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銀河英雄伝説~新たなる潮流(エーリッヒ・ヴァレンシュタイン伝)

作者:azuraiiru
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第二百四十六話 キレるほどに恋してる

宇宙暦 798年 3月 15日    ハイネセン ある少年の日記



ここ最近、同盟では暗いニュースが多い。先月に起きたクーデターの所為だ。最初は軍人と政治家達だけのクーデターだと思われていたけど財界や官僚まで関与したことが分かってきた。連日取り調べを受ける人が増えているし、自殺した人も出た。段々規模が大きくなってる。

最初にクーデターで驚いたのはネグロポンティ国防委員長が参加していたことだった。委員長はトリューニヒト議長の最も信頼する部下だったのにそれが議長を裏切るなんて……。最終的には議長の説得で委員長が全てを自供したことがクーデターを未然に防ぐことになったけど今でも信じられない。

もっと信じられないのが多くの軍人が参加していたことだった。現役の軍人だけじゃない、退役した人や予備役の人まで参加している。でもロボス退役大将とかフォーク予備役准将とか、そんな人仲間にしてどうするんだろ。敵をやっつける事より味方を犠牲にする事の方が得意な人達なんだけど……。自滅する気だったのかな?

母さんもクーデター騒動が起きた時は不安がっていたけど今日はニコニコしている。今日は楽しみにしていたヴァレンシュタイン元帥の結婚式の日なんだ。ハイネセンの、いや同盟のTV局は皆元帥の結婚式を放送する事になっている。フェザーンのTV局の中継をそのままLIVEで放映するんだ。母さんだけじゃない、皆結婚式の放送を楽しみにしている。もちろん僕もだ。どんな結婚式になるのか……。

ハイネセンの女性週刊誌は皆結婚式の事でもちきりだ、色んなことが書かれてる。それによると元帥の結婚は皇帝の命令なんだそうだ。いわゆる政略結婚っていう奴らしいけど相手の女性、ユスティーナ・フォン・ミュッケンベルガーとは元々恋人同士だったらしい。

ミュッケンベルガーの姓で分かるけど相手はミュッケンベルガー元帥の御嬢さんだ、正確には養女らしい。元帥とは親戚関係にある家の女性らしいけど家が戦争の所為で没落して養女になったとか。貴族だからって楽に生きているわけじゃないんだ、大変なんだと思った。

ミュッケンベルガー家というのは軍の名門で本家は伯爵位を持っているらしい。ヴァレンシュタイン元帥は平民だから本当なら二人は結婚できなかったそうだ。でも皇帝がそれを知って可哀想だからと言って二人を結婚させるようにと命令したんだそうだ。

ミュッケンベルガー元帥も不満には思っていないらしい。ヴァレンシュタイン元帥は皇帝のお気に入りだし、いずれは統帥本部総長、軍務尚書になるだろうと言われている。皇帝の命令なら箔が付くから、むしろ喜んでいるって母さんが買った週刊誌に書いてあった。

皇帝が二人の結婚を認めたのには他にも理由が有るからだと週刊誌は書いてる。先年の内乱で多くの貴族が死んだから貴族同士で結婚をするのが難しいらしい。だから二人の結婚を認める事で他の貴族にも平民との結婚をしやすくしたんだとか。そして軍の艦隊司令官達には若くて独身の男性が多いから人気急上昇なんだそうだ。何処かの伯爵令嬢も艦隊司令官と仲が良いらしい。

昨日のTVで今日の結婚式の意義ってテーマで討論会をしていた。その中で言っていたけど帝国は確実に変わっているそうだ。平民の権利が拡大されていて今回の結婚はそれを全宇宙に知らせるために行われるのだとか。そのために結婚式も宮中で行われるんだと言っていた。

僕には難しい事はよく分からない。でも宮中で、黒真珠の間で結婚式が行われるのは凄いと思う。今まで新無憂宮の中が映された事なんて一度もない。それが今回全宇宙に放送されるんだ、それも黒真珠の間……。

黒真珠の間はヴァレンシュタイン元帥が元帥杖を授与された場所だし、宇宙暦七百九十六年十月十五日に発布された勅令が宣言された場所でもある。帝国の公式行事がいくつも行われた歴史的な場所なんだ。その場所で結婚式、元帥の結婚式はどんな結婚式になるのか、心臓がドキドキしてる。

母さんが僕を呼ぶ声が聞こえる、どうやら放送が始まるらしい。さあ行かなくちゃ。



宇宙暦 798年 3月 22日    ハイネセン ある少年の日記



ここ一週間、僕のクラスは結婚式の話で盛り上がっている。学校の先生だって結婚式翌日の最初の言葉は“昨日の結婚式は凄かったなあ”だった。クラスの皆も“凄かった!”と口々に言った。僕も同感だ、あの結婚式は本当に凄かった。

黒真珠の間は大きな部屋で正面に神父さんが居て宣誓用の台が有った。そして台から入口まで赤い絨毯が敷いてある。解説者(この人、フェザーン人だった)が言っていたけど、その絨毯は二百名の職人が二十五年かけて織り込んだものらしい。僕ならとてもその絨毯を踏むことなんて出来ない。母さんも踏んだらばちが当たりそうだって笑ってた。

絨毯の両脇には式の参列者が居た。軍人は大将以上の階級を持つもの、文官は各省の尚書、次官、それに爵位を持つ貴族……。それ以外は新郎新婦のごく親しい人物が呼ばれたらしいけど参列者の殆どが帝国の重要人物だった。

解説者は帝国貴族が平民である元帥の結婚式に参列している、内乱後の帝国には対立が無くなったと言っていた。フン、同盟だってクーデターを未然に防いだんだ、こっちだって対立は無くなったさ。

解説者の説明が三十分ぐらいたってからかな、新婦が父親であるミュッケンベルガー元帥と黒真珠の間に入ってきた。二人は腕を組んでゆっくりと入ってくる。ミュッケンベルガー元帥は軍服じゃなかった、黒のフォーマルを身に着けていたけどもの凄く威厳に満ち溢れていた。

初めて見たけど恰好良かった、軍服を着てないのに歴戦の名将、そんな雰囲気が漂っている。同盟軍にはあんな人は居ない、良い意味で帝国貴族らしい感じがした。皆も元帥が恰好良いって言ってた。特に女の子は“お爺ちゃん恰好良い、私も手を繋いで歩きたい”って騒いでた。ミーハーめ、恰好良ければなんだっていいんだ、女って最低!

花嫁は文句なく綺麗だった。白のドレスが良く似合ってる。頭に王冠みたいなティアラっていう飾りを着けていたけど、ゴールデンバウム王朝に代々伝わるティアラで前にこれを使ったのは旧リッテンハイム侯爵夫人、今はクリスティーネ皇女殿下だと解説者が言っていた。今回は特別に使用が許されたそうだ。

ウェディングドレスもトレーン? あのズルズル引き摺るやつだけどこれが七.六メートル。これも「ロイヤル」って呼ばれる長さで帝国では皇族以外は使用禁止だって言ってたけど特別に使用が許されたようだ。理由は全宇宙に放送するから、みっともない結婚式では帝国の威信に傷が付く、そんな事は許されないって事らしい。だから特別に皇帝から許可が下りたとか……。

解説者が新婦の衣装は貴族でも本来許されるものではなく、特例で皇族並みの待遇だって言っていた。その事で妙な事を言いだした。実はヴァレンシュタイン元帥は皇帝フリードリヒ四世の孫だって噂が有るらしい。こうも特別扱いされると本当かもしれないって……。

もっとも妙な噂は他にもあるそうだ。何でも元帥はリヒテンラーデ侯の孫だとか……。どうやら元帥が平民なのに慣例を破って宇宙艦隊司令長官になった事や元帥になった事で本当は権力者の落胤じゃないかと噂が立ったという事らしいけど、本当にそれだけかな?

花嫁のユスティーナ・フォン・ミュッケンベルガーは優しそうな人で大きな緑色の目がとっても綺麗な人だった。解説者も花嫁は優しい女性で、元帥が負傷したときは一日おきに見舞っていたとか言ってた。

貴族の娘って高慢で我儘なお姫様ばかりかと思ってたけどそうじゃないんだ。可哀想だな、元帥みたいなロクデナシと結婚するなんて……。恋人だったらしいけどユスティーナは騙されてるんだ。元帥は嘘吐きでロクデナシだからね、多分すぐ離婚したくなるに違いない。

クラスの女の子は“大したことない、ブス、タレ目”とか言ってたけど、お前らなんかよりずっと綺麗で素敵だ。不細工な女に限って美人を貶す、うちのクラスは学年一のブス揃いだ。他のクラスからは地雷教室と言われている、足を踏み入れたくないそうだ。僕なんか毎日足を踏み入れてるのに。

二人が神父の前に着くと今度はヴァレンシュタイン元帥が黒真珠の間に入ってきた。捕虜交換式の時とは違ってコバルトブルーのマントと白のサッシュだ。サッシュには赤の縁取りがしてある、意外に元帥はオシャレだ。でも母さんは“元帥は黒の方が似合うのに……、まあ結婚式じゃ黒は無理よね、でも残念”と言って笑ってた。

母さんは元帥に甘い、母さんだけじゃない、クラスの女の子達も似た様な事を言ってた。言っておくけど元帥は敵なんだ。シャンタウ星域で大勢の同盟軍人を殺した敵なんだ、気を許しちゃいけない。でもそれを言うと“あんただってユスティーナには甘いじゃない”って言い返してくる。全く分かってない、彼女は帝国人だけど軍人じゃない、ごく普通の女の人じゃないか。

新郎新婦が神父の前に行くと神父が誓いの言葉を言い始めた。でもなんか変なんだよな、この神父、どっかで見たことが有る……。そう思った時だった、解説者が自信なさそうな声で神父が陛下に似ていると言いだしたんだ。

そうなんだよ、凄く似てるんだ。母さんも似てると言いだした。例の勅令の時に見たけど、あの時の皇帝は威厳が有って格好良かった。神父はニコニコしてるからちょっと気付かなかった。あの時と感じが違うけど凄く似ている。

式が進む中、母さんと僕の間で言い合いになった。僕は皇帝だと言ったんだけど、母さんは皇帝じゃないって言うんだ。解説者はどっちつかずだった、優柔不断な奴。でもやっぱり皇帝だった。神父は誓いの言葉の後こう言ったんだ。

“ここに二人は目出度く夫婦となった。予、銀河帝国皇帝フリードリヒ四世はそれを認め、それを祝福するものである”。それを聞いた時は僕も母さんも呆然として顔を見合わせた。僕だって本当に皇帝だとは思わなかったんだ。多分そっくりさんが演じているのかと思ってた。でもそうじゃなかった。

“ジーク・ライヒ!”
“ジーク・カイザー・フリードリヒ!”
唖然としていると参列者がいきなりシュプレヒコールを始めた。恰好良い! 僕は同盟の人間だけどこういう時は帝国って恰好良いなと思う。同盟ってこういう掛け声みたいなのって無いんだよね、盛り上がりに欠けるよ。何か良いのないのかな?

シュプレヒコールを聞きながら母さんが“これで元帥は離婚できなくなっちゃったわね”と言った。僕も同感、皇帝の前で誓ったんだから離婚は出来ない。花嫁さん、可哀想。あんな最低な男のお嫁さんになって、おまけに離婚も出来ないなんて。多分これもヴァレンシュタイン元帥の策謀に違いない、皇帝の前で誓う事でユスティーナが離婚できないようにしたんだ。最低の奴だ、ユスティーナ可哀想。

母さんは“私もこんな結婚式をしてみたかった”なんて言ってるけど同盟に生まれたんだからそんなの無理だよ。でも同盟でやるとしたらトリューニヒト議長が神父になるのかな? うーん、恰好良いけど皇帝には負けるよ、残念!

シュプレヒコールが終わると賛美歌を歌いだした。パイプオルガンの音色が凄い厳かで何ていうか、神聖な感じがした。結婚式はやっぱりこうじゃなきゃ……。最近の式場では電子オルガンを使うところが多いらしいけど雰囲気が出ないよ。

演奏しているのは髭のメックリンガー提督だった。捕虜交換式で見たから覚えている。芸術家提督が気持ち良さそうに演奏していた。演奏も上手だった、趣味が多才って良いよな。僕も何か始めようかと思ったけどお金がかかるから止めた。うちは父さんが居ないからね、母さんに迷惑はかけられない。

聖歌隊が賛美歌を歌っていたけど、その中に凄く歌の上手い人が居た。背の高い逞しい男の人で髪の毛がオレンジ色だった。もの凄く大きな声で朗々と賛美歌を歌う。感心していると解説者がビッテンフェルト提督だって教えてくれた。

ビッテンフェルト提督って黒色槍騎兵を率いる帝国の名将だ。シャンタウ星域で大活躍したしアラルコン提督をフェザーン回廊でボコボコにしちゃったのも黒色槍騎兵だ。その司令官が賛美歌を歌っている。凄い、帝国軍人って多才なんだ。でも皇帝が神父をするくらいだから皆色んなことが出来るのかもしれない。

賛美歌を歌い終わると新郎新婦が退出したけどユスティーナがもうちょっとで転ぶところだった。どうやらドレスの裾を踏んづけたらしい。ヴァレンシュタイン元帥が両手で抱き寄せるようにして支えていたけど、ちょっと危なっかしかった。男なら片手で支えるくらいの逞しさは欲しいよ。今から体を鍛えなきゃ……。

結婚式が終わると披露宴だった。主賓は元帥のお父さんの親友でゲラーって言う人だった。平民で弁護士らしいけど、その人が主賓? みんな驚いていた。でも一番驚いたのはゲラーさんだろう。だって皇帝と国務尚書とテーブルが一緒なんだから。僕ならお金をもらっても嫌だし、お金を払っても断るよ。

結婚式は厳かな感じだったけど披露宴はどんちゃん騒ぎみたいな感じだった。国務尚書は野次を飛ばすし皇帝はそれを聞いて笑い出す。皆好き放題で披露宴って帝国も同盟もあまり変わらないんだと思った。母さんもあんまり違和感ないわねって言ってた。

披露宴で一番印象に残ったのは余興だった。艦隊司令官全員、メックリンガー提督は此処でも伴奏だったから、彼を除いて二十人近い人数で歌を歌ったけど、これがびっくりだった。歌は“キレるほどに恋してる”、今フェザーンで人気急上昇の女性グループ、ヴァーチャル・ガールの最新曲だ。

凄い綺麗な御姉さん達十人がちょっとエッチな格好で激しく踊りながら歌う。“キレる、キレる、ブチキレる、わたしキレる程貴方に恋してる”って歌う。同盟でももの凄い人気の有るグループで“キレるほどに恋してる”は十週連続で売り上げナンバーワン、リクエスト曲ナンバーワンだ。それを銀河帝国の提督達が歌った!

クラスの女の子達が時々真似をして踊っているけど豚がタップダンス踊っているみたいだからクラスの男子はそれが始まると皆見ないようにしている。見苦しいからじゃなくて吹き出しそうになるから。笑うとあいつらキレるんだ、おかげでうちのクラスは男女の仲が凄く悪い。先生も頭を痛めてる。でも男子の所為じゃない、あいつらのダンスが下手な所為だ。それとキレなくていい、キレても全然可愛くないから。

歌はとっても上手だった。ビッテンフェルト提督が上手いのは分かっていたけど他の皆も上手なんだ。特にロイエンタール提督、左右の目の色が違うハンサムな提督は美声だった。母さんなんて“顔も良いけど声も素敵ね”ってうっとりしていた。頼むから息子の前でそんな顔しないでくれる、母さん。

提督達は歌を歌ったけどダンスはしなかった。直立不動で歌を歌ったんだけど周りは“踊れ”、“ダンスはどうした”って囃し立てた。皇帝も同じ事を言っていたからヴァーチャル・ガールの事を知っていたみたいだ。僕もTVの前で同じ事を言った。“踊れ”、“ダンスはどうした”って。

このまま踊らないで終わりだろうなって思った。でも艦隊司令官がヴァーチャル・ガールを歌うだけでも凄い事だ。しかも全銀河にLIVEで流れるなんて……。でも僕は甘かった、提督達は皆名将なんだ。勝つためには敵の意表を突かなくてはならない……。

一番が終わって二番が始まるまでの間奏に入った時だった。提督達がいきなり踊りだしたんだ、ヴァーチャル・ガールみたいに激しく踊りだした。一番年長のメルカッツ副司令長官は今年六十になるらしいけど、彼も一緒に踊りだした。提督達は皆髪を振り乱して踊りだしたんだ。

一瞬唖然としたけど次の瞬間には皆が笑い出した。僕も母さんも解説者も披露宴の出席者も皆笑い出した、大爆笑だった。間奏が終わり二番が始まると提督達も踊るのを止め髪型を整えて歌いだした。そこでまた大笑いだった。

二番が終わった時には皆が期待した、また踊りだすだろうって。そして提督達はまた踊りだした。またまた大爆笑だ、そして最後のポーズも完璧だった。右手を突き出して銃を撃つようなポーズを取ったんだ。右手の先にはヴァレンシュタイン元帥が居た、元帥は胸を抑えるしぐさでそれに応えた。そこでまた大歓声だった。

他にも余興は有ったけどこれが一番だった。解説者も何度も“さっきのヴァーチャル・ガールは凄かったですねぇ”って言ってた。披露宴が終わった後は観劇だったけど、あれは論評に値しない。帝国側ばかり格好良く書かれていて詰まらない。確かにドーソンとかフォークとかどうしようもない連中だけど、同盟にだってヤン提督、ビュコック提督、ウランフ提督、ボロディン提督みたいに名将は居るんだ、……帝国に比べて少ないけど……。

結婚式が終わってからヴァーチャル・ガールは以前より人気が出た。そして“キレるほどに恋してる”も売上が伸びてる。でもそれ以上に銀河帝国の提督達の人気が凄い。あの結婚式の余興だけどあれがもの凄い人気で毎日何処かで流れてる。

提督達のプロマイド写真も売れてる。一番人気はビッテンフェルト提督で、その次がロイエンタール提督だ。意外に人気が有るのがメルカッツ副司令長官かな。そしてそれ以上に売れているのが、新郎新婦の写真と退役したミュッケンベルガー元帥の写真だ。どういう事だろう?

プロマイドはフェザーンの企業が版権を持っていて利益はその企業に行くんだけど、そこから一部が帝国に行くらしい。何でもそのお金は帝国の改革のために使われるんだとか。マスコミの一部は買うのは止めようと呼びかけているけど皆無視してる。

そんな事言うんなら結婚式の放送そのものを止めるべきだったって皆言うんだ、今になってそんな事言うなんておかしいって。僕も同感だ、今更おかしいよ。僕も母さんには内緒でユスティーナのプロマイドを持ってる。ウェディングドレスで幸せそうに笑っているユスティーナだ。

フェザーンでは提督達が歌った映像シーンを売り出そうという話が出ているらしい。当然だろうな、だってサラリーマン達が酔って踊っているって聞いているし、僕のクラスでも男子が踊っている。実は僕もその一人だ、毎日髪を振り乱して踊ってる。

母さんがもう寝なさいって言っている。もう十時だ、明日の準備をしてベッドに入ろう。でもその前にユスティーナにお休みを言わなくちゃ。お休み、ユスティーナ……。早く元帥の本性に気づいて別れるんだよ、そのほうが幸せになれるから……。



 
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