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ウルトラマンゼロ ~絆と零の使い魔~

作者:???
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帰郷-リターンマイカントゥリー-part2/ラ・ヴァリエールにて

数ヶ月前…

ハルケギニア大陸が存在する惑星、エスメラルダ近くの宇宙空間。
一隻の大きな宇宙船が、逃げるように飛んでいた。いや、実際に逃げていたのだ。
とにかく必死になって、宇宙船の操縦士は速度を上げていく。何か、侵略者に狙われているのだろうか。
すると、宇宙船の後方から青い光が飛んできた。その速度は目にも留まらぬほどの速さを誇り、あっという間に宇宙船の前に立ちふさがった。
「ぐぬぬ…」
操縦席から外の様子をモニタリングすることでそれを確認した操縦士の異星人は憎憎しげに、目の前の青い光を睨みつけた。
こんなところでやられてたまるか!そう思い、操作盤のボタンのひとつを押して、宇宙船からレーザーを発射する。しかし、そのレーザーは、青い光に直撃した途端にかき消されてしまう。
『やっと見つけたぞ』
青い光から、操縦士の星人に声が届く。
『絶対に逃がさない。大人しく…』
「ええい!捕まってたまるか!」
青い光の言葉をさえぎり、星人は悪態をつきながら、操作盤を使って宇宙船からレーザーをさらに連射する。しかし青い光にはいくら直撃してもダメージが見受けられない。その宇宙船はあくまで輸送のためのもので、攻撃はあくまで護身用のためだった。このレーザーが効かない以上、あの青い光にダメージを与える機能はもはやこの宇宙船にはなかった。
幸い、あの青い光は自ら攻撃することはなかったが、果たしていつまで持つのか。
「こうなったら…仕方あるまい。できれば使いたくなかったが…」
星人は、意を決して操作盤のスイッチのひとつを押す。
すると、再びレーザーの発射口からひとつの光が放たれる。だがさっきまでのレーザーと異なり、それは青い光に向かっていくことはなく、宇宙船と光の間に割って入るようにとどまり、形を成していく。
レーザーの発射口から放たれた光は、やがていったいの怪獣の姿となって形を成した。
見た目は、翼を持つ甲虫に似た巨大生物。その目に映る青い光に対する感情は、『敵意』と『殺意』のみ。
その怪獣を見て、青い光は戸惑いの声を上げた。
『す、「スコーピス」!?』
「行け、スコーピスよ!」
「グガアアアア!!」
その怪獣…『怪獣兵器スコーピス』は青い光に向かって襲い掛かった。



現在、魔法学院の厨房。
「…うぅ」
そこでは、学院に勤めるコックやメイドたちが新学期に向けて、生徒たちの料理の盛り付けに使う全ての皿の洗浄作業中だった。
そんな中、シエスタが一人不機嫌な表情のまま黙々と作業を続けている。
「どうしたシエスタ。妙に機嫌が悪いな」
気になった料理長マルトーが声をかける。すると、そんなマルトーのほうを瞬間的に振り返ったシエスタは、マルトーに向けて愚痴をこぼし始めた。
「聞いてくださいよマルトーさん。なんだか私の出番、減っている気がしなくもないですか?」
「え?そ、そうなのか…」
「サイトさんの隣には、ミス・ヴァリエールとハルナさんがしっかり着いていて、まるで付け込む隙がないんですよ。しかも今回だって、本当なら私がやるはずだったポジションをハルナさんに取られたような気がしますし…」
どこかメタなぼやきをクドクドくどくど言い続けるシエスタに、マルトーはその日ずっとつき合わされた。要はサイトとくっつける時間がなかなか取れなくて、少々不満を抱き始めているということである。

そんなサイトたちはというと…

「まさか、ルイズの実家によることになるなんてな…」
平民用の馬車に乗せられ、エレオノールが乗せている馬車の中で移り変わっていく景色を眺めながら、サイトは呟いた。
前回、突如自分たちの前に来訪したエレオノールによって、ルイズと共にサイトとハルナの二名は、二台の内、平民用の馬車に乗せられ、ルイズとエレオノールが乗る馬車の後に着いて行っている。
「平賀君、ルイズさんの家に行ったことないの?」
横に座っているハルナが、サイトに尋ねる。ルイズの使い魔、ということは彼女との上下関係こそあるが距離が近いということでもある。ならルイズの実家についてもサイトは何か知っているのだろうかと思っていた。
「いや、俺も今回が初めてだよ。公爵家っていうからには、きっと立派なんだって思うけどさ」
サイトはルイズの実家に行くのは今回が初めてだ。どんな場所なのか、連日大事件に遭遇することも多くて興味を引かれる暇もなかった。アンリエッタとは、遠い親戚だし実家の位が高いから、相当豪華な場所なのかもしれない。それもテレビ番組の特集で紹介され注目を浴びてもおかしくないかもしれない。そう思うと、不思議と元来の好奇心の高さが刺激され、わくわくしてくる。
しかし一方で、ドキドキもある。これはさっきのわくわくとは別のものだ。
「…それよりさ、ハルナ」
「何?」
「その、なんか…近くない?」
少し照れた様子で、サイトはハルナに尋ねる。実は、ハルナは隣に座っているだけでなく、異様にサイトとの距離を縮めていた。女の子のいい香りがサイトの鼻をついて来る。
「いいの、これくらいで」
だが、ハルナは少し顔を赤らめながらも、サイトとの距離を広げる気はなく、むしろさっきより少しだけにじり寄っている。サイトのそばにいられる幸せをかみ締めているが…。
『…サイト、なんとかしてくれ、こっちにまでいらない熱がきて小っ恥ずかしいぞ』
『そ、そんなこと言ったって…』
サイトも健全な思春期男子。美少女からここまでにじり寄られると恥ずかしさもそうだが、興奮のあまり顔が緩みそうになる。しかしゼロと同じ体と命を共有しているので、ゼロのことも無視できない。したらしたで、頭の中でうるさく文句を言ってくるに違いない。
「そ…そういえばさ!ハルナの鞄の中、教科書以外にも何か入ってたの?」
サイトは気を紛らわせる目的も兼ねて、ハルナに彼女の鞄のことを尋ねた。
「入っていたって言われても、お財布とか、生徒手帳とか、それくらいだよ?」
「あ、そ…そうだよな」
何を聞いているのだろう。それ以外に特に学校に持っていくものなど、彼女にはないはずだ。サイトのように、密かに漫画本を忍ばせていたとかあるとは考えにくい。
「でも、普段は読んでなかったのに、この世界に来てから生徒手帳を読むようになっちゃった。でないと、日本語忘れそうになるから」
そういって、彼女は持ってきた鞄から生徒手帳を見せる。
「そっか、そういや俺も読まなかったな」
最も、真面目に読むキャラでもなかったが、とサイトは心の中で付け加える。
「読んでみる?まだルイズさんの家に着くまで時間があるだろうし」
「そうだな。どれどれ…」
ハルナが生徒手帳を広げ、サイトに見せる。サイトも彼女の誘いを受け、ハルナと一緒に生徒手帳に記載されている事項に目を通し始めた。
「まずは…『派手な格好をしないように』」
「ふふ、『登下校時は寄り道しないように』」
「『勉学に励み、規則正しい生活を心がけよ』…か。こんなのまで書いてあったのか」
「あ、校歌に応援歌もある!」
「はは、俺全然歌えねぇ」
生徒手帳内に記載されていた校歌と応援歌。それを見て、始業式や終業式でいつも周囲が自分を含め、まじめに歌わずボソボソと歌っていたのを思い出してサイトは噴き出した。で、嫌いな体育教師が「声が小さい!」と怒鳴って一人熱くなって、歌うのを生徒たちにやり直させたりしていたものだ。
しかし、こうして会話をしていると、地球に戻ってきたような感覚だ。ハルナは異世界に流れ着いた不安がぬぐえること、何よりサイトとこうして楽しい会話ができることもあって、一番楽しんでいた。


そんな二人の弾みきった会話の様子は、二人が乗っている馬車の前方を走っているルイズも気づいていた。サイトがハルナに手を出していないか?そんなことを気にして後ろをチラチラ見ては、もどかしさといらいらを覚える。
「…あ、あの犬…あんなにくっついて…!」
わかっている。わかっているのだが…どうしても悪態をついてしまう。
「ちびルイズ、何をよそ見してるの!まだ私の話は終わってなくてよ!」
「い、ひゃいでふうううう…」
しかし、すかさずエレオノールが横からルイズの頬を抓ってくる。餅のように伸ばされた頬をゴムパッチンのゴムのごとく離し、エレオノールはため息を漏らす。
「落ち着きのない子ね。さっきからあらぬ方向をちらちらと」
「だ、だって使い魔が…」
そういいかけたところで、言葉が詰まる。だからどうした、と姉から返されることがすぐに予想がついた。
「まったく、ここしばらくの怪獣災害でトリスタニアの方角は特に荒れているというのに、休暇中にもかかわらず家に戻ろうともせずに、舞台に出るなんて下賎な真似をするなんて…危機感が足りていないんじゃなくて?」
エレオノールはかなり気が立っていた。ルイズが実家に内緒で何かをやっていることは各章が着いているし、実際にちょくちょく目撃している。それもアンリエッタ名義で。魔法がロクに使えない妹がなぜそんなことをしているのか理解に苦しんだ。
「とにかく、あなたには家に戻って花嫁修業でもしてもらうわ」
「は、花嫁修業!?」
いきなりの無茶振りにルイズは仰天する。
「そ、そんな…それならエレオノールお姉さまの方から…ひぃ!?」
本来なら長女であるエレオノールの方が咲に結婚するべきではないか。そう指摘を入れようとしたが、ルイズはすぐに恐怖のあまり悲鳴を漏らしてしまう。
後悔したがすでに遅かった。エレオノールの背後から絶対零度の氷さえも溶かしかねないほどの獄炎が燃え上がっていた。
「ちびルイズううううう………」
「え、あ、あの…お姉さま…?」
「この私に嫌味を言えるようになるなんて、態度だけは大きくなったものねええええ……」
完全にぶち切れていて許してくれそうな雰囲気などまったくない。逃げたくても逃げられないルイズは、今度は両頬を抓られ、強引に引っ張りあげられた。
「ええそうよ!!婚約は解消よ!か・い・しょ・う!!まったく、なんだって『もう限界』なんだそうよ!まったくどうしてかしらねえええ!!!?」
エレオノールの結婚云々については、シュウがはじめて王立アカデミーを来訪し、そこに保管されていたジャンバードの解析に向かった際、そこの研究員たちの間でも噂になっていた。
ルイズ以上に気性が荒く、その分嫉妬深い性格が災いしたエレオノールは、婚約者であるバーガンディ伯爵との婚約を破棄されてしまったのだ。しかも、哀れなことに頭に血が上りすぎてそれに気がついていないらしい。これではまた婚約者を立てても、第二第三の被害者が出てしまうだろう…マリコルヌのようなドMでない限りは。
しかし、不幸なことにこれをルイズは知らないままだったため、そのあたりの気遣いを怠ってしまったのである。
「い、ひゃあああうううう…!!」
しかし、もはや八つ当たり…ルイズの頬は、モチロンでつかれた餅のごとく伸ばされていくのだった。


その、ある種の悲惨な光景をサイトとハルナも見ていた。
「ルイズの奴、大丈夫かな…」
エレオノールのおっかなさはもはや一目瞭然。今朝のエレオノールの強引さもあいまって、サイトはルイズが心配になってきた。
「でも、ルイズさんのお姉さん、ちょっと酷いわ…何もあんなに酷く当たらなくなっていいじゃない。まるで彼氏に振られた苛立ちをぶつけてるみたい」
悪意で占められているわけではないが、あまりにもルイズを酷くいじめるエレオノールに、ハルナはあまりいい気持ちがしなかった。あんな厳しすぎる姉は、できれば持ちたくないと思ったのかもしれない。
「ず、ずいぶん具体的だな…」
全部正しいです、ハルナさん。同じ女の勘からだろうか、見事にエレオノールのイラつきの原因を見抜いた。
『頬を抓られるなんてまだマシだろ。俺なんざレオに何度殺されるかと思うくらいしごかれたことか…』
しかし、サイトの目を通してルイズの様子を見ていたゼロは、これくらいなんともないだろうという。少し前に、師であるウルトラマンレオに、とことんしごかれたときの方がよっぽど苦しみが伴っていた。それに比べてルイズが受けている仕打ちなどかわいく見えているのかもしれない。
『あ、あはははは……あぁ…やめて…俺、あれ以上の地獄は思い出したくない…』
できれば、思い出したくない思い出の1ページ。サイトはアルビオン帰還後に、タルブ村のフルハシの墓の前にてレオことおおとりゲンに会ったあのときのことを思い出す。あの後、ゼロがK76星で受けてきた地獄の特訓の痛みを、同じ体を共有しているためにサイトも受けていた。学校に通っていた頃のマラソン大会の方が遥かに温かったと思える特訓のことは、できれば思い出したくない。サイトはできれば当時のことを話さないようにとゼロにお願いした。


数時間経過し、サイトたちはようやくルイズの実家であるラ・ヴァリエール領へと到着した。始めて見るルイズの実家の屋敷は、もはや一つの城のようにしか見えないほど立派だった。周囲は深い堀で囲まれ、門には20メートルほどの石造が、跳ね橋を下ろすために設置されており、その光景はこの世界がファンタジーに満ちたものであることをサイトに思い出させた。庭の方も森や芝生は庭師の手によって美しく手入れされている。あまりの豪勢な光景に、サイトとハルナは驚かされた。
中に入ったときも、驚きの連続だった。綺麗な壁やシャンデリア、廊下に点在している絵画や飾りの鎧、花瓶に入った花、どれもが上等なもので目を惹かれる。メイドや執事も、若者から初老までたくさんの人たちが出迎えてきた。
そして、召使と共に一人の女性が、戻って来たルイズたちを出迎えてきた。
「お帰りなさい。私の小さなルイズ」
「ちい姉さま!」
顔立ちはルイズにそっくりだが、彼女やエレオノールのように勝ち気な雰囲気はなく、とても穏やかな印象を持つ女性。エレオノールの妹でルイズのもう一人の姉『カトレア』である。
「また見違えるように綺麗になったわね」
「そんな、ちい姉様には及びませんわ。それより、お体の具合は?」
「ありがとう、大丈夫よ。いつもどおりだわ」
いつもどおり、と聞いてルイズの目が何かを憂うような、不安を漂わせるものに一瞬変わった。何かあるのだろうか。
「…あら?」
カトレアはエレオノールの後ろについてきていたサイトとハルナを見て、まぁまぁと声を漏らしながら近づいてきた。
「あなたたち、ルイズのお友達かしら?」
「違うわ。使い魔だそうよ。もう一人は違うけど、ルイズが庇護に置いてるから特別に侍女として着いてきてもらったわ」
二人を見てカトレアがそういうと、エレオノールが説明を入れた。どうやらたまたま目に留まったハルナを侍女として認識しているらしい。…魅惑の妖精亭での働きを考えると侍女としてはあまりにも未熟なのだが。
「あ、どうも…サイトっていいます」
こんな美人が目の前に来ると、なんか妙に緊張してしまう。思わずサイトは顔が赤くなり、ルイズとハルナの二人の目が吊り上り始める。
サイトは、さっきのエレオノールのキャラとのギャップに、カトレアの柔らかい物腰と美しさに、思わずはっとなっていた。彼女はルイズを大人の女性に、それでいて穏やかな性格になったかのよう。元々ルイズのルックスはサイトの好みの範囲内でもあり、つい見ほれてしまった。そしてさらに注目してしまったのが…。
(で…でかい…!?)
カトレアのとある一部が、異様にでかい。キュルケクラスだろうか。思わず思春期男子特有の興奮を覚えてしまう。
『…どこ見てんだよ。いけないんだー』
ぐ、人がいい思いに浸っているときに!サイトは茶々を入れてきたゼロを恨みたくなった。
しかし、サイトのエロ視線に気づいたのは彼だけではない。サイトはぎゅうううう…と、エレオノールがルイズにしているように、尻を抓られる感触を覚えた。
「痛っ!?」
「どこを見てるのかなぁ、平賀くぅん?」
「ど、どこも見てないよ?見てないから…お願いだから離して…」
顔は笑顔、しかし…その笑顔には影が差していたハルナの姿があった。ルイズもエレオノールの存在で大変なことになっているが、こちらもこちらで大変であった。
「あらあら、ルイズも大変なこと」
そんなサイトを見て、カトレアは笑っていた。
「まったくよ…この犬は誰にでも尻尾振るんだから」
ハルナの不機嫌な顔を見て、自分と同じ感情を抱いていることがルイズにも察することができたが、それを見てカトレアがとんでもないことに聞こえることを言う。
「そうね。あなたの恋人ってそれだけ素敵な人ということかしら」
瞬間、ルイズの顔が真っ赤になった。
「ち、ちちち違うもん!ただの平民の使い魔だもん!」
サイトも耳を疑ったが、瞬時にハルナがまた尻を抓ってきて、照れるあまり顔を赤くすることも許されなかった。
「…はぁ、本当に平民を使い魔なんかにしたのね」
エレオノールはサイトに視線を向けるが、正直気に入らなそうな目を送っている。どうせ身分違いだからという理由なのだろうが、あまり好ましい視線ではなかった。
「まぁ、そんなことよりカトレア。母様と父様は?」
それにしてもしたい話に進まない。痺れを切らしてエレオノールがカトレアに尋ねた。
「母様なら、先に会食の席で待っておられるわ。父様は、明日まで戻られないそうよ」
「なら、まずは母様の前で話してもらいましょうか。ルイズが今まで何をしていたか」
ジロッと睨まれ、ルイズは縮こまる。なんだかルイズがさらにかわいそうに思えてきた。
そんなときだった。
「ピピィ!!」
奇妙な、しかし愛らしさも混じった鳴き声と共に、赤い影がどこからか富んできてエレオノールに飛び掛ってきた。
「きゃ!!こ、こら!!何をするの無礼者!」
自分にしがみついてきた赤い何かに向けてエレオノールが怒鳴る。しかし赤い何かはエレオノールを押し倒してじゃれ付いている。
「ひ、平賀君何これ!?」
「ハルナ、下がって!」
怯えるハルナを、自分の後ろに下がらせ赤い何かへの警戒を高めるサイト。
「な、なにこれ!?」
突然エレオノールに飛び掛ってきた赤い何かを見て、ルイズは驚く。
「って、あれ…?こいつは…」
いきなり現れてエレオノールを襲ってきたように見えたので、サイトは一度は警戒を抱いた。だが、あまりにも飼い主にじゃれ付いている犬のような様子に、サイトは違和感を覚える。こいつからは、あまり敵意とか危険性をまったく感じないのだ。
「あらあら、この子ったら、ずいぶんお姉さまが気に入ったのかしら」
その証拠からか、カトレアはなぜか微笑ましげに眺めている。
「って、もしかしてこいつ!」
「こ…の…離れなさい!」
サイトはよくその赤い何かを、眼を凝らしてみる。同時にエレオノールは自分に飛び掛ってきた赤い何かを撥ね退けた。
「お嬢様、大丈夫ですか?」
「え、ええ…」
エレオノールがメイドの一人に抱き起こされている間、その赤い何かは床の上に転がったものの、すぐにぴょんと飛び跳ねてきた。
「やっぱり!」
飛び起きた赤い奴を見て、サイトは確信を持った声を上げた。
「こいつは、ピグモンじゃないか!」
「ぴ、ピグモン?知ってるの!?」
ハルナは目を丸くしながらサイトに尋ねる。ルイズもそれに耳を傾ける。実家にこんな赤くてふわふわしたような奇妙な生き物がいるなんて聞いていないから彼女も驚いていた。
「あぁ、こいつ怪獣だよ」
「か、怪獣!?大丈夫なの!?」
怪獣と聞いてルイズが思わず身構えた。だが、カトレアはそんな妹を安心させようと、後ろから両肩をそっと掴んで優しく告げる。
「大丈夫よ、ルイズ。この子はうちに来てから何も悪いことはしてないわ」
「え、でも…」
「ルイズ、お姉さんの言ってるとおりだ。ピグモンは人間には友好的な怪獣だよ」
「そ、そうなの…?」
サイトが言うと妙に説得力がある。それにルイズからしても、カトレアまで証人になっている。ルイズとハルナは、ひとまずこの『ピグモン』という珍獣に危険性がないと認識した。
ではここで一つピグモンについて解説を入れよう。
『友好珍獣ピグモン』。初代ウルトラマンと共に戦った科学特捜隊の時代にて、初めて姿を見せた小さな怪獣だ。怪獣の中でも比較的人間に友好的に接し、怪獣の住処となった多々良島で行方がわからなくなっていた人間に食料や水を運んできてくれたことがある。だが、その友好的な姿勢ゆえに、地球で姿をあらわした個体は、他者を救うために自らの身を犠牲にしてしまったことがあるのである。
「いくら無害でも、いちいち家に戻ってすぐにじゃれ付かれたらかなわないわよ!」
しかし、過去にも何度かじゃれ付かれたことがあるのか、エレオノールはうんざりしているようだ。
「ああこら!いきなり飛んできちゃだめじゃないか!」
しかし、さらにそこへもう一人、一人の男性がピグモンを追ってきたのかサイトたちの前に姿を現した。男に気づいたのか、ピグモンは彼に駆け寄ってきてじゃれ付いてくる。
「はは、そんなにくっつかなくても僕は逃げないよ」
よしよしと、じゃれてくるピグモンを撫でる男。青いジャケットを身に纏うその男は若々しく見えるものの、どこか大人ならではの貫禄と落ち着きを感じる。
しかし、なぜだろう。サイトはこの男から……何かを感じ取っていた。それも、自分以外のウルトラマン…シュウやゲンと初めて会ったときと同じ感覚だ。服装も、ハルケギニアのそれとはまるで異なる。
『まさか…』
『そのまさか、だろうな』
その感覚は、サイトの中にいるゼロも同じように感じていた。
「ちょっとあなた。これはカトレアにも言えることだけど、この赤い獣をちゃんと見て置くように言ってたはずよ」
迷惑そうにエレオノールは男に言うと、男は頭を掻きながらも、相手がルイズ以上に気性が荒い女性だというのに、朗らかに笑いながら謝った。
「あはは、すみません。急に部屋から飛び出しちゃって、追いかけるのに苦労しました。たぶん、あなたと妹さんたちが帰ってくるのに気づいたんですよ。この屋敷にいるみんなが大好きってことじゃないですか」
「ぴぴぃ」
男の言葉の後で、そのとおりだと言いたげにピグモンが鳴いた。
「ふふ、お姉さまがこの子に好かれてるみたいで、とても嬉しいわ」
「べ、別に嬉しくなんか…それより、早く会食の席に行くわよ!母様をいつまでも待たせられないわ」
妙に自分に対して、生暖かい視線が向けられていることに耐え切れなかったのか、エレオノールはそそくさに、逃げるように階段を上っていった。その際に、ほのかに顔が赤くなっていたのを、カトレアと男に見抜かれていたが。
「あの、ちい姉さま。この男性は一体?」
ルイズは、この男についても何者なのか知らなかった。いつからこのヴァリエール家にいるのだ?新しい執事にしては、格好が妙だし、しかもエレオノールに対してまったく恐怖も畏怖も抱くことなく気軽さを失わずに接していた。気になってカトレアに尋ねる。
「ルイズ、お母様がお待ちだとお姉さまが言っていたでしょ?この人のことは、その後で話しましょう?」
「は、はい…」
「使い魔さん。あなたも、後でお話しましょうね?」
正直気になるところだが、これ以上待たせて母と上の姉の二人を怒らせることは避けたいルイズは、別れ際にサイトに視線を送ってきたカトレアに促されて共に階段を登っていった。
行ってしまった。けど、これはこれでちょうどよかったかもしれない。この男のことは、サイトもハルナの両名も気になっていた。
「あの、失礼ですけど…あなたは?」
「ああ、まだ自己紹介がまだだったね」
ピグモンから少し距離を置いてから、その男はサイトとハルナの前に歩み寄って自己紹介した。

「僕の名は…『春野ムサシ』だ」
 
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