平気な男
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第四章
「どうにも」
「いやいや、これはね」
「これは、ですか」
「実際にだよ、あいつを嫌っているのは君だけじゃない」
「あの人の同期と後輩は大抵、部下になりますと」
「徹底的にだね」
「嫌っています」
はっきりとだ、メイはキャメロンに答えた。
「上司の一部は違いますが」
「取引先はどうかな」
「一部の人は違いますが」
「それでもだね」
「自分の利益にならないと見た相手にはきついですから」
「すぐに意地悪いことをするね」
「そうしますから」
やはりだった、メイの返事は決まっていた。
「弱い相手には」
「そうだね、じゃあね」
「それならですか」
「そう、普通にね」
それこそというのです。
「あいつはやがて自業自得となるよ」
「このことが実刑にならなくても」
「そうなるよ、しかし」
「しかし?」
「この件は受理させてもらうよ」
キャメロンは微笑んでメイに答えた。
「喜んでね」
「では」
「あいつは刑事告訴となるよ」
「ですが有罪にならないと」
「あいつはクビにはならないね」
「有罪になるまでは」
「あいつは辞めないよ、むしろ理由をつけて欠勤をしても」
そうしてもというのだ。
「有給休暇だので金をせびってくるね」
「自分はそうします」
「他人の有給休暇にはあれこれ言ってもね」
「そうしてきます」
「そういう奴だ、本当に変わらないね」
口の端を歪めさせて言った。
「悪い意味でね」
「本当にそうです」
「そうした奴だから辞めはしないよ、けれどね」
「有罪にならなくてもですか」
「見ているんだ、強い一撃にはなる」
有罪にならずとも、というのだ。
「あいつのこれまで生きてきての報いへのね」
「だといいですが」
「大学を卒業してあんな奴のことは忘れたつもりだったが」
キャメロンはここでまた口の端を歪めて言った。
「あいつが破滅したとかならず者に刺殺されたとかいうニュースだけを聞くつもりだったよ」
「では」
「その場合ならず者は捕まえないといけないがね」
刑事としての職務上の義務でだ、犯人は捕まえないといけないのだ。
「しかしそうしたニュースだけを聞くつもりで」
「ですが有罪になれないのですよね」
「なれないがこれは効くからね」
「受けられますか」
「そうするよ」
こう言ってだ、キャメロンはメイが出した資料を受け取ってそのうえで刑事告訴の助けになった。ジョンソンは刑事告訴となったが。
キャメロンの指摘通り彼は仕事を辞めず健康上の理由だのあれこれ言って有給休暇を取って仕事に出なくなってだった。
裁判においてもだ、弁護士を言いくるめて味方につけてだった。
陪審員達を丸め込ませ無罪を勝ち取った、灰色であったが黒とはならず検事の検証も破られ裁判官も無罪と言うしかなかった。
無罪を勝ち取ったジョンソンは胸を張って会社に戻った、だが。
社内の誰もがだ、その彼を嫌悪の目で見て言った。
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