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世界をめぐる、銀白の翼

作者:BTOKIJIN
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第一章 WORLD LINK ~Grand Prologue~
  なのはStrikerS ~王権復古~



ヴィヴィオを蒔風が掛けたバインドで押さえつけるなのはと、砲撃を終えた蒔風に通信が入る。


内容は

・フォワード陣によるナンバーズ・レプリカ、サラマンドラ撃破、及び召喚師ルーテシア・アルピーノ保護の完遂

・地上本部による戦闘機人一体の無力化、及び融合機の保護。騎士ゼストの死去

・ゆりかご外での怪鳥迦桜羅の撃破

・スカリエッティと戦闘機人二体の捕縛、及びケルベロスの撃破

・ゆりかご後部での動力炉の破壊、戦闘機人一体の撃破


というものだ。




「まあ・・・・こんなもんだろ。よくやったみたいだし」

「うん・・・・あとは!!!」

「ああ、あとは」



「「皆で一緒に、帰るだけだ」」









そう言って、蒔風がヴィヴィオを見ながらなのはにレイジングハートを返す。

当のヴィヴィオは、そのバインドにもがきながらも、徐々にその目に理性が戻っていっている。
洗脳をかけていた当のクアットロが倒れた事で、その洗脳も切れていっているのだろう。


が、その目はいまだになにかを恐れていた。




「あ・・・・あああ・・・・・・」

「ヴィヴィオ、わかる?なのはママだよ?」

「あ・・・マ・・・・マ・・・・・パパ・・・・・」

「パパじゃないっつってんだろォが。わかんない子だなーお前も」



「わ、私を・・・・」

「うん?」



「私を・・・・そのまま撃って!!!!」


「はい?」

「ヴィヴィオ!?」



ヴィヴィオが悲痛に叫ぶ。
その身体はすでにその洗脳が解けているにもかかわらず、未だにバインドを振りきってなのは達を倒そうとしているし、その暴走は止まらない。




「も、もう止まらないの・・・・・このままじゃ・・・・皆を・・・・・それに・・・ヴィヴィオは、一人だから・・・・」


そう、ヴィヴィオはまだ、止まらない。

理由は埋め込まれたレリックだ。
それはヴィヴィオの神経をも乗っ取り、埋め込まれた命令を遂行させ続けている。

しかも、その体力、魔力共に最高レベルで、下手をすれば蒔風をも圧倒してしまうかもしれないもの。


たしかに、このままでは打つ手がないように見えるかもしれない。


だが、この男がそんな安直な道を往くはずかなかった。



「だから殺せってか?バァカ」


「で、でも・・・・」

「ガキがでっかくなったところで、粋がってんじゃないの。おまえは子供、俺はおにーさん。だったら、おまいさんを助けんのは俺の仕事だ。まさか俺が負けるとか、思ってないよね?」

「おとーさん・・・・・」

「だからおとーさんじゃないっての」



否定すべきところはしっかりと否定する蒔風。
そこで続きをなのはが引き継いでいく。



「それに・・・ヴィヴィオには家族、ちゃんといるよ?確かに、本当のお母さん、お父さんは大切。でもね?舜君も言ってたけど、生まれなんて、だれも選べない。一緒にいてくれる人が、大切な家族。私はヴィヴィオの本当のママじゃないけど、これから、本当のママになっていけるように努力する」

「でも・・・・でも・・・・私が一緒にいたのは、全員の情報を蒐集するためで・・・・」

「ああなるほど。だからおまえさっきなのはの砲撃っぽい事とかフェイトの高速移動できたのか。ま、それこそ今更だ。おまえはそれを意識したのかい?それとも、それがお前の生きる理由かい?」

「あ・・・・う・・・・」



「たとえ作られたものでも、生まれた過程がどんなに許されないことだったとしても、命が存在してはいけない理由にはならない。そんな理由はどこにもない。おまえはどう生きたいんだ?この世界で、皆と幸せになりたいのか。それとも、みんなだけで幸せになってもらいたいのか。どっちだ?」



「・・・そ、それは・・・・・」


「ヴィヴィオ。今までヴィヴィオと一緒にいて、なのはママはね・・・・」

「・・・うん・・・・・」



「何にも、辛いことなんて、なかったよ?だから、これからも・・・・私を「ママ」って呼んでくれると、嬉しいな」

「ま・・・・・ママァ・・・・・」




「さて、それなら、おまえが言うべき一言は決まっているだろ?」

「言って?私たちは、いつだって、そのために動くから!!!ホントの気持ち・・・ママ達に教えて・・・?」

「俺はパパじゃないけどな」



「私は・・・私は、なのはママのこと、舜パパの事が・・・大好き・・・!!!」




「だーかーらーーー!!」

「もういいでしょ・・・・諦めなよ。舜君」

「イヤダ!!!俺はおにーさんだ!!!」

「まったくもう・・・」


呆れるなのはにダダをこねる蒔風だが、ヴィヴィオの言葉を聞いて、ここで決心が固まった。




「私を・・・・助けてっ・・・・・!!!」

「助けるよ!いつだって、どんな時だって!」

「根こそぎ・・・な。行くぞなのは!!!」

「うん!!」




そうしてなのはがレイジングハートを構え、蒔風がヴィヴィオに向かって行く。
だが、蒔風の足はなんだかおぼつかない。すでに何らかのダメージを負っているかのようだ。


しかし、そんなことはどうでもいいとばかりに、気合いでヴィヴィオに向かった蒔風。

ヴィヴィオにはまだバインドがかかっているが、それももう解けるだろう。
そしてなのはには、それを張り直すだけの時間は無い。



「舜君!?」

「え?」



だから蒔風はヴィヴィオを抱きしめて止めにかかった。


その身を、バインドで傷つけないよう
その身で、何も傷つけないよう



「なのははそのまま砲撃を撃て。俺がばらまいた魔力はまだ散ってるから!!!」

「で、でも!!!」

「俺は大丈夫・・・だっ!?」




と、そこでヴィヴィオのバインドが解ける。
その瞬間、七色の魔力光が噴き出し、周囲をまとめて噴き飛ばそうとし始めた。

その威力は、今まで抑えられていたためか、あまりにも強い。



だが、それがなのはまで届くことなどなかった。



「舜君!!ヴィヴィオ!!!!」

「いい・・・から・・・・ぐっ・・・・集束しろ!!!」

「ッ・・・レイジングハート!!!」

《All Right》


そうして、蒔風の背後でなのはがヴィヴィオに向かってスターライトブレイカーの発射準備に入る。
その間の時間稼ぎをするのが蒔風の仕事だ。



蒔風はその身を以って、ヴィヴィオの凶悪な魔力を、全身を以ってして受け止めていた。


その衝撃は凄まじい。



上半身前部の肌はすでに破れ、五臓六腑が捻じれ、四肢の骨が軋む。



「グッ・・・がハァ・・・・・グボッ!!!!」


と、その蒔風の口から血が噴き出した。
圧迫された内臓が傷ついたのだろう。

蒔風の尋常でない量の吐血が、玉座の間の床を汚していく。


が、それは一滴たりとも、決してヴィヴィオを汚すことなく床に落ちていった。



「舜君ッッ!!!」

「大・・・・丈夫・・・だッ!!!ちょっと内臓を骨が引っ掻いただけだ・・・・気にすんな・・・・」

「パパァ!!!」

「パパじゃ・・・・ねぇ・・・・ンな顔すんな・・・大丈夫だよ」




蒔風が唸り声で、口元を血で濡らしながら答える。
が、その肢体はもう限界に近い。

腹筋に力は入らないし、ついには頭からも出血し始めた。



だが、その顔から笑顔が消えることはなく、抱きしめる腕は一切ゆるまなかった。
むしろより強く、それでいてそっと、ヴィヴィオの体と頭をしっかりと抱きしめていた。



「パパ・・・パパぁ・・・・」

「安心しろよ、ヴィヴィオ・・・・・・もう、さみしい思いはさせないから」

「でも・・・このままじゃ死んじゃ「死なない!!」ッ!!」



「俺は死なない。そもそも「生きて」ないからな。だから、大丈夫だ。今はママと・・・おにーさんを信じろ」


「うん・・・・うん!!!」


「舜君!!準備できたよ!!!そこから早く!!!」

『構わん、撃て!!!こっちはすぐに離れられるから大丈夫だ!!!』

「でも・・・・」



蒔風にはもう口を開く余裕もないのか、念話でなのはに叫びかけてくる。

だが「撃て!!」といわれても蒔風はぴったりとヴィヴィオに張り付いているのだ。
しかも、あの位置ではどうやっても砲撃をかわせなどしない。なのはの砲撃は、それほどまでに強大だし、手を抜けばいたずらにヴィヴィオを傷つけるだけで、レリックの破壊はできないのだ。


だがそれでも、蒔風は撃てと叫ぶ。
そして、容赦なくカウントダウンを始めたのだ。


『撃て!!!なのはァ!!!三秒前ェ!!!3、2!!!』

「ッッ!?レイジングハート、ブラスタースリー!!!」

『1!!!』

「スターライトブレイカーッ!!!!」




瞬間、蒔風が手を放す。
直後、ヴィヴィオの魔力によって、蒔風の身体がまるで鉄砲玉のように弾きだされ、なのは後方の壁に叩きつけられて、べシャリという音が聞こえてきた。




ドォウ!!!!



そして放たれたスターライトブレイカー。
だが、レイジングハートの形態が少しだけ変わっていた。




翼が、レイジングハートから生えていたのだ。


否、そもそもレイジングハートをここまで解放されると、翼らしきものが展開されてくるのは最初からだ。
だが、この翼は違う。

その翼が出ているところは全く同じだが、翼の形は蒔風の背中のものと同じように、まったく鳥のものと同じだった。




「これは・・・・」

≪蒔風が与えてくれたプロクラムです≫

「舜君の?」


そう、これがなのはへの贈り物。

なのはの砲撃魔法で一番ネックだったのが、使用者への体の反動だった。
そのせいでなのはは八年前に墜落しているし、リミッターがかかっているのだって、そういう理由もある。



だが、このプログラムはそういったものをまとめてなくしてしまった。



このプログラムもフェイトのものと同様、蒔風の翼を解析して、レイジングハート使用に組み込んだ世界に二つとないオリジナルだ。

フェイトのは加速能力だったが、なのはのを負担軽減が付加されている。



翼人の翼は制空能力や「想い」の収束にも使われるが、そもそもの存在理由は「反動やエネルギーの噴出孔」である。
翼人の力は強大だ。翼もなしにフルで使おうものなら、その反動に体が粉々になってしまう。



それゆえの翼。



その翼の反動噴出機構を、レイジングハートに取り付けたのだ。



「舜君・・・・・」



現に、ブラスタースリーでスターライトブレイカーを撃っているなのはには、一切の反動も負担も来ていない。せいぜい、自分の魔力を使用している故の疲労くらいだ。


「アアアアアアアああああああああああああああ!!!」

「ハアアアアアアアアアアア!!!!まだまだ行くよ!!ヴィヴィオ!!!」

「頑・・・・・張るッ!!!」

「全力、全開ッッ!!!!!スターライト、ブレイカーーーーーーーーーーーー!!!!!」





そうして、なのはがヴィヴィオに渾身最高の砲撃をさらに押し込んだ。
砲撃自体は非殺傷だ。だが、その魔力流は確実にヴィヴィオに埋め込まれたレリックを浮き彫りにし、その宝石を砕いていく。

なのはは一切後ろを振り返らなかった。


蒔風のことは心配だ。
でも、今はこうすることが、彼の望みでもあると、彼女は分かっていたから。


だからこそ、今は振り返らない。
今は全力で、自分の娘を助けるのだ。





パリン・・・・・・




そうして、ヴィヴィオのレリックが砕け散った。
後に残るのは砲撃のクレーター。そこに倒れる、元に戻ったヴィヴィオ。そして、背後で崩れるように壁にもたれて倒れる蒔風。




「ヴィヴィオ・・・・!」

「大・・・・丈夫・・・・一人で・・・・立てるよ・・・・・・」



クレータ内で倒れるヴィヴィオになのはが駆け寄ろうとするが、まだ意識があったのか、ヴィヴィオがそれを止めた。
そして、その小さな腕で、必死になって立ち上がろうとしていた。

それはいつの日か、交した約束。




『次は立とうな?頑張れるか?』

『・・・・・うん!!』





そう、約束は果たされなければならない。



ヴィヴィオはもう、大丈夫だから。
一人でも立ち上がれるよと。

だって、立ち上がった先には、大好きなママとパパがいるんだから・・・・・






「ったく・・・・・ゲホ・・・・ヴィヴィオが立ってんのに・・・・俺が寝てるわけにいかない・・・・じゃんか・・・・ォグッ・・・・ゴポッ・・・・・」

「舜君!!!!!」



それを見守るなのはの背後から、蒔風が腹を押さえ、同時に腕を抱え、口からいまだに少量の血を吐きがらよろよろと寄って来た。
その姿はあまりにも痛々しい。

無理もない。ヴィヴィオの暴走を、その体一つで受け止めていたのだから。





そうして見守り、ヴィヴィオが立ち、しかしすぐに崩れ落ちてしまう。
それをなのはが受け止める。


大事に大事に、名前を呼びながら。



「ヴィヴィオは?」

「気絶・・・ううん。寝ちゃったみたい」

「そ・・・・っか。がっ・・・・」


蒔風が苦しそうにうめくが、すべて終わったのだ。もうここには用はない。




と、そこで壁を突き破って、新たな来客者がやってきた。




「なのはさん!!舜さん!!!助けに来ました!!!」

「聖王を失うとゆりかごの中で魔力は・・・・ってあれ?」




ティアナとスバルである。

調査結果によって、聖王を失ったゆりかごは、聖王よりもゆりかごそのものを防衛するものとなり、内部での魔力の結合が一切できなくなることが分かったのだ。
だからこそ、ヘリにはバイクが乗っていたし、その持ち主のヴァイスが乗り込んでいたのだ。


だが、おかしいではないか。



ヴィヴィオは解放し、ゆりかごとのリンクは絶ったというのに、この場では魔力がまだ使えるのだから。
しかも、ゆりかごの防衛機能が働いていない。




「ど、どういうこと?」

「わ、わかりません・・・ヴィータ副隊長たちが動力炉は完全に破壊したって言っていたんですけど、ゆりかごは上昇をやめただけで落ちないし・・・・・」

「ヴィヴィオを解放したらここは封鎖されて、魔力も使えなくなるから脱出不可能になる。そう聞いて私たちが来たんですけど・・・・」






たしかに。
ここまで破壊されつくして、ゆりかごはいまだに浮遊している。
ガジェットももう出てこない。外にある残り二十基ほどをつぶせばもう終わりだろう。

しかもそっちにはすでにフェイトやシグナムが来ているから、時間はそうかからないはずだ。



確実に終わった。
なのになぜだろうか。




この場に残る、おどろおどろしい空気は、まだ一切消えていない。











「諸君、ご苦労。これでゆりかごは我が配下に入った」



「「「「!!!?」」」」




そこで声がした。
いままでで誰も気づかなかった。

否、そもそもいつからいたのだろうか?









聖王の間、その玉座。


そこに「奴」が足を組んで、頬杖をついて実に偉そうに座っていた。






「俺の特権はあくまで所持者のいなくなった物限定だからな。こうしていったん、聖王の器の手放しが必要だったんだが・・・・・うまくいったな」

「な・・・・・なのはさん・・・・・」

「久しぶりだな。高町なのは。お前にとっては十年ぶりか。さて、三度目の正直だ。殺しに来たぞ」


「させないよ・・・・私は、死ねない」

「こ、このひとが?」


「やあ、初対面の新人さん。そう、私が蒔風の言っていた「奴」です」




ティアナとスバルが、立ち上がってきた目の前の人物に恐怖する。
確かに、蒔風の相手を今までし続けていたということから、只者ではないだろう、ということは分かっていた。


だが実際に目の前にしてどうだろうか?
その威圧感と力の重圧に、今すぐにでもつぶれてしまいそうだ。




桁違いではないか。




しかも、一度破壊されたゆりかごを、己の支配下に置いたという。
つまり・・・・・




「ゆりかごの恐怖は・・・・終わってないってか・・・・・」

「舜君!?」



そこで蒔風が会話に入る。
肩を貸してくれていたなのはから離れ、「奴」に向き合う。



「てめえなら自分でぶんどれただろ。わざわざ俺らにやらせるとか・・・・悪趣味め」

「それでもよかったんだがな。それでお前が消耗してくれるならこっちのほうが合理的だろ?」



蒔風と「奴」がにらみ合う。
だが、コンディションが悪すぎる。


「奴」は今、万全を期してゆりかごを手にした。
対して蒔風は満身創痍だ。今までの戦いで、体に結構なダメージを負っている。




『なのは。三人を連れて逃げろ』

『え?』



蒔風が「奴」をにらみながら、なのはに念話で話しかける。
その声は、「奴」に向かって余裕そうな顔を向けるのとは裏腹に、思いのほか焦っているようにも聞こえる。


『この状況はやばい。最悪だ!!このままだと死ぬぞ!!早く行け!!!』

『でも!!!』




「ッ!!おらぁ!!!!」




なのはとの会話に業を煮やした蒔風が、クアットロを打ち抜いた大穴に向かってなのはたちと、乗って来たバイクを投げ落とした。
そのあまりの勢いに、なのはが飛行魔法を展開したころには、すでにゆりかごの外だった。




「なのはさん!舜さんは!?」


ウイングロードを出して着地したスバルとティアナがなのはに聞く。
その質問になのはが苦い顔をして上を見上げた。



が、そこから一発、漆黒の波動砲が撃ち出されてきた。




それをなのはが慌ててギリギリ回避して、また撃たれてはかなわないとゆりかごの左側にいたはやてと合流する。
さらにその姿を見たフェイトたちやシグナム、ヴィータ、エリオとキャロも集まってきた。



「なのは!!ヴィヴィオは!?」

「ヴィヴィオは大丈夫。アルトさん、お願いします」

『了解しました。任せてください!!!』



アルトの乗ったヘリにティアナとスバルがバイクとヴィヴィオを載せに行き、彼女らも集まってくる。
だが、一人だけいない。


それに気づいたシグナムが、なのはに何があったのかを聞く。



「蒔風はどうした。一緒だっだのだろう?」

「そ、それが・・・・「奴」が・・・・・」

「なんだと!?」


「「奴」が・・・・・・来た」


「なっ・・・・・」

「じゃあ舜はどーしたんだよ!?」




ヴィータが声をつい荒げてなのはに聞く。



その瞬間、ゆりかごが振動した。




その前部から小爆発が起き、そこから後部まで、まるで何かが移動しているかのように、爆発が続いていく。
そして最後部まで達したところで、そこから一気に最前部まで、内部を何かがとんでもない勢いで突き抜けたかのようにゆりかごの外郭が歪み、その勢いのまま、ゆりかごの額とも呼べる位置が爆発、人型の何かが突出してきて、地面に落ちて行く。




それには翼が生えており、その人物はさっきまでなのはとともに聖王の間にいたものだ。





「舜君!!!!!」




その姿を確認し、なのはが飛び出して落下していく蒔風を抱きしめてキャッチした。



ひどい状態だ。



頭から血を流し、腕は折れているのだろう、あらぬ方向を向いている。
顔を青くし、意識がないのか目をつぶっている。


「舜君?舜君!!!」

「きこ・・・えてる・・・・・・・」







血まみれの蒔風が、声を絶えさせながらブツブツと答える。
まずいことに、これは重体である。



なのはがすぐに治癒魔法の使えるキャロのもとに連れて行き、その傷を癒す。
だが、完全には無理だ。あまりにも傷が深すぎる。


一応死にはしないだろうが、危険な状態であることは変わりない。




『八神指揮官!!!なぜ・・・なぜゆりかごは落ちないのですか!?それにさっきのは・・・・・』


局員の声が聞こえる。
だが、はやてはそれに対し、意気揚々とは答えられなかった。



「全員・・・よう聞いといてや・・・まだ、戦いは終わっとらん・・・・・」






目の前で、ゆりかごが修復されていく。
吹き飛ばされた瓦礫が、戻って行く。





この事件は、ひとりの男にかっさらわれた。







否、ここからはもう、事件ではない。










一つの世界をかけた、戦争だった。








to be continued
 
 

 
後書き

「奴」の目的
それはゆりかごを奪う事だったんだよ!!!

アリス
「な、なんだってー!?(棒読み)」

ノリ悪いね

アリス
「いつもいいと思ってたら大間違いです」

そっか


アリス
「そうです。次回、ゆりかご、変貌」

ではまた次回














一人で…立てるよ…強くなるって…約束したから 
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