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世界をめぐる、銀白の翼

作者:BTOKIJIN
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第一章 WORLD LINK ~Grand Prologue~
  なのはStrikerS ~エース×翼人~



地上本部壊滅、そして六課隊舎崩壊から翌日。



蒔風が目を覚ますと、見慣れぬ天井が目に映った。



ボーーーッとした目をして、周囲を見渡す。
どうやら病院のようだ。


ベッドに横になっており、左腕は肩口ががっちりと固められ、首から三角巾で吊るされている。
腕には点滴が繋がり、一滴一滴、少しずつ落ちていっている。

指はぴくぴくと動かせるので、どうやら腕は一応繋がったようだ。




そして昨日の事を思い出す。




襲われた地上本部、燃える六課、落ちる左腕、奪われるヴィヴィオ。





「・・・・・クソッ・・・・・」



開いた窓の外を見て、悔しそうに言葉を漏らす蒔風。



そうして蒔風が起き上がる。
点滴などが繋がっていたのだが、気になどするはずもなかった。



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聖王病院


ティアナ、フェイト、なのはの三人は、負傷した六課のメンバーの見舞いで訪れている。

ティアナはスバルの、フェイトはシャーリーたちの、なのはは蒔風の様子を見に来た。



三人は終始無言だった。

無理もない。


機動六課は敗北した。
ここまで決定的な敗北は、初めてだった。


そうして無言のまま、三人が各々の部屋に入っていく。



なのはも蒔風の部屋をノックして、その扉を開けようとする。

なのはは本来、来るつもりはなかった。
しかし、蒔風の腕が落ち、彼の目の前からヴィヴィオが奪われたと聞いて、いてもたってもいられなくなったのだ。


だから現場検証をヴィータに無理を言って代わってもらい、やってきた。



しかし



ノックした扉の先から、人の気配がしない。

そして扉を開けた先には、空のベッドと、床に落ちた点滴の針だけだった。



「舜くん?・・・・・・舜君!?どこに・・・・」


会いたかった人がいなかった。
なのはが困惑しはじめる。

あの人ならきっと励ましの言葉で奮い立たせてくれるはず。
そうして、一緒に戦ってくれるはず。


ヴィヴィオを奪われ、憔悴したなのはは、何か支えを求めていた。
そして、真っ先に浮かび上がったのが彼だったのだ。

しかし、その彼がいない。
どこに行ったのかと、フェイトやティアナ、病院関係者を呼ぶことも忘れ、部屋から飛び出して探し出す。




どうしようもなく、会いたい。



その想いを抱えて、なのはは走った。









そうして、見つけた。
時間はさほど、かからなかった。


玄関を目指していたのか、蒔風はよろよろと中庭を歩いていた。


なのははその姿に安心したのか、寄って行こうと歩いていく。
その瞬間、蒔風が地面にガクリと倒れ伏して倒れてしまった。




「舜君!!」

なのはが驚いて蒔風に走り寄り、仰向けにして身体を起こす。
蒔風は苦しそうに呻き、顔は白い。
しかしそれでも、前に進もうとしているのか、右腕が虚空を掻いていく。




「なのは・・・・・ちょうどいい・・・・俺を・・・連れていけ・・・あの・・・・・う・・・」


呻き声の蒔風がそこまで言って、身体がさらに崩れる。
なのははその蒔風をなんとか支え、病室まで連れて帰っていった。



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「なんだよ・・・・病室じゃないか・・・・」

「当たり前だよ・・・なんで舜君・・・」


病室に戻り、なのはが蒔風に問う。
なんであんな無茶なことしたのかと。


「感覚がな・・・・・残ってんだ」

「え?」

「すまん。ヴィヴィオを・・・・・守れなかった」



蒔風が左腕を掴んで辛そうに言う。
彼の腕にはまだ残っているのだ。


あの時、自分を頼りにして、すがり、必死になって掴んでいた、幼い少女の手の力が
たとえ一度千切れたとしても、その感覚はこの腕に宿っている。



その蒔風に、なのはも心苦しそうな顔をしてそんなことないよ、と首を振る。
だが、蒔風はそれでは納得できなかった。



「俺は・・・・約束したんだよ・・・・助けを呼んだら、すぐに駆けつけてやるって・・・・」

「それは・・・」

「俺は!!・・・・もう負けるわけにはいかないんだよ・・・この世界にも、理不尽にも!!!守れたんだ、もう少しだったんだ!!!なのに・・・・クソ・・・・・クソ・・・・・!!!」



頭を叩きながら慟哭する蒔風。
涙などは流さなかったが、彼は大きく嘆き叫んでいた。



「舜君・・・・大丈夫、だよ」

「・・・なのは・・・・お前は・・・いいのか?俺は・・・・お前の大事なヴィヴィオを・・・・・」

「舜君は・・・・世界最強なんでしょう?だったら、また助ければいい。私も、フェイトちゃんも、はやてちゃんもみんないる!!だから・・・・だから!!」

「なのは・・・・・」



その言葉を聞いて、蒔風が目を閉じる。
そうして何を思ったのか、スゥっ、と目を開けて、にこりと笑った。


「そうだよな・・・・何を言ってんだかな、俺は・・・・・助けるぞ、なのは。なにをしてでもだ。手伝って・・・くれるか?」

「もちろんだよ!!!」


なのはが気持ちを改め、それに応える。


実際、なのはも蒔風も気はまだ晴れきってなどいない。
しかし、少しだけ、本当に少しだけ、立ち上がれた。






「絶対に助ける。そのために惜しむモノなんざねぇな」

「そうだね。でも、今回みたいに命を捨てるみたいなまねは絶対にダメだよ?」

「ん?何言ってんだ、俺に死ぬなんてことは止まる理由にならない」

「え?」

「もう何度も説明するのは面倒だから言わんがな、死ぬのがなに?って感じなのよ、俺」

「そんな・・・・」

「言っとくが俺の優先事項項目のトップ十五にも入ってねぇぞ?俺の命なんてもんは。そんなこと、今更怖くもないし、そのような恐怖最初から持ち合わせていないし」

「舜君!!それはあんまりだよ!!舜君が死んだら・・・・」

「はぁ・・・・めんど。青龍」

「は」



と、そこで蒔風が青龍を出し、部屋を出て行こうとする。
それを止めてしっかりと話を聞こうとするなのはだが、蒔風は構わんという感じで出て行ってしまった。




そうして部屋に残されるなのは。
青龍と二人だけになってしまう。


「青龍さん・・・・舜君って・・・・昔からそんなこと言ってたけど・・・・・本当に死ぬのが怖くないんですか?いったい・・・どういうことなんですか?」




ポツリと、なのはが青龍に聞く。



その質問に対する青龍の言葉は、YESだった。




そこから、なのはは一部始終を聞いた。



蒔風の、死を理解し、生とは別の、その在り方を。





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蒔風が最初に向かったのは隣部屋のザフィーラとシャマルの病室だ。
ザフィーラは身体に怪我を負ったものの比較的軽傷、シャマルの怪我もそんなに大きくはない。


現在シャマルは部屋におらず、ザフィーラだけがベッドにいた。



「よう」

「ぬ・・・舜か」

「シャマルは?」

「他のものを看に行っている。あの身体で、どうしてもとな」



そう言ってザフィーラの隣にまで行く蒔風。
そこで犬型となっているザフィーラの頭をクシャリと撫でて礼を言った。



「すまんな、ザフィーラ。いくらなんでもあそこで命を捨てんのは早かったわ。お前がいてくれて助かった」

「気にするな・・・・・」



と、そこで言葉が途切れてしまう。
そもそもザフィーラはそんなに語る方ではない。



だからこれくらいで蒔風は退室し、次の部屋へと向かった。






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「そ、そんな・・・・舜君が・・・・生きて・・・いない?」

「・・・・概念的に、そうなります・・・・ですから・・・・主は・・・・・」


「そんなの・・・・・いやだ」

「・・・・なのはさん?」

「私、決めたよ、青龍さん。舜君を、絶対に死なせない。そんなことはさせない。死んでほしくないの。なんだろう・・・・私は・・・・あの人を失いたくないの」

「それは・・・・つまり、主に想いを寄せている・・・・という事ですか?」

「・・・・・・え?えええええええええええええええ!?///////////」

「違うの・・・ですか?」



青龍がなのはに確認する。
そうしてなのはが一旦深呼吸した。




なのはは考えた。




私にとって・・・・・舜君は憧れの人だった。





ずっとずっと、憧れてきた。

また会えた時は凄くうれしかった。その時は、成長しても立った姿を見てもらいたかった。
ティアナとの模擬戦の時、見捨てられたみたいですごく悲しかった。

ヴィヴィオと一緒に笑っている彼は凄く見ていて気持ちがよかった。


そして今、自分は彼を求めてここにやってきたのではないか。




そう思うと、とたんに彼のそばに居たくなってきた。




顔を赤らめながら、なのはがそっと、目を開ける。





「私は・・・・舜君の事が大事になってる。あの人に守られたいし、守ってあげたいの。あの人のそばで、一緒に」





高町なのはは自覚した。



ああ、自分はこんなにもあの人に・・・・・





それを見た青龍が、嬉しそうな、それでいて悲しそうな顔をして、なのはにさらなる言葉を告げる。




「・・・・・で、あるならば・・・・・貴女にもう一つ、話しておかねばならない事が・・・・」



「え?」

「主は・・・・個人を愛せないのですよ・・・・」







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バァン!!!


「ギンちゃん元気かぁい!?」


「うっひゃぁ!?」

「きゃあ!?」

「ひいい!?」



蒔風が勢いよく扉を開けて、ギンガの部屋に入って行く。
そこにはティアナもいて、いきなりの来訪者にびっくりしていた。

スバルなんかはガタガタと震えている。


「しゅ、舜さん・・・・」

「ようっす。お前らは大丈夫か?」


蒔風がギンガに身体の調子を聞く。
どうやらチンクとの戦闘でかなり負傷はしたものの、別段重傷ではなかったようだ。


「舜さんは・・・・・・確か腕が・・・・」

「ん?まぁな。ま、気にするなよ。大したことじゃないさ。くっついたし」


そういって軽快に笑う蒔風。
しかし、なんだか元気のないスバルに、笑い声が一端止んだ。



「どうした、スバル。元気ないな」

「あはは・・・・・いや、気になっちゃいまして・・・・・ほら・・・・私たちの事とか・・・・」

「戦闘機人、か?」

「はい・・・・」

「そういえばみんなは知ってたん?」

「私は・・・・訓練校からの付き合いだったので・・・・」

「そっかーー。はやてとかなのはも知ってたクチだな?俺さん全然わからなかったわー」

と、笑ってスバルの頭を撫でる蒔風。
それでも隠し事をしていたためか、改めて知られたからか、はたまたその両方か、スバルの顔はまだ晴れない。


そんなスバルに、蒔風がしょーがないなぁ、とため息をついてスバルに言った。


「スバル・ナカジマ二等陸士!!」

「は、ひゃい!?」

いきなりの蒔風からの言葉に変な声で応えてしまうスバル。
それをクックと笑いながら、蒔風が優しく聞いた。


「お前の、名前は?」

「スバル・ナカジマです!」

「・・・・・・そうか。なら、それでいいじゃないか」

「え?」


「お前はスバル・ナカジマ。戦闘機人で、ギンガの妹で、スターズのNo.04。親友も、師も、仲間も、相棒も、家族もいる。そんなやつが、ここにいるお前だ。これ以上、何かいるかい?」

「あ・・・・・・はい。いります」


その言葉に蒔風が「お?」と目をキョトンと開く。


「私はナンバーズも・・・・あの子たちも、一緒がいいです!!」

「・・・・・・・ぷっ、あはははははははは!!!そうかい!お前の願いはでけぇな!!欲張りさんめ!嫌いじゃない!!」



「え?あれ?ティア、私なんか変な事言った!?」

「ふふ・・・ううん。あんたはそれでいいのよ。難しいこと考えんのは、あんたらしくないわよ?」

「そうね。スバルは想いのままに動くのが一番よ」


二人の言葉にむーーー?と手を顎に当てて考えてしまうスバル。

それを見て、蒔風がうんうんと頷いて部屋を出る。




「次はどこブラつこっかにゃ~~~」



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「舜君が・・・個人の恋愛ができない?」

「・・・・そう・・・・かつて他の世界で、一度だけ・・・・主を好きだと言ってくれた人がいましたが・・・・」

「舜君は許さなかった?」

「・・・・はい」

「そんな・・・」

「しかし主の言う事は確かです。それでも・・・・あなたは主を想い続けられますか?そうあり続けて・・・・くれますか?」


「青龍さん?」


「我々が主に使える事が出来るのは、主が"no Name"の垣根から越えたからです。その大元が「死の理解」。今では仕えることに誇りを思えるあの方を・・・どうか一人にしないで上げてくださいますか?・・・・主には・・・・幸せを掴んでほしいのです」




「・・・・大丈夫だよ・・・・」

「・・・・・・」

「うん、わかった。舜君は、私が助ける。絶対に、助けたい。もう憧れてるだけじゃ、嫌だもん。私は・・・・あの優しくて、強くて、いつだって助けてくれたあの人を、護ってあげたいの」

「・・・・ありがとう、ございます・・・・」

「もう・・・そうだなぁ・・・ひとまず、死ぬほど怖い目にあわせれば、その死の恐怖って言うのを思い出すかな?」

「なのはさん・・・・?」





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「エリキャロ~~~元気~~~?」

「あ、舜さん・・・・」



蒔風が院内を歩いていると、エリオとキャロとばったり会った。
どうやら購買にスープを買いに来たらしい。


「お前らは大丈夫か?」

「はい・・・・」

「で、でも、ヴィヴィオが・・・・・」



キャロは泣きそうな、エリオは悔しそうな顔をする。
その二人の頭を撫で、蒔風がにこりと笑った。


「大丈夫だ。おにーさんを信じろよ。それはそうと、お前らに頼みたいことがあるんだがな」

「「え?」」







「あっち方に小さな女の子がいるのを知ってるか?」

「は、はい・・・・」

「紫の子ですよね・・・・」

「あの子、どうにもおかしい。一体なぜ、スカの野郎に加担してるのか・・・・知りたい」


その言葉にエリオとキャロがコクリと、力強くうなずく。
それをみて、蒔風が二人を肩に抱えあげて元気づけるようにはしゃいだ。

そうやって何回転かしてから二人を降ろし、二人と別れた。



「よしよし・・・・今度はお前らが助けてやれ。この世界の理不尽に、打ち勝って見せてくれよ。それがお前たち未来ある者の力だからな」


一方、去っていく蒔風を見て、エリオがポツリとつぶやいた。

「舜さんの左腕・・・まだ痛いはずなのに・・・・」

「え?」

「動きが・・・ぎこちなかったんだ。あの人は・・・やっぱり凄いよ。キャロ、あの子、絶対に助けよう」

「エリオ君・・・・・うん!!絶対に!!」




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数分後、蒔風が部屋に戻って来る。

扉の前で、青龍が立って待っていた。




「よう。なのはにはどう説明した?」

「・・・・ありのままで・・・・そして・・・・二人目の厄介者ですよ?」

「?」





青龍が含みのある笑いを残して、剣に戻り蒔風の脇に消える。

蒔風は首をかしげ、部屋に入る。





そこにはもう、なのははいなかった。

ただ、一枚の紙が置かれており、そこにはこんな言葉が書かれていた。





『舜君へ
 あなたに言いたい言葉があります。伝えたい想いがあります。
 だけど、それはすべてが終わってから。この想いは、それまで大切にとっておきます。
 どうかその命は、あなただけのものだとは思わないでください。
 あなたの命は、そこにあるのだから。
                      高町なのはより』
 



それを読んで、ますます首をかしげる蒔風。


そして一つの仮説に想いいたる。





しかし





「いやいや・・・・まさか・・・・・そんなことあるかよ・・・・・ハァ・・・・・」





マジマジと何度も何度も読み直す蒔風。
しかし読めば読むほどそうとしか思えない内容に、蒔風がうんざりした顔をする。


「俺みたいなやつに惚れたって・・・・不幸にしかならないぞ・・・・なのは。憧れで、止めておけ・・・・・フゥ・・・・寝よ」









蒔風がごろりと横になる。
その顔はそれなりに嬉しそうではあったが、決してそれは為す事の出来ない、無駄なことだとわかっている。



自分は・・・・・「人」を愛せても、「その人」自身が大好きでも、「その人」のためだけの感情などは、持ちえないのだから。









「なのはに・・・・・会うのめんどくせーーーーーー」








to be continued
 
 

 
後書き

アリス
「前回の予告と違うじゃないですか」

すみません・・・・


アリス
「それにしても二人目ですか・・・・・まあなのはさんとは結構長く一緒にいましたからねぇ」







アリス
「次回、決戦までの期間でーーす」

ではまた次回











ギン姉を、返せェェエエエッ!


いやぁ、こうならなくてよかった 
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