ドリトル先生の名監督
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第四幕その十
「それこそね」
「はい、ですから」
「是非代理の人を立てるべきだよ」
「それでその人ですが」
「誰かな」
「先生にと」
「僕って」
先生は落ち着いたままですが一瞬動きを止めました、ですがそれはまさにほんの一瞬のことで。
すぐにです、その人にこう問い返しました。
「僕に親方になって欲しいんだ」
「はい、そうです」
「僕お相撲を実際にしたことはないよ」
先生はこのことを断りました。
「一度もね」
「はい、そうですよね」
「ルールは知ってるけれど」
それでもというのです。
「やったことはないし」
「それでもです」
「僕にですか」
「はい、親方にです」
まさにというにです。
「お願いします」
「ううん、僕が親方ね」
「お忙しいですか」
「いや、多分部活の顧問を出来る位はね」
それ位の時間はとです、先生は答えました。
「あるよ」
「じゃあお願いします」
「けれど僕みたいな素人が親方をしても」
それことも言った先生でした。
「何も知らないけれど」
「いえ、先生が稽古や食事の仕方を教えてくれましたから」
「だからなんだ」
「先生しかいないと思いまして」
それでというのです。
「是非お願いします」
「それは相撲部全体の考えかな」
「はい、そうです」
その通りという返事でした。
「それでなんです」
「それなら」
「受けてくれますか」
「僕は何も出来ないけれど」
親方としてです。
「それでもいいんだね」
「大体のところは僕達がします」
「それでも親方は必要なんだね」
「そうです、親方が試合の申し込みの代表とかをするんですが」
「ああ、責任者だからだね」
「その責任者がいないんで」
「練習試合も出来なかったんだね」
先生もこの辺りの事情を理解しました。
「そういうことだね」
「僕達は代表が欲しいんです」
「そういうことだね」
「稽古や食事のアドバイスもしてくれたので」
「じゃあ僕は」
「はい、お医者さんとしてアドバイスをお願いします」
稽古やお食事のです。
「そっちをお願いします」
「そうした親方だね」
「代表であり」
「そういうことだね、わかったよ」
「じゃあ受けてくれますか」
「僕でよかったら」
こう答えた先生でした。
「そうさせてもらうね」
「宜しくお願いします」
「うん、これからね」
「暫くの間ですが」
「そうさせてもらうよ」
こうしてでした、先生は相撲部の臨時の親方になることになりました。ですが先生はこんなことも言ったのでした。
「ただね」
「ただっていいますと」
「僕は親方という呼び方はね」
それはというのです。
「あまり柄じゃないから」
「だからですか」
「監督の方がいいかな」
「呼び方はですか」
「そっちの方がいいかな」
「野球やサッカーみたいですね」
「そっちの方が好きだから」
それでというのです。
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