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世界をめぐる、銀白の翼

作者:BTOKIJIN
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第一章 WORLD LINK ~Grand Prologue~
  なのはStrikerS ~奪われる未来~


炎のように赤く染まる空。



その空に、やっと蒔風が天井を破って地上まで出てこれた。

現在、地上本部は獅子天麟の結界で守られているとはいえ、かなり危ない状況であることは変わりない。また、構造も非常に脆くなっている。



だから



「やっと出れた!!くっそ、時間食った」




だから蒔風は何層も天井をぶち破って出てこれなかったのだ。
破ったのは地下一階から地上の一層のみ。


しかし、もはやなにも気にすることはい。
後はただライトニングの三人が向かった機動六課隊舎に向かって行くだけだ。



フェイトと別れてからすでに十分は経過している。


もし、相手側にあの高速移動を可能とするトーレがいたらかなりまずい。






「ブッ飛ばすぜぇ!!!加速開翼(ブーストオン)!!最高出力!!!!」





パァン!!!!



空気の壁をいきなり破って、蒔風が地上本部上空から一直線に隊舎の方へと向かう。


その瞬間





ドォン!!!!!





動き始めて一秒と経たないうちに、蒔風に砲撃が命中する。

放ったのはビルの屋上にいるディエチ。
直接対峙した自分とトーレ、クアットロの経験値の重ね掛け、更には力による一種の揺らぎから、蒔風の向かう先を想定し、砲撃を放ったのだ。




対して蒔風は移動中、しかもこれからという瞬間だった。
爆煙が大きく上がり、その姿が撃ち消える。





「目標には命中。クアットロ、チンク達とは連絡は着かないのか?」



ビルの上でディエチがクアットロに確認を取る。
彼女もこれだけ大きな戦いだと、少しばかりは姉妹の事が心配になるのだろう。

やられるとは思っていない。
しかし、こうも連絡がつかないと不安にもなるものだ。


だが、通信先のクアットロは、そんなこといちいち知らないと言わんばかりにどーでもいいような声だった。




『さぁ?ま、やるべきことはもう終わっちゃってるし?ぶっちゃけもういらないというかなんというか・・・・・』

「クアットロ」

『あ~~らあらあら。ごめんなさいね。そうよね、心配ねぇ?これが終わったあともまだまだやるべき事があるのにぃ』



クアットロのあまりの言いように、ディエチがたしなめる様に名前を呼び、クアットロがわかりましたよ、といった風な口調で弁解する。


「とりあえず私はこのまま翼人の動きを止める。クアットロは・・・・・」


チンク達の方を頼む、というディエチの言葉は続かなかった。



彼女の目が、ある二つのものを捉えたからだ。



カカン!!!




彼女の足元から一メートルほど離れた左右に、一本ずつ剣が飛んできて刺さっていた。

なんだ?と疑問に思った瞬間、それが一気に人型に変わり、彼女の巨砲、イノーメスカノンと彼女自身を抑えつけて拘束した。




「武器、獲ったどーーーー!!!!」

「女性相手に私ですか・・・・まぁ、相手には女性しかいないみたいですがね」




武器を抱きかかえているのは白虎、ディエチの手を取って捻っているのは朱雀だ。

ディエチがその二人を見て、まさかと上空の爆煙を見る。
しかし、朱雀がそのディエチに遅いですよ、と宣告した。



「舜はもうすでにあそこにはいません。私たちを投げた時にはもうすでに飛んで行ってしまいました」

「ッッ・・・・私を・・・どうするつもりだ・・・・・」

「・・・・どうしたいですか?」

「な・・・・」

「チンクって子たちはなのはっちと一緒だよ。こう言うのはなんだけど、だれも大きな怪我は負ってない」



それを聞いてディエチが目を見開く。

彼女の元に向かったのはノーヴェ達三人。
つまりは戦闘機人四人がかりで全員がつかまったというわけなのだから、無理もない。


一体何があったのか。
それを聞こうとして、それよりも早く朱雀が言った。



「ま、詳しい事はチンクさんに訊いてください。彼女は納得して投降してくれましたから」


それを聞いてこれ以上驚きようのないようにディエチが口を開けた。
負けて連行なら話はわかる。


しかし、納得してとはどういう事か。


「ま、これから連れて行きますから、大人しくしててくださいね?」

「ティアナっち?いまからこっちで捕まえたディエチって子連れてくから~~。うん、よろーーっと・・・朱雀、了解だってさ」

「では、行きましょうか」



「捕まって・・・行く先は牢獄か?」



「いいえ、新たなる可能性、未来ってやつにです」







------------------------------------------------------------






「時間食った・・・はやくはやく・・・・・あん?」


蒔風が上空を飛んで六課に向かう途中、前方で何度か火花が散っているのを確認する。
そして、それは近づくにつれて三つの人影となり、更に近づいてきたところでその内の一つが蒔風に向かってきた。





「翼人!!!ここから先は「邪魔じゃあボケぇ!!!!!」ブグアッ!!!??」





だがそれが何かを言って目の前に来た瞬間、蒔風の拳で弾き飛ばされていった。


三人のうち、突っ込んできたのはトーレ。
ちなみに他の二人は足止めされているフェイトと、もう一人の戦闘機人、セッテだ。



蒔風が残っていた二人を見、追い越して行きながらフェイトに通信を入れた。




「フェイト!!今二人の機人とやってんのか!?」

『舜!!あっちは!?』

「終わっている!!エリキャロはどうした!!」

『二人は・・・っ、この!!先に!!』

「足止めされてんのか・・・・・その二人は任せてもいいか!?俺は行く!!」

『わかった!!任せて!!!』





そう言った時にはすでにフェイトは後方にいたのだが、蒔風は一応連絡を入れた。
本当なら青龍か玄武を置いていきたいところなのだが、戦闘機人があと何体か、そしてどこから出てくるかわからない以上、もう残り二体でもギリギリなのだ。


こんな事ならチンクに割り当て聞いとけばよかったな、と今更後悔する蒔風。




そう思いながら飛ぶ。



そして、機動六課の隊舎が見えてきた。





隊舎から出てきたのは小さな少女と、いつか見た蟲人間。
更には戦闘機人二体だ。


少女とと三体は大きなガジェットの上に乗り、そこには一人に人間がぐったりと横たわっていた。



「ヴィヴィオ!!!!!こんの・・・・・・クッソがぁぁああああああああああ!!!!!!!!!」





蒔風が一気にさらなる加速をして、途中でフリードに乗ったエリオとキャロを抜き去り、通り過ぎざまにヴィヴィオを回収、ガジェットを破壊した。


そしてそのまま燃え上がる隊舎前に蒔風が着地し、翼をしまう。
そこにシャマルとザフィーラが満身創痍で駆けよってきた。




「舜君、来てくれたの!?」

「いや・・・・遅かったみてぇだ」


ヴィヴィオを左腕で抱え、燃え上がる隊舎を見る蒔風。
それを見る表情はとても悔しそうに歪んでいた。



「俺も・・・・守りきれなかった。危うくこの子を・・・・」

「言うな。オレだって同じだよ。だが、まだ負けてない。まだ、いけるか?ザフィーラ」

「たとえこの身が崩れようとも、俺は盾の守護獣だ。こんなところで、倒れてはおれん!!!」



ザフィーラが立ち上がり、なおも戦おうとする。
しかし、その脚が震えているのは確かだし、もう戦う事は実質無理だろう。



「ああ、頼む」



しかしそれでも蒔風は休んでろとは言わなかった。

護る事、それが彼の誇り。


そして今、ここに守るべきものが戻ってきたのだ。
そこで彼に休んでろなんてことは、蒔風には言えるはずもなかった。



「舜さん!!!こっちいつ来たんですか!!??」


と、そこにエリオとキャロも合流する。

蒔風が今だよ、と答えてにやりと笑いながら、上空の敵に向かって叫んだ。




「どうだ!?まだやるか?レリックは取られっぱなしだが、ヴィヴィオは渡さねえ。かかってくるか?」


そう叫ぶ蒔風を、無感情な瞳で見つめる三人。
いや、あまりにも無感情すぎる。



「おそらく、あまり人間としての教育を受けてないんだわ・・・・」

「兵器として生まれ、兵器として育てられた者たちだ。動きが洗練されていたぞ。油断するな」


シャマルとザフィーラの忠告に、蒔風がコクンとうなづいてキャロに抱えたヴィヴィオを預けようとした。





その瞬間






ゴゴン!!!!






その一瞬の隙を突いて、ガリューが蒔風たちの中心に現れ、蒔風の側頭部に向かって背後からハイキックを叩き込んでいた。


が、それは命中せず、蒔風の残った右腕でガードされたいた。
しかし、ここでヴィヴィオを誰かに託せなくなってしまう。


さらにガリューの主、ルーテシアの転送魔法で目の前に機人の一人、ディードが双剣「ツインブレイズ」を持って地面から現れ、独楽のように回転してその場の全員を散らす。
バックステップでそれをかわす蒔風の頬元にうっすらと切れ込みが入った。



蒔風はさっきまで六課隊舎に背を向けて正面上空の機人たちに話していた。
そこに中心からの攻撃をバックステップで避けたのだから、当然、残った上空の機人に背を向けるわけで・・・・



「IS発動、レイストーム」



そしてそこを攻撃された。
ルーテシアの横に残った短髪の戦闘機人、オットーが右掌を蒔風に向け、そこから幾本にも拡散された光線が打ち出される。


それはシャマルのバリアを打ち破った物だけあってかなり強力だ。
しかも、背後からはガリューとディードの二人が迫り、左腕はヴィヴィオを抱えて動かせない。



そんな状況。
しかし、蒔風の目にはまだ余裕があった。




「混暗陣!!!!」





その言葉と共に、ズンッ!!!と一気にルーテシアとオットーの身体が地面に落ちる。
べシャリと地面にへばりつく彼らを見てから、蒔風が身体を回転させてガリューの拳とディードの双剣をほんのわずかな間を縫って避けて後ろに回る。


そしてその背中を蹴り出し、四人をまとめようとする。
ディードはそれで攻撃の勢いもあってオットーのもとまで吹き飛ぶがしかし、ガリューは耐え、蒔風の片足を掴み上空へと投げ放った。



蒔風はそのまま青龍と玄武を抜いて機人の方へと投げ、彼らを捕縛しようとしていた。
結果としてうまく投げられはしたのだが、ガリューのその投げによって視界が乱れ、上空で体勢を整えるころには陣の中からルーテシアはいなくなっていた。




「主だけでも助けたか・・・・あんな小さな子に何させるつもりだ、スカリエッティ・・・・いや、それとも・・・・利害関係があるのか?」


そんなことをつぶやきながら蒔風が考える。




「舜さーーーーん!!大丈夫ですかーーーーー!!!??」




と、そこで下の方からエリオが手を振って蒔風に呼び掛ける。
どうやら混闇で動きが封じられていた上に、青龍と玄武の助けもあってか、オットーとディードを捕縛することに成功したようだ。


「これでなんとか七た・・・・七人はこっち側、か・・・・エリオ!!キャロ!!!フェイトの加勢に行くぞ!!それからもう一度地上本部だ!!!」


「「はい!!!!」」




そう言って蒔風がヴィヴィオをシャマルに預けるために、ゆっくりと降りて地面に向かう。



「う・・・・ん・・・・・・?」



そこでヴィヴィオが目を覚ましたのか、薄く眼を開けて蒔風の顔を見る。




「お、とーさん?」

「誰が父さんじゃ。おにーさんだって言ってんだろーが」

「あうっ、いたいよーーー」


蒔風がヴィヴィオに軽くデコピンし、まあ良かったと一安心する。






しかし・・・・・・







そこで蒔風に通信が入った。















『主!!ち、地上本部は・・・・・もう・・・・・があああああああああああッッ!!!!』

「獅子!?何が起こった!!おい!!!」



突如として入った獅子からの通信。
しかし、その後は爆音と叫び声しか聞こえなくなってしまって、何も聞こえない。


「おい!!何があった!!獅子、麒麟、天馬ァ!!!」


蒔風が空中で降りるのをやめて、大声で彼らに叫びかける。



すると、切れ切れの声で麒麟からの言葉が聞こえてきた。




『主・・・・いかん・・・・・・・結界が・・・・・』

「なにがあった!?結界がどうした!!」

『あやつらが・・・・・やってきて・・・・結界どころではなく・・・・・(キュロオオオオオオオオオオオオオオ!!!!)ヌガッ、ぐオオオオオオオオオオオッッ!!!』

ドォン!!!!





通信の向こうから爆音が聞こえる。
そして蒔風の目に残ったのは、聞き覚えのある怪鳥の鳴き声だった。



「まさか・・・・まさか!!・・・・・・介入が早すぎる!!計算はまだ・・・・・」

「舜さん!!!!後ろーーーーーーーーー!!!!!!!!」





蒔風が焦り出した瞬間、キャロの叫びが蒔風の身体を動かした。



その場から動いた、その瞬間。

今まで蒔風がいたその場を、三つ首を持った地獄の番犬の牙が空を切って噛みついていた。
すなわち、そこに居たのはケルベロス。



その存在が現す事はただ一つ。






「「奴」が・・・・来やがった!!!」

「舜!!!!」



ケルベロスを過去に見た事のあるザフィーラが蒔風の名を呼ぶ。
だが、蒔風は「大丈夫だから地上本部の援護に向かえ」という言葉を返す。




「おとーさん、こわいよぉ・・・・・」

「おとーさんじゃない、おにーさんだ。大丈夫だ。この腕にしっかりしがみついてろ。ぜってー離さないから」

「う、うん・・・・・」



そうしているとヴィヴィオが目に涙を溜めて蒔風に訴えてくる。
そのヴィヴィオの頭をそっと撫で、蒔風がグッ、と左腕を締める。



奪われてなるものかと


これ以上、もはやこの世界での敗北をしてたまるものかと。






だが








世界はいつだって残酷だった。



















「ならば、その腕ごといただく」














――――ゾンッ!!!!!!









蒔風の背後から、一言だけ聞こえてきた。
その直後、左肩口に蒔風が熱い痛みを感じた。



そして






ヴィヴィオが蒔風から離れて行ってしまった。








蒔風の左腕ごと、一緒に








「ッ、キャアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!!・・・・・・・・・・あ・・・・・」





蒔風が地面に落ち、ヴィヴィオが握っていたモノを落として頭を抱えて悲鳴を上げ、すぐに意識を失ってしまった。
そして、そのヴィヴィオだけを、「奴」が抱えて空中に立っていた。



ボトリと蒔風の左腕が地面に落ちる。




「子どもを使うのは趣味じゃないんだが・・・・・まあ、これしかないなら仕方ない。ガキはいただく」





そう言って地面に倒れる蒔風を一瞥する「奴」
その言葉に反応してか、蒔風が左の肩口を押さえながら立ち上がった。



「そいつを・・・返せ・・・・・」


「舜さん!!!う、腕が!!!!」

「血も!!!い、急いで手当を!!!」




立ち上がった蒔風にその場の全員が駆けよってその有様に閉口し、戦慄した。


特にエリオとキャロはそうだ。
いつだって強かった彼が、たった一人の敵に対して、この重傷。

目がうつろで、足はふらつき、片腕がなく、しかも切り口からは血が吹き出ている。



そんな彼の姿を、一体誰が想像しただろうか?





「ヴィヴィオを・・・・返せ・・・・・」


「いかんなぁ、蒔風。今お前を殺しときたいのは山々なんだが、もう少しでテスタロッサ・ハラオウンが来てしまう。あれの相手もするとなると非常にめんどうだ。だから・・・・」



そう言ってふわりと消えて行く「奴」
空間が歪み、その中に去って行こうとする。


「ここは引くさ。計算も終わってないからな」


その言葉に、蒔風の目がガッ!!と開かれる。




「返せって・・・行かせねぇって・・・・」




ブシッ!!!!




「言ってんだろ!!!」






そこで蒔風が飛び出した。
左の肩口を押さえていた右手を放し、拳を握って「奴」を殴り飛ばそうと踏みこんで跳躍する。

瞬間、左肩口から一気に血が噴き出し、足元を染め上げるが、そんな事で蒔風は止まらない。




自らの死などでは、蒔風の足を止めることなどできない。




だがやはり限界はある。
「奴」はため息をひとつつき、めんどくさそうに蒔風を蹴り飛ばして、その場から消えて行ってしまった。

だが蒔風はそれも見えていないのか、立ち上がって血を噴き出しながらヨロヨロと周囲を見渡して、どこともなく歩きだそうとした。



「行かせねぇぞ!!返せってんだ・・・ガキを返せ!!!そいつを巻きこまないでやってくれ!!もう勘弁してやれよ!!!・・・クソ・・・今行くぞ・・・・・・待っていろ・・・・おにーさんが今、助けに・・・・・」

そこまで言ってついに蒔風が倒れ込んだ。


ビチャン、という音がして、足元にどれだけの血があるのかという事を証明していた。




「舜君!!!無茶はしないで!!!」


そこでやっとシャマルが寄って行って止血の魔法をかけて結界を張る。
さらに傷口を見て、数回うなづいてザフィーラに指示を出す。


「切り口が綺麗・・・・今ならまだ間に合うわ。ザフィーラ!!腕を!!それから、殺菌の結界をお願い!!!」

「了解した!!!」

「シャマル先生!!これ、舜さんの・・・・」



そこでエリオとキャロが今にも大泣きしてしまいそうな顔をしながら、蒔風の腕を持ってきた。
その腕についている衣類には、ハッキリと解るほどに、ヴィヴィオが握っていた跡がついていたままだった。



それを見て、シャマルが頷いて彼らに隊舎から避難した皆の誘導を頼んだ。




「舜君!!あなた、死ぬ気!?なんでこんな状態で向かって行ったの!?無謀もいい所よ!!!」


エリオたちがいなくなると、シャマルが蒔風に怒鳴り声を上げた。
しかし蒔風の顔は痛みに耐えるばかりで、死ぬかもしれない、などという心配は一切していなかった。


否、そもそも、死ぬなんてことは最初からどうでもいいと言った顔をしているのだ。




「俺にその説教は成り立たないぞ、シャマル。と言うか、早く繋げろ。すぐに追う。止血と接合がすんだら・・・・」

「バカを言わないで!!このままみすみす死なせるなんて、私のプライドが許しません!!!」

「バカを言ってんのはどっちだシャマル!!!こちとらはなから「死ぬ」なんてことはどうだっていいんだよ!!非生者よか、これからの未来たるガキを助けに行くのが当然だろうが!!!俺は行くぞ・・・・早くしろ!!!」

「蒔風!!貴様が死ねば、主はやてをはじめ、どれだけの人間が悲しむと思っているのだ!!!ヴィヴィオは取りかえす。そのためには、貴様の力も必要なのだ!!!」




結界内で倒れる蒔風と、クラールヴィントでなんとか応急的に腕を繋ぐシャマル、更に結界で内部を浄化しているザフィーラが怒声を上げて口論する。


それを見ていたのは、青龍と玄武にとらわれていたオットーとディードだ。
自らの命を命と見ず、ただひたすらに立ち上がろうとし、その瞬間だけ「人を救うという一つのシステム」となっていた蒔風に、二人は驚き、そして戦慄していた。





「あの人は・・・・・人間ではないのですか・・・・・?」

「私たちも・・・道具として教育させられてきました・・・・・しかし・・・・・あれが私たちの行く末なのですか・・・・・?」




誰に向けたものでもないその質問。


彼女たち二人は極力人間味を持たないように教育された戦闘機人だ。
つまりは人間兵器として、道具として教育されてきた。

故に最初からそういう状況だったため、そうなっていく事に一切の疑問を抱くことなどなかったし、それを教える者もいなかった。




しかし、自分たちの目の前で命が・・・・・否、その肉体が動きを止めるまで動き続けようとしていた、機械のようにひたすら救おうとしている男。

それを見ていて、急にそうなる事が恐ろしくなってきたのだ。





そこに誰の意志もなく、誰に止められる事もなく、ただ肉体に限界が来て、醜く崩れ落ちて身体が身体と呼べなくなって始めて動きを止めるような、そんな生き方を、今一瞬でも行っている男を見て、自分の行く末に恐れ慄いたのだ。








あんな人生は嫌だ。



何かをやって、それが誰かに認められ、その中で死んで朽ちるならまだいい。


しかし死んで誰にも見ても貰えず、どことも知らない土地で、ただむざむざと朽ちて行く、そんな行く末を恐れ始めた。




道具として死ぬ。



確かに、それは貫き通せば立派な死に様かもしれない。
だが、貫いた先にそれがあるかもわからず、「自分」の無いまま終わるという事が、どれだけ恐ろしいかを、彼女らは今、知ったのだ。



「・・・・主は、死と言うものを恐れない」

「乗り越えた結果ではなく、根本的に持っておらんのだ」


「死を・・・・」

「恐れない・・・・?」


「さよう。じゃからこそ、彼は「生きる」と言う事に執着せんのだ」

「・・・・いうなれば・・・・嫌いな食べ物のようなモノ・・・・食べるのは嫌だけど・・・・別に食べることはできる・・・・」

「つまりはいつ死んでもいいのじゃよ、あやつの胸の中ではの。死にたいわけではないが、いざというときは軽く命を投げ捨てる」

「・・・・覚悟も何も・・・・持たないままに・・・・」

「そんな人間は生きてなどおらん。死があるからこそ人間は生きることに必死なのじゃからの。ゴール無きマラソンなぞ、だた日常的に歩いてるにすぎん」

「・・・・だからこそ・・・・主はすでに・・・・死人なのです・・・・」





そう、だからこそ


彼は生きると言う事に素晴らしさや美しさ、輝きを見出し、それを守ろうとしているのだ。
そこまで離れてしまったからこそ、彼は人というのが大好きなのだ。


しかし、なんとその基盤の無残で、残酷なものか。



誰よりも「生」を愛する彼は、誰よりも「生きて」などいないのだ。




「僕達は・・・・」

「お主たちはまだ戻れる。チンク殿をはじめとする数名のナンバーズも、こちら側に投降しとる」

「・・・・・私たちが・・・・・人として・・・・」

「・・・・生きていけます。必ず」




そう言って青龍が強引に締めくくる。

そしてその視線の先には、未だに騒いでいる蒔風たちがいた。



「仮止めでもいい・・・・俺は・・・行くぞ・・・・・」

「待ちなさい!!!」

「うるせぇ!!今さらオレの命に・・・・・」



ガゴッ!!!

叫んで結界から出て行こうとする蒔風に、強烈な手刀が撃ち込まれる。
人型となったザフィーラが、後頭部を打たれて崩れ落ちた蒔風をそのまま抱え、臨時の医務室にまで運んでいく。

「このまま連れていけ。こっちはこっちでさらに客のようだからな」


ザフィーラが上空を見上げ、それにつられて皆がそちらを見る。




その上空の先には無数のガジェット編隊があった。

それを迎撃しに行くというザフィーラに、エリオとキャロもついていくと言い、その迎撃に当たる。

一方青龍達は実際、こうしてここに顕現している事すらやっとの状態だ。
主である蒔風があんな状況で、いまだに存在していられる方がスゴイのだ。


ザフィーラの当身で意識を失っていく蒔風が最後にみたのは、巨大な足で立つ竜王の姿だった。







そして、崩れ落ちた地上本部では

とりあえず地下会議室から出てきたはやてとシグナムがナンバーズを一応見張り、ティアナ、スバル、なのはは倒れた獅子天麟の元へと向かって行った。




「大丈夫ですか!?」

「だめ・・・ですなぁ・・・・・」

「この体たらく・・・・なさけない・・・・・」

「グッ・・・・がぁ・・・・・・」



獅子天麟の三体はよく善戦していた。

突如として現れた迦桜羅によって、周囲が焼かれ、結界どころではなくなったのだ。


そこで対処すべく三体が獣神体となってガジェットを瞬時に一掃、迦桜羅に向かった。
しかしその瞬間、二足歩行となったサラマンドラがその炎の太刀で地上本部の塔を斜めに切断、一気に破壊したのだ。

さらには地面にそれを突き立て、地下のある一室を破壊した。
その「人」が一人も存在しない、最高評議会室という札のあった部屋は、炎と瓦礫によって完璧に破壊されて一切として動くものは無くなった。


そこからはもはや負け戦だった。


被害は大きく、死者が出なかったのが奇跡なくらいだ。



しかし、その代償は大きかった。




三体の再起不能。
地上本部システムの瓦解。




スターズの三人が駆け付けた時、三体はすでに人型にまでなっており、担ごうとしたら、剣の姿に戻ってしまった。
しかたがないのでそれを持って救護のテントまで戻る三人。



更にそこに上空で敵方の騎士と戦闘を行っていたヴィータとリィンも運ばれてくる。
何とか地上本部への進攻は阻止したのだが、そのあまりの戦闘力に撃墜されてしまったのだ。




それを見て、なのはが両手の指を組んで、祈るようにつぶやいた。






「助けて・・・・舜君・・・・・」







しかし、それに応える青年はいない。
それどころか、その手を取る腕を一本、失ってすらいたのだから。



ヴィヴィオは奪われ、蒔風が重傷。
結果的に地上本部は瓦解、崩壊し、六課隊舎も使い物にならない。






大きな敗北

大きな歪み








物語は変わっていく。






下に上にと、大きく振り幅を変えながら。








to be continued
 
 

 
後書き

アリス
「蒔風通信機持ってましたね?どうしたんですか?」

シャッハから借りました

アリス
「後付けですね。」

うるっせぇ




アリス
「これで敵側に残っているのはウーノ、ドゥーエ、トーレ、クアットロ、セッテの五人のみ」

見事に構成組、拘留組。
だけどここでふるいにかけたかったんです。

蒔風の腕を落としたかったんです

アリス
「酷いですね」

ニヤリ



アリス
「次回、宣戦布告」

ではまた次回










私達の居場所を…壊さないでえェッッ! 
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