石碑”のようなものがありましたよね………?」

「思い出した……!8年前、俺はあの石碑に触っている……!手に反応して、あんな文様が浮かび上がって来て……みるみる湧き水が凍り始めると思ったら、突然大雪が降り始めたんだ……!」

「あ…………」

エリゼの話を聞き、かつての出来事を思い出したリィンは血相を変え、リィンの話を聞いたエリゼは呆けた声を出した。



(石碑………まさか”何らかの存在”を封印していたのでしょうか?そうなると何らかの切っ掛けによってその封印が解けて、封印されていた存在が出て来たのでしょうか……?)

「(その可能性が一番考えられるな。問題は封印が解けた”切っ掛け”だが……今は置いておく。)―――よし、準備を整えた後その場所に行って謎の魔獣とやらをとっとと退治するぞ。」

ペテレーネに囁かれたリウイはペテレーネの推測に頷いた後リィン達に提案した。

「え………へ、陛下達も加勢してくださるのですか!?」

「民達を守るのも皇族の義務だ。それに特務支援課の出向から帰還した後俺やゼルギウス達の特訓によって扱えるようになった”鬼の力”とやらを実戦でどれ程活用できるかを見るのにもちょうどいい機会だ。」

「リウイ様が行くのでしたら当然私もついて行かせて頂きます。」

「あ、ありがとうございます……!」

「ハハ……”英雄王”に”闇の聖女”とか最強の助っ人じゃねぇか……リィン、だったか?リウイ陛下達と比べれば大した事はないが、俺も助太刀させてくれ。肝心な時にユミルを守れなかったからな……少しでもその罪滅ぼしをさせてくれ。」

「勿論わたくしもご一緒しますわ、お兄様!」

リウイとペテレーネの加勢に驚いたリィンだったがすぐに気を取り直し、二人に感謝の言葉を述べ、その様子を見守っていたトヴァルは苦笑した後リィンに加勢を申し出、トヴァルに続くようにセレーネも加勢を申し出た。



「トヴァルさん……いえ、心強いです。セレーネもありがとう。それじゃあ俺とリウイ陛下、ペテレーネ神官長、トヴァルさんとセレーネで渓谷に―――」

「……待ってください、兄様。どうか私も同行させて下さい。」

「な……!?」

エリゼの申し出を聞いたリィンは驚いてエリゼを見つめ

「―――私も兄様と同じリフィア皇女殿下を守護する身。それに兄の背中を護るのは妹の務めです。」

「少なくてもエリゼは足手纏いにはならん。何せあのエクリアの直弟子なのだからな。それに確か”通商会議”の最中に二大国のテロリスト達が襲撃をした際、”風の剣聖”達と共にテロリスト達を撃退したと聞いているが?」

「それとエリゼお姉様、”月の僧院”の異変の際も、亡霊や不死者相手にも全く動じることなく戦っていましたわよね……?」

「う”っ………」

「ハハ………メイドなのに、テロリストまで撃退できるとかとんでもないお嬢さんだな……」

エリゼの後に答えたリウイとセレーネの話を聞き、かつての出来事を思い出したリィンは唸り声を上げ、トヴァルは冷や汗をかいて苦笑していた。



「ふふ……二人ともいつの間にか大きくなりましたね。主人が起きて、貴方達の成長を知れば、きっと喜び、誇らしく思うでしょうね。」

「母様………」

微笑ましそうに自分達を見つめるルシア夫人の言葉を聞いたエリゼは目を丸くし

(ふふ、それにいざとなれば私達もいますから、心配無用です。)

(うふふ、私は純情可憐な乙女の味方だから、当然エリゼがついて行く事に賛成よ♪)

(勿論、私もエリゼの味方よ。……貴方を愛する同じ女性としてね。)

「ふふふ、ご主人様の中にいるベルフェゴール達も大方彼女が同行する事に賛成しているのでしょうね。勿論、(わたくし)も賛成ですが。)

リィンの身体の中にいるリィンと契約している他の使い魔達――――睡魔族の女王種――――”リリエール”にして”七大罪”の”怠惰”を司る”魔神”―――ベルフェゴールと並行世界のヴァイスの娘である亜人族の元メルキア帝国の姫君であるメサイア・シリオス、そしてリィンの得物である”太刀”に宿る古神―――――”慈悲の大女神”アイドスもエリゼの同行に賛成の意を示し、リザイラも3人に続くように静かな笑みを浮かべてリィンを見つめてエリゼの同行に賛成の意を伝えた。

「~~~っ~~~……!―――わかった!エリゼ、力を貸してもらう!ただい絶対に無茶はしないこと!約束できるか!?」

「はいっ……!」

「よし、それじゃあとっとと行くとするか。薬やら、一通り準備を整えたら裏手の渓谷道に向かうぞ。」

そしてそれぞれが渓谷道に向かう為の準備をしている中既に準備を終えていたリウイは屋敷の食堂に入った。



「…………――――マーリオン、セオビット!」

周囲に誰もいない事や外からの視線もない事を確認したリウイは自身の使い魔にしてメンフィル建国前よりも契約し、今も自身に従い続けている古参の使い魔――――最上位水精、”モリガン・モルガナ”種であるマーリオンと様々な経緯があって契約し、使い魔になった自身の側室の一人、シルフィエッタ・ルアシアの連れ子であるセオビット・ルアシアを召喚した。

「私達に何か御用……ですか……ご主人様………」

「ああ。お前達は俺達が郷に戻ってくるまでの間ルシア夫人の護衛だ。――――ただし、アーツ―――ホロウスフィアで自分達の姿を消して護衛をしろ。」

「?何でわざわざ自分達の姿を消してまで護衛をする必要があるのかしら、父様。」

リウイの指示を聞いて不思議に思ったセオビットは自身の疑問をリウイに訊ねた。

「俺達がこの屋敷に入ったあたりから何者かがこの屋敷を監視している。――――アーツ、もしくは光学迷彩機能の装置を使って自分の姿を消してな。しかもその何者かの意識はエリゼとシュバルツァー男爵の妻に向けていた。」

「………なるほどね。つまりその”何者か”を炙り出すのね?」

「―――そうだ。ただし、殺すなよ。その何者かには大使館に連れ帰って”色々”と話してもらう必要があるからな。」

「かしこまりました………」

「ふふっ、大船に乗ったつもりでいて、父様♪」

リウイの指示にマーリオンとセオビットはそれぞれ頷いた。その後準備を整えたリィン達は目的地に向かい始めた。



~ユミル渓谷道~



「第二目標―――エリゼ・シュバルツァー、現在”英雄王”達と行動を共にしている為任務達成は不可能と判断。クロチルダ様、いかがなさいますか?」

リィン達が目的地に向かっているその頃、その様子を崖の上から見つめていた黒衣の少女―――アルティナ・オライオンは自身の傍にいる蒼い鳥に訊ねた。すると蒼い鳥の頭上に結社”身喰らう蛇”の最高幹部―――”蛇の使徒”の一人である”蒼の深淵”ヴィータ・クロチルダの幻影が現れた!

「………そうね。本当なら彼女を攫いたかったのだけど、あの状況で彼女を攫うのは無謀ね。―――目標をエリゼ・シュバルツァーからルシア・シュバルツァーに変更しなさい。ただし、攫うタイミングは彼らが郷に戻ってくる直前よ。」

「目標変更、了解しました。―――クラウ=ソラス」

「―――――」

クロチルダの指示に頷いたアルティナが呟くと漆黒の人形―――クラウ=ソラスがアルティナの背後に現れ、そしてアルティナはクラウ=ソラスの片腕に乗り、クラウ=ソラスについている光学迷彩機能を使ってその場から消えた――――――






 
 

 
後書き
今回の話を読んで気づいたと思いますがこのルートは光と闇の軌跡の方なのでリィンは”Ⅶ組”じゃなくて、”特務支援課”に所属していて、エリゼは八葉一刀流の剣士ではありません。ただ、光と闇の軌跡の本編と違ってこっちのルートではベルフェゴール達と契約した設定が追加されています。なお契約の時系列はリィンがメンフィルの訓練兵の時に適当な場所でベルフェゴールと出会い、戦闘→敗北→契約(勿論性魔術)→それを知ったエリゼがペテレーネに頼んで媚薬や痺れ薬を使ってリィンを………→”特務支援課”に出向する前に”運命が改変された少年の行く道”同様ピンチのメサイアを救出→契約(勿論性魔術)→”特務支援課”に出向している間にリザイラ、セレーネ、アイドスとそれぞれ出会い、契約(勿論セレーネ以外は性魔術)→メンフィル帰還後セレーネ成長、そして…………という設定です。なお、ミルモはエリィが契約しています。それと私が現在考えているこの話の続きだと下手したらこっちのルートのリィンが一番見せ場があって、カッコイイと思う人達が出るかもしれません(オイッ!?)また、このルートの場合まだヴァリマールを手に入れてませんので騎神戦?何それ??なので、ヴァリマールの出番があるかどうかわかりません(酷っ!)……え?オルディーネ?いや、わざわざ騎神に乗らなくてもアイドス達をフル活用したら楽勝でしょうwwしかもこっちのルートのリィンにとってクロウは仲間どころか何の縁のない他人……というかエリゼとリフィアの命を狙ったテロリストの親玉という殺して当然の愚か者ですから閃Ⅱ篇の”約束”とかもありえないし、容赦や手加減なんてしない気がwwなお、Ⅶ組メンバーは閃Ⅱ通り、それぞれユーシスを除いてエレボニア各地に何人かに固まって散らばっている状況で、後にオリビエがユーシス以外のⅦ組のメンバーを回収する事になっています。



後話は変わりますが暁、ブルブランとレンは当たりませんでしたがヴァルターが偶然当たってしまいました(困惑)
 
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