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提督がワンピースの世界に着任しました

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第21話 vs海軍クザン中将

 森の中で出会った丸メガネの海軍男。彼一人に対して、こちらは100人ちょっとの集団。こちらの集団には学者という非戦闘員が多数だけれど、傍から見れば酷い戦力差であるように見える。しかしそれでも、丸メガネの男は海軍としての仕事だと言って俺たちを見逃してくれるような気配が無い。仕方なく、皆が臨戦態勢に入った。

 先制して来たのは、丸メガネをした海軍の男。彼は、手のひらに大きな氷塊を出現せると、ソレを俺に向けて当てようと投げて寄こしてきた。

 ガチンという、甲高く、物がぶつかり合う大きな音が森のなかに響いた。その音の正体は、艦娘である天龍が俺を庇うために目の前に飛び出してきて、飛んできた氷塊を防御するため左腕で受け止めた、その時に起こった音だった。
 弾かれた氷塊は、明後日の方向へ飛んでいき木にぶち当たって霧散した。

(今のは、悪魔の実の能力による物だろうか。見たところ、氷を空気中から作り出すこと、そして作り出したそれを操る事ができる能力……)

「なにっ!?」
「大丈夫か? 提督」
「ありがとう、天龍」

 丸メガネの男が、目の前の事態が信じられないという様子で声を漏らした。
 見た目かわいい女の子が、自分の身体よりも大きな氷塊を、その細い腕で受けてビクともしない。更には、氷塊を受けた腕からはおおよそ人間から出る音とは異なる音を響かせて、痛がる様子も見せず不敵に笑って無傷。

 艦娘という存在について知っている者からすれば、氷塊程度を受け止めることは容易いと予測できるかもしれない状況だが、目の前に居る丸メガネの男には不可解な現象に見えたのだろうか、口を大きく開けて驚いていた。

「悪魔の実の能力者? それとも、六式使い? なんて悪い冗談なんだ」

 ろくしき? 知らない単語が丸メガネの男のつぶやきによって聞こえてきた。気にはなったけれど今は無視して、次にどうするべきか考える。

 相手は今のところ丸メガネの男一人のようだ。こちらの人数を気にせずに、襲いかかってきた。

 もしも、彼の手によって学者たちが捕まってしまえば、政府の人間に引き渡されて最悪は殺されてしまうかもしれない。そして、一緒に行動していた俺達も一緒の待遇でまとめられるかもしれない。捕まってしまえば、死あるのみ。

 だから、当初の予定通りに逃げ出す算段、丸メガネの男に捕縛されないよう学者たちを引き連れて逃げ出す方法を考える。

 島のあちこちから鳴り響く大きな音、そして、辺りの景色が赤く染まっていくのをみて森にも火が回ってきたようで、時間は掛けていられない。

 先程の氷塊の一撃を見た感じでは、天龍が一人でも対抗できそうであり、天龍にはまだまだ力に余裕も有る。ならば、艦娘達数人で組んで一気に対抗すれば、学者たちが海へ逃げ出す時間を稼ぐ程度なら簡単だと思う。むしろ、倒してしまえるかもしれないと考えられるくらいには余裕だった。

「天龍、吹雪、夕立、海軍男と一気に勝負を決める! 舞風は、俺と一緒に学者たちの守りを固めて!」

 丸メガネの男の対処は三人に任せて、残りの皆は先に進むことに。
 俺の指示を聞いた丸メガネの男は、一気に緊張感を漂わせ戦闘態勢に入った。その様子を見て、俺は確信した。この場は、彼女たちに任せても大丈夫だろうと。

「よっしゃ! 戦闘だッ!」
 腰に下げている刀を抜いて、天龍が一番最初に丸メガネの男に攻め寄る。天龍の瞬発力と思い切りの良さを見て、目を見開き驚いている丸メガネの男は、それでも驚きながら咄嗟に両腕を胸の前に交差させて防御の体制に入った。

「ハハッ! 無駄ぁ!」
「ぐっぁ!?」

 今度は、天龍の刀による攻撃を受けた丸メガネの男の腕からガキンと言う金属音を鳴り響く。テンションを上げた天龍は、丸メガネの男の防御を物ともしない、という雰囲気で攻撃を続ける。防御態勢の男の腕に、天龍は力任せに刀を押し込んだ。

 だが、彼も攻撃されるがままではないと言うように、声を上げて反撃に移ろうとする。

「っっらぁっ!」
「おっと」
 丸メガネの男は、交差させ防御していた腕を掛け声とともに思いっきり開いた。最初の見た目の印象から感じた、やる気のない様子から一転して、叫ぶような声を上げて腕に力を込めながら。続けて、天龍の腕を掴んで反撃しようとした。

 だがしかし、天龍は丸メガネの男が伸ばしてきた手をヒラリと躱して、今度は逆に一気に離脱するために後ろへと飛んで下がった。軽い様子でひとっ飛びすると、3メートル程の距離を離れた。つまりは、丸メガネの男から十分な距離を取っていた。

「今です!」
「何っ!?」

 天龍の次の行動を見極めようと、視線を取られていた丸メガネの男は、左右から襲いかかってきた弾丸の嵐に、一拍遅れて気づき慌てて再び腕を交差させて防御態勢に入る。その弾丸は、攻撃の機会を伺っていた吹雪と夕立らによる、砲撃によるものだった。

「当たって下さい!」
 祈りながら、弾をばら撒く吹雪。
「さぁ、これでどう?」
 一方、笑みを浮かべながら、攻撃を続ける夕立。

 本来ならば、艦娘の力は深海棲艦という敵を倒すために振るわれる力であり、普通の人間からしたら、理不尽と感じるほどに強大なパワー

 だが、攻撃を受けた丸メガネの男も普通ではない悪魔の実の能力者だった。無傷とはいかない迄も、傷を負い血を流しながらも気絶せずに、地面に倒れずそのまま立っていた。

「なんて力を持ってやがる」
 しかし、戦況では艦娘たちが圧倒的に有利だった。忌々しそうに天龍達を見て睨みながら愚痴る丸メガネの男。

(奴は、自分自身も氷にできるみたいだ。氷の身体で防御して、耐えたんだろう。多分奴は、自然を操る悪魔の実の能力者、たしかロギア系と呼ばれているモノだろう)

「提督は早く先にみんなを連れて、海へ脱出してくれ」
 天龍達が攻撃を続けている間に、舞風の誘導で、道を塞いで先に行かせないようにしていた丸メガネの男を迂回し後ろの道へ行った。学者たちの皆が、海へ続く道を進めるようになった。

「わかった。後は、天龍達に任せる。奴は、この前話した悪魔の実の能力者のようだ。能力者は色々と工夫して、思いもよらない攻撃で仕掛けてくる場合があるから、油断するなよ!」
「おう」「はい!」「っぽい」

 3人の返事を聞いて、学者たちと一緒に海へ出る道を急いで進んだ。 
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