世界をめぐる、銀白の翼
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第一章 WORLD LINK ~Grand Prologue~
Angel Beats!! ~Today to Day~
「よっしゃ!!今日はサッカーすんぞ!!」
「おい!!今日は卓球だ!!」
「なあ、今日はボウリングしようぜ!!」
あれから数日間、蒔風と音無はずっとこんな感じだ。
音無もそれに連れられていろいろと大変そうではあったが、楽しそうでもあった。
無論、授業にもしっかり出ている。
最初こそ丸々一日さぼってはいたのだが、途中からやはり授業には出ようという音無の提案である。
「授業も授業でいいもんだろ?それに疲れんだろ。さすがに」
とは音無の言葉だ。
まあ確かに、こんなNPCしかいない世界でも、彼は一応生徒会長なわけであって。
そうなると授業をずっとボイコットはまずいだろう。
「ふっ、いいだろう。授業ですら楽しく受けてやるぜ」
一方、そう言うのは蒔風の言葉だ。
それから数日後、小テストがあったので点数を比べようとしていたのだが、その時の手ごたえは
「まあできたかな」(音無)
「これはキタ」(蒔風)
というもので、結果が来た後に
「まあこんなもんかな」(音無)
「なん・・・・だと・・・・・?」(蒔風)
だったそうだ。
「音無、お前頭いいのな」
「蒔風だって真ん中くらいじゃないか」
「真ん中よりも下だ。中の下ですよ?はぁ・・・・」
そんなことをしながら、日々をゆっくりと、それでいて楽しく過ごしていった。
もちろん、「奴」が何もしてこなかったわけではない。
計算を終え、もう無駄であることが分かっているのだろうに、いまだに音無や蒔風殺しを諦めていないのはさすがというかなんというかといったところである。
が、そこはやはり無駄だった。駄目なものはダメだったのだ。
途中にも、「Angel Prayer」という世界改変ソフトを使ったプロクラムで襲い掛かってきたが、結局二人を殺すことはできず、それによる世界の設定も変更不可だった。
そのプログラム内に魂を食って「人」をNPC化するという物もあったのだが、それは能力の割に耐久が低く、まるで蒔風の相手にならなかったし、無差別なものだったためさらに「奴」にまでも襲い掛かって来たのでNGとなった。
なにより、「個性を殺す」や「人格破壊」ではダメなのだ。
「音無という主人公の命を断つ」という事が必要なため、そもそもこのNPC化は意味がない。
しかも、仮にそうしたとしても強い意志さえあれば自我を取り戻して戻ってきてしまうから、なおのこと意味がない。
そんなこんなでいろいろと試した「奴」だったが、もう手がなくなったのか最近はついに授業にまで出ているらしい。
無論、教室は違うが。
それでも「奴」は諦めない。
何かあるとすぐに突っかかってきて、すぐに殺そうとしてくるのだ。
まあ、蒔風は別に死ぬことに恐怖はないし、何度かは本気で相手をしているが、大抵は軽く相手をして殺されといている。
正直言ってめんどくさいのだ。
生き帰るから窮地にもならない。WORLD LINKはするだけ疲れる。
そんな適当な蒔風の態度にイラついているのか、「奴」は今日も蒔風にケンカをフッかけてきていた。
「お前・・・・・いい加減この世界諦めたらどうだよ」
「それができりゃあこんな下手こかねえよ!!!」
今日は昼食中に「奴」が教室の扉を蹴り飛ばして蒔風のところまでドカドカと進んで行ってから、中庭にまで殴り飛ばしてきたことから始まった。
教室は二階。その教室から廊下を突き抜けて中庭に落ちた蒔風。
まあ、この程度の高さはなんでもない彼なのだが、昼食はチョココロネだったために、口の周りはベトベトだ。
「あーあ。まったく・・・・(フキフキ)そーいえばお前、チョココロネってどっちから食べる?」
「あ?そりゃお前、尻尾の方を千切って、頭の方からチョコすくって付けてだろーがよ。って、そんなことはどーでもいい!!!」
「なんだよ~~。おまえオレと一緒かよぉ。まあ、当然っちゃ当然なんだけどよ」
そんな他愛もない話をしながら、蒔風が「奴」と戦おうと襟を締め、拳を構える。
その間に音無が離れて観戦し、しかも音無の周りにはNPCたちも群がって観戦する始末だ。
もはや一種の見世物、エンターテイメントとなってしまっている。
「下手こかない・・・ねえ。もしかしておまえ、世界に入ることはできても出ることできないのか?」
「・・・・・」
蒔風の推測。「奴」の沈黙。
そう、「奴」は世界に入ることはできても出ることはできない。
こんな世界があることなんて知らなかったため今はこうなってしまったが、そもそも、「奴」の目的は主人公を殺して世界を取り込むことだ。
つまり、主人公を殺せれば世界を食えるから、出る手段なんて必要ない。
しかし、この世界は主人公を殺せない世界だった。
と、いうことは、「奴」がこの世界を出るためには、蒔風に殺してもらって、この世界から締め出してもらうしかないのだ。
だがそれを知ってか知らずか、蒔風は「奴」を殺していない。
そもそも、殺したところでこの世界では復活してしまうので、「奴」を消すにはWORLD LINKしかない。
そして、先にも言ったように、いままでで蒔風はそこまでする必要性を見出していないのだ。
当然と言ったら当然だ。
何度でもリベンジできて、負けようが勝とうがどちらでもいいのだから、わざわざWORLD LINKをする必要はない。
ここにきて、蒔風はやっぱりやんなくてよかったー、と安堵した。
ここでもし「奴」にWORLD LINKを放って消したら最後、次の世界に行ってまたイタチごっこだ。
しかも、ほかの世界が危険にさらされる。
ほかの世界も見てみたいな、という思いも無きにしも非ずである蒔風だが、世界の危険には代えられない。
ここでこのままいるのが安全策だ、という結論に達した。
「なぁるほど。じゃあ俺はお前を殺さないよ。そもそも、人殺しって嫌いなんだ」
「チッ・・・・・このままじゃあよ・・・・俺がこの世界から・・・・いや・・・・・・そうか・・・・・」
そういって何か納得したような「奴」だが、とりあえずはこの場の戦いはしておこうと思ったのか、魔導八天を構えて来た。
それに対して蒔風も風林火山を構えて「奴」と打ち合う。
「いつもいつも適当に流しやがって!!!」
「だったら今日は・・・・本気で行こうか!!!」
そう言った瞬間、蒔風の全剣が鞘から噴き出すように飛び出し、周囲に停滞したようになる。
無論、それは物理法則に従って地面に落ちていくものだが、蒔風はバトンのように風林火山を振って打ち続ける事でそれをその場にとどめている。
「ハアアアアアアアアアアアアアアアッッッ!!!!」
ガキン!!ガキゴゴゴゴゴゴゴゴッ、ガガン、ギャキィ!!!
そこからは蒔風の猛攻だ。
とっかえひっかえに周囲を浮く剣を掴み、ドンドン攻撃して行っている。
一秒に八は攻撃しているだろうか。
風林火山をバトンのように振って攻撃するのを、途中で上空にそれを投げてやめ、即座に玄武盾で顔面を叩きつけてから獅子天麟で切りつける。
だが「奴」は玄武盾を腕で、獅子天麟をしゃがんで、それぞれその攻撃を回避する。
蒔風は獅子天麟を振ってそのまま一回転し、さらに地面に垂直に叩きつけてから手放して、今度は朱雀白虎釵で「奴」に向かって突きつけた。
が、その先端はまるで三又のようになっていて、そこの隙間に「奴」の手刀が入って簡単にひねりあげられてしまう。
そこで蒔風は朱雀白虎釵を放し、上空から落ちてきた風林火山を掴んで、真上からそのまま降り降ろていった。
それを「奴」が受けたらまた放し、今度は横から青龍刀と天地を掴んで左右から脇腹を切ろうとする。
その攻撃を「奴」は頭上に受けた風林火山を落として地面に突き刺し、ガードする。
瞬間、正面から蒔風のケンカキックが腹に向かって突き出されるが、ゴスッ!!という音がして、「奴」の腹筋に止められてしまった。
「あり?」
「バカ」
ガシャァ!!!というおとがして、蒔風の周囲を覆うようにあった十五天帝の剣群が一瞬で薙ぎ払われて、視界から消える。
「奴」はこの一瞬で魔導八天を三つと五つに分け、二振りの剣にしていた。
剣群を消し飛ばしたのは三つの方だ。
そして「奴」はそれとほとんど同時に、五つの方で蒔風の肩にかけて剣を振り下ろした。
丸腰の蒔風がそれを白刃取りで受け止めるが、勢いに押されてすでに肩まで刃か食い込んでいる。
「おぉッ・・・・は!!止めてやったぜ・・・・・」
「だから言ったろ・・・・バカ」
そう言って「奴」はまとめられている五つを、更に三つを二つに分けた。
するとどうなるか。
蒔風が押さえているのはちょうど剣の真ん中だ。つまり、三本目。
そこでこのように分離したら、当然のように・・・・・
ズシャッ!!!
「ガッ!?」
蒔風は剣を放していない。
だが、それは切り離された三本まとめの方だ。
「奴」の残りの二本まとめの剣で、蒔風の左肩から右腰にかけて切り捌いた。
蒔風の血が吹き出て、そのまで倒れる。
返り血などは一切浴びず、「奴」が取り出したハンカチで魔導八天を拭いてからそれを消した。
こうして、今回の勝負は、「奴」の勝ちで締めくくられる。
この勝負で「奴」の7勝2敗。ちなみに、蒔風が適当に流したのを除いて、だ。
「ふん・・・・さて、と・・・・もしかしたらだからなぁ・・・・もう少し計算してみっか」
そんなことを言って、ふぅ、と一息ついてから「奴」がその場を去る。
音無が回りを見ると、すでに他の生徒たちも自分の教室に帰って行ってしまっている。
そうしているのを見てから、音無が蒔風のいる中庭まで下りてきて、横にしゃがんで話しかけた。
「まーた負けたな。3連敗だぞ?」
「うっせぇ。所詮これがオレと「奴」との実力差だよ・・・・った~~~~」
口に残った血を吐き出しながら、蒔風が腹を押さえてムクリと起き上がる。
全身の骨をゴキゴキさせながら、調子を整えて立ち上がった。
「授業、次なんだっけ?」
「たしか、化学だったな」
「げぇ~~~・・・こんな目にあってからの化学かよ・・・俺苦手なんだよなァ・・・・」
「ほら行くぞ。それとも、もう一度死んで保健室行っとくか?」
「ごめんこうむる」
そう言って二人も教室に帰る。
授業はまだ、先生が来ていなかった。
「なあ、そういえば今は何学期だ?」
「そう言うのはないからなァ・・・・」
「じゃあ卒業式はないのか」
「いや・・・・あったよ。一回だけ、な」
「??」
to be continued
後書き
そんな日常パート2です
アリス
「にしても展開の無い話ですね」
そりゃそうですよ。
ちなみに、この時点で蒔風が来てから一週間くらい経ってます。
アリス
「いい加減どうにかしましょうよ・・・・」
いや、話は見えてるんだけどね?
ここでそっち持ってくといきなりすぎて肩すかしみたいになっちゃうのよ
アリス
「あ~~それは・・・・」
あ、そういえば説明してたっけ?「魔導八天」のこと
アリス
「確かしてましたよ?あれは・・・・・FF7辺りではなかったですか?」
そうだっけ?忘れたなぁ・・・・
魔導八天はすべてが西洋剣です。
組み立て合体ではなく、融合合体ですね。ここは十五天帝と同じです。
で、その融合は二本以上ならどれとでもオーケー。まあ、全部名前が違うだけで形は同じですからね。
アリス
「次回、夢の話」
ではまた次回
私は天使なんかじゃないわ。生徒会長よ。
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