| 携帯サイト  | 感想  | レビュー  | 縦書きで読む [PDF/明朝]版 / [PDF/ゴシック]版 | 全話表示 | 挿絵表示しない | 誤字脱字報告する | 誤字脱字報告一覧 | 

提督はBarにいる・外伝

作者:ごません
しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。 ページ下へ移動
 

提督はBarにいる×プレリュード編・その5


 まだまだ続く天ぷら攻勢。パセリに続いてここらで一つ、口直しになりそうな天ぷらを一品。旬の夏野菜だし、薬味に類する物だから、クセになると抜け出せなくなる。……そんな『茗荷の天ぷら』をお目にかけよう。

《苦味がクセに!茗荷の天ぷら》

・茗荷:食べたいだけ

・天ぷら衣:適量

・顆粒鰹だし(無くても可):ひとつまみ

 茗荷と言えば大体、甘酢漬けや麺類の薬味として刻んで散らしたり、生で味噌やマヨネーズを付けて丸かじり、という食べ方をする人が多いだろう。しかし俺の実家では昔からネギのように斜め切りにしてごま油で炒め、その苦味と香りを炒め物で楽しんだりしていた。その延長線で揚げ物にも出来るんじゃないか?と発想したのがこのレシピの原点だ。

 よく洗って汚れを落とした茗荷を、顆粒の鰹だしを加えた衣に潜らせて、揚げる。鰹節の削りカスであるだし粉でもいいんだが、こっちの方が手軽だろ?火を通しすぎずに衣さえ揚がれば完成だ。

「さぁ、『茗荷の天ぷら』だ。塩がオススメだよ」

 食べやすく斜めに両断された断面は、茗荷の水分が滲み出て来ていてジューシーさが見てとれる。断面にチョンチョンと塩を付け、パクリ。サクサクの衣とシャキシャキという茗荷の歯応え、そこに茗荷の苦味と香りが抜けていく。夏の香りだ。山盛りの茗荷の天ぷらとキンキンに冷えたビールか冷酒でもあれば、一晩は確実に飲み明かせる。そう思える一品だ。さて、野菜ばかりじゃ飽きるだろうし、そろそろ野菜の天ぷらから切り替えようか。その前に、是非とも食わせたい天ぷらが一つ。夏野菜の定番、皆大好き『とうもろこしの天ぷら』だ。

《甘さ引き立つ!とうもろこしの天ぷら》

・とうもろこし:1本

・天ぷら衣:適量

・薄力粉:少々

 まずはとうもろこし。芯から外すのだが、根元から根こそぎ取るのではなく、粒の根元は芯に残すように削ぎ落としていく。とうもろこしの粒は一つ一つが種子……つまりは種だ。種ってのは中身を守る為に密封状態でその中には栄養分や水分が詰まっている。そんな物を揚げれば、ポップコーンのように弾け飛ぶのは必然。だからこそ、密封状態で揚げないようにするために根元を残すのだ。根元を残して切ってしまえば、密封はされない。弾ける心配もなくなる。

 そしてポイントはとうもろこしに衣を付ける前に、薄力粉をまぶして全体に馴染ませる事。衣だけでは粒にくっつきにくい為、薄力粉につなぎの役目をもたせるのだ。後は少ない位の衣を絡めて、175℃位の少し低めの温度の油で揚げる。

 揚げる時にもポイントがあり、小さなお玉等でかき揚げ状に油に入れたら、完全に衣が固まりきる前に、中央に数ヵ所菜箸で穴を開ける。こうする事で中心と外側の揚げムラが無くなり、どこを食べてもサクサクのかき揚げができるってワケさ。

「さぁ、『とうもろこしの天ぷら』だ。塩もいいが何と言ってもカレー塩が最高だ」

 サックリとした衣の中から、甘くプチプチとしたとうもろこしが顔を覗かせる。本来の甘味をカレー塩のスパイシーさが引き立てて、更に甘さと旨味を感じさせてくれる。とうもろこしだけじゃなく、塩ゆでした枝豆を剥いて、一緒にかき揚げにしても美味いぞ。お次からは魚介……といっても加工品を使った天ぷらを紹介していこう。





 まずは定番の『ちくわの磯辺揚げ』だ。それと『魚肉ソーセージの天ぷら』。こっちも同じ衣で揚げるが、オーロラソースで食べる『カレー磯辺揚げ』に仕上げるぞ。

《オーロラソースで!ちくわと魚肉ソーの天ぷら》

・ちくわ:2本

・魚肉ソーセージ:2本

・ベビーチーズ:1個

・天ぷら衣:1カップ位

・カレー粉:大さじ2

・青のり:大さじ1

・塩、胡椒:適量

(オーロラソース)

・ケチャップ:大さじ1

・マヨネーズ:大さじ1

・レモン汁:小さじ1

・砂糖:小さじ1



 ちくわは切らずに丸々1本使うので、とりあえず放置。ベビーチーズは縦に4等分、魚肉ソーセージは半分の長さにして縦横4つに割って、表面に塩・胡椒を振る。

 ちくわの穴にベビーチーズを詰め、チーズちくわにしておく。この詰めるチーズがベビーチーズというのもちょっとしたポイントだったりする。ベビーチーズはプロセスチーズと言い、一度熱加工をしてから成型するため、加熱しても溶けにくい。だから揚げても衣からはみ出しにくく、料理の詰め物等にも向いている。

 続いて衣とソース作り。天ぷらの衣1カップに、カレー粉と青のりをまぜる。ソースの方も全ての材料をムラが出ないように混ぜるだけ。

 後はちくわと魚肉ソーセージに衣を付けて、揚げる。どちらもそのままで食べられる物なので衣にさえ火が通れば完成だ。

「お待ち、『ちくわのカレー磯辺揚げ』と、『魚肉ソーセージのカレー磯辺揚げ』だ。こっちのオーロラソースを付けて食べてみな」

 ちくわや魚肉ソーセージのような練り物はプリっとした独特の歯応えと、魚の凝縮された旨味が特徴だ。それを青のりの香りとカレー粉の味が引き立てて、更にオーロラソースも甘酸っぱい味もプラス。ご飯のおかずにも酒の肴にも合う、正に家族揃って食べられる一品だ。お次も魚肉の練り物……今度は『はんぺんの天ぷら』を作るとするか。


《挟んで!練って!はんぺんの天ぷら》

・はんぺん:4枚

・明太子1本

・とろけるチーズ:適量

・ベビーほたて:10~20個

・アスパラガス:2本

・天ぷら衣:適量

 練り物の中でもはんぺんは、個人的にアレンジのしやすい食材だと俺は思う。煮ても焼いてもそのままでも美味いし、擂り潰せば粘りが出るし、淡白な味だから以外とどんな食材にも合う。今回ははんぺんを使った挟み揚げと、はんぺんを擂り潰して具を混ぜ込んで、新しい練り物風に仕上げた練り揚げを一品ずつ。

 まずは挟み揚げ。明太子の先端を切って中の粒をしごき出す。そこにとろけるチーズ(ピザ用チーズの方が混ぜやすいぞ)を適量加えてよくまぜる。はんぺんを三角形になるようにカットし、一番長い辺に包丁を入れ、ポケット状にする。

 先程作った明太チーズをはんぺんのポケットに詰めてやり、後は衣を付けて揚げる。サクサクとフワフワ、異なる食感の中から、チーズがとろ~り。そこに明太子の辛味と塩気がやって来る。あまり味を主張してこないはんぺんだからこそ出来る芸当だな。



 お次は練り揚げだ。まずははんぺんをペースト状に。手でやったりとか擂り鉢でやる方法もあるが、簡単なのはミキサーとかフードプロセッサー使うのが楽だろな。

 次に具材の準備。今回はベビーほたてとアスパラガスを使用。ベビーほたては4等分に切り、アスパラガスは小さく斜め切りに。後はペースト状にしたはんぺんと具材をよく練り合わせて、小さく小判型に成型。さつま揚げっぽくなるから、素揚げでもいいが今回は天ぷら衣を付けて揚げる。

 アスパラの火の通りが心配なら、予め下茹でしておいてもいいかもな。但し、しっかりと水気を切らないと、天ぷら自体が水っぽくなってしまうからな。

「ハイよ、『2種類のはんぺん天ぷら』だ。」

 さて、次は何を揚げたものか。思案に耽っていると、

「あの……すいません」

 おずおずと申し訳なさそうに、叢雲が口を開いた。

「ん?どうした、何か食いたい物でも?」

「あの……天ぷらでデザートって出来ないかしら?」

 天ぷらでデザートか。あまり結び付きの無さそうに思える両者だが、案外繋がったりするもんだ。

「あぁ、出来るよ。ちょっと待ってな」

天ぷらは和食のファンタジスタだ、と語る料理研究家がいる。柔軟な発想があれば、たとえ偶然でも美味い天ぷらは出来るのさ。 
ページ上へ戻る
ツイートする
 

全て感想を見る:感想一覧