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とある科学の裏側世界(リバースワールド)

作者:偏食者X
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  ep.026 襲撃者 その2

 
前書き
今回の話は割と長いので分けました。 

 
死神は仁の右腕を貫通するナイフを引き抜いた。

「終わりだ。」

死神は長刀と言うのが相応しいナイフを横に振る。
間合いは完璧で避けない限りは確実に首をはねられる。

『痛みは思考を止める.....か。』

「確かに思考がクリーンになるな....だが。」

仁は後方へ大きく反り返りながら飛び、両手で地を掴むと、地面を押してさらに後方へ下がる。
そして着地した地点はナイフの攻撃範囲の僅かに外だ。

「なに?」

「おかげで見切ったよ。 その武器の間合いを。」

それだけではなかった。
仁は死神の能力も見破っていた。

「アンタの能力も分かった。 "状態変化"だな。」

仁がそれに気付きだしたのは最初の雨だった。
水は温度が上がれば気体になり、逆に下がれば氷に変化する。
もし正しいならば、霧が発生したことも逆に氷の礫が降り出したことにも説明が付いた。
そして何より.........

「アンタなら本来は不可能な"人間の気化"も可能だな?」

「なんのことだ?」

仁が言っていたのは"赤い衣服事件"のことだった。
見つかったのは衣服のみ、外部から何かをされたような痕跡はなく、衣服はむら無く赤く染まっていた。

「物体の状態変化を自由に操れるアンタなら人骨すら気体に変えられる...気体になったから髪の毛すら現場からは発見されなかった。」

実は仁は最初から現場の情報からその線(・・・)を踏んでいたのだ。
ただ、どのように説明すれば良いのか分からなかった。
人間が骨すら残らず気体になるなんて現実にはまずありえない。
しかし、死神を名乗るこの男に会った今はむしろそれ以外の答えが見つからなかった。

「よそ見してんじゃねぇぞ!」

死神はナイフを捨てて、仁に殴りかかって来た。
だが仁にとってその攻撃はもう意味を成さなかった。
死神は右の拳を躱されると、敢えて仁に背を向けるように回転し、回し蹴りをする。

「どうなってやがる?」

死神の攻撃に仁は微妙な間合いを際どい距離で回避し続け、その度に死神はストレスを貯めていく。
仁は昔から人一倍"観察眼"に長けていた。
もともと人が持つ癖を見破るのが得意だったのだが、成長していく過程で、それは物の長さやそれが届く範囲を"ぱっと見"で把握できるというものに変化した。

「ハッ.......むかつく野朗だな.......。」

顔を伏せた死神は空中に巨大な氷の棘を作った。
そして、今さっきまで捻じ伏せていたプレッシャーに近いような殺気を漂わせる。
一体、どれくらいの感情に達すればこんな重圧のある気迫を発するのだろうか。

『まずは.....その足だ。』

仁の足元の水溜りが突如凍り付き、鋭い刃物のような氷柱が発生、仁の両足を貫通する。

「ゔっ.......!!」

怯む声こそ一瞬だったが、仁は今痛覚が研ぎ澄まされているため、氷柱から足を抜くどころか僅かに動くだけでも絶叫しそうな激痛が体を突き抜ける。

「しくじった.......。」

スタスタと死神が歩み寄って来る。
まるで捕獲した獲物に迫る肉食動物のようにその目は血に飢えていた。
そして死神は目の前に立った。

「簡単には殺らねぇさ....お前からはたっぷりと情報を引き出す必要性があるからな。」

この状況にしては意外に敵は冷静だった。
仁はてっきりこのまま殺されると思ったからだ。
しかし、交渉の余地があるなら説得可能かも知れない。

「誰からの指示だ?」

「............は?」

仁には質問の意図が全く理解できていない。
無論だ。
仁が死体を見つけたのは偶然で、USBを持ち去ったことも偶然なのだから。

「なんだ?......(とぼ)けてやがんのか?」

仁は首を横に振る。
しかし、そこで死神は吹っ切れてしまった。

「もういいよ。 あの事件のことも知っていやがったんだしな....ますます、お前を殺さなきゃならなくなった。」

死神が手を振り下ろすと、空中の氷柱が仁に勢い良く飛んでくる。
当たれば即死するだろう。

「クソッ。」

『佳奈.....俺......ここで死ぬのかな.....短くて、つまらない人生だったなぁ.....。』






















「よく頑張ったね。」

何者かの声と同時に、仁は誰かに抱えられた。
その者は、常人とは比べ物にならない瞬間移動に近い速度でその氷柱を回避した。

「誰だお前!!」

死神が激昂する。
相当な取り乱しようだった。
それに対し、その者は余裕を見せていた。

「俺は"ただの雇われ屋"だよ。 今回は上司から仕事のお願いをされてね。 彼を助けることになってる。」

「ふざけんじゃねぇぞ!!」

空中に氷柱が5本。
仁と青年を取り囲むように展開する。
すべてが同時に発射される。

「アンタは........。」

仁は張り詰めていた緊張感がようやく解けて、その代わりに極端な疲労を感じて眠るように気を失った。

「話は落ち着ける場所でする。 そのためにもここは逃げ延びさせてもらうよ。」

氷柱が炸裂したが、手応えがなかった。
恐らく逃走したんだろう。

「無駄だ。 アイツが携帯を持ってる限りGPSが.......。」

死神はレーダーを確認したが点滅するその点は一歩も動いていなかった。
まさかと思い氷柱が命中したポイントを見ると、そこには仁の携帯が落ちていた。

「ああああああああああああああ!!!!!!」

死神は怒りで雄叫びを上げた。
完全に獲物(ターゲット)を逃してしまったのだ。

仁はとある廃ビルにて目を覚ました。
横を見ると1人の青年が缶コーヒーを飲みながらこちらを見ていた。

「アンタは誰だ?」

「俺は"的場 聖持"だ。」

人を助けたのは的場だった。
向子に保護されていた的場は仁が向子と遭遇したその日に、向子から仁を守るように指示されていた。

「あれ? 俺の携帯が.....。」

「君の携帯はウイルスを掛けられてたから位置情報を特定されないために処分しておいた。」

的場は仁が落ち着きを取り戻したことを確認すると、1つの選択を開示した。

「さっき経験したようにここから先は死を覚悟する必要がある。 君がここで降りるとしても、俺が責任を持ってこれからも君たちを守る。 協力してくれるとしてもそれは同じだ.....どうする?」

仁は少しの間解答に迷ったが、こうなってしまったのには自分の責任もあった。
それを他人に任せて自分は何事もないように過ごすなんて我ながらむしが良すぎると思った。
それに.....

『佳奈は俺が守らなきゃならないんだ。』

仁は的場の顔を見て答えを出した。

「協力します。 これは俺の問題でもありますから。」

仁の解答を聞いて的場は手を差し伸べる。
仁はそれが"握手"だと理解して的場の手を強く握り返す。 
 

 
後書き
さぁ、今回で旧主人公"的場くん"が再登場しました。
彼は美味しい仕事をいろいろしてくれますね。
次回もお楽しみに。 
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